配信日時 2024/08/07 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(73)】自衛隊砲兵史(19) 着上陸侵攻する敵部隊を撃破せよ     荒木 肇

-------------------------------------------
今後の配信が不要の場合は
下記より解除して頂けます
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
-------------------------------------------
Audible会員なら、数多くのオーディオブック、
ポッドキャスト、限定コンテンツを月額1,500円で
好きなだけ聴き放題できます。まずは30日間の
無料体験を始めませんか? 
https://amzn.to/42ZaOnl
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
↓  ↓  ↓  ↓  ↓
http://okigunnji.com/url/80/

---------------------------
哲學ツーリズム
http://okigunnji.com/url/187/
-------------------------------
松下村塾から沢山の「天才」が生まれた秘密
http://okigunnji.com/url/208/
-------------------------------

--------------------------
荒木さんの最新刊

知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

『自衛隊警務隊逮捕術』
 荒木肇(著)
 https://amzn.to/34szs2W
-----------------------------------------

おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第73回目。

きょうも読み応えある内容です!

中でも冒頭文に記されていることは、
国の主権者として掴んでおかなきゃいけない、
戦後日本の国防安保軍事自衛隊が抱える課題
そのものであり、
「手足をがんじがらめに縛られている自衛隊」の
全般状況の正確な理解、把握が図れる内容です。

日本の主権者なら必読の内容と思いました。


さっそくどうぞ。

エンリケ


メルマガバックナンバー
https://heitansen.okigunnji.com/

ご意見・ご感想はコチラから
 ↓
https://okigunnji.com/url/7/


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(73)

自衛隊砲兵史(19) 着上陸侵攻する敵部隊を撃
破せよ


荒木 肇

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□当時「有事法制」は検討中

いよいよ木元陸将補のご著書『道北戦争1979』
では、ソ連軍の航空優勢の中で稚内への着上陸侵攻
が始まります。ここで興味深いのが、当時の「有事
法制」です。木元氏は当時、防衛庁では3つの分類
に従って、有事への対応を研究していたとされてい
ます。

まず、第1分類です。防衛庁所管の法令については、
防衛庁設置法、自衛隊法のいわゆる防衛2法と防衛
庁職員給与法がありました。有事においての物資の
接収、土地の使用、有事に出動した隊員等への給与
について特別な処置を必要とする問題です。

いまも話題になるのは、防禦陣地を地権者に断りな
く造っていいのか、あるいはガソリンスタンドにあ
る燃料等を部隊が使えるのか等ということでしょう。
自衛隊基地の建設に反対する方々が主張の根拠の1
つにするのが財産権の問題です。いわく「クニが市
民の財産を勝手に押収していいのか」ということに
なりましょう。

もう一つは「特別職国家公務員」として、いわゆる
「文官」とされる省庁の書記官、事務官、技官など
と横並びの給与体系で決められている、自衛隊員の
有事の処遇です。もとから高額ではない隊員の給与、
それに有事で出動した際の危険手当などはどうでし
ょう。何より殉職や戦死といった公務死や、負傷さ
れた時の具体的給与などはどうするかでした。

大東亜戦争の敗北で解体される前の「戦う軍隊」だ
った日本帝国軍隊には、戦うことと、その結果につ
いての諸法令が用意されていました。

よく政治家の方々、有識者の中には「戦前は教育が
きちんとしていたから帝国軍隊は強かった」とおっ
しゃる方がいます。自衛官は志願でなったのだから
しっかり戦えという方もおられますが、その裏付け
の国家・国民からの具体的な配慮や処遇について、
どれだけご存知なのかわたしは不思議に思うのです。


次に、第2分類、他省庁所管の法令です。部隊の移
動や資材の輸送等に関する法令、通信連絡に関する
法令、火薬類の取り扱いに関する法令、自衛隊が有
事に行動することに関する法令がたいへん多くあり
ます。「昔の軍隊」と比べれば、「軍隊ではない自
衛隊」であることから様々な規制がかかっています。

道路法、森林法、海岸法、河川法、自然公園法、建
築基準法、火薬類取締法、医療法、墓地・埋葬等に
関する法律、会計法などなど、所管するどこの官庁
でも、考えたことも無かった・・・と言っては言い
過ぎでしょうがいかがでしょう。


最後に第3分類です。政府全体で取り組むべき法令
になります。有事になって戦場となる地域住民の保
護、避難誘導について、また「国際人道法(ジュネ
ーブ4条約)」の国内法制化です。戦時ではありま
せんが、わたしたちは阪神淡路、東日本の大震災を
経験しました。近頃では能登でも同じですが、救援
物資はどこへ、どのように運ぶのか、それらの集積
の方法や場所はあるか、避難する住民の方々の保護
は十分できるかなどが一気に問題化します。

それに加えて、外国軍隊の攻撃、占領があったらど
うなるか。捕虜にはどうしたらなれるのか、死傷者
が出たらどのように対応するのか。憲法9条を固守
し、自衛戦闘だけを想定、国内に敵を上陸させて戦
うというのは、戦場に一般住民、国民がいるという
ことです。もちろん、そうなるまでに政府が、国会
議員が敵と話し合って、絶対にそんな事態が起きな
いようにすると言うならいいのですが。

▼情報部隊と遊撃部隊

 第25連隊戦闘団は沿岸部に情報部隊を配置しま
した。連隊本部管理中隊の情報小隊、第2戦車大隊
の偵察小隊です。戦闘団長は監視哨を設けます。上
陸予想地点や、枝幸港、上陸後の内陸侵攻が監視で
きる場所です。いずれも監視ができ、生存率も高い
地点が選ばれます。

 枝幸港を監視する連隊情報小隊の任務は、次の通
りです。幌別海岸に上陸して内陸に進もうとする敵
部隊、枝幸港を利用する敵艦船の動向、とくに兵器
・弾薬・燃料等の揚陸状況、これらの補給品を陸上
輸送する車輌等の行動を監視し、遊撃部隊に通報し
ます。

 2戦大(第2戦車大隊の略称)偵察小隊は、浜頓
別正面に上陸し、中頓別方向に移動する敵を監視し、
前地(着上陸侵攻の正面で海岸から内地にある地域)
の戦闘を展開する予定の戦車大隊に獲得した情報を
提供します。上陸した敵戦車、装甲車、歩兵、対戦
車火器の数量や動向などです。

 特科(砲兵)部隊の前進観測班(FO)も監視哨
に派遣されます。特科部隊は前線の後方から敵の上
陸部隊に15榴×10門、10榴×20門を浴びせる
計画です。15榴とは155ミリ榴弾砲、10榴と
は105ミリ同をいいます。75式155ミリ自走
榴弾砲の最大射程はおよそ19キロ、105ミリ榴
弾砲のそれは約14キロです。

 遊撃部隊とは25連隊のレンジャー25名で編成
された5組の部隊でした。レンジャーは一般隊員か
ら志願、選抜されて厳しい訓練を終えてバッジを与
えられた不屈の戦士です。いまも制服の、あるいは
戦闘服の左胸にレンジャー・マーク(月桂冠)を着
けています。「おっ、レンジャーですね」と声をか
けると、皆さん、にっこり誇らしげに笑ってくれる
ことでしょう。

 このときは補給部隊の襲撃を主な任務としました。
枝幸港から物資を陸揚げし、中頓別方面に車輌で輸
送するソ連軍部隊、その車列を襲います。とくに目
梨別から斜内では山が海岸に迫り、人家もないとい
う攻撃には最適な地形です。

 このレンジャー隊には84ミリ無反動砲と89ミ
リ・ロケットランチャーが装備されています。84
ミリ無反動砲はカール・グスタフともいわれ、スウ
ェーデンが1949年に開発したNATO(北大西
洋条約機構)軍でも採用されていた信頼性の高い対
戦車火器です。1978年、つまり木元氏の作品の
前年に導入されたばかりの新兵器でした。

 全長は1130ミリしかなく、重量も16.1キ
ロと1人で運べ、初速は260メートル/秒、有効
射程は700メートル、弾の重量は2.4キロ、弾
頭は0.5キロ、700メートルまでの飛翔時間は
約2.2秒です。その威力は成形炸薬対戦車榴弾の
開発でさらに大きくなりました。電気信管のおかげ
で命中角度が80°でも起爆し、命中角度が0°つま
り垂直に命中すると、厚さ300ミリの鋼板を貫通
します。当時のソ連軍主力戦車T62も撃破できま
した。また、89ミリのロケットランチャーは、通
称バズーカ、朝鮮戦争でT34に苦杯をなめて開発
されて、200メートルの射距離で110ミリの侵
徹力があります。

 レンジャーたちは3週間程度自活できる糧食と、
弾薬、通信器材のバッテリーなどを身につけて出発
しました。連隊戦闘団の後端は天北峠と咲来峠の2
カ所に絞られます。この2つの峠は決して峻嶮な地
形ではありません。なだらかな起伏の頂点です。し
かし、この峠を奪取されると、稚内と天塩方面で戦
う第2師団主力の後方補給線を脅かされます。だか
ら戦闘団の最終確保地域です。

▼2つの峠の配置

 もし、戦闘団が前地と主陣地の戦闘で破れた場合、
残存戦力はすべてがこの両峠に集結し、まさに最後
の一兵に至るまで戦闘を継続します。そこで、この
峠には戦闘の初期から段列を配置して防衛陣地を構
築しました。

 段列とは、作戦時に臨時に編成される兵站部隊の
ことを言います。普通科連隊や戦車大隊には本部管
理中隊があり、そこには輸送、補給、整備、衛生の
各小隊があります。それらにさらに配属された後方
支援関係部隊で段列は構成されました。

 25連隊の段列は、天北峠を背にして、小頓別の
集落を抱え込むように半径1キロの円陣を構築しま
す。この円陣の中央には国道275号線が貫通して
いました。62式機関銃、64式小銃、バズーカな
どを装備しています。前地の戦闘で損傷を受けた戦
車や自走砲、APC(装甲兵員輸送車)などを回収
して、トーチカとして活用する計画でした。

 2戦大の段列は、本幌別から咲来峠に至る道路に
沿って長径3キロにわたって部隊を縦深に置きます。
装備火器は25連隊と変わりありませんが、固有の
戦車回収車(リカバリーと通称し、戦車の車体にレ
ッカーなどを積んであります)やAPCをもつので、
これらも戦力として活用できます。

 浜頓別から天北峠まで50キロ、枝幸港から咲来
峠まで40キロです。



(つづく)


(あらき・はじめ)


☆バックナンバー
 ⇒ https://heitansen.okigunnji.com/

荒木さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。

https://okigunnji.com/url/7/


●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
 https://amzn.to/31jKcxe

-------------------------------
松下村塾から沢山の「天才」が生まれた秘密
http://okigunnji.com/url/208/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Audible会員なら、数多くのオーディオブック、
ポッドキャスト、限定コンテンツを月額1,500円で
好きなだけ聴き放題できます。まずは30日間の
無料体験を始めませんか? 
https://amzn.to/42ZaOnl
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
-新感覚 教育メディア-
哲學ツーリズム 光を観る旅
http://okigunnji.com/url/187/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
三井・三菱財閥をわずか一代で超えた男の経営學
↓↓
http://okigunnji.com/url/80/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)

メインサイト:
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------

購読解除はこちらで
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com


---------------------------

投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権は
メールマガジン「軍事情報」発行人に帰
属します。

Copyright(c) 2000-2024 Gunjijouhou.All rights reserved