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1970年代に保守政治を改革しようと立ち上がった若
手議員グループ「青嵐会」の詳細な記録である本著
を通し、彼らが田中角栄政権に挑み、短期間で解散
に至るまでの壮絶な挑戦と、その後の日本政治に与
えた影響がここに明らかになります。
本著は、自民党改革を目指した彼らの軌跡を、気鋭
の政治学者が鮮やかに描き出した作品です。自民党
の新総裁が決まる前に、ぜひご一読ください。
『青嵐会秘録──田中角栄に挑んだ保守政策集団』
菅谷幸浩[著]
四六判上製348ページ
発行日 :2024.9
本体価格 ¥2700
https://amzn.to/4dBOi8w
こんにちは、エンリケです。
1973年7月、自民党の若手議員たちが派閥を超えて結
成した「青嵐会」。田中角栄政権の金権政治に公然
と異を唱え、結成時には血判を交わして強い結束を
示しましたが、わずか6年で挫折しました。
青嵐会と聞けば思い出すのが、石原慎太郎、中川一
郎、浜田幸一、中山正暉といったずっしりした顔ぶ
れです。
ひとことでいえば「頼もしい」雰囲気をもつ政治家
集団でした。本著で初めて知ったのが、発足の背景
事情や彼らの活動期間がわずか6年であったことで
す。インパクトの強さ、印象の深さのわりには短か
ったのだなあと嘆息しています。
いわずもがなですが、当時のマスメディアや国内世
論の風潮は彼らを「不気味な極右過激派集団」と扱
うだけ。いま振り返ってもなんとも異様な空気でした。
時が経ち、ようやく青嵐会という存在も歴史となり、
優れた若手学者が彼らを冷静に分析評価できるよう
になったのだなあと思い、感無量です。
著者はこの方です。
菅谷幸浩(すがや・ゆきひろ)
1978(昭和53)年、茨城県生まれ。学習院大学大学
院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。博士
(政治学)。政治学・日本政治外交史専攻。亜細亜
大学法学部、高崎商科大学商学部・短期大学部兼任
講師。著書『昭和戦前期の政治と国家像』(木鐸社)、
『立憲民政党全史1927‐1940』(講談社、共著)、
『昭和史研究の最前線』(朝日新聞出版、共著)、
『昭和史講義2』(筑摩書房、共著)
それではこの本の中身を見ていきましょう。
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本書の視点と構成
近年、一九七〇年代に関しては佐藤栄作、田中角
栄、福田赳夫、三木武夫、福田赳夫など、歴代政権
担当者の評伝的研究や、日中国交正常化前後の日本
外交についての研究が進んでいる。本書ではこうし
た研究成果に学びつつ、青嵐会の活動が限界を露呈
していく過程を内外の情勢に関連付けて解明してい
く。同時期の国際関係や自民党の党内状況が青嵐会
メンバーの動きにどう反映されていたのか、メンバ
ーそれぞれの認識の違いに焦点を当てる。その際、
筆者自身が取材した青嵐会参加議員やその秘書、報
道関係者などの証言も活用することで、これまで知
られてこなかった事実関係を再現していく。こうし
た証言内容は従来までの青嵐会のイメージを相対化
するだけでなく、戦後日本で改憲潮流が有力なもの
にならなかった要因を考察する上でも役立つはずで
ある。本書の構成は以下の通りである。
第一章では青嵐会前史として占領期から一九七〇
年代初頭に至るまでの期間を概観する。若い読者に
配慮し、冷戦の影響と日米関係の推移、池田・佐藤
内閣期における自民党政治の完成など、戦後政治外
交の諸条件がどのようにして形成されたかを解説す
る。一九六〇(昭和三五)年の岸内閣による安保改
定以降、憲法問題は事実上棚上げされる一方、本来
別個の背景から誕生したはずの日本国憲法、日米安
保体制、自民党の三つが融合することで戦後日本の
政治外交を規定していく過程を明らかにする。
第二章では一九七二(昭和四七)年の自民党総裁
選と田中角栄の勝利を経て、翌々年の「青嵐会は主
張する国民集会」開催までの期間を扱う。中ソ対立
を背景とした米中接近、それを後追いする形で田中
内閣が日中国交正常化を急ぎ、政府・与党間関係の
調整を怠ったことが青嵐会結成につながっていく過
程をたどる。次に青嵐会の人的構成や、外交・安全
保障、憲法への認識がいかなるものだったか、各種
資料や証言から検討する。
第三章では一九七四(昭和四九)年に政治的争点
となる日中航空協定調印問題から一九七六(昭和五
一)年の三木内閣総辞職までの期間を扱う。青嵐会
は日中航空協定反対の中心勢力として活動するが、
田中内閣後半期、後継総裁人事をめぐって足並みの
乱れを露呈するようになる。続く三木内閣期、青嵐
会は自民党の政綱改正をめぐって河野グループと対
決する一方、一九七六(昭和五一)年の「政府主催
憲法記念式典糾弾国民集会」をめぐって大きな混乱
を党内にもたらすことになる。これまでの研究で言
及されてこなかった同集会の模様を再現した上で、
青嵐会の問題点を整理する。なお、『日本列島改造
論』など、田中内閣期における経済分野の事項は主
として補論で扱う。
第四章では一九七六(昭和五一)年の福田内閣成
立から一九八〇年代の中曽根内閣期までを扱う。特
に日中平和友好条約の国会批准、青嵐会の解散と自
由革新同友会(中川派)に移行していく過程や、一
九八二(昭和五七)年の自民党総裁選と翌年に中川
一郎が自死するまでの動きに焦点を当てる。青嵐会
には中曽根派からも多くの議員が参加していたが、
のちの中曽根内閣は憲法問題や対アジア外交の面で
後退姿勢を示すなど、必ずしも保守政治に徹したわ
けではなかったことを論じる。
補論では国土開発の思想という面から田中角栄著
『日本列島改造論』と青嵐会メンバーの主張を比較
検討する。青嵐会は反田中政治を旗印にして結成さ
れたが、彼らの多くは「国土の均衡ある発展」を志
向する点で田中と共通していたことを明らかにする。
後半では事例研究として中川一郎、浜田幸一、玉置
和郎、渡辺美智雄を取り上げ、彼らが国と地方の関
係をどう捉えていたかを分析する。関係者へのイン
タビューも含め、昭和の終わりから平成の初めに模
索された国土開発や地域振興の視点を再現する。
すでに青嵐会メンバーのほとんどは逝去し、青嵐
会を知る世代も老境に入っている。しかし、青嵐会
とその時代をたどることは、憲法改正論議、アメリ
カ・中国・台湾・韓国・ロシアなど諸外国との関係、
自民党における派閥の在り方、東京一極集中と地方
の衰退など、眼前の問題を理解する上で重要な意味
を持つはずである。
青嵐会の掲げた理想と情熱は、今なお多くの教訓を
私たちに与えてくれます。彼らの夢や理想が消えた
今、政治の無関心や諦めが広がる現代において、本
書が若い世代に政治への関心を呼び起こし、わが国
の未来を再び活力あるものにする一助となることを
願っています。
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いかがでしょうか?
『青嵐会秘録──田中角栄に挑んだ保守政策集団』
菅谷幸浩[著]
四六判上製348ページ
発行日 :2024.9
本体価格 ¥2700
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目次もどうぞ。
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目 次
序章 青嵐会はいかにして生まれたか 6
広がる政治的閉塞感/五五年体制とは何だったか/
青嵐会への評価/本書の視点と構成
第一章 五五年体制の形成と展開 19
第一節 敗戦と占領 19
初期対日占領政策/日本国憲法第九条/冷戦の波及
と占領政策の転換/サンフランシスコ平和条約と日
米安保条約
第二節 主権回復と政界再編 29
反吉田勢力の台頭/保守合同
第三節 自民党単独政権時代の始まりから「政治の
季節」へ 32
「独立の完成」を目指した鳩山一郎/岸信介と「日
米新時代」/安保改定
第四節 経済大国への道と自民党政治の完成 37
池田内閣と開放経済体制への移行/佐藤内閣と日韓・
日米関係/「ニクソン・ショック」と「保守の危機」
第二章 田中内閣の成立から青嵐会の結成へ 45
第一節 時代背景と人的構成 45
党内状況への危機感/一九七二年の自民党総裁選挙
/中ソ対立から日中国交正常化へ/青嵐会結成に向
けた動き/役職者に見る派閥分布
第二節 五人の代表世話人 68
中川一郎/湊徹郎/渡辺美智雄/藤尾正行/玉置和
郎/『朝日新聞』による報道/保守勢力からの期待
/青嵐会の中心メンバーは誰だったのか
第三節 外交・安全保障と憲法への認識 90
「青嵐会趣意書」/「青嵐会の外交の基本方策」/
中山正暉の憲法論/「青嵐会は許さない」/「青嵐
会は主張する国民集会」
第三章 青嵐会の先鋭化と失速 128
第一節 田中内閣の崩壊過程と三木内閣の成立 128
存在感を増す青嵐会/『人民日報』が報じた青嵐会
/第二次田中内閣発足と第二九回自民党大会/日中
航空協定締結問題の浮上/自民党総務会を揺るがす
青嵐会/「金権政治批判」の高まり/三木内閣の成
立と青嵐会/政綱改正をめぐる河野グループとの対決
第二節 政府主催憲法記念式典糾弾国民大会 160
ロッキード疑惑から「三木おろし」へ/玉置和郎と
三島由紀夫/「政治といふものはハネ上がつてやれ
るものぢやない」/渡辺美智雄と「スト権スト」問
題/青嵐会を去った山崎拓と松永光/新自由クラブ
結成と第三四回衆議院議員総選挙/青嵐会の問題点
はどこにあったか
第四章 青嵐会の終焉 196
第一節 福田内閣の成立 196
中川一郎と渡辺美智雄の軋轢/日中平和友好条約の
調印/中山正暉の抵抗/青嵐会解散を決定した赤坂
会合
第二節 青嵐会以後 215
派閥の体をなしていなかった自由革新同友会/米価
問題と元号法制化/四〇日抗争/ハプニング解散/
小林興起が見た中川一郎
第三節 一九八二年の自民党総裁選挙 228
「スルメになるな」/浜田幸一とラスベガス事件の
真相/玉置和郎の衆議院鞍替え問題/中川一郎の焦
りと落胆
第四節 祭りの後 239
中川一郎の自裁/中曽根内閣に見るポピュリズム/
中曽根政治が残した禍根
第五節 政策集団青嵐会はなぜ消滅したか 250
補論 『日本列島改造論』と青嵐会に見る国土開発の
思想 263
第一節 問題の所在 263
第二節 『日本列島改造論』とその背景 266
第三節 『日本列島改造論』の挫折 270
青嵐会から見た『日本列島改造論』/自民党内と業
界団体の反対/田中角栄と日ソ関係/第一次石油危
機と高度経済成長の終わり
第四節 中川一郎 278
北海道と国の媒介役を目指して/北海道第五区と中
川一郎後援会/北海道振興への視点
第五節 浜田幸一 287
党人政治家への道/東京湾アクアラインと房総半島
振興
第六節 玉置和郎 294
宗教界からの政界進出/半島振興法の制定/半島地
域の現状と「地域主権」という幻想
第七節 渡辺美智雄 302
インフレ抑制と地方分散を目指して/中曽根内閣と
国鉄民営化/広域行政への視点
第八節 小括─国が果たすべき役割と責任─ 315
終章 現代政治が失った青嵐会の精神性と行動力 326
一九七〇年代の教訓/厳密に一元化されていなかっ
た青嵐会の対外認識/「侍」がいなくなった時代と
自民党の行方
あとがき 340
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どうでしょうか?
単なる歴史の記録を超え、現代の政治問題への理解
を深める重要な資料といえると思いませんか?
本著をきっかけに、テレビや新聞で伝えられる表面
的な情報に留まらず、現代の政治家たちが失った夢
や理想を再確認し、今こそ日本を変革するきっかけ
にしてほしいと願うばかりです。
絶版になる前に、ぜひ手に入れてください。
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エンリケ
追伸
一般国民に対し、
青嵐会=不気味な極右
という歪んだ印象操作、刷り込みを行ってきた
国内マスメディアの大罪を改めて感じています。
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