配信日時 2024/09/04 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(77)】自衛隊砲兵史(23) ソ連軍第2波の上陸     荒木肇

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当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
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にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第77回目。

〈なんというリアルな仮想戦記でしょう。〉

まったく同感です。


さっそくどうぞ。

エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(77)

自衛隊砲兵史(23) ソ連軍第2波の上陸


荒木 肇

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□ご挨拶

 皆さま、どうお過ごしでしょうか。大型台風と線
状降水帯、また各地で被害、亡くなられた、けがを
された方々の報道があります。たいへん悲しいこと
です。また、今年初めの能登半島地震の復旧も遅れ、
陸上自衛隊による生活支援(入浴等)もようやく終
わるとか報道されています。長い8カ月だったと県
民の方々の思いを考えると、停電だ、米が不足だな
どと言うわたしなど、文句を言える立場ではないで
しょう。

 また、ようやく調査が始まった兵庫県知事の問題
も、私たちの現在を考える大切な機会になります。
それは社会で生きてゆく上での自分の「保身」とい
うことです。誰にでも背景があり、守るべき暮らし
があります。それを危険にさらしてまで守るべき正
義があるのかということでしょう。


人事権をもつ圧倒的強者の行なう悪事を告発する、
たいへん勇気が要る正義に裏付けられた尊い行為で
すが、それを処分する権力者がいました。それを止
められなかった人、加担してしまった人もいます。

 ついでに言えば、正義は人の数と同じだけありま
す。単純な「シロクロ」話にするのは、ある傾向を
もつ方々の常態ですが、中国空軍、海軍による領空
・領海侵犯がありました。政権与党の総裁選が話題
になっている時です。おそらく、各候補の反応を確
かめているのではと思います。
 
 時を同じくして中国に超党派で出かけた国会議員
たちがいました。何を話し、何を聞かされてきたの
でしょうか。


▼ソ連軍第2波の上陸

 第1波の壊滅、その4時間後に第2波による上陸
が行なわれます。その前にはソ連軍機による空襲が
ありました。ミグ27対地攻撃機、それを護衛する
ミグ23戦闘機が稚内上空に進入し、陸自15榴、
MSSR、戦車や抜海の陣地を爆撃しました。ミグ
27は23ミリバルカン砲1門、空対地ミサイルA
S-7を4発搭載しています。抜海上空には空自の
戦闘機は姿を見せません。

 抜海の台上陣地は原型をとどめないほど艦砲射撃
が加えられました。第2波が海岸へ向かったとき、
これを射撃できたのは75式15自走榴と107ミ
リ重迫撃砲だけでした。なぜ、青森県三沢基地の空
自機は飛んで来ないのだろうか・・・前線の中隊長
は、はらわたが煮えくりかえっていました。

 三沢には第3航空団第3飛行隊のF1が12機い
たはずです。空対艦ミサイルと爆弾をもっています。
このとき、支援戦闘機とされていた対地攻撃機F1
が登場してくれたらと好き放題に艦砲射撃を行なう
ソ連軍艦と上陸用舟艇の群れを見ながら中隊長は腹
を立てていたのです。

▼反斜面陣地前縁のキルゾーン

 抜海の中隊長は台地に登ってくる敵を、その頂点
で迎え撃つつもりでした。台上に進出したPT76、
BMP-1、歩兵などに対して、62式機関銃、6
4式小銃、15榴、重迫、81ミリ迫撃砲、106
ミリ無反動砲、74式戦車、重MATなどを全力集
中発揮して、敵上陸部隊を撃滅しようと考えていま
した。しかし、その勝負は一回きりと分かっていま
す。

 9時30分ごろ、ソ連海軍歩兵大隊はPT76、
BMP-1を先頭に、台端から一気に中隊の陣地に
突入をしてきます。2か所の道路から台上に顔を出
した敵部隊は、左右に素早く展開して、横隊隊形を
維持したまま、わが中隊の陣地に迫りました。

 「突撃破砕射撃開始」、中隊長は命令を下します。
敵の突撃を破砕する、猛烈な全火力発揮の行動です。
指定された火力集中点はたちまち火炎と爆煙に包ま
れます。敵装甲車輌の大半が擱坐(かくざ)炎上し、
歩兵部隊は台端まで後退しました。擱坐とは撃破さ
れて、行動の自由を失うことです。乱戦になりまし
た。

 その乱戦の中で2発のサガ―・ミサイルが戦車小
隊長の搭乗する74式戦車の砲塔に命中します。戦
闘室内に火災が起きて弾薬が誘爆し、砲塔が吹き飛
びました。火災発生と同時に操縦手は車外に脱出し
ますが、小隊長と砲手、装填手は戦死します。

 激しい戦闘の結果、わが守備隊は装備・人員に大
きな被害を出しました。ソ連軍海岸歩兵も大損害を
受けますが、台端を確保することで、防禦側の直射
火器の射撃を阻止できる地線(ちせん)を占領して、
地上軍本隊のための地積(ちせき)を確保します。


▼第26戦闘団の戦い

 ノシャップ岬の広さは、大東亜戦争末期の激戦地、
東京都下硫黄島とほぼ同じだそうです。第26普通
科連隊を主力とした連隊戦闘団(戦車中隊は欠)は
7月1日に陣地構築を始めました。この岬は声間海
岸と稚内港に対しての榴弾砲や迫撃砲の射撃拠点と
して重要な価値をもっています。

 地形はテーブル状になっているので、攻略には戦
車や装甲車が使えません。地上から攻撃が可能なの
は歩兵のみ、といったわけで空軍の支援しか受けら
れないのです。ノシャップ岬の大部分は公有地でも
ありました。弾薬の事前集積などにもたいへん有利
です。

 第26戦闘団は、75式15センチHSP(自走
榴弾砲)を10門、107ミリ重迫撃砲12門、8
1ミリ迫撃砲16門、106ミリ自走無反動砲16
門、84ミリ無反動砲(カールグスタフ)48門を
もっています。

 岬の東方にある声間海岸に上陸したソ連海軍歩兵
には15H、稚内港に接岸しようとする艦船には重
迫と81迫が猛烈な射弾を浴びせられました。10
7ミリの重迫砲弾の破片効果は長径40メートル、
短径15メートルという広範囲です。81ミリでも
同じく20メートルと15メートルというものでし
た。

 上陸する敵は機械化部隊であり、弾薬や燃料など
の兵站の量は膨大なものになります。このためロー
ロー船(RORO・Roll-in/Roll-off  Ship)を
使うことが必要になります。LOLO船、ロ・ロ船
と表記される船もあるので、両者を混同されること
も多いようです。こちらはLift-on/Lift-off S
hipの略称になります。デリック、またはクレーンで
荷物を積み上げ、積み下ろし、いわゆるコンテナ船
のことをいいます。


 ソ連軍が使うローロー船は、貨物・物資の積み下ろ
しのために側面や船尾にゲートをもち、トラックや
トレーラーが船内を自走し、あるいはフォークリフ
トなどを使って荷役を行ないます。民間仕様のカー
フェリーに似ていますが、貨物しか運びません。

 このローロー船を使うために、ソ連軍は稚内港の
早期占領が必要になります。しかし、射程に港内を
含める重迫や迫撃砲がノシャップ岬に健在である限
り、港湾施設の利用は限定的にならざるを得ません。
戦闘団の隊員約2000名は、岬を死守する覚悟で
3週間分の弾薬を備蓄しています。

 なんというリアルな仮想戦記でしょう。木元将補
のおかげで、40年ほど前の陸自の実態が見えてき
ます。この後、稚内港をめぐる戦いが行なわれます。
空のカバーのない陸自部隊の戦い、さらには敵の策
源地への攻撃を禁じられた自衛隊はどうなるのでし
ょう。そうして、当時の政治家達、防衛省の内局の
人たちはどう考え、どのように行動していたのでし
ょうか。次回はそこにも触れて行かねばなりません。




(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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