配信日時 2024/10/24 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (475)】陸自の演習場整備(3)      渡邉陽子(ライター)

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こんばんは、エンリケです。

「ライター・渡邉陽子のコラム」。
こんかいは第475号。

「陸自の演習場整備」の3回目です。

今回渡邉さんが描き出すのは、
整備期間中の部隊の1日を通して見える、
自衛隊のリアルな日常です。

整備の合間に行われる訓練や、隊員同士
のコミュニケーション、さらには厳しい
環境下での工夫が詰まった生活ぶりが
詳細に描かれています。

特に、老朽化した隊舎や、野外入浴セット
といった現場ならではのエピソードが
興味深いです。

この記事を通じて、普段表に出ない
自衛隊の裏側や、彼らが直面している
現実を垣間見ることができるでしょう。

ぜひお楽しみください。


さっそくどうぞ。


エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (475)』

 陸自の演習場整備(3)

 


  渡邉陽子(ライター)

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こんばんは。渡邉陽子です。先週のごあいさつで「厳冬の北海道の
演習場が恋しい」と書きましたが、先日、北海道の取材に何度も一
緒に通った仕事仲間のひとりと会った際、「北海道の取材行きたい
よねって○○さん(同じく一緒に通った仲間)ともよく話す」と言
われ、私だけじゃなかったとうれしくなりました。原稿を書くより
取材が好きです。特に一時は隔月で通っていた北海道には、おのず
と思い入れも強くなります。


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■陸自の演習場整備(3)

先週、コラムの最後に整備期間中の1日の流れをざっくりとご紹介
しましたが、1700の終礼後の過ごし方に夕食や入浴のほか、「零細
時間を活用した訓練等」とありました。
この訓練は各中隊で計画し、格闘訓練やARM‘S訓練等が中心で
すが、WAPC(96式装輪装甲車)の操縦訓練、距離判定訓練等が
行なわれることもあり、連隊長の意向がかなり反映されます。ただ
しあくまでも演習場整備が最優先事項なので、訓練が実施される場
合もおそらく隊員たちに負荷がかかりすぎない計画となっているで
しょう。ちなみに令和4年度春季演習場定期整備の際には、最後に
整備が完了したばかりの射撃訓練場においてWAPCの76ミリ発煙弾
発射機による発煙弾射撃及び手りゅう弾投てき訓練という連隊射撃
訓練を実施したそうです。

また、零細時間は部下の心情把握ができる貴重な時間でもあるため、
幹部が曹士の部下とコミュニケーションを図ったり(死語になりつ
つありますが要は飲ミュニケーションですね)、階級ごとに集まり
各種問題点を話し合ったりすることもあります。数年前には、幹部
が部隊を指揮する上で身につけているべき常識等の試験を行なった
こともあったといいます。

課業開始時と終了時には駐屯地と同様、らっぱ吹奏に合わせ国旗を
掲揚降下します。
宿営地は演習場外の鬼志別地区にあり、かまぼこ型の隊舎が並びま
す。見るからに「え、使ってるの? 使えるの?」という年代物で
すが、実際老朽化が進み、中には床が抜けたり天井の一部が崩れ落
ちたりと使用できないものも。使用している隊舎も危険ではと心配
になります。

隊舎に収容できない部隊は6人用天幕を利用します。
天幕の上に積雪寒冷地ならではの偽装用の白色布を屋根のように張
っているのは防寒のためで、この1枚があるだけで天幕内のストー
ブで暖まった空気が逃げず、雪が降った場合も天幕に直接積もらな
いので寒さが防げるそうです。案内してくれた広報担当者によると、
白色布1枚で寒さが「まったく違います」とのことだったのであな
どれないですね。
一方、対面の天幕にはこの布が張られていません。そちらの中隊
(または小隊)はこの防寒効果を知らないのか、あるいは知ってい
てもあえて張らなかったのか、その辺りは不明です。

浴場はあるもののかなり狭く一度に入れる人数が限られているため、
後方支援部隊から入浴場の開設支援を受けます。
この野外入浴セットは災害派遣等でも活躍しているものです。お湯
の温度は43度に設定されており少々熱いのではと思いますが、追い
炊き機能がないので最初は熱めくらいでちょうどいいのだとか。隊
員たちには古くて狭い浴場よりシャワーも10台あり一度に25名ほど
利用できる野外入浴セットのほうが人気で、入浴時間は部隊ごとに
決められていますが、それでも混雑時にはマイシャンプーセットを
抱えた隊員たちが行列を作って「風呂待ち」をします。なかなかレ
アな光景です。


(つづく)


(わたなべ・ようこ)



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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。

2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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2022年、
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