配信日時 2024/10/22 08:00

【情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(24)【過小評価されていた陸軍の通信情報能力     樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

-------------------------------------------
今後の配信が不要の場合は
下記より解除して頂けます
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
-------------------------------------------
あなたのペットが危険です
http://okigunnji.com/url/210/
-------------------------------------------
Audible会員なら、数多くのオーディオブック、
ポッドキャスト、限定コンテンツを月額1,500円で
好きなだけ聴き放題できます。まずは30日間の
無料体験を始めませんか? 
https://amzn.to/42ZaOnl
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
↓  ↓  ↓  ↓  ↓
http://okigunnji.com/url/80/

---------------------------
哲學ツーリズム
http://okigunnji.com/url/187/
-------------------------------
松下村塾から沢山の「天才」が生まれた秘密
http://okigunnji.com/url/208/
-------------------------------
おはようございます、エンリケです。

インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
の24回目。

前回につづき、わが軍事情報機関の歴史的変遷に
ついての考察です。

日露戦争から大東亜戦争に至るまでの情報機関の編
制や、組織改編の背後にあった権力闘争など、一般
にはあまり知られていない興味深い事実が明らかに
されています。

特にきょうの記事は、科学諜報、現在でいう「通信
情報」に焦点を当て、その収集・運用体制の発展過
程を細かく解説しています。

当時のわが暗号解読能力に対する米軍の評価は低か
った、というのが定説でした。
しかし実際は英米がその能力を警戒していた事実
が近年の研究で明らかにされていることにも触れ
ています。軍事史の見方が大きく変わる一例と
言えるでしょう。

それではきょうも、記事をじっくりご堪能くだ
さい。


さっそくどうぞ。


エンリケ



◆最新刊
『ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っているか』
https://amzn.to/3SxjoWJ

───────────────────────

情報戦争を生き抜くためのインテリジェンス(24)

過小評価されていた陸軍の通信情報能力

 樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

───────────────────────


□はじめに

前回は日露戦争の戦訓に基づき参謀本部は情報部が
独立するなどの改編が行なわれたが、その後の第1
次世界大戦における情報上の教訓はあまり得ること
ができなかったと述べました。

その後の変遷をみても、総じていえば、参謀本部の
4部編制は、1908(明治41)年から1945(昭和20)年の
敗戦まで大きな改編はありません。

日清・日露戦争において勝利した参謀本部(特に情
報部)は、変革の必要性を見いだせず、ほぼ日露戦
争時の体制のまま第2次世界大戦に臨んだといえる
のではないかと思います。

ただし、シベリア出兵を契機に暗号の重要性などに
気が付き、通信情報収集の分野には注力していった
ことがうかがえます。

また、1937(昭和12)年に大本営が設置されて以降
は、参謀本部の編制外で、課や班などの頻繁な増減
や配置換えがありました。

▼昭和初期における第2部(大本営が設立されるま
で)

1928(昭和3)年、第2部第4課は欧米情報に第5
課は支那情報担任になりました。そして、1930(昭
和5)年には第5課の担任業務に「暗号の解読及び
国軍使用暗号の立案(*)」が追加されました。

(*:参謀本部歴史綴り(昭和5年)には、暗号班
の所属変更について「暗号班を第3部より第2部に
移し、第2部の定員を流用してこれを拡張し一層内
容の充実を図ると同時に平戦両時を通し暗号の研究
と諜報勤務との連携を更に密接ならしむ」と記載)

当時の第2部の部員数は46名、大使館公使館付き武
官補佐官等は20名になりました。1936(昭和11)年
には、第5課(ロシア課)が新設されました。建軍
以来第1の想定敵国であったソ連については、従来
第2部第4課第2班(ロシア班)が担当してきまし
たが、不思議なことにここにきて初めてソ連専門の
課ができたわけです。


▼大本営設置(1937年)以降の情報機関

1937(昭和12)年7月7日の支那事変勃発から4か
月後の11月20日、大本営が設置されることとなり、
参謀本部は第4部を除き大本営陸軍部となりました。

大本営設置にあたり、11月18日にこれまでの「戦時
大本営条例」を廃止し、新たに「大本営令(*)」
が制定されました。また、1937年12月には、支那事
変に対応し宣伝謀略を担当する第8課が新設され、
中国通の影佐大佐が8課長に補せれました。

(*:戦時大本営条例は宣戦布告を伴った「戦争」
が大本営の設置条件であったのに対し、大本営令で
は国際法上戦争ではない「事変」に際しても設置で
きるようにしたのです。また、戦時大本営条例では
大本営に首相以下の閣僚が参加できたのに対し、大
本営令では陸海軍大臣を除いた首相以下の閣僚の参
加は認められなくなりました。そこで政府は、政略
方針を決定するために必要な戦略情報を得るため、
大本営政府連絡会議を設置して、政略と戦略の緊密
化を図らなければならなくなりました)

大本営陸軍部と参謀本部の部課はほぼ共通で、当初
は実質的には一体であったと考えられます。しかし、
参謀本部の定員は、平時編制で規定されていたため、
戦時に増加した課や班は次第に参謀本部編制にはな
いものになっていきます。
 
例えば、第14課、第15課、第16課、研究班、第18班、
第20班などが、当時の戦況などに応じて逐次所掌を
変えながら増強されています。

1943(昭和18)年頃の第2部関係の担任業務は、以
下のとおりです。(10月15日「参謀本部規則」)

第4班:対外一般の総合情勢判断並びにこれに伴う外
交、謀略、諜報に関する事項、防諜、宣伝並びに国
内の情報に関する事項、科学諜報の運用に関する事
項(18名)

第5課:対ソ作戦情報に関する事項、ソ連邦及び独を
中心とする欧州及びインド(含まず)以西の諸国の軍
事、国勢、外交、兵要地理の調査及び情勢判断に関
する事項(17名)

第6課:対英米作戦情報に関する事項、英本土、南北
アメリカ諸国、アフリカ、南方諸国(インド、豪州
含む)の軍事、国勢、外交、兵要地理の調査及び情
勢判断に関する事項
(26名)

第7課:対支作戦情報に関する事項、中華民国及び満
州国の軍事、国勢、外交、兵要地理の調査及び情勢
判断に関する事項、測量、地図調達、兵要気象調査
の一般に関する事項
(13名)

大本営陸軍部(参謀本部第2部含む)の人員は、下士
官、判任文官、嘱託等を除き、計約70名であり、大
使館付き武官等は30名でした。

英米と戦争しているにもかかわらず、第6課はアフ
リカや南方諸国も担当するなど、人員が特段に多く
充当されているわけではなく、5課(ソ連)、7課
(支那)にもかなりの人員を割いています。


▼科学諜報(特殊情報)情報収集組織

参謀本部の定員外で著しく人数が増えていくのが、
「科学諜報」を担当する班です。科学諜報とは、現
在で言う「通信情報」のことです。

陸軍では、敵の通信を傍受したものはすべて「特情」
と呼ばれていましたが、その中でも暗号解読による
ものを「A情」、音声傍受を「B情」、通信調査や
方位測定によるものを「C情」と称していました。

日本軍の通信情報能力については、第2次世界大戦
後日本のインテリジェンスを調査していた米陸軍情
報局(MIS)が、「日本は米英の高度暗号を解読でき
ずに終わっている」などと報告していたため、その
低い評価が通説になっていました。

しかし、近年の研究で必ずしもそうではないこと、
むしろ英米国は日本の暗号解読能力を脅威と捉えて
いた事実が明らかになってきています。

科学諜報に関する流れをまとめるとシベリア出兵後
に作られた、第3部7課(通信課)暗号班は、1930(昭
和5)年に第2部第5課5班(暗号班)となり、暗号解
読と作成の両任務を担当してきました。

ところが暗号の作成については、1937(昭和12)年3
月頃に第3部第9課(通信課)に移されました。さら
に、同4月1日からは、第2部の暗号班は第8班と
なり、1939(昭和14)年には、第18班となりました。
18班長は第2部長が兼務しましたが、班員は参謀総
長の直轄とされました。

1940(昭和15)年8月に至って、第2部長の兼務が廃
止され、初代の第18班長には林太平大佐が任じられ
ました。

1943(昭和18)年7月になると、第18班は中央特殊情
報部として独立し、参謀総長の隷下にあって終戦ま
で通信情報に任じました。

のちに林太平氏は「元来、解読と作成とは密接な関
係があって之を分離しないことが本則であるに拘ら
ずこのようなことになったのは、一種の勢力争いか
ら生じたものである」と述懐しています。

このような点から考えると、参謀本部の様々な改編
や所掌の変更も、純粋に組織的、合理的な要求に基
づく編成ではなかったことを示唆しています。

それでも、18班の時(1939年)の人員は、約160名で
したが、中央特殊情報部(1944年)になると人員が
522名、1945(昭和20)年5月には1,633名にも増員さ
れており、要員の増加に並々ならぬ努力の跡がみら
れます。人員だけ見ても、戦後の米軍の低い評価と
は異なっていたのではないかと推察されます 。

次回以降、人的情報収集を担当した駐在武官等の活
動についてまとめたいと思います。



(つづく)

 


(ひぐち・けいすけ)



◆最新刊
『ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っているか』
https://amzn.to/3SxjoWJ


樋口さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。

https://okigunnji.com/url/7/




【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)



▼きょうの記事への、あなたの感想や疑問・質問、
ご意見をここからお知らせください。
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/

-------------------------------
松下村塾から沢山の「天才」が生まれた秘密
http://okigunnji.com/url/208/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
あなたのペットが危険です
http://okigunnji.com/url/210/
-------------------------------------------
Audible会員なら、数多くのオーディオブック、
ポッドキャスト、限定コンテンツを月額1,500円で
好きなだけ聴き放題できます。まずは30日間の
無料体験を始めませんか? 
https://amzn.to/42ZaOnl
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-新感覚 教育メディア-
哲學ツーリズム 光を観る旅
http://okigunnji.com/url/187/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
三井・三菱財閥をわずか一代で超えた男の経営學
↓↓
http://okigunnji.com/url/80/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)

メインサイト:
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------

購読解除はこちらで
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com


---------------------------

投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権は
メールマガジン「軍事情報」発行人に帰
属します。

Copyright(c) 2000-2024 Gunjijouhou.All rights reserved