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おはようございます、エンリケです。

『日米史料による特攻作戦全史』の編訳者・小田部
さんがお届けする短期連載「特攻作戦開始から８０
年を迎えて」の第３回です。


特攻隊の真実に迫る貴重な考察が続きます。
ぜひ最後までお読みください。

千玄室大宗匠のような方に、末長く生きて
いただきたきたいですね！

エンリケ



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短期連載・特攻作戦開始から８０年を迎えて（３）

多くの特攻戦死者を出した「学徒出陣」


　小田部哲哉


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□はじめに

９月22日、鹿児島県鹿屋市の串良海軍航空基地跡の
串良平和公園で、裏千家の千玄室大宗匠（101歳）ほ
かが参列して、新たに建立された徳島空の徳島白菊
特攻隊慰霊之碑の除幕式が行なわれました。

続いて鹿屋市主催の旧海軍航空隊串良基地出撃戦没
者追悼式が開催され、千玄室大宗匠により平和祈念
献茶が行なわれました。千玄室大宗匠は第14期海軍
飛行科予備学生の出身で、土浦空で訓練を受け、徳
島空に配属されました。白菊特攻隊員を志願しまし
たが、出撃されることなく終戦を迎えました。

今回はこの海軍飛行科予備学生と陸軍特別操縦見習
士官の話をします。


▼陸軍特別操縦見習士官と海軍飛行科予備学生

沖縄戦では昭和18年から始まった学徒出陣で兵役に
就いた者とその一つ前のクラスの初級士官から多く
の特攻戦死者を出しました。陸軍の特別操縦見習士
官（特操）と海軍の飛行科予備学生です。いずれも
平時であれば教育、訓練終了後に予備役少尉になり
軍務には就かないのですが、戦時中のためすぐに現
役として軍務に就きました。

陸軍特操の１期生は昭和18年に採用されて、４期生
まで続きました。１期生は学徒出陣の直前に採用さ
れていますので、学徒出陣のクラスは２期生（計画
では約1,800名。実績は不明）と３期生（計画、実績
とも不明）になります。

一方、海軍飛行科予備学生の学徒出陣のクラスは14
期生で、操縦が約1,100名、偵察、要務を含めると約
3,300名でした。このほかに予備生徒１期生もいまし
た。予備学生は大学、高等専門学校などで在学中、
予備生徒は旧制高等学校、大学予科などで在学中の
者でした。

学徒出陣のクラスはそれまでとは異なり、徴兵され
て入営、入団しました。

陸軍の特操の要員は地元の連隊などに出頭しました。
特操は操縦者のコースだけで、士官になることが前
提だったため、伍長の階級から始まりました。

海軍に入団した学徒出陣者は海兵団で約２か月海軍
軍人としての初等教育を受けました。特操と異なり、
この間は二等兵で、ジョンベラと呼ばれた水兵服を
着ていました。海軍の歴史の中で士官になる者が兵
として入団した唯一の世代でした。その後、予備学
生試験に合格して予備学生になった者は約9,000名
（15期生を含む）でした。飛行科予備学生は操縦、
偵察、飛行要務の専修別に訓練を受けました。操縦、
偵察の両専修を併せて「飛行専修」、飛行要務の専
修を「飛行要務専修」と言います。

飛行要務という用語に馴染みがないでしょうが、作
戦に関する司令部業務、スタッフ業務のことです。
この業務は、従来若手搭乗員が行なっていました。
しかし、搭乗員を飛行に専念させるため、航空の知
識を持った飛行要務士官がこれを担当することにな
りました。

予備学生から士官に任官した者の足跡は資料、文献
に残されていますが、予備学生試験に不合格になり、
兵のまま軍務に就いた者の足跡をまとめたものはほ
とんどありません。学業半ばで徴兵され、士官にな
れると思っていたにもかかわらず、兵として従軍す
ることになった者の落胆は計り知れないでしょう。

海兵団でともに教育、訓練を受けていても、実戦部
隊で士官になれなかった者と士官になった者が会っ
た場合、気まずい雰囲気になったといいます。

陸海軍とも教育訓練期間はほぼ1年強でした。特操、
予備学生ともに教育、訓練を終了すると少尉に任官
しました。特操および操縦、偵察専修の飛行専修予
備学生出身者の多くが沖縄戦で戦死しました。海軍
の飛行要務専修予備学生出身者はこれよりも早くフ
ィリッピンなどの戦地に赴き、戦死した方も多くい
ました。

このほかにも陸軍航空士官学校、海軍兵学校の出身
者以外の者が士官、予備役士官として操縦者、搭乗
員になるコースがありましたが、それは省略します。


小田部哲哉




（つづく）



（おたべ・てつや）



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【著者紹介】

小田部哲哉（おたべ・てつや）
1947年生まれ。三菱重工業（株）の航空機部門で勤
務。退職後は月刊誌『エアワールド』に「アメリカ
の航空博物館訪問記」を、月刊誌『航空情報』に
「アメリカ海兵航空隊の歴史」をそれぞれ連載した
ほか、ヘリコプター関連記事を月刊誌『Jウイング』
に掲載した。母方の伯父が第14期海軍飛行専修予備
学生出身の神雷爆戦隊員として鹿屋から出撃、未帰
還となったことから航空機や航空戦史に関心を寄せ
ていた。訳書『米軍から見た沖縄特攻作戦─カミカ
ゼvs.米戦闘機、レーダー・ピケット艦』（ロビン・
リエリー著）。


原著者略歴
Robin L. Rielly（ロビン・L・リエリー）
1942年生まれ。沖縄戦当時、父親がLCS(L)-61に乗艦
していたことから、USS LCS(L) 1-130協会で約15年
間歴史研究を行なう。1962〜63年、海兵隊員として
厚木で勤務。シートン・ホール大学修士課程卒業。
ニュージャージー州の高校の優等生特別クラスで米
国史、国際関係論を32年間教え、2000年退職。本書
を含め日本の特攻隊、米海軍揚陸作戦舟艇関係の本
を５冊執筆。『Kamikaze, Corsairs, and Picket S
hips Okinawa,1945』『Mighty Midgets At War』
『American Amphibious Gunboats in World War II』
『Kamikaze Patrol』。空手に関する著書も多く、I
nternational Shotokan Karate Federationで技術副
委員長を務めるかたわら自ら空手を教えている。現
在８段。





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