配信日時 2024/07/02 08:00

【情報戦を生き抜くためのインテリジェンス(8)】「情報」という言葉は、訳語として日本で造られたもの     樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

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おはようございます、エンリケです。

インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
の8回目。

まさにインテリジェンスの教科書ですね!

くわしくは本文でどうぞ。


エンリケ

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情報戦を生き抜くためのインテリジェンス(8)

「情報」という言葉は、訳語として日本で造られた
もの


 樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

───────────────────────
 
□はじめに

拙著『ウクライナとロシアは情報戦をどう戦ってい
るか』(※)において、情報の真偽を確認する簡単な方法
について「ファクトチェック機関」のレーティング
などの活用について述べました。

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しかし、偽情報を流す方から見れば、それを逆手に
とってファクトチェック機関や自社内にファクトチ
ェック機能を有する大手のマスコミなどを、ターゲ
ットとして攻撃すれば、より確からしい嘘をより拡
散させることができるという手法は容易に考えつく
わけです。

筆者は、実際にそれをやるとなると結構ハードルが
高いだろうなと考えていました。

ところが、フィンランドのCheck First社 やnature
誌(*1)によれば、すでにその手法は実行されていて、
ファクトチェックやメディアが誤・偽情報からの防
御のつもりで行なっていることが、逆に誤・偽情報
を広げる結果になっているというのです。

 たとえば、偽の動画に、信頼できるメディアや実
在の組織のロゴを入ることなどで、そのメディアや
組織の信頼度が高ければ高いほど簡単に騙すことが
できるというわけです。

(*1:Prominent misinformation interventions r
educe misperceptions but increase scepticism 
2024年6月10日)

ロシアのデジタル影響工作「オペレーション・オー
バーロード(Operation Overload)(*2)」はファク
トチェック団体、大手メディア、研究者に誤・偽情
報をあえて暴露させ、それによって誤・偽情報の拡
散を行なうことを目的した作戦を繰り広げていまし
た。
(*2 WWIIにおけるノルマンディー作戦の連合軍
側のコードネーム https://checkfirst.network/op
eration-overload-how-pro-russian-actors-flood-
newsrooms-with-fake-content-and-seek-to-divert
-their-efforts/ 2024年6月4日)

その目論見通り、誤・偽情報はターゲットとなった
ファクトチェック団体や大手メディアの報道後、よ
り拡散したとCheck First社は実態を公開しています。

また、我が国では2024年6月8日、KADOKAWAのデー
タセンターのサーバーがランサムウェアによるサイ
バー攻撃を受け、「ニコニコ動画」ならびにシステ
ムに障害が発生し、復旧に1カ月以上を要すると発
表されました。

2022年9月7日ウクライナ戦争に関連してロシアのラ
ンサムウェア攻撃集団が、我が国の複数の企業に対
してサイバー攻撃を行ないました。その時は、対策
をとったので、障害は発生しなかったと発表されま
したが、たとえば、その時に何らかのマルウェアを
仕掛けていて、警戒が薄れた時期を見て、ランサム
ウェアを発動させた可能性もあります。

 情報戦争は、凄まじいスピードで進化しています。
今後、上記についてもフォローアップして書きたい
と思います。


▼「情報」は、明治時代に作られた旧陸軍の造語

今回のテーマは「情報」という言葉が、いつ頃から
使われだしたかについてです。

先回は我が国初の組織的情報機関が日本書紀に記さ
れていると述べたように、古くから相手の様子をさ
ぐって得た知識やそれを知らせるという概念や行為
は、ありましたが、それらを的確に表す「情報」と
いう言葉はなかったようです。

この「情報」という言葉ですが、これは中国から来
たものではなく、訳語として日本で造られたもので
す。

従来の通説では、森鴎外が1887年頃に『戦争論』を
訳した時(Nachricht)の訳語として最初に「情報」
という言葉を使用したとされていました。これは、
日本医療情報センター理事の長山泰介氏が「情報と
いう言葉の起源」(『ドクメンテーション研究』19
83年、第33巻、pp.431-435)において、森鴎外造語
説を唱えたことから、一般に信じられるようになっ
たようです。

しかし、1876年出版の日本陸軍の翻訳教範『仏國歩
兵陣中要務實地演習軌典』(訳者:酒井忠恕(*4)陸
軍少佐)において、すでに仏語の訳語として「情報」
が使用されていることが明らかになりました。

(*4 忠恕とは、正しい思いやり(相手の立場になっ
て考える)。孔子の言葉に「君子の道は忠恕のみ」
という言葉もあります。忠恕氏は、のちに酒井清に
改名)

したがって、それまでの通説は覆されているわけで
すが、著名な森鴎外の方が記憶に残りやすいためか、
鴎外説もいまだに散見されます。

この「情報」が使われるようになった経緯は、当時
神戸大学教授であった小野厚夫氏が詳しく調べてい
ます。

小野氏によれば、フランス語のテキストの原語はre
nseignementです。そして、野外訓練に関する解説
(問答形式)集である『仏国歩兵陣中要務實地演習
軌典抄』(訳 酒井清)の添え書きにおいて、「情報」
を「敵のようす、情状の知らせ」という意味で使用
したとしています。

また、初期の頃は「情報」と「状報」が併用されて
いました。「情」と「状」という漢字の意味すると
ころからみれば、「情」は心のうちに隠れて見えな
いもの(たとえば敵の指揮官の意図など)、「状」
はその外見でわかるもの(たとえば鉄条網や火器の
位置など)と解釈することもできそうです。

しかし、1890年頃から「情報」に統一されていった
ようです。これについて、小野氏は、1887~88年頃
に兵語辞書が編纂されたためではないかと指摘して
います。

このように「情報」はもともと軍事用語として用い
られていましたが、日清・日露戦争の報道で新聞用
語として定着、その後、国語辞典にも収録されるよ
うになっていきました。


(つづく)



(ひぐち・けいすけ)



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)



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