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続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。
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こんばんは!エンリケです。
「戦術核」の2回目です。
きょうも読みごたえ抜群です。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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加藤大尉の軍隊式英会話:世界の秘密兵器編
Takashi Kato
戦術核(2)
加藤喬(元米陸軍大尉)
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□「落した側の主張」と「落された側の心情」
1980年代末、ニューメキシコ州アルバカーキ市
に住んでいました。陸軍予備役に籍を置きつつ大学
院で勉強していた頃のことです。
同地に引っ越してから日本とニューメキシコの因
縁に気づきました。まず、アルバカーキから車で2
時間ほど北上した山の中にあるロスアラモス国立研
究所。ここは第2次世界大戦中、ロバート・オッペ
ンハイマー博士の指導で原爆を製造したところです。
広島を灰燼に帰したリトル・ボーイと長崎に甚大な
被害を与えたファット・マンはここで作られました。
また、同市南端に位置するサンディア国立研究所は
冷戦時代から現在に至るまで核兵器の開発と管理を
行なっています。アメリカが日本に差しかけている
「核の傘」の技術拠点であり、歴代政権にとって
「痛しかゆし」の存在だったはずです。
そういう土地柄もあってか、あるとき日本から原
子力関連の技術者一行がやってきました。サンディ
ア国立研究所の知人に通訳を依頼され、当時、同研
究所に隣接していた原爆博物館を案内しました。リ
トル・ボーイとファット・マンの原寸大模型が展示
された同館は「原爆を落とした側」の視点を代弁す
る施設。見学の途中、団長である年配の紳士が嗚咽
しているのに気づき話しかけました。すると、
「申し訳ない・・・仕事柄、ずっと原子力の善悪に
悩んできました。今回、原爆発祥の地で自分なりに
折り合いを付けるつもりでしたが、無理だと悟りま
した・・・それが無念で」
わたしを見る老エンジニアの目は真っ赤でした。
おそらく「原爆が戦争終結を早め日米双方の犠牲者
増加を防いだ」という「落した側の主張」に、越え
られない違和と失望を感じたのでしょう。日本人の
「核アレルギー」の根っこには同様の「落された側
の心情」があり、その意味で、唯一の被爆国が非核
三原則に拘泥するのもわからないではありません。
私事になりますが、広島の消防署勤務だった叔父も
被爆しており、生涯、後遺症に苦しみました。です
から気持ちの上では、わたしにも反核感情は理解で
きます。が、政治は感傷で行なうものではない。米
露中をはじめとする核大国に加え、インド、パキス
タン、イスラエル、そして北朝鮮までもが核武装し
ている現状を直視すれば「核廃絶」は世迷言(よま
いごと)。夢物語で舵取りをしていては国が滅びま
す。にもかかわらず岸田首相は「広島カード」を切
り続け、昨今では非核三原則の「作らない」「持た
ない」「持ち込ませない」に加え、核武装のことは
「言わせず」「考えさせず」との政治風潮まで出て
きたと聞いています。
去る3月13日付『ニューズウィーク電子版』に
よれば、岸田首相とバイデン米大統領、そしてユン・
ソンニョル韓国大統領が同意した日米韓による安
全保障体制に対し北朝鮮は、
「アメリカが喧伝する三か国安全保障協力は愚か
者らの利益になるどころか、日本人と傀儡政権下の
韓国人を核戦争の餌食にするものとなった」
と威嚇しました。
これに対し韓国では核武装論が日増しに強まってい
るとか。実際、昨年4月28日付『BBCニュース・ジ
ャパン』は韓国国民の4分の3が核兵器自国開発を
支持していると報道。バイデン氏は地域の核拡散に
つながりかねない韓国世論を警戒し、米海軍の原子
力ミサイル潜水艦を朝鮮半島に展開することを条件
に、核武装世論の抑え込みを図ったとされています。
もちろん、核拡散防止条約を反故(ほご)にすれば
国際社会からの孤立は必至。米国との信頼関係も破
綻しましょう。したがって、韓国の核武装がそうた
やすく実現するとは思えません。またやや穿った見
方をすれば、韓国としては核保持を公言することで
アメリカの核の傘を強固にしたい思惑もあるのでし
ょう。とは言え、核の自主開発を主張して恐れぬ韓
国世論は、核をめぐりアメリカと駆け引きすること
すらタブー視する日本とは極めて対照的です。なぜ
か?
一つには核を持った金正恩政権と陸続きで対峙し
ている「事実上の戦争状態」がありましょう。また、
トランプ政権が示唆した「在韓米軍撤退」の可能性
も韓国大衆の不安を掻き立てたに違いありません。
プーチン大統領によるウクライナ侵攻を抑止できな
かった欧米諸国への不信と、大国の力関係に翻弄さ
れてきた半島国家が持つ「自主防衛」への希求も考
えられます。が、今一つ、「落された側の心情」の
不在が大きいのではないか、とわたしは思います。
原爆で死ぬのも焼夷弾で死ぬのも死者にとっては
同じことだ、という考え方があります。しかし、生
き残った者から見れば「全人類の滅亡に繋がる核兵
器」が醸す実存的不安は通常兵器の比ではありませ
ん。まことに逆説的ですが、この圧倒的恐怖感が核
の「抑止力」の源なのです。日本が再び原子の火に
焼かれぬためには、この恐怖を逆手にとって敵の侵
攻を思いとどまらせるのが正道。ならば、日本人に
も「落された側の心情」を乗り越える努力が要りま
しょう。被爆国にとって生易しい試練ではない。が、
民族として生き延びる覚悟が問われ始めたいま、日
本がウクライナの二の舞を舞わぬためには、同盟や
安保に頼らぬ自主国防が不可欠です。
折しも自民党次期総裁選が連日ニュースで取り上
げられています。誰が選ばれるにせよ、新指導者に
は「落した側」の誤りを諭す気概と「落された側」
の核忌避(きひ)から脱するビジョンが要りましょ
う。
「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬ
から」
とは、3度目の核投下を日本人の力で何としても抑
止することだとわたしは思います。
読者諸氏のお考えやいかに。
▼戦術核(2)
兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を抜
かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝ち」
の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な破壊
力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手放せ
ない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏面が
「抑止力」なのです。
加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞれ
の武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を考
えていくことにします。
ウクライナ戦争ではロシア軍が戦術核を使う可能
性が取り沙汰されてきました。また、プーチン大統
領の盟友であるベラルーシのルカシェンコ大統領は
昨年6月「ヒロシマ型の3倍の威力がある戦術核兵
器をロシアから受領した」と述べています。いずれ
も東欧で核の敷居が低くなっている現実を示唆して
います。
「戦術核シリーズ」第2回は同兵器の具体例を検証
します。
武器科の新米少尉としてメリーランド州アバディー
ン性能試験場(APG)に赴任した当時、APG兵器博物
館の屋外展示にM85カノン砲、通称原子砲がありまし
た。
1950年代の技術では核砲弾の小型化ができなか
ったため、M85は口径280ミリ、全長26メートル、
重量は83トンと重厚長大な野砲。移動には砲の前
後にいちいちトレーラーを連結しなければならず、
射撃位置まで速やかに展開したり、敵の反撃を避け
るため迅速に撤退したりすることはできなかったよ
うです。
前回紹介した核無反動砲デイビー・クロケットにし
てもそうですが、冷戦初期は、既存の兵器に核を付
加し火力を倍増することだけに主眼が置かれていた
ように感じられます。それが最も端的に現れている
のが同じく50年代に考案された核地雷でしょう。
英国の核地雷「ブルー・ピーコック」はソ連戦車部
隊の壊滅と、広域の放射能汚染によってソ連軍の占
領を阻止する目的で開発されました。重さ7トンも
ある核爆弾は前もって敵の予想接近経路に埋められ、
遠隔操作か時限装置で起爆させる計画でした。設置
場所はドイツ領内になるはずでしたが1958年に
同計画はキャンセル。同盟国への放射能被害と政治
的リスクが考慮された結果だと言われています。
核爆雷は1950年代に米海軍が実用化しています。
通常の爆雷とは比べものにならないほど破壊力が大
きいため、敵潜水艦の正確な位置が分からなくても
撃破できるとされました。もっとも、自艦に与える
ダメージが大きすぎて水上艦からの投下はできず、
もっぱら対潜哨戒機からの投下や対潜ミサイルの弾
頭として使われました。
ちなみに核爆雷は核魚雷と同様、通常弾頭でも高い
撃破が期待できる精密誘導魚雷に取って代わられて
います。
したがって現在、最も使われる可能性が高い戦術核
兵器は、航空機から投下される爆弾と射程500キ
ロ以下の短距離弾道弾、そして巡航ミサイルという
ことになりそうです。
教材ビデオ:
Tactical Nukes use in #Ukraine by #Russia ! F
ull analysis (youtube.com)
https://x.gd/FhKTb
(本エピソードは2:29から始まります)
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
gravity bomb(グラビィティ ボム))自由落下爆弾。
投下された後、誘導されない爆弾のこと。
artillery shell(アーチィラリィ シェル)大砲の
砲弾
land mine(ランド マイン)地雷
depth charge(デプス チャージ)爆雷
torpedo(トーピードー)魚雷
シナリオ(カウンターを2:29に合わせてくださ
い)
Tactical nuclear weapons include gravity bombs, short-range missiles, artillery shells, land
mines, depth charges, and torpedoes which are
equipped with nuclear warheads.
(戦術核兵器には自由落下爆弾、短距離ミサイル、
砲弾、地雷、そして魚雷などがあり、いずれも核弾
頭を装備している)
(今回のビデオは2:43まで続きます)
英語一言アドバイス:
artilleryは大砲のことです。転じて砲兵部隊も意
味します。しかし自衛隊の場合、砲兵は「特科」と
呼ばれます。漢字の意味だけみると「特殊部隊」と
誤訳しがちなので注意してください。
発音サイト:artilleryの発音 artillery - 検索
(bing.com)
https://x.gd/I5q9L
参考サイト:
戦術核兵器 戦術核兵器 - Wikipedia
https://x.gd/zgWQ9
核地雷 ブルーピーコック - Wikipedia
https://x.gd/dSziF
核爆雷 核爆雷 - Wikipedia
https://x.gd/PGi5n
核魚雷 核魚雷 - Wikipedia
https://x.gd/6o95I
原子砲 M65 280mmカノン砲 - Wikipedia
https://x.gd/JyaRx
国立原子力博物館 国立原子力博物館 - Wikipedia
https://x.gd/IF6tq
(かとう・たかし)
●著者略歴
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT─あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK─47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
追記
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
『レックス 戦場をかける犬』発売中
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『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320
オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
きょうの記事への感想はこちらから
⇒
https://okigunnji.com/url/7/
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac"
と表現します。
『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
加藤 喬
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