配信日時 2024/10/16 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(83)】自衛隊砲兵史(29) 敵補給路を潰せ!     荒木 肇

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当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

『自衛隊警務隊逮捕術』
 荒木肇(著)
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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第83回目。

きょうも充実した内容です。

ではさっそくどうぞ。

エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(83)

自衛隊砲兵史(29) 敵補給路を潰せ!


荒木 肇

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▼ゲリラ戦の効果

 19世紀の初め、ナポレオン率いるフランス軍は
スペインに侵入します。スペイン軍はたまらず、首
都マドリードをたちまちのうちに陥落させました。
英国兵もほうほうのていで脱出します。国土を席巻
したフランス軍は正規軍相手には常勝を誇りました
が、一般民衆が抵抗するゲリラ戦には悩まされます。

 3年後の1812年のロシア遠征になっても、ス
ペインには20万のフランス軍が釘づけにされてい
ました。その武装した民衆も参加するゲリラ戦を相
手にする恐ろしさは、ナポレオンの幕僚だった有名
なジョミニも『戦争概論』で書いています。

 ただし、正規の軍人でない者が、武装して軍隊や
軍人に加害行為をすることは、陸戦条約で厳重に禁
じられていました。武器の携帯を明らかにすること、
所属を示す被服や徽章を着けること、指揮官がいる
ことなどが「違反行為」から免れる方法の1つです。
もし、勝手に武装した市民が捕われると現場で射殺
されることもあり、捕虜にもなれません。

 そこで、木元将補は作品の中で、グループのリー
ダーに次のように語らせています。

行動の目的、ソ連兵に敵に囲まれているという恐怖
心を抱かせる。
具体的な目標、単独で行動するソ連兵を猟銃で仕留
める。
行動要領、夜の闇にまぎれてペアで行動し、一撃後
は速やかに離脱する。
行動手段、使用する武器は各人の猟銃とする。
保全、存在を敵および住民に知られないようにする。

 彼らの手にする猟銃は「豊和M1500ヘビー・
バレル」という国産の害獣駆除に使われるライフル
です。銃身長は610ミリ、7.62ミリ弾を5発
装填できる命中精度の高いボルト・アクション・ラ
イフルとなっています。森や茂みの中でも取り扱い
のしやすい、照星照門がないオープン・サイトで、
当時警察でも2脚を付けて狙撃に使っていました。

 彼ら有志は2人で組んで狙撃を実行します。物資
集積所などで単独の歩哨を次々と100メートル以
内で倒していきました。

▼第25戦闘団遊撃隊の行動

 第25戦闘団長は前から5人1組、5個チームか
らなる遊撃隊を編成していました。隊長はレンジャ
ー課程教官の経験をもつ1等陸尉、合計28名でし
た。チームは連隊でレンジャー訓練を修了した若手
の3曹を集め、指揮官は連隊レンジャー教官の1曹、
2曹が充てられました。

 チームの装備は、84ミリ・カール・グスタフ無
反動砲1門、62式機関銃1挺、64式小銃3挺で
す。さらに新装備のカール・グスタフが交付される
のと引き換えに返納予定だった89ミリ・ロケット
・ランチャーも増加装備としてもっていました。襲
撃目標は枝幸港から浜頓別へ弾薬を輸送するトラッ
ク群と護衛役のBMP-1、BTR-60を想定して
います。

 枝幸港から浜頓別まで、およそ30キロ、中間に
神威岬(かむいざき)の難所があります。

▼補給部隊への襲撃

 7月10日、オホーツク正面侵攻3日目、ソ連軍
の戦闘団主力陣地への攻撃も火力の陰りが見えます。
この日の午後、枝幸港に大型補給船が接岸し、大量
の補給品を揚陸しました。これらの補給品を輸送す
るために40輌ものトラックが浜頓別から枝幸港に
集まってきています。

 午後6時ころ、遊撃隊に枝幸西方山地の監視哨か
ら無線連絡が入りました。積み荷は弾薬と思われる
こと、トラックに積載を始め、搭載完了後に梯隊を
組んで浜頓別方面に向かうだろうとのことです。遊
撃隊長は、梯隊の編成、護衛車輌の車種、数輌、配
置について判明次第の連絡を要求します。5個の遊
撃チームには全力で輸送車輌を襲撃すること、所定
の位置に前進し、待機することを命じます。

 各チームは無線で応答し、遊撃拠点から指定され
た襲撃待機位置に向かいました。カール・グスタフ
やロケット・ランチャーなどは弾薬といっしょに襲
撃地の近所にすでに事前集積してあります。レンジ
ャーたちは予行を積み重ねている、勝手知ったる斜
内山地を駆け下りていきました。

 午後7時30分、監視哨からは軍用トラックの群
れが埠頭から出発したことが通報されます。梯隊は
2つに分かれ、浜頓別方向と歌登(うたのぼり)方
向に向かうことが明らかになりました。浜頓別に向
かう車輌梯隊の編成は、先頭に装輪式装甲車(BT
R-60)が2輌、大型トラックが31輌、最後尾に
装甲車1輌というものです。9輌のトラックは歌登
方向に進みます。

 「1945(ヒトキュウヨンゴ・午後7時45分)、
車輌梯隊の先頭が目梨泊の市街地に入った」という
連絡が入り、隊長は各チーム長に射撃開始を統制さ
せました。8時ちょうどに先頭の装甲車が神威岬か
ら眺める隊長の視野に入ります。

 グループ・ワン、S2曹以下5名は斜内集落の東、
神威岬から約800メートル西の線路わきで、各自
が30メートル間隔で横一線に展開していました。
国道までは50メートル、前方にオホーツク海、背
後には斜内山の急な崖が迫っています。携行してい
る対装甲車武器は、カール・グスタフ(携弾は4発)
と89ミリ・ロケット・ランチャー(同じく4発)
です。

 2輌の護衛装輪装甲車をまず撃破する、トラック
はその後で良いと班長は判断します。成形炸薬弾を
装填したロケット・ランチャーは2人の隊員が構え
ていました。8時10分頃、神威岬突端に装甲車が
黒い塊になって姿を現します。時速30キロほどで
近づいてきました。車長と乗員も、いずれも隘路
(あいろ)を無事に抜けたことで安心しているのか
ハッチを開けてのんびりしています。

 「射撃よーい、目標装甲車、各個に撃て」という
号令が班長からすでにかかっていました。

 カール・グスタフの射手は、車体前部に照準を合
わせて引き金を引きます。弾はすぐに命中、装甲車
は十数メートル走って、前のめりに急停車しました。
後続の装甲車が急ブレーキをかけるのと同時に、ロ
ケット・ランチャーが弾を吐き出します。2輌とも
たちまち炎上しましたが、下車して反撃する武装兵
の姿は見えません。とどめに1発ずつ撃ちこまれた
ロケット弾の効果でしょうか。

 班はこのあと、大型トラック群を襲撃します。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


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