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当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
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にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
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おはようございます、エンリケです。
「陸軍砲兵史」の第88回目。
「侵略されたら、どうする?」
これは映画やドラマの話ではありません。
かつてわが国が直面した、そして今も問われ
続ける現実の問題です。
荒木さんが『道北戦争1979』を題材に語るのは、
ソ連による北海道侵攻という仮想戦争の中で
揺れる「国家の尊厳」。
戦う覚悟が問われる中での首相と司令官の緊
迫のやり取り――そこに浮かび上がる、私たち
が知らなければならない政治と軍事のリアル。
この問題は、いまの台湾有事やシーレーン防
衛とも深くつながっています。
もし、あなたがこの状況に置かれたらどうしま
すか?
さっそくどうぞ。
エンリケ
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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(88)
自衛隊砲兵史(34) 国家の尊厳とは
荒木 肇
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□ご挨拶
いよいよ立冬も過ぎて、冬が近づいてきました。
それにしても気温の乱高下があって、それへの適応
に体力を使わされる日が多い気がします。
先日は所用あって奈良を訪れさせていただきまし
た。平城宮の朱雀門や大極殿の復元を見たかったの
です。広大な敷地の中に立派な朱雀門と殿舎、さら
に復元作業中の門がありました。1300年あまり
の時を超えた景色でした。
幸い天気に恵まれ、その夜は旧知の方々と久しぶ
りの懇親ができました。話題は過去、現在、未来へ
と盛り上がり、とても幸せな気持ちに包まれました。
人との関係は何よりの財産だと実感させられた時間
でした。
▼日本という国家の尊厳
今週も木元寛明元将補の著作『道北戦争1979』
をもとに話を進めます。
首相は「これ以上の犠牲は防がねばならない」と
いう思いを、現地司令官である北方総監に伝えます。
それに対して、総監は次のように答えました。ここ
は木元将補の書かれた通り引用します。
「ソ連から一方的に侵略され、国土の一部を占領
されたまま、相手の言いなりに戦争をやめると、日
本という国家の尊厳がどこにありますか? ソ連軍
の侵略に対してわが国は全力を挙げて対応していま
すか? 国力が尽きてもう戦争が遂行できないとい
うまでやりましたか?(『道北戦争1979』光人
社NF文庫、197ページ)」。
首相は反論します。「しかし、これ以上戦争を続
けると、さらに多くの地域がソ連に占領され、国民
や自衛隊の犠牲も増えるのではないか?」
総監は主張を続けます。
「戦争を続けると、当然、犠牲者は増えるでしょう。
しかし、国土、国民、主権を守ることが最高指揮官
としての総理の責任ではないでしょうか? 犠牲者
が出ることを国民にきちんと話し、国民に協力を要
請し、侵攻したソ連軍を追い落とすまで、最高指揮
官たる総理が先頭に立って戦うべきではないでしょ
うか?」
すると、首相は尋ねます。「自衛隊にこれ以上戦
う余力はありますか?」そう聞かれて総監は答えま
した。「十分あります。これまで戦っているのは第
2師団、第7師団、北部方面隊直轄部隊と航空自衛
隊の一部だけですよ。陸海空自衛隊の大半はまだ動
いていません」
陸上幕僚監部や防衛部を通じて首相官邸には情報
をあげてはいましたが、首相の頭の中では、何も整
理されていないと総監は感じました。そこで、7月
4日からの状況の推移を簡単に説明し、これまでは
受け身の防勢作戦であり、これからは本格的な反撃
に入ると強調します。
すると、軍事に疎い首相は心配するのです。「自
衛隊が本格的に動くと、ソ連との全面戦争になるの
ではないか?」と言います。しかし、全面戦争をソ
連が考えているのなら当初からそうした動きに出る
でしょう。ソ連の狙いは稚内港が欲しかったのです。
軍隊を道北に侵攻させて、わが国を脅かせば稚内港
は簡単に手に入ると思っていたのでしょう。そして、
軍事に素人の首相や外相、官僚たちは策略に屈しよ
うとしています。
ここに「制限戦争」という政治と軍事の境界があ
いまいな現代戦争の特質を、政治家たちは少しも考
えていないことが明らかになりました。軍事を学ぼ
うと思ったこともないのでしょう。平和は祈れば手
に入れられる、何があっても話し合いで解決できる。
命を守るためなら相手の理不尽さにも耐えるべきだ、
何よりも自衛戦争さえ否定するなら軍事などは価値
がないものであり、決しては触れてはいけないもの
と考えてきたのです。
現にいま、わたしたちの周りにも、国家の尊厳を守
る覚悟のない、勉強もしていない国会議員がどれほ
ど多いことか。ある論者に至っては、戦争になった
ら抵抗せずに降伏すればよいなどという能天気なこ
とを語ります。
すでに中国は、台湾有事において、わが国を日干し
にすると脅迫しています。つまり、台湾周辺を交戦
海域とし、わが国のシーレーンを潰してみせるとい
うのです。それに対して、自分はどう考えているか
を与野党の議員達はしっかり発信しているでしょう
か。
▼首相の迷い
これは外相から、外務省から入ってきた話と違う
と首相は思いました。たしか自衛隊は負けているば
かりで、ソ連軍はいよいよ大攻勢を考えているので
はないでしょうか。外相や外務省の人たちは、ソ連
大使や武官たちにそうした情報を渡され、素人の悲
しさからそれを鵜呑みにしてしまったのです。
総監は指摘します。そうした情報はソ連側からの
ものではないか。首相は何とかそれを否定しますが、
総監は情勢判断と方面隊の攻勢意図を説明します。
ソ連の地上軍は、ほぼ3個師団が侵攻していまし
た。その兵站支援は膨大なものになります。ソ連本
土から長距離の海上補給が必要です。そのため稚内
港が大きな価値を持っています。ところが、稚内港
を見下ろすノシャップ岬は26連隊が確保を続け、
港内への砲撃を行なっていました。大攻勢どころか、
弾薬も十分に補給されず、ソ連軍の攻撃力は低下の
一途をたどっています。
首相はようやく実態の一部を理解し、それでもソ
連軍の増援があり、ノシャップ岬を制圧するのでは
ないかと疑いを見せます。
そこで総監はさらに進言しました。その場合は、
海上自衛隊、航空自衛隊の全力を投入して新たなソ
連軍の侵攻を叩くべきだと言うのです。なぜならソ
連の制限戦争の範囲は北海道北部でしょうが、わが
国の制限戦争はソ連本土には手を出さないというこ
とです。そうなると、日本国内には聖域がありませ
ん。
現在の政策では、ようやく海外の敵基地への攻撃
能力が入手できるようになりました。もっとも、憲
法9条を信仰のように守りたい方々にとっては、そ
れも帝国主義的侵攻の準備に映るようです。日本に
手を出したら痛い目に遭う、合理的に考えたらとて
も武力侵攻は無理だと相手に思わせることが抑止力
の構成になるのですが。
総監は最高指揮官たる首相に強いリーダーシップ
の発揮を希望します。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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