配信日時 2024/11/26 08:00

【情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(29)】レバノンにおけるポケベル爆破事件(最終回)     樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

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おはようございます、エンリケです。

インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
の29回目です。

241118、米国が提示した停戦案にヒズボラとレバノ
ン政府が同意したという一報が飛び込みました。し
かし、停戦の実現は依然として不透明。特に、イス
ラエルがこの案を受け入れるかどうかが焦点です。
和平に向けた小さな光が見える一方で、そこには幾
多の火種が潜んでいる――。

今回の記事はシリーズ最終回。
過去のイスラエルとヒズボラの衝突を徹底分析し、
現状把握と未来予測を行っています。
記事は、1978年のイスラエル軍のレバノン侵攻から
始まり、2006年の全面戦争、そして最近のハマスの
奇襲攻撃に至るまで、歴史の流れを丹念に追います。

特に注目すべきは、241007のハマスによる大規模攻
撃の背後に潜む「情報インテリジェンスの失敗」。
若い女性兵士たちの警告が無視された理由や、攻撃
がもたらしたイスラエル国民への心理的影響、さら
に今後のリスクについても掘り下げています。

歴史に学び、現状を把握し、未来を予測する。この
記事は、軍事・外交の裏側を知るための必読の一篇
です。ここまで優れたインテリジェンスを一国民で
あるあなたは手にできています。その価値はあなた
が思う以上に大きいです。イスラエルとヒズボラの
交渉の行方が気になる方も、歴史を紐解いて平和へ
の道筋を探りたい方も必読です。この分析から浮か
び上がる冷徹な現実にぜひ触れてください。

しばらくお届けした「レバノンにおけるポケベル爆
破事件」と題した記事は、現代史を把握するうえで
欠かせない必読文献といって差し支えない、わたし
はそう思っています。

さっそくどうぞ。


エンリケ



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情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(29)

レバノンにおけるポケベル爆破事件(最終回)


 樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

───────────────────────

□はじめに

レバノンのヒズボラとイスラエル軍の戦闘をめぐり、
ロイター通信は11月18日、米国が提示した停戦案に
レバノン政府とヒズボラが同意したと報じました。
翌19日にはホックスティーン米特使がレバノンで政
府関係者と停戦案について協議し、「建設的だった」
と手応えを語りました。

しかし、イスラエル側がこの案を受け入れるかは不
明で、交渉の先行きは見通せません。(11月22日現
在)

今回のメルマガでは、過去のイスラエルとヒズボラ
の戦いの歴史を振り返りながら今後の見通しを考察
して見てみたいと思います。少し長い記事ですが、
お付き合いください。


□イスラエルとヒズボラの戦いの歴史

▼イスラエルとヒズボラとの戦い前史

○1978年3月、何者かによる部隊がイスラエルを襲
撃し、多数の死傷者が出たことについて、パレスチ
ナ解放機構(PLO)が犯行声明を出したことを受け、
イスラエルは報復としてレバノンに侵攻、ティール
市とその周辺を除くレバノンの南部の全域を占領

同月、安保理は安保理決議第425および第426号を採
択し、イスラエルに対して軍事活動を早急に停止し、
すべてのレバノンの領域から軍を撤退することを要
請。併せて国連レバノン暫定隊(UNIFIL)の設立決
定。

▼1982年~2023年10月6日までの戦闘

○1982年、ヒズボラはレバノンに侵攻したイスラエ
ル軍と戦うためイランの革命防衛隊によって設立。

○2000年、イスラエルは、6月には国連の指定した
撤退ライン(ブルーライン)までの撤退を完了。こ
のイスラエルの撤退をもって、UNIFILはその軍事的
な機能を回復。その後、ブルーラインの軽微な違反
等は生じたものの、状況は比較的平穏。

○2006年にヒズボラが国境を越えた誘拐作戦を行な
った後、全面戦争に発展。この戦争で100人以上のイ
スラエル人と約500人のヒズボラ戦闘員が死亡。

ヒズボラはおそらくこの作戦が全面戦争を引き起こ
すとは予想していなかったようで、のちにヒズボラ
の指導者ハッサン・ナスララは、戦争が起こると知
っていたらこの作戦は実行しなかっただろうと発表
しています。

安保理は決議第1701号を採択し、敵対行為の完全な
停止、並びに永続的な停戦及びこの重大な局面に対
する包括的な解決策を支援することを要請。併せて
安保理は同決議においてUNIFILの規模及びマンデー
トを大幅に拡大し、PKOで初めて海上部隊の編成を決
定。

○2006年以降、イスラエルは時折、ヒズボラの戦闘
員や、シリアのヒズボラやその他のグループに向か
うイランの武器輸送を攻撃し、国境をまたいでロケ
ット弾やドローン、その他の睨み合い攻撃が断続的
に発生。

しかし、国境付近では双方とも不安定ながらも十数
年間、全面戦争を抑止する状態が継続

▼2023年10月7日のハマスによるイスラエル攻撃と
その影響

2023年10月7日、ハマスによるイスラエルに対する
大規模奇襲攻撃発生しました。7日早朝、ハマスと
パレスチナ武装勢力が、イスラエルに向けて約3,00
0発のロケット弾を発射。

車両や動力付きパラグライダーによるイスラエル領
土への侵入、ガザ地区からは武装した戦闘員がイス
ラエル国内に侵入し、イスラエルの民間人が住む街
と軍事基地、さらにはレイム近郊で開催されていた
音楽祭を攻撃、イスラエル人約1,200名が死亡しまし
た。

約250人のイスラエル民間人と兵士が人質としてガザ
地区に連行されました。

▼イスラエル情報機関のインテリジェンスの失敗

10月7日のイスラエルへの奇襲攻撃は、ハマスの他
に5つのパレスチナ武装勢力が参加していました。
BBCの分析では、それらのグループは2020年以降計4
回の「強い柱」という演習を行なっていたことが判
明しています。1回目は2020年12月、2回目は2021
年12月、3回目は2023年4月、4回目の演習は、20
23年9月に行なわれています。

これらの演習について、イスラエル軍はその事実を
知っていましたが、しかし、その演習の目的につい
て把握していませんでした。

同9月にガザとの境界付近を監視する女性兵士たち
は、ドローン活動が異例に増加していることを報告
していました。

しかし、若い女性監視兵士たちの警告を上級司令官
らは無視したとされています。

この部隊が「若い女の子と若い女性指揮官だけで構
成されている」からとの理由からです。女性兵士ら
は性差別が、情報が無視された要因の一つだと考え
ているとされています。(2023年11月19日付け(The
 Times of Israel)

このように、情報(インフォメーション)があった
にもかかわらず、それが上に伝わらない、または、
インフォメーションがあったとしても分析を誤ると
いうインテリジェンスの誤りや失敗がありました。

▼政府や国民に及ぼした心理的影響

このように、結果としてイスラエル軍の上層部は、
ハマスの攻撃に関するインテリジェンスを得ておら
ず、その結果奇襲を受け、政府の対応も後手に回り
ました。

また、この攻撃は従来の戦争に比べイスラエル国民
の不安感を増大させました。その理由は、女性、子
供、高齢者を含むイスラエルの民間人が多数殺害さ
れたこと、その際、多くの残虐行為と性的暴力が伴
い、動画等に記録されているものが多かったためで
す。

そのため、今回の攻撃は、イスラエル国民全体に対
しては心理的打撃を与えました。

医学雑誌「ランセット」に掲載された分析によると、
攻撃はイスラエル国民の間でPTSD(心的外傷後スト
レス障害)、うつ病、全般性不安障害(GAD)のレベ
ルを高めたとされます。

これは、残忍なテロ行為に直接さらされた人々だけ
でなく、間接的にさらされた人々も同様だという結
果が出ています。

この結果を裏付けるように、ギャラップの世論調査
(2023年10月17日~12月3日までイスラエル人を対象
にした実施)によると、イスラエル国民の精神的健康
は攻撃後に急落し、過去最高の過半数が、通常より
も高いレベルの心配(67%)、ストレス(62%)、
悲しみ(51%)を経験したと回答。1/3(31%)以上
が強い怒りを経験したとされます。ギャラップは、
「他のどの国でも、前年比でこれほど大きな否定的
な経験の増加は見られなかった」と結論付けました。

その結果から見れば、イスラエルのリスク許容度は
おそらく以前とは変化したと考えられます。

ヒズボラほど武装も訓練もされていないハマスが1,
000人以上のイスラエル人を残酷に殺害できるのであ
れば、より手ごわいヒズボラは一体どうするだろう
かというリスク管理です。

さらに、ヒズボラとハマスとの連帯、ヒズボラとイ
ランとの密接な関係がこの恐怖をより強めています。

これらのことから、イスラエル国民には、今後ハマ
スそしてそれと連帯するヒズボラとの融和よりも、
それらを徹底的に叩くという思考や感情が優先する
ことが予想できます。

先のギャラップの調査でも、2006年から2017年まで、
イスラエル人の29%が永続的な平和が可能だと考え
ていましたが、10月7日以降、平和が実現する可能
性があると希望を抱く人はその半分以下(13%)、
両者の永続的平和を期待していないと考える人は74
%です

▼2023年10月7日以降の戦闘

○ハマスが10月7日パレスチナのハマスがイスラエ
ル南部に奇襲を仕掛け、ガザで戦闘が始まった翌日
ヒズボラもイスラエルと交戦状態に入りました。

ヒズボラは戦闘目的を、同盟関係にあるハマスの対
イスラエル戦を支援し連帯を示すことだと主張して
います。これらの攻撃に対してイスラエルが反応し、
ヒズボラと血みどろの報復合戦となりました。

ガザの戦争にはイランが後ろ盾となっている各地の
武装勢力が関与していますが、ヒズボラはこの中で
最も強力な勢力と見なされています。

○2023年10月7日の攻撃前の数か月間、ヒズボラとイ
スラエルの間で戦闘はほとんどありませんでした。

しかし、8日以降(2023年10月8日~2024年3月15
日)イスラエルとヒズボラが関与する4,400件以上の
暴力事件が見られました。毎週150件以上の事件が発
生しているのです。

○イスラエルのネタニヤフ首相は12月、ヒズボラが
全面戦争を開始すれば、ベイルートをガザのように
すると警告しました。

これに対しヒズボラは、紛争を拡大するつもりはな
いとのシグナルを送りつつ、戦争を強いられれば戦
う用意があり、まだ戦力の一部しか使っていないと
も反論しました。

○別のデータ(ACLED:武力紛争の場所とイベントデ
ータ)ではイスラエル軍は10月8日以来、国境沿い
でヒズボラとほぼ毎日国境を越えた砲撃を行なって
いる(2023年10月8日~2024年6月28日の間に7,00
0回以上の攻撃が記録)。

○2024年7月末、ヒズボラの軍事司令官フアド・シ
ュクル氏が暗殺されました。

○9月10日、イスラエルのガラント国防相はガザに
おける対ハマス戦がほぼ完了し、間もなく北部国境
に焦点を移すと発表。数千人のイスラエル人避難民
の帰還を目指すと述べました。

○この事件が今回のメルマガのメインテーマですが、
9月17、18日ヒズボラが使用していたポケベルとト
ランシーバーが爆発し、多数が死傷しました。

○9月20日、イスラエルがベイルート南部を攻撃し、
ヒズボラ幹部などを殺害。ヒズボラが報復としてイ
スラエルの北部都市ハイファなどにロケット弾を発
射しました。

○9月23日、イスラエルがレバノンに対して激しい
爆撃を行ない、南部のほか北部のベカー高原やベイ
ルートも攻撃、レバノン当局によると1日で500
人余りが死亡しました。
 
○9月24日もヒズボラを標的にしたイスラエルの空
爆は継続。レバノンのフィラス・アビアド保健相は、
2日連続の空爆で多数の死傷者が出て病院が対応に
苦慮している。

イスラエルは、レバノン国内にあるヒズボラの拠点
を多数攻撃したと発表しました。攻撃地点には住宅
地も多く含まれていますが、イスラエルはヒズボラ
が住宅地に武器を隠していると非難しました。

イスラエル軍は24日の攻撃で、ヒズボラのロケット
部隊のトップ、イブラヒム・クバイシの死亡を殺害
しました。ネタニヤフ首相はヒズボラがレバノンを
「奈落の淵」に導いているのだと述べました。

○9月27日、イスラエル軍はレバノンの首都ベイル
ート近郊を空爆し、ヒズボラの最高指導者ナスララ
氏を殺害

この後もネタニヤフ首相が「任務はまだ完了してい
ない」と攻勢を強める構えを示したほか、ガラント
国防相も「空、海、陸からあらゆる能力を駆使する」
として、地上作戦の可能性を示唆。

イスラエル軍は、クバイシ氏がベイルート南部で他
の指揮官2名とともに空爆で死亡したと発表。イス
ラエル国防軍によると、クバイシ氏はヒズボラのさ
まざまなミサイル部隊を指揮していました。

イランの最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、
「確かに損害は出ている。ヒズボラの有能で貴重な
メンバーの一部が殉教した。ヒズボラにとって間違
いなく損失だ。だが、ヒズボラを壊滅させるにはそ
れだけでは十分ではない」と発言しました。

○9月27日のベイルート空爆では、レバノン南部戦
線の責任者であるアリ・カラキ司令官を殺害。

○10月20日、イスラエルはレバノン国内にあるイス
ラム教シーア派組織ヒズボラと関連のある金融機関
を狙い、空爆。軍報道官は標的の金融機関が「ヒズ
ボラのテロ活動を資金面で支えていた」と主張して
おり、イランの支援を長年受けてきたヒズボラの資
金源を根絶する狙い。

AFP通信などによると、ヒズボラはレバノンの首都ベ
イルート中心部を含め同国内に30以上の「支店」を
保有。その支店はヒズボラが国際金融システムにア
クセスするために利用し、戦闘員の給与を支払う業
務にも携わっている。

○10月20日は、ヒズボラがレバノンから約70発の飛
翔体を短時間でイスラエル領内に向けて発射。双方
の応酬が継続。

○10月22日、イスラエル軍は、レバノンのシーア派
組織ヒズボラの次期指導者とみられていたサフィエ
ディン師の死亡を確認したと発表。

イスラエル軍は10月上旬、ベイルートでサフィエデ
ィン師を狙った攻撃を実行していた。

○11月18日、米国が提示した停戦案にレバノン政府
とヒズボラが同意。翌19日ホックスティーン米特使
がレバノンで政府関係者と停戦案について協議し、
「建設的だった」と手応えを語りました。

バイデン政権が提案した停戦案の内容には、以下の
ような項目が含まれていると報じられています。

(1)即時停戦: ヒズボラとイスラエルの間での武力
衝突を直ちに停止すること。
(2)人道的支援:停戦に伴い、レバノン国内での人道
的支援を強化し、特に戦闘によって影響を受けた地
域への支援を行なうこと。
(3)監視メカニズム構築:停戦の遵守を監視するため
の国際的な監視団の設置。これにより、双方が合意
を守ることを確認する。
(4)交渉の場の提供:ヒズボラとイスラエルの間での
さらなる対話を促進するための場を提供すること。
(5)長期的な解決策の模索:停戦後、持続可能な平和
を実現するための長期的な解決策についての協議を
行なうこと。

▼イスラエル対ヒズボラの戦争の経緯

今回のテーマにしたポケベルの爆発は、従来のイス
ラエル情報機関による爆破による単なる暗殺事件と
は異なるように思います。2023年10月のハマスによ
るイスラエル急襲以降、イスラエル軍はハマスへの
報復と合わせてイスラエルとヒズボラの戦争にも終
止符を打ちたいとの思いがあるように思われます。

イスラエルに対する脅威を最低限にまで排除してお
きたい。少なくともヒズボラに対しては、今後20年
程度(2006年から23年まで大きな戦闘がなかったよ
うに)はイスラエルに対して攻撃しようという気を
起こさせないように、指揮系統を徹底的に叩いてお
きたいとの思いがあるように感じられます。

また、ハマスやヒズボラの後ろ盾となっているイラ
ンにも対応していますが、レーダー網やミサイル基
地など限定された施設への空からの攻撃にとどめて
います。

いまのところイスラエルもイランもそれぞれの攻撃
を一定程度攻撃や抑制しているように思えます。

ただし、イランによるミサイル攻撃でイスラエルの
中心部が破壊されるようなことがあれば、油田や核
施設に対する攻撃も辞さないのではないかと思いま
す。

米国もイスラエルとイランとの全面戦争が起きない
ように必死です。軍事費の支援とともに、イスラエ
ルを防空するため初めて対空ミサイル部隊もイスラ
エル内に展開しました。

▼イスラエルとヒズボラの戦力比較

○イスラエルの戦力
兵力:正規軍16.95万人(陸軍12.6万人、海軍9,500
人、空軍3.4万人
予備役46.5万人(陸軍40万人、海軍1万人、空軍5.5
万人
(IISSミリタリーバランス2024)
戦車:2200両
作戦機:340機
無人機:多数
(報道)

○ヒズボラの戦力
現役戦闘員:約3万人
 予備兵力:最大2万人
ロケット、ミサイル:12万から20万と推定 
大部分は短距離の無誘導弾。2006年以降、長距離ミ
サイルも増 
  加
無人機:多数。イスラエルの標的の監視や攻撃に使
用。(ほぼすべてイランが供給)
(CSIS)

▼イスラエルの対ヒズボラ戦略の選択肢

米国による停戦案が提出されイスラエルの対応が注
目されているが、将来的なイスラエルの対ヒズボラ
の選択肢については、
(1) 2023年10月7日以前の状況に戻り、抑止力を重
視する政策への回帰、
(2) ヒズボラとの全面戦争(地上侵攻含む)を開始
し、同グループの能力を破壊し、イスラエルの要求
に従わせる、
(3) 外交手段を利用して国連安保理決議1701をより
適切に実施する。

(1)抑止政策への回帰(2023年10月以前の状態)
イスラエルは、2006年以降ほぼ20年間不安定ながら
も平和を維持してきたその抑止政策へと戻る可能性。

ヒズボラを抑止するには、同グループおよびレバノ
ンのインフラに対する攻撃の実行とその行使力を有
することを明示することによって、同グループがイ
スラエルへの大規模攻撃を仕掛けないよう抑止。

(2)全面戦争
ヒズボラに対する抑止効果が失敗した場合(偶発的
攻撃含む)、空地から本格的にレバノンへ侵攻し全
面戦争になる可能性。

(3)外交手段の活用
アメリカなどを仲介役として外交手段により、ヒズ
ボラに国連安保理決議1701号(2006年のイスラエル
とヒズボラの間の戦闘を停止し恒久的停戦実現のた
めの決議)を順守させる可能性。

▼まとめ

イスラエルとヒズボラの戦力差、イスラエルの空爆
やポケベル爆破攻撃によるヒズボラの上級や下級指
揮官クラスの死亡、指揮系統の破壊などを考慮すれ
ば、ヒズボラ側がアメリカなどの提案に基づく早期
に停戦に前向きなのは容易に想像ができます。

一方、イスラエルのネタニヤフ首相はイスラエルの
国会(クネセト)で11月18日、「停戦協定が成立し
ても、(イスラエルの)北部の安全を確保するため
には、ヒズボラに対して組織的に作戦を実行する必
要がある」と述べるなど、強気の姿勢を崩していま
せん(11月18日付「タイムズ・オブ・イスラエル」)。

イスラエル側とすれば、上記のような戦略の選択肢
を考慮しながら、停戦案を受け入れるかどうかを考
えているものと思われます。

現在の米バイデン政権は、任期最後の外交的な成果
を求めて、他の紛争よりも交渉のしやすいイスラエ
ルとヒズボラの戦争終結に対して積極的に取り組ん
でいるように見受けられます。

現政権でも十分にイスラエル寄りの政策がとられて
いますが、次期トランプ政権については、さらにイ
スラエル寄りの政策を採ることが考えられます。

そのため、イスラエルにとっては、交渉を急ぐ必要
性はなく、ガザ地区の状況、イランの反応などを見
ながらじっくりと自分たちの主張を通すことを考え
ているものと思います。

ただし、イスラエルにとってもガザ、レバノン、イ
ランといった3正面で長期的に戦闘を行なうことは
得策ではないことから、対ヒズボラ戦略の選択肢と
しては、(1)抑止政策への回帰(2023年10月以前
の状態)の戦略を追求する可能性が高いものと考え
ます。

今回のポケベル爆破事件についてのシリーズは、こ
れで終わりたいと思います。


(つづく)

 


(ひぐち・けいすけ)



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)



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