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おはようございます、エンリケです。

２８２回目の「美佐日記」。

今週は、「自衛官の処遇改善」がテーマです。

かつて陸上自衛官として給与が支給されていた高
等工科学校の「生徒」が、国家公務員改革の波の
中で「学生」と位置づけられた結果、退職金減少
の影響を受けるようになった現状を取り上げなが
ら、防衛政策の本質を問い直します。

防衛費の限られた予算枠の中で、装備調達と処遇改
善のジレンマに揺れるわが国。

この状況をどう打破すればいいのでしょうか？

桜林さんは、現場の声や過去の制度改革を交えな
がら「本当に必要な施策」を提言します。

「国家公務員改革」「防衛費の優先順位」「随意契
約の可能性」など、普段見落とされがちな論点に光を
当てた「桜林さんならでは」の読み応え抜群の内容
です。

防衛に関心がある方はもちろん、国の予算や政策に
疑問を抱きながら、意見を作る糸口すらつかめな
いすべての方におすすめの一編です。

さっそくどうぞ！


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」（２８２）

都合の良い時だけ「官民一体」……？


桜林美佐（防衛問題研究家）
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、２８２回目となりま
す。

前回ご紹介した高等工科学校に関してもご感想を頂
戴しました。

「少年工科学校と呼称していた時には、陸上自衛官
３士の階級の給与が支給されていました。私ら防衛
大学校生は「学生手当」だったので羨ましく思って
いました。
自衛官の定員削減の一環で、少年工科学校も陸上自
衛官ではなく、防大と同じように学生となり「給与」
ではなく、「手当支給」となってしまいました。こ
れにより自衛官勤務年数も減り、退職金が少なくな
ってしまいました。」

ということで、U様ありがとうございました。

そうなんですよね、一連の国家公務員の総人件費改
革によってかつて少工の生徒はその時点で自衛官だ
ったのが、今は防大生と同じ学生という立場になっ
たことから、毎月のお金は支給されるものの、大き
な問題は退職金が以前と比べて減ったことでしょう。

今現在「自衛官の処遇改善」関係閣僚会議が進めら
れているところですが、そもそも自民党政権で始ま
った国家公務員改革がじわじわ影響してきていると
いうことなんだよね・・・と、内心思っている関係
者は少ないかもしれません。とはいえ、そんなこと
を言っても始まりませんので、ぜひ画期的な施策を
求めたいですが。

いずれにせよ。高等工科学校出身者の退職金のよう
に、他にも様々に減らしてきた隊員の報酬があると
思われますので、それらも総点検する必要があるの
ではないでしょうか。

新たな施策もいいですが、マイナスにしてきた事々
を見直す作業も欲しいところ。ただ、これはけっこ
う難しいのですが・・。

また、予算措置もどうするのだろうかと思います。
２０２３～２０２７年度までの４３兆円という予算
はすでに物価高騰や円安などで3割ほど目減りしてい
ると言われ、装備調達にも影響が出ているという中
で、現行の防衛費の枠内では処遇改善策に割ける部
分は限定的ではないでしょうか。

あるいは、そこに大きく割くなら、装備調達などが
あおりを受けることになり、処遇改善の当事者であ
る自衛官が「何を減らせと言われるんだろうか」と、
戦々恐々とするという本末転倒な事態にならないか、
そんなことを懸念してしまいます。

とにかく、今後、小手先ではない抜本的な処遇改善
策を防衛予算内で進めようとしても、かなり限られ
たことしかできないと思います（まずは憲法改正論
議をすべきだろうという感想が来そうなので、それ
は脇に置いての話であることを予め申し上げておき
ます）。

この際なのでもっと言ってしまうと、最近「官民一
体」でやっていますという記事などを目にするよう
になっていることも気になります。

これはオーストラリア海軍が導入しようとしている
新型汎用フリゲート艦の共同開発国の最終候補に日
本の護衛艦FFM（もがみ型）をベースとする案が残っ
ていることに対して言われている言葉ですが、なん
だか、これまで競争入札制度により国内企業とは一
体にならないように、他人のようにドライにやって
いくことを奨励していたのに、都合の良い時だけ
「官民一体」と言っているように、私には見えてし
まいます。

本当にこれから日本のために「官民一体」でやって
下さいということなら、まずは防衛省調達を随意契
約にすることに理解を示すのが筋なのではないかと、
私は思ってしまいます。

ある時は突き放し、ある時は「一体だ」と言ったり
する、やや空虚に響くような・・。企業側からはそ
んなことを言ったりしませんが、私はそう感じます。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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で語りました！
こちらは、JBプレス https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/84093 にも掲載されています。

●YouTubeのチャンネルくらら「陸海空軍人から
見たシリーズ」で司会をしています。
　https://x.gd/4KTkO
さらに最近は元将官が語る「ノモンハン事件」
「ミッドウエー海戦」「ガダルカナルの戦い」
でも司会をしています。　https://x.gd/4KTkO



（さくらばやし・みさ）


桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
桜林美佐（さくらばやし・みさ）
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業［改訂版］』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
（いずれも並木書房）、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』（P
HP研究所）、『日本に自衛隊がいてよかった』（産
経新聞出版）、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』（ワニブックス）。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』（産経ＮＦ文庫）、
「陸海空　軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」
（ワニブックス）、『軍産複合体～自衛隊と防衛産
業のリアル』（新潮選書）

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