配信日時 2025/02/04 08:00

【情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(34)】太平洋戦争にみる陸海軍のインテリジェンスの問題点     樋口敬祐(元情報本部主任分析官)


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おはようございます、エンリケです。

インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
の34回目です。

きょうの記事は、戦争末期まで情報を軽視し続けた
帝国陸海軍の実態に迫ります。陸海軍の情報組織の
規模が米軍の10分の1しかなかった事実、陸海軍間の情報共有の欠如、さらには情報部門が「閑職」
と見なされていた実態を掘り下げています。

情報は「もう一つの戦力」です。
適切な情報分析がなければ、どんなに強大な軍隊
も戦いに勝つことはできません。本記事を通じ
て、わが軍がどのように情報を軽視し、いかにし
て敗北に至ったのか、その具体的な過程を読み
解き、いまに活かしていきたいものです。

さっそくどうぞ。


エンリケ



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情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(34)

太平洋戦争にみる陸海軍のインテリジェンスの問題



樋口敬祐(元情報本部主任分析官)
───────────────────────

□はじめに

昨年中は読者の皆様には大変お世話になりました。
1月中旬から再開予定でしたが、少し遅れましたこ
とをお許しください。今年もよろしくお願いします。

さて、先回は、太平洋戦争における日本軍のインテ
リジェンスの成功と失敗事例について述べました。
戦争の初期段階においては、情報活動も順調であり
作戦も期待以上の戦果をあげていました。日本軍が
敗戦へと向かっていく作戦の大きな転換点はミッド
ウェー海戦でした。日米ほぼ同等の戦力で戦ったの
ですが、大きな敗因の一つには日本海軍の暗号が解
読され、日本軍の作戦計画が事前に漏れたことです。
米太平洋艦隊は、日本海軍の作戦計画を把握し待ち
伏せを仕掛けました。情報の観点からいえば、この
失敗は、単にその時の暗号が解読されたという現象
ではありません。日本軍のインテリジェンスそのも
のに問題点がありました。今回から数回に分けて日
本陸海軍のインテリジェンスの問題点について述べ
たいと思います。

▼ 米軍による日本軍の情報組織の評価
実は終戦後の1946年4月、米軍は『日本陸海軍
の情報部について』とする調査書を米政府に提出し
ています。
その結言は次のとおりです。
「結局、日本の陸海軍情報は不十分であったことが
露呈したが、その理由の主なものは以下の5項目で
ある。

(1)軍部指導者は、ドイツが勝つと断定し、連合国
の生産力、士気、弱点に関する見積りを不当に過小
評価してしまった。
(2)不運な戦況、特に航空偵察の失敗は、最も確度
の高い大量の情報を逃がす結果となった。
(3)陸海軍間の円滑な連絡が欠け、せっかく情報を
入手してもそれを役立てることができなかった。
(4)情報関係のポストに人材を得なかった。このこ
とは、情報に含まれている重大な背後事情を見抜く
力の不足となって現れ、情報任務が日本軍では第二
次的任務に過ぎない結果となって現れた。
(5)日本軍の精神主義が情報活動を阻害する作用を
した。軍の立案者たちは、いずれも神がかり的な日
本不滅論を繰り返し声明し、戦争を効果的に行なう
ために最も必要な諸準備を蔑(ないが)ろにして、
ただ攻撃あるのみを過大に強調した。その結果、彼
らは敵に関する情報に盲目的になってしまった」と
しています。 

この調査書について、戦時中大本営情報参謀として
勤務し、戦後は陸上自衛隊でも情報幕僚とした勤務
した堀栄三氏も、著書の『大本営参謀の情報戦記』
の中で米軍が出した結論は当を得た答えであると述
懐しています。

私も、日本陸海軍の情報組織上の問題、情報の軽視、
情報の共有ができてなかったといった本質的な問題
点を的確にとらえていると思います。そこで以下、
もう少し詳しく問題点についてみていきたいと思い
ます。

▼組織上の問題点

情報要員、収集能力が圧倒的に不足していました。

情報を所掌する(陸軍)参謀本部第2部は50~80名
程度、(海軍)軍令部第3部は20~30名程度の人員
しかいませんでした。これに対して相対している米
陸軍情報部は(1943年当時)将校だけで168名、海軍
情報部は230名いました。文官も合わせると約700名
の程度の情報要員がいたとされます。

日本陸海軍情報部の人員は米軍の10分の1程度です。
当時の兵力比は3分の1強(日本軍258万人、米軍92
0万人)ですから、300名程度の情報要員がいてもよ
かったのではないでしょうか。

また、驚くべきことに連合艦隊には1944(昭和19)
年9月まで専任の情報参謀がおらず、情報は通信参謀
が兼務しており、情報業務を補佐する士官すら1944
年2月まではいない状況でした。

一方で、米太平洋艦隊ではミッドウェー海戦(1942
年6月)頃にはすでに情報参謀のエドウィン・レイト
ン中佐を長として、士官4人、下士官1人のスタッフ
を抱えた情報部が存在し、7月には暗号解読班も包括
した太平洋地域統合情報センター(JICPOA)へと拡
大しています。

設立当初の人員は不明ですが、以来終戦までの間、
同局の規模と機能は飛躍的に拡大しました。終戦時
JICPOAは、将兵合わせて約1,800人ものスタッフをか
かえるまでになっていました。そこでは日本軍の基
地及び地域に関する情報や、鹵獲した日本側文書及
び捕虜の尋問に基づいた報告を大量に作成していま
した。また、鹵獲した日本軍の装備を研究・分析し、
標的分析データを刊行するなど、敵領域で活動して
いる将兵に有益な情報を提供したとされます。

情報収集対象への勢力を集中していませんでした。
太平洋戦争における日本軍の主敵は明らかに米国で
あるのに対して、陸軍の情報収集の対象は、太平洋
戦争が始まっても伝統的なロシアや中国に人力を割
いていました。そのため、米国の情報を担当する米
国班は情報部の第6課の一つの班に過ぎませんでし
た。米国班が独立して一つの課に昇格したのは、実
に戦争開始から半年後のことでした。

▼情報の軽視

日本軍は「作戦」に比べて「情報」を軽視したとさ
れていますが、それは人事や教育にも顕著に現れて
います。

情報報要員の人事(異動、地位)について、対ソ情
報の専門家であった林三郎は1943年10月、ロシア課
長として着任しています。

戦後、彼は「人事当局者の情報勤務に対する認識は、
情報勤務は素人眼に誰でもすぐやれそうに見えたの
で二流人物をこれにあて、しかもその多くは二年ぐ
らいで交代させられていた」。実際は「情報勤務は
取っ付き易いかもしれないが、ちょっと役に立つよ
うになるには少なくとも数年の修練を必要とし、作
戦関係の仕事より遥かに仕事の奥行きが深い。だか
らもっともっと能力優秀な将校をこれに多くあて、
頻繁な交代を極力避け、あらゆる機会をつかんで教
育をやるべきであった」と述懐しています。

林三郎自身もロシア課長として勤務したのは、翌19
44年6月までで、わずか8か月しか勤務していませ
んでした。

また大戦中、参謀本部第2部の部員だった杉田一次
大佐によれば、第2部長の地位はややもすると「ア
クセサリーのごとく閑職視され、将来重要な職務に
つく人達の憩いの場所のように考えられていたので
はあるまいかと思われる。確かに平和時代で波乱の
ない情勢下においては、第二部長の地位は呑気なと
ころであった。いずれにしても軍首脳及び人事当局
は、情報を重視していなかったことは事実であった。
平和に馴れ有事に備える心構えが欠けていたからか
も知れない」としています。

確かに第2部長の任期は短く、1937(昭和12)年に
渡久雄部長から本間雅晴少将に交代以降、38年に樋
口李一郎少将就任、39年に土橋勇逸少将(フランス
通)就任、40年に若松只一少将(ドイツ通)就任、
41年に岡本清福少将就任、42年に有末精三少将(イ
タリア通)就任というように皆1年以内で交代して
います(有末少将のみ終戦まで三年勤務)。戦争を
意識した布陣とは考えられず、情報軽視といわれて
も仕方ありません。

海軍においてもそれは同様で、1940年から45年の間
に第3部長(情報部長)は、前田稔少将、小川貫璽
少将、矢野英雄少将、大野竹二少将、中瀬泝少将と
5人も入れ替わっています。

杉田一次氏も「『情報勤務は誰でもできる』という
のが軍当局、ことに人事関係者の考え方であった。
陸海軍とも情報参謀は盲腸的存在視されていた。人
事や作戦や教育訓練、通信兵站の諸業務は特別の専
門的知識や訓練を要するとしたが、情報(参謀)勤
務に至っては収集した情報を単に整理して関係方面
に報告通報する単純な仕事であると考えられていた。
身軽に駆け回って早耳を立てて諸情報を集めるメッ
センジャー・ボーイが情報のエキスパートであると
見做されていた」と述べています。

これに対し、作戦系統には優秀な将校が配属されま
した。「参謀本部作戦部、戦争指導班とともに陸軍
省軍務局に配属される者は、陸軍のエリートとして
のお墨付きを意味した。とくに軍事課と軍務局の高
級課員は、<花形役者>といわれ、中堅将校の憧れ
のポストでもあった。ここに配属される将校の性格
には内規があって、陸軍士官学校、陸軍大学を上位
で卒業し、軍政に才能があると考課され、そのうえ
に何かの部門のエキスパートでなければならなかっ
た。」とされています。情報将校が作戦将校と対等
に渡り合える状況ではなかったことが容易に推察さ
れます。

前述のように、海軍においても連合艦隊では開戦か
ら3年近くたっても情報は通信参謀が兼務し、情報
業務を補佐する士官もおらず、陸軍以上に軽視され
ていました。

 海外で情報を収集する在外大公使館付武官は軍の
中のエリートであり、全般的には、軍政畑や情報畑
を歩んでいる者が任命される傾向にありましたが、
前述のように、在外勤務は情報収集よりもエリート
としての箔付けといった意味合いが強く、帰国後、
情報畑に就く者は少なかったのが現実でした。

次回も問題点について、述べたいと思います。


(つづく)

 


(ひぐち・けいすけ)



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)



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