「なんで、あいつは
イヤミなことしか言わねぇんだ！」
ヨウスケは
不満ながらに
心の中で
そう呟いた。
ヨウスケは
大企業に勤めるサラリーマン。
最近、上司にイヤミなこと
ばかり
言われている。
順調に
成果を収めていた営業の仕事も
顧客先で
トラブルが続いて
なんだか
上手くいかない。
家庭でも
妻とのケンカも増えている
小学２年の息子との会話も
口をついて出てくるのは
「勉強はやったのか？」
「テレビばかり見るのは
辞めなさい」
注意をすること
ばかりで
息子から最近は
無視をされるときも
出てきて
なにを
考えているのか
わからないことがある。
それにつられるように
仕事も
どんどん
上手くいかなくなり
笑顔も
減っていった。
そんな上手くいかない
日々が続いたある日
遠く離れる
両親の元へ
３連休なのに
３年ぶりに
１人で帰る用事ができてしまった。
「貴重な連休くらい
ゆっくり休みたいのに・・・」
そんな不満を抑えつつも
帰省をしたのだった。
普段は
厳しい父が
深夜、家に着いた
ヨウスケに
「遠いところ
大変だったろう」
と
ねぎらいの
言葉をかけてきた
「本当だよ、遠いし
面倒くせ〜」
と
不満を表すヨウスケ
そんな
不満を表す息子に
「そうだよな、遠いし
大変だよな。お疲れさま。」
と優しく語り
掛けながら
「疲れたろう。」
とビールを
差し出す父。
（あれ？
どうしたんだ・・・）
次の日も
「健康ランドに行こう」
とか
「美味しいレストラン
に行こう」
とか
いつも
自分のことにしか
興味のない父が
ヨウスケのために
楽しみを提供
してくれるのだった。
（なんだよ、
気持ちわるいな・・・）
とはいえ
ヨウスケは
少し嬉しかった
会社の
ストレスで
文句ばかり
溜まっていたが
次第に
気持ちが
穏やかになっていった。
実家にいる
３連休の
最後の日には
上手く行かない
仕事の相談を
初めて父に打ち明けた
普段は
話を聞かない父なのに
気持ちが
悪いくらいに
これも
黙って
優しく
受け入れる父親。
都会の自宅に戻る
ヨウスケには
穏やかな気持ちが
戻っていた
息子と
「キャッチボールでもやるか？」
と、自然に言葉が出た
「いつも、ご飯ありがとう」
妻にも自然に
優しい気持ちになれた。
仕事も
同僚とイイ感じで協力する
機会が増え
再び
軌道に乗り出した。
後日
母親から電話があった
「ヨウスケ、今回は
実家に帰ってきてくれて
本当にありがとうね」
「私も、お父さんもあなたを
見れて本当に嬉しかった」
「あんなに、ヨウスケに
優しいお父さん見るのも
初めてよ」
「いつでも、帰っておいで
ね、ヨウスケ」
ヨウスケは
母のその温かいメッセージに
また、温かい気持ちになった
ヨウスケは自然と
息子に対して
もっと優しく
接するようになった
妻に対しても
もっと優しくなった
家庭が
久しぶりに
温かくなった
ヨウスケの
周りに優しさが循環し始めて
いろんなことが
上手く回りはじめたのだった
「パパ―！もっと、遊んで―！！」
息子といることが楽しくなった
「最近、怒らなくなったねー」
妻とも会話が楽しくなった
父親の優しさが
母親の優しさが
ヨウスケを優しくし
自宅には
久しぶりの
笑顔が戻ったのだった
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