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『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』
著:小川清史(元陸将 西部方面総監)
定価:1400円+税
ISBN:978-4-8470-7285-7
発売日:2023-03-22
発行:ワニブックス
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おはようございます、エンリケです。
小川清史元陸将が著した
『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』
は、現代の軍隊が用いる最小の努力で最高の成果を
あげる方法はビジネスや組織でも活用できる、とい
うことを伝えています。
著者の小川閣下は元陸将、元西部方面総監です。
平成28年(2016)熊本地震の際に編成された災統
合任務部隊(JTF-鎮西)指揮官として知られます。
現在は、桜林さんが司会を務めるネット番組「陸海
空軍人から見た」シリーズのコメンテーターをはじ
め、様々な場で軍事啓蒙を図ってらっしゃいます。
ちなみに私も、
ネット番組での閣下の詳細解説を通じ、大いに勉強
させていただいています。この場を借りてお礼申し
上げます。
略歴は以下のとおり。
小川清史 元陸将。西部方面総監
昭和35年生まれ。徳島県出身。防衛大学校第26期生、
土木工学専攻・陸上自衛隊幹部学校、第36期指揮幕
僚課程。米陸軍歩兵学校および指揮幕僚大学留学。
主要職歴(自衛隊)レンジャー教官歴4年間、内 主
任教官歴3年間。第8普通科連隊長兼米子駐屯地司令、
自衛隊東京地方協力本部長、陸上幕僚監部装備部長、
第6師団長、陸上自衛隊幹部学校長、西部方面総監
(最終補職)。退職時の階級は「陸将」。
現在、一般社団法人 救国シンクタンク客員研究員。
全国防衛協会連合会 常任理事。日課として、毎朝
マンデリン(珈琲)をドリップで淹れること。
趣味:合氣道、イラスト描き、書道、茶道。
いまのわが国朝野で語られる軍事や軍隊まわりのは
なしは、はっきり申し上げて周回遅れという感じが
します。固定観念の壁が異様なまでに固く厚すぎる
せいか、現実をじゅうぶん把握できていない気がし
ます。
小川陸将は、そんなわたしたちに、米軍・自衛隊な
ど先進国の軍隊はほぼすべてが近代化されており、
上意下達のトップダウン型でなく、最小の努力で
最高の成果をあげるメソッドに基づいて組織・チー
ム・ビジネスを勝ちに導くものになっている、と伝
えてくれます。
そしてこれからの組織は、自衛隊や米軍など先進国
軍隊のように、トップダウンでもボトムアップでも
ないミッションコマンドを目指すべきとします。
この本のアウトラインは以下のとおりです。
まえがきでは
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「理想のチーム(組織)」をつくるための方法論
「軍事」や「軍隊」と聞くと、いついかなる時も上
官の命令には”滅私”で”絶対服従”しなければな
らない「究極のトップダウン型組織」をイメージす
るかもしれませんが、実はそれはひと昔前の話です
。今でも国によってはそういう”前近代的”な軍隊
もありますが、先進諸国をはじめとする欧米型の近
代的軍隊では、前線の兵士たちが現場の状況に応じ
て自主積極的に動く「ミッションコマンド」が重視
されています。その核となっている理論が「作戦術」
です。
戦略とは、「未来をより良いものに変えるために、
今後どうするか」というビジョンとその実現のため
の方法・手段であり、時間と多くのアセットを使用
してより良い未来を実現するための方策です。
(はじめにより)
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と書かれています。
目次は次のとおり。
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目次
はじめに
第1章 今の日本に欠けているのは「作戦術」思考
自衛隊の研修で老舗アパレル企業へ
戦略なき企画会議への違和感
研修担当者を怒らせてしまった「作戦術」ベース
の提案
”数字”がすべてで、”数字”は「腹の足し」に
もならない
戦略を掲げるだけでは現場に伝わらない
戦術と戦略の懸け橋となるのが「作戦術」
”個”が集まっただけでは組織やチームとしては
機能しない
全体最適を追求できる人材を育てるには専門教育
が必要
全体最適を無視した個別最適の追求で経営破綻に
陥ったJAL
なぜゆうちょ銀行は自衛隊員の給与振込先として
人気だったのか?
「作戦術」思考が欠如した組織は全体最適から遠
ざかる
チームビルディングに必要なのは勘や経験よりも
”理論”
「作戦術」思考で「理想のチーム」をつくるには?
「わかる」と「できる」では大違い
第2章 なぜ作戦術が必要なのか
「作戦術」はどうして誕生した?
作戦術の定義
作戦術を最初に確立したのはソ連
完成度が高かったソ連の作戦術
ベトナム戦争の反省から作戦術を導入したアメリカ
死体や捕虜の数を「戦争の成果」に
戦争の勝敗を分けるのは「重心」
企業も自社の「重心」を意識することが大切
「目標」にはレベルの違いがある
自衛隊と作戦術
「軍事のシロウト」の意見を軍事マニュアルに反
映させた米陸軍
ミッションコマンド型の人材でなければ
「第三の波」の世界で生き残れない!?
「第三の波」の軍隊は兵士が「考える細胞」
ウクライナ軍がロシア軍に”善戦”している理由
ミッションコマンドができてこそ「第三の波」の
組織
作戦術との出会いがパズルのピースを埋めた
上級指揮官の育成で「公正公平な評価」より大切
なものとは?
作戦術と出会う前に経験した、チームビルディン
グの失敗
より小さな努力でより成果を上げられる組織へ
第3章 「理想のチーム」に求められるリーダーシ
ップ
「作戦術」思考で「理想のチーム」へ
全体最適達成のためには「がんばるな!」「気を
利かせるな!」
個別の「がんばり」が全体最適を崩す
知らず識らずのうちに
リーダーの権限を”簒奪”しているフォロワーたち
まじめで優秀なフォロワーほどリーダーの権限を
奪いがち
部下が上司の決定権を奪うのは犯罪行為
ミッションコマンドに必要な環境を整える
「三苫の1ミリ」はファインプレーではない
大切なのは「工夫」と「継続」
フォロワーもリーダーシップを学んだ方がいい理由
「リーダーとは何か?」を考える
リーダーの「心のありよう」はすぐフォロワーに
見抜かれる
学校の教室でも成立していた「ランチェスターの
第二法則」
オンライン会議の活用は
「第三の波」のチームリーダーに必須のスキル?!
リーダーに求められる「心の位置」とは?
現場第一主義の是非
優れたマネージメント手法が有効に機能するかは
リーダー次第
安倍首相と菅首相の災害対応の差
リーダーの仕事は「目に見えないもの」がほとんど
努力を促す「目標」とは?
チーム内のあらゆる仕事に関心を持つ
自主積極性を引き出す質問術とは?
飲み会はチームビルディングに有効?
チームビルディングに有効な飲み会の条件とは?
情報化社会で生き残るために「第三の波」の組織
へ
第4章 ”本質”を見抜く力を鍛える
「作戦術」思考をマスターするのに必要なのは”
本質”を見抜く力
「作戦術」思考を実践する難しさ
18世紀の人に「テレビ」を説明するには?
建設的な議論の練習にもなる
テレビを能動的・クリエイティブに観る
日本人には「所有権」の概念がない?
所有権を意識するようになったきっかけ
問題のルーツは明治維新にまでさかのぼる?
「正しくない命令」に従う義務はない
「身分制度」のために作られた大学
リーダーを育てなかった国の末路
試験で大切なのは「公平公正」よりも目的
ルールは「上」から与えられるもの?
国際社会はルールづくりの「フィールド」にすぎ
ない
日本のいたるところで見られる「作戦術」思考の
欠如
日本が明治維新で輸入し忘れた欧米の社会科学的
思考力
第5章 「作戦術」思考の事例集
具体的な事例で「作戦術」思考の理解を深める
事例(1)青山学院大学駅伝チームを率いる原監
督によるチームビルディング
「チームの勝利」よりも「人間育成」
コミュニケーションの活発化で「組織知」を形成
失敗を糧にしたチームビルディング
「組織知」の蓄積には10年はかかる
「第三の波」のチームが「第二の波」の世界で
巻き起こした旋風
事例(2)帝国ホテルのスポーツジム、プール、
サウナの運営
ホテルのサービス精神で事務を運営
「お客様にひたすら謝る」はNG
ホテルマインドによるミッションコマンド
組織知をつくる実務研修
新しい勤務形態で新しい”やりがい”を創出
事例(3)外資系物流企業から学ぶ「作戦術」思考
「日本人の価値観」を企業の組織知に
日本の「正直すぎる技術」があだとなることも
事例(4)織田信長の「作戦術」思考
世界に先駆けて発揮された織田信長の「作戦術」
思考
今川義元に情報戦で勝利していた織田信長
信長は「うつけ者」を演じていた?
兵士の好き勝手な行動を制して「重心」打撃に
集中
日本人は高いポテンシャルを秘めている
事例(5)「作戦術」思考のチームビルディング
を「目安箱」で実践
優れたチームビルディングツール「目安箱」
「目安箱」の効果が出るかは運用次第
問題を全従業員で共有し、問題解決に意識を向
ける
役立つ意見なのに不採用になるカラクリ
フォロワーが改善意見を出そうと思ったそもそ
ものきっかけに注目する
リーダーだからこそ導き出せる解決策がある
番外編 物語のなかの「作戦術」思考
日本の物語ではミッションコマンド型チームが
”当たり前”?
「孤独なヒーロー」が好まれてきたアメリカ
日本のチームビルディングを暗黙知から形式知
に
おわりに
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いかがでしょうか?
本著は、作戦術を理解して組織を動かす手法、言
葉を変えれば「理想の組織、チームをいかにつくる
か?」について書かれている本です。
軍事の現場で使われている、血が滴るような「作戦
術」の粋を、企業や組織に勤める一般人でも理解で
きることばで、溶けた鉄を頭に流し込むように熱く、
日々の仕事、実社会で活かせる形にまでかみ砕いた
かたちで伝えてくれるビジネス書です。
キーワードは
「集団の個別最適を全体最適につなげる法」
です。
この本を読むと、「理想のチーム」へと最適化する
「作戦術」思考とは一体どういうものなのか?
という問いへの答えが得られます。
小川さんによれば、
戦略とは「未来をより良いものに変えるために、
今後どうするか」というビジョンであり、時間と
多くのアセットを使用してよりよい未来を実現す
るための方法と手段。
戦術とは「いま起きていることにどう対応するか」
に関する技術。
戦略と戦術をつなげるのが「作戦術」。
作戦術は「戦略目標の達成(全体最適)に寄与する
ように戦術(個別最適)をコントロールしていく技
術」。
すなわち作戦術思考とは、
「自分(チーム・組織)の意志(目的)に沿うよう
に、自分(チーム・組織)の行動をコントロールし
ていく思考技術」ということになります。
それを実現するには、
戦略と戦術に常に焦点を当てることが不可欠で、
最も難しいのは、どう評価するか?という点です。
この課題をクリアするために不可欠なのが
●●●●●●力
だ、というところまで小川さんは言及しています。
最も響いたところは、
チームビルディングに本当に必要なのは勘や経験よ
りも”理論”
という指摘でした。
拝読しながら、ダイレクト出版やリアルインサイトな
ど、ネットや小事業から身を起こして10年足らず
で大企業を作った若い人たちが言っていることとの
共通点を強く覚えました。
おそらく彼ら経営者は、各種最先端のビジネス理論
をいろいろ学んでいるはずです。
ホンモノのビジネス理論は、軍事と親和性が高く、
海外の経営やビジネスの世界では、日本で本著のよ
うな啓蒙書が出る前にすでに軍隊の各種理論やノウ
ハウが溶け込み、活用されていたのかもしれません。
以下の点にも興味を惹かれました。
★日本の組織の弱点は「戦略と戦術の齟齬」
★立派な戦略を掲げるだけでは現場に伝わらない
★ミッションコマンド型の人材でなければ生き残れ
ない
★知らないうちにリーダーの権限を”簒奪”してい
る部下たち
★リーダーの質は「ランチェスターの法則」ですぐ
見抜かれる
★努力を促す目標とは? 自主積極性を引き出す質
問とは?
★「現場第一主義」は是か非か? 「飲み会」は是
か非か?
★世界に先駆けて発揮された織田信長の「作戦術」
思考とは?
★「目安箱」は優れたチームビルディングツール
いかがでしょう?
気になりませんか?
個人的にわたしは、頑張りや根性という感覚がキライで、
どこでも「怠け者」扱いされてきました。
できるだけ簡単に楽しく長く続けられることしかし
たくない、というタイプです。そんな人間にとり、
本著の中で、
チーム力向上の秘訣は
「がんばるな!」「気を利かせるな!」
と表現されていたことや、大好きなバックミンスタ
ー・フラーの名言「少ないものでより多くのことを
為せ。」を感じとれる一節があったことも地味にう
れしかったです。
この本は、作戦術を理解して組織を動かす手法を教
えてくれる本です。
一般人でも理解でき、実社会で活かせる形にまでか
み砕いたビジネス書です。
読者層は幹部自衛官と経営者、企業・組織の幹部候
補生です。
現場にいる実践者が組織や自分を活かしきって目的
を達成するために不可欠なビジネス書です。
一番キモとなる部分を、
わかりやすく使いやすく読みやすく伝えているので、
何度も何度も読み返して実践とフィードバックを繰
り返せる、時間をかけて目的にじりじり迫る実践者
の本といえます。
古臭い感覚でしか軍事や軍隊と接することができな
い戦後日本の現実に、違和感と不満を抱いている方
にもうれしい内容ではないかな?と思います。
なかでも、
これからの我が国を支える各界の幹部候補生には、
心からおススメします。
ぜひ本著のエキスを我がものとし、諸外国のライ
バルをぶっちぎりで引き離し、蹴散らしてください。
『組織・チーム・ビジネスを勝ちに導く「作戦術」思考』
著:小川清史(元陸将 西部方面総監)
定価:1400円+税
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エンリケ
追伸
「リーダーシップ」や「組織論」に関する本は多い
ですが、そのなかでも特別に斬新な切れ味を覚える
会心の一作、という印象を持ちます。
第1章で「意思決定手法」の課題を整理し、第2章で
作戦術の定義、歴史をまとめ、本書のキモとなる第3
章、第4章で「作戦術思考」を解説。実例集の第5章
で現実に落とし込んでおさらいをする。
項目立ての細かさも辞書的で使いやすい。
構成も見事ですね。
おススメです。
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