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「我々がより強い敵を演じ、模擬することで空自戦
闘機部隊、警戒管制部隊が強くなると信じています」
(第6代飛行教導群司令 小城毅泰1佐)
「我々教導隊がいるからこそ、戦闘機部隊の操縦
者にいい訓練をさせて、戦いの本質を教えることが
できます」(教導隊長 本村祐貴2佐)
「これほど真剣に航空機による戦闘行為と防衛行
為に関して、突き詰めている部隊はほかにないと自
負しています。ほかの戦闘機部隊はさまざまな任務
を持っていますが、我々AGRは実相的な戦闘、そ
ういった環境下を常に考えて訓練しているのは我々
AGRしかいないでしょうね」(飛行班長 外園光一
郎3佐)
『赤い翼 空自アグレッサー─飛行教導隊 強さの秘密─』空自最強の戦闘機部隊のすべて!
小峯隆生著/柿谷哲也撮影
判型・ページ数:四六判424ページ(カラー口絵16ページ)
定価:1800円+税
発行日 :2024.4
定価 ¥1800+税
発行:並木書房
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こんにちは、エンリケです。
小峰隆生さんの「翼」シリーズ最新作は、空自飛行
教導群をテーマにしています。
1981年に設立された飛行教導隊(現・飛行教導
群)の創設から40年以上にわたる歴史を描いていま
す。「強くなければ、教えられない」という哲学の
もと、日本最強の戦闘機パイロットが集う場として
知られている部隊です。自らを「アグレッサー(侵
略者)」と称し、他の部隊に対し「敵役」を演じる
彼らの日々の訓練と戦いに焦点を当てています。
この部隊の歴史は決して平坦なものではありません
でした。
数々の試練に直面し、墜落事故や新しい戦闘機への
機種転換など、多くの困難を乗り越えてきました。
波乱に満ちた40年以上の歩みと未来への展望を、当
事者たちの生々しい証言を通じて明らかにしていま
す。
著者はこの方
小峯隆生(こみね・たかお)
1959年神戸市生まれ。2001年9月から週刊「プレイボ
ーイ」の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史
に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。
著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)、『蘇る翼 F
-2B─津波被災からの復活』『永遠の翼F-4ファン
トム』『鷲の翼F-15戦闘機』『青の翼ブルーインパ
ルス』(並木書房)ほか多数。日本映画監督協会会
員。日本推理作家協会会員。元同志社大学嘱託講師、
筑波大学非常勤講師。
柿谷哲也(かきたに・てつや)
1966年横浜市生まれ。1990年から航空機使用事業で
航空写真担当。1997年から各国軍を取材するフリー
ランスの写真記者・航空写真家。撮影飛行時間約30
00時間。著書は『知られざる空母の秘密』(SBクリ
エイティブ)ほか多数。日本航空写真家協会会員。
日本航空ジャーナリスト協会会員。
まずは空自飛行教導群の紹介から始めましょう。
1981年に編成されたこの部隊は、戦闘機パイロット
の技量向上を目指しています。通称「アグレッサー
(侵略者)」として知られ、空自屈指の精鋭部隊と
されています。
アグレッサー部隊の起源はベトナム戦争に遡ります。
米軍が敵機との戦い方を教える「仮想敵部隊」を作
ったことがきっかけで、世界の主要な空軍にも同様
の部隊が生まれました。
本著では、創設時から現在までの歴史を知るOBたち
の証言や現役の群司令、隊員へのインタビューがま
とめられています。これはまさに「オーラル・ヒス
トリー」の名に値する貴重な記録です。内倉空幕長
も含まれたインタビュー相手の顔ぶれを見ても、著
者・小峯さんへの空自の信頼と本書がもつ高い価値
が伝わります。
目に見える航空戦力の重要性は言うまでもありませ
んが、その裏では目に見えない技量の向上が欠かせ
ません。実戦配備に日々従事する戦闘機部隊や各基
地を巡回し、最新の空戦技術を伝授する飛行教導群
がその役割を果たしています。両者が連携すること
で、わが国の空の安全が確保されるのです。
この新刊本は、空自のアグレッサー部隊「飛行教導
群」の興味深い歴史を探求した内容です。航空ファ
ンや軍事ファンにとっては必読の一冊ですが、航空
にあまり興味のない一般の読者にも価値があると感
じます。
なぜなら、読者は本書を通じて臨場感あふれる場面
に没頭し、パイロットたちの喜びや苦悩を共に感じ
取ることができるからです。また、飛行教導隊の世
界を五感で体験できる本著の描写は、読者の心に深
く訴えかけるでしょう。
この本が飛行教導群の興味深い物語を通じて、あな
たの心を捉えて話さないことは間違いありません。
では「本邦初と言って良いアグレッサー本」の中身
を見ていきましょう。
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はじめに(一部)
前著『青の翼 ブルーインパルス』(2022年)
のコンセプトは、「日本の空は空自が守り、日本人
の心はブルーインパルスが守る」だった。「日本人
の心」はブルーインパルスが守るとわかったが、
「日本の空」を守るには空自が強くなければならな
い。では、その強さはどこから生まれるのだろう。
元教導隊長の山田真史空将の言葉が脳裏によみが
えった。
「私らは、裏のブルーインパルスなんですよ」
確かにブルーインパルスはその技量を観衆に披露
することで次代の空自パイロットを勧誘する。飛行
教導隊(現・飛行教導群)は全国の戦闘飛行隊を巡
回して、空戦テクニックを教え、強化する。まさに
仮想敵機部隊である「アグレッサー部隊」が、空自
の戦闘機パイロットたちを育てているのだ。
残念ながら、アグレッサー部隊が実際に教導する
様子を見ることはむずかしい。基地の柵越しから離
着陸する戦闘機を見ることができても、教導隊のブ
リーフィングや列線の様子などは取材できないだろ
うとあきらめていた。
2023年1月24日、インド空軍のSu‐30戦闘
機が茨城県の百里基地に飛来し、同基地所属の第3
飛行隊のF‐2戦闘機と共同訓練が始まるという。
しかも、そこに4機の教導隊機も参加する……。
教導隊を列線で取材できるチャンスが筆者にめぐ
ってきた。これまでの「翼シリーズ」でつねに取材
を一緒にしてきたカメラマンの柿谷哲也氏とともに
百里基地に向かった。(中略)
筆者が、飛行教導隊の創設から現在の飛行教導群
までを一冊の本にすると伝えると、本村教導隊長の
顔が引き締まった。
「今年の夏頃、部隊に取材に行く予定で、いま調整
中です」
これまで誰も書いたことのない飛行教導群「アグ
レッサー部隊」の全歴史を明らかにしようと思う。
これまで四冊の「翼シリーズ」を世に出したが、五
冊目となる本書はまさに空自の本丸に乗り込むこと
に等しい。
ここからアグレッサー部隊の歴史をたどる旅が始
まる。
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目 次
はじめに 1
飛行教導隊/飛行教導群小史 20
第1部 栄光の教導隊 23
第1章 教導隊の基礎を作った男──増田直之
24
教導隊の根っこにある精神/F‐104との出会い
/今につながる教導隊のスタイルを確立/米海兵隊
F‐4部隊を納得させた最強コンビ
第2章 T‐2 AGRのエース──酒井一秀 3
8
エースの血脈をつなぐAGR/F‐104の最後を
見届ける/「赤い翼」の誕生の瞬間/「F‐15を何
度か追い詰めたよ」/四国沖の日米決戦/教導隊の
恐ろしさ/未来のAGR/「壮絶T‐2教導隊」
第3章 AGRを知り尽くした男──神内裕明
62
AGRに計四回勤務/それでダメなら仕方ないとい
うタイプ/教導隊のすごさを思い知らせる/教導隊
の根っこにある精神/理想的な教導隊と飛行部隊の
関係とは?/飛行教導隊司令の役割/F‐16を全機
撃墜/意見の違いを受け入れる/次はF‐35Aステ
ルス機か?
第4章 大事なことはすべてAGRで学んだ──
山田真史 90
第一印象は「ものすごく怖い」/ヘリパイ希望から
ファイターへ/戦闘機の面白さに目覚める/「AG
Rに行こうなんて絶対に思わない」/ウェポンスク
ールで教導隊と訓練/「こいつなら仲間になれる」
/教導隊初日/若手メンバーだけで戦技を開発/第
306飛行隊長へ/再びAGRへ/教導隊と飛行隊
の真剣勝負/叶わなかった願い
第5章 AGRに捧げたパイロット人生──揖斐
兼久 126
タックネームは「アイビー」/AGRからの誘い/
「教導隊の漬け物石」/AGRに捧げた戦闘機パイ
ロット人生
第6章 素晴らしきAGRでの日々──西小路友
康 138
アイビーの推薦で戦技係長へ/サイコロがダイスに
なった日/幕僚経験でわかった指揮官のすごさ
第7章 最強のアグレッサー部隊 151
飛行教導群の組織/教導隊が使用したT‐2練習機
/教導隊が使用するF‐15戦闘機/飛行教導訓練の
実際/教導のルーツはアメリカにあった/アグレッ
サー・パイロットを維持する意味
第2部 教導隊復活の歴史 173
第8章 伝説の天才パイロット──森垣英佐 174
知られざる教導隊の”闇の歴史”/森垣さんがAG
Rに呼ばれた理由/教導隊は実戦のつもりでかかっ
ていく/教導隊がやられる時もある。そんな時は…
…/複座は空戦を強くする/百発射撃して92発命中
第9章 最強の教導隊2番機──山本忠夫 201
おじさんの跡を継いで戦闘機乗りへ/教導隊で徹底
的に鍛えられた/教導隊流「空戦術の極意」/失わ
れた翼/第三の事故/T‐2からF‐15教導隊へ/
教導隊はなくならない
第10章 F‐15教導隊の基礎を作った男──西垣
義治 224
『教導隊秘伝の書』/西垣さん発案の機動解析「D
BSS」/西垣グリップ
第11章 それでも怖い教導隊──竹中博史 235
「上から目線」の教導隊は嫌いだった/「わざと負
けたら、教導にならないですよ」/竹中さんが感じ
た教導の限界
第3部 空自を支える飛行教導群 249
第12章 飛行教導群に期待すること──内倉浩昭
空幕長 250
「諦めた時が負ける時だ」/畏敬される存在になっ
て欲しい
第13章 ウェポンスクール教官──第306飛行隊 261
空自の未来戦力を鍛え上げる──高橋功嗣1尉 261
「AGRのオーラはすごかった」/AGRの好敵手
「ウェポンスクール」
空飛ぶカラス天狗──緒方翼1尉 272
ウェポンスクールで能力的に鍛えられた/AGRと
の勝率は半々?/「1対1のガチな空戦訓練をやり
たい」
第14章 飛行教導群(AGR)283
優しさ溢れる強面の飛行班長──外園光一郎3佐 283
我々がほぼ全勝する……/戦闘機パイロット最高の
逆転人生/論理的に納得させて教える/AGRの経
験値を部隊に役立てたい
常に理想を追求する──本村祐貴2佐 296
上智大学出身の新任教導隊長/常に理想を追求して
いる姿を見せる/インド空軍との共同訓練の結果
は?/変化し続けるAGR/F‐15DJの次の教導
機は?
変えるべきところは変えていく──小城毅泰1佐 312
レベルの違いを感じて、ひたすら訓練/日々前進し
て改善していく/未来の教導隊
終章 AGR「車と釣り」の真実──酒井さん再
び登場 325
「あとがき」に代えて
すべては『ガラスのジョー』から始まった 331
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いかがでしょうか?
おそらくあなたも感じたように、
アグレッサーを本格的に取り上げた一般本というこ
ともあってか、
非常に人気がある一冊です。
最後に言いたいのは、
なにより、インタビューが素晴らしい!
ということです。
思わず読みふけって時間を忘れるというのは
こういうことを言うのだなあ、と改めて感じてい
ます。
OBや隊員などひとりひとりの言葉を通じて読み手は
アグレッサーのなんたるかを「理解できる」のではな
く「つかんでいける」のです。
それが本著のみならず「翼」シリーズの一番いいとこ
ろだと思います。
売り切れになる前に、いますぐご入手ください。
オススメです。
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エンリケ
追伸
単純に「すげえ実力を持つ猛者がいるエリート部隊」
と見てしまいがちなアグレッサー(飛行教導群)で
すが、実はその歴史は犠牲と苦難に満ちており、印
象と現実に大きな違いがあることを本著を通じて強
く感じました。
荒木先生の「指揮官は語る」で軍事デビューした私にとって、
インタビューを主体とする軍事本は何より体に染み込みます。
それではまた読むとしましょう。
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