配信日時 2024/10/02 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(81)】自衛隊砲兵史(27) 北方総監の企図     荒木 肇

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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第81回目。

今日も読み甲斐ある記事が続きます。

さっそくどうぞ。

エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(81)

自衛隊砲兵史(27) 北方総監の企図


荒木 肇

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□自民党総裁選終わる

 これからの数年のわが国の動きを決めることにな
るであろう自民党の総裁選が終わりました。いろい
ろなお考えがあると思いますが、もともと政治につ
いては素人のわたしも自分の思いを語らせていただ
きます。

 まず、第一に女性の最高指揮官はちょっとなぁ・
・・という気分が自民党員や議員の方々にあったの
ではないかと感じています。地方の党員票が石破さ
んに多く、高市さんは大都市の党員に支持者が多か
ったそうです。これはやはり、地方の保守の方々、
とりも直さず地域の指導層の方々には女性指導者は
受け入れ難いという実態があるのではありませんか。

次に高市さんが靖国参拝を公言していることも恐れ
た方々がいるのでしょう。いわゆる親中国や親韓国
の方々の存在です。わが国は中国とは経済的に強い
つながりがあります。企業の方々にとっては、中国
との関係はできるだけうまくやって欲しいという思
いがあるはずです。

 そういうことでは、石破さんは中国や韓国の受け
が良いから、決選投票の結果に胸をなでおろした方
々が多かっただろうと感じています。しかし、その
方々は気付いているのか、あるいは知っていて目先
だけを見ているのかと心配になってきます。という
のは、総選挙になると、いわゆる浮動票が動きます。

 勝手な予想をしますが、自民党は議席を減らすで
しょう。でも、一部の人が期待しているような「も
う一度、民主党政治に期待してみよう」、「新しい
立憲民主党に任せてみよう」というような事態には
なりません。特定の政党を支持しない浮動票は、も
っと厳しい動きを見せるでしょう。わたしの周りで
も、党員ではありませんが、「もう自民党には投票
しない」という人が多いです。だからといって立民
に投票するか、これも疑問でしょう。

 選挙の顔が高市では勝てない、でも石破なら勝て
るというのが議員の方々の思いだったのですね。ま
た、新しい選対委員長が小泉氏とは・・・、選挙に
敗れたら彼のせいにするという石破氏らしいやり方
が透けて見えるのは私だけでしょうか。小泉氏を支
持した方々はしばらく冷や飯食いです。政治の世界
は厳しいです。ただ、菅元総理は怪しい動きをして
いましたが。


▼戦争指導はどうするか?

 防衛出動命令が出たら作戦部隊指揮官は北部方面
総監になります。では、大所高所から見た戦争指導
は誰がするのでしょうか。やはり英国のように戦時
内閣をつくり、統合幕僚会議議長(制服)もメンバ
ーに入れて政府の戦争指導方針を決定し、北方総監
をコントロールするということになります。

 元来、専守防衛というのは国土を戦場にするとい
うことです。憲法9条に書かれていることを素直に
読めば、もし敵の武力侵攻があったら「他国の善意
を信じてきたことを後悔しながら座して死ね」とい
うことになります。そうさせないために政治がある
わけですが、侵攻するかどうかは相手の腹の中にあ
ることです。


侵攻意思の抑止に努めるのが政治家の役割ですが、
その方法は多様でしょう。武装組織を持つこと、そ
の装備・訓練・教育を優良にすることも選ぶべき方
法です。しかし、今回の仮想戦記が描いているのは、
その抑止力を有効にできなかった政府の失態の結果
となります。

▼北方総監の作戦目的と具体的目標

 「侵攻した極東ソ連軍の国土外への撃退」、これ
が北方総監の示した作戦目的です。具体的な目標は、
第1期・侵攻部隊の阻止、第2期・戦力の集中、第
3期・決戦態勢の確立、第4期・最終決戦により侵
攻部隊を撃滅、というように時期区分がされます。

 第1期、侵攻したソ連軍を阻止するには、第2師
団を崩壊させてはならないのです。7師団の一部、
第11戦闘団や名寄の高射特科群を2師団に配属し
ていますが、加えて特科団の30型ロケット大隊
(千歳、美唄)・上富良野の重砲大隊・北恵庭の1
~2個戦車群を
現地に到着後に直ちに戦闘加入させるようにします。

 戦力の逐次投入は悪手とされますが、奇襲に等し
い敵軍との戦闘です。いわゆる「不期遭遇戦」です
からそれも仕方のないことです。11師団の1個普
通科連隊(滝川)の投入も準備します。第2師団に
は10日間程度頑張ってもらうことになり、空自の
戦闘機部隊の掩護も必須です。

 第2期は戦力の集中を行ないます。第7師団と戦
車団がすぐに動かせる部隊です。九州の第8師団と、
静岡県の富士教導団が戦場に向かい、名古屋の第1
0師団、山形の第6師団がその準備中でした。こう
した行動を当時は「北転」(ほくてん)と言いまし
た。また、富士教導団は富士学校の教育研究支援部
隊です。普通科教導連隊、特科教導隊、戦車教導隊、
教育支援施設大隊などをもつ、いわゆるコンバイン
・ブリゲードという旅団規模の戦力が高い部隊でし
た。

 第2師団には少なくとも中川・天北峠・咲来峠を
確保させ、この間に出来る限りの戦力を集中させな
ければなりません。この戦力の集中は、とても大き
な輸送作戦であり、当時の国鉄、私鉄、民間輸送業
者の全面的な協力が必要不可欠でした。これがほん
とうの戦争と、頭の中だけの戦略ゲームなどとの違
いです。

 第3期は第7師団と戦車団の一部で、オホーツク
海正面(天北峠・咲来峠)から突出して鬼志別(お
にしべつ)演習場付近を奪回します。同演習場は宗
谷地区最北端にあり、猿払(さるふつ)村にありま
す。朝鮮戦争時のスレッジ&ハンマー作戦を参考に
して、幌別付近で侵攻部隊を阻止し拘束(スレッジ)
し、オホーツク海正面に突進する部隊をハンマーに
たとえたものです。

 第4期は、スレッジ&ハンマー作戦が完成した後
に、北転した師団等の総力を挙げて最終決戦を行な
い、国土を完全に回復します。ただし、侵攻したソ
連軍が、無条件で国外に撤退することに同意すれば、
最終決戦を行なわない場合もあり得ます。中途半端
な政治的な妥協を拒み、あくまでも国土・主権の完
全な回復を目指します。

 このように説明を受けると、いかに陸自が信頼に
足る組織であるかが分かります。同時に、素人や部
外者がなかなか想像も出来ないものが作戦であり、
軍隊の行動が理解できませんか。

▼兵力の控置と兵站基盤

 さて、道北地区だけを見ていれば良いのでしょう
か。他にソ連軍が侵攻をしそうなところは、石狩湾
あるいは道東計根別(けねべつ)地区でした。石狩
湾は小樽を始めとして石狩川沿いに発達した北海道
の中心地区に近いのです。また、道東計根別地区は
中標津町や別海町付近になります。

 そこで札幌に司令部を置く第11師団を道央地区
に、第5師団を矢臼別演習場に予備として控置しな
くてはなりません。また物資の供給には北海道地区
補給処(島松)に兵站司令部を置いて、第一線部隊
の支援、内地からの増援部隊の受け入れ、部隊・補
給品等の輸送等を一元的に統制することになります。

 そうして次回は、いよいよソ連軍が枝幸(宗谷支
庁の南東端・えさし)港に侵攻します。




(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


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