配信日時 2024/09/11 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(78) 自衛隊砲兵史(24)】なぜソ連軍はやってきた か? 荒木 肇

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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第78回目。

諜報員が多く所在する場所は、
昔から変わっていないようですね。

歴史から学び、同じ過ちを繰り返
さない賢い日本人になりませう。

さっそくどうぞ。

エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(78)

自衛隊砲兵史(24) なぜソ連軍はやってきた
か?


荒木 肇

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□ご挨拶

 報道統制と無関心。そんなことを思います。先日
は中国空軍、海軍の領空・領海侵犯があり、尖閣に
は依然として中国公船による領海への侵入行動があ
ります。しかし、それらを報じる、それらへの対応
を追求する報道はありません。どうやら意図的にマ
スコミも政府も情報を隠しているのでしょう。

 反体制、反権力を標榜とするマスコミも、「本来
の敵」と何らかの取引を行なっています。先日も元
外交官が一般世論の浅慮をたしなめる発言をしてい
ました。「経済的に密接な関係がある中国のメンツ
を潰すようなことは国益に反する」というのです。
遺憾であるという遺憾砲はすかさず撃つ、しかし外
務大臣が中国の大使を呼び付けるようなことは非礼
だともいいます。


 なるほど、とても大局的な見方を外務省はしてい
るのだ、さすが高度な判断をわが官僚や政治家はし
ている、任せておけば間違いはない・・・と感心す
る人はどれほどいるのでしょう。そうした上級な知
性のある国民は、少なくともわたしの周りにはおり
ません。わたしも、そうしたお仲間と一緒に低い知
性で判断しています。あまりに弱腰に過ぎるのでは
ないか。外務省の方々も、自民党議員にも軍事的な
知識・判断力があるのでしょうか。



▼見殺しにされる陸上自衛隊と住民たち


今週も元自衛官・木元寛明氏の著作『道北戦争19
79』をもとに話を進めます。

 空自三沢基地にある第3航空団、第3飛行隊には
F1支援戦闘機12機がありました。サポート・フ
ァイター、支援戦闘機とはなんでしょうか。何を支
援するのでしょう。実はF1戦闘機は列国がふつう
にアタッカー、攻撃機という機種です。「攻撃」な
どと名称は、憲法9条による専守防衛にはふさわし
くないという意見があり、マスコミもまた手ぐすね
ひいて難癖をつける用意をしていました。


そこで、地対艦ミサイルや爆弾を搭載はするけれど
も積極的な攻撃はしない、着上陸する敵輸送船や艦
船と戦う陸上部隊を支援するというのでしょう。そ
うした建て前で命名したのだと思います。東西冷戦、
ベトナム戦後、1970年代はそうした時代であり
ました。


稚内市民からは「空自の戦闘機はなぜ、飛んで来な
いのだ」、という声が出ています。陸上自衛隊部隊
でも腹を立てた隊員達から不満の声が上がります。
何のための航空自衛隊なのか、そうした世論が現地
では湧きあがっていました。


パイロットたちからも「なんで俺達は出てはならな
いのだ」という声があります。航空自衛隊の北部航
空方面隊司令官が許さないなら、「第3飛行隊だけ
でも行こうじゃないか」という気分も出てきました。
北海道の千歳基地から避退してきた第2航空団のF
4EJファントム戦闘機8機も直掩戦闘任務に就く
べく待機しています。攻撃機はどうしても純粋な戦
闘機より弱点がありました。それをソ連戦闘機から
守るべくファントムは戦うのです。

旭川の陸自第2師団に派遣されている空自連絡幹部
(ALO)からも、稚内上空のソ連軍機の乱舞が通
報されています。F1攻撃機の出撃要請が催促され
ていました。


▼航空総隊はのらりくらり

 三沢基地には方面隊指揮所(SOC)が開設され
ています。第3航空団司令は第3飛行隊長を帯同し
て北部航空方面隊司令官にF1とF4の出撃の許可
を申し入れました。ところが、司令官の歯切れはひ
どく悪いのです。東京都府中にある航空総隊司令部
に飛行許可を出して欲しいと言ったのですが、総隊
司令部はのらりくらりとするばかりで、どうやら政
治的な動きがあるらしいとのこと。

 どうやらソ連は戦場を北海道北部に限定するとい
う「制限戦争論」を日本政府に吹き込んでいたらし
い、そうした観測がありました。問題は憲法9条で
す。当時、政権与党や財界も含めた世論に、制限戦
争論は大きな影響力がありました。自衛官は主張し
ます。


自分たちの制限戦争は、ソ連の本土、沿海州やサハ
リンは攻撃しないということで、北海道はわが国の
国土です。領土、領海、領空には聖域はないはずだ
・・・それが現場の最前線に立つ自衛官たちの本音
でありました。


▼いかなる処分も敢えて受ける

 命令違反ということなら、あえてその処分を受け
ます、政治家や防衛庁内局の幹部達の保身のために
国民や第一線の隊員の期待は裏切れませんと航空団
司令は言いました。どうしてもだめなら目をつぶっ
てくれという司令に方面隊司令官は、自分の責任で
出撃を許可すると断言します。

 そのころ、六本木の防衛庁(日本陸軍の歩兵第1
聯隊跡地・檜町駐屯地)では、多くの黒塗りの公用
車やマスコミの車、テレビ局の中継車でごった返し
ていました。

 有事だから「中央指揮所」を設けるという声も出
ましたが、まだ机上プランです。当時の5号館の5
階には統合幕僚会議のオペレーションルームがあり
ましたが、報道陣は入ることができません。作戦に
関する情報をオープンすればソ連軍に利用され、現
地部隊に不利になるからです。それに報道陣の中に
はもちろんソ連や中国、北朝鮮の工作員が入ってい
ます。


こうしたことを木元将補は書かれていませんが、実
際、戦前のゾルゲ事件でも分かる通り、諜報員は多
くが報道機関に所属しています。リヒャルト・ゾル
ゲはモスクワの諜報機関から指示を受けた新聞記者
でした。ドイツ大使館武官にも信用されナチ党員の
資格を取り、大使館内部にも顧問として信頼を得て
いました。


同じように尾崎秀実(1901~44年)も帝国大
学出の優秀な新聞記者であり、満鉄調査部にも食い
込み、中国問題の専門家として政財界への出入りも
自由でした。ゾルゲと尾崎は、ソ連侵攻よりも南方
進出を行なうという重要情報をキャッチし、モスク
ワのスターリンの下へ送って、そのスパイとしての
役割を果たしました。興味深いのは彼が「日本人民
のためだ」という正義感を強くもっていたことでし
ょう。

実際、え、あの人がと思うような人物が敵性行動を
とっているのが当たり前です。ふだんからマスコミ
人は首相官邸や外務省、警察庁などの担当者たち同
士で連絡を取り合って情報交換をしています。政治
家や官僚たちの脇の甘さにつけ込むのも当然です。
どうもわたしも含めて、わが国民の意識はそういう
点では低いと思います。

次回は政治の世界の話と稚内の攻防を教えていただ
きましょう。




(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


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された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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