配信日時 2024/06/26 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(67)】自衛隊砲兵史(13) 107ミリ重迫撃砲(3)    荒木 肇

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当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
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自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第67回目。

荒木先生らしい、緻密で面白い内容です。
その背後には分厚い取材が存在しています。

これからも、そういう「目に見えないところ」に
気づく人でありたいですね!


エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(67)

自衛隊砲兵史(13) 107ミリ重迫撃砲(3)



荒木 肇

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□ご挨拶

いよいよ梅雨入りです。それにしても例年から比べ
ると10日も、あるいは2週間も遅くなっていると
か。線状降水帯の警報もあり何かと心配になります。

 陸自発足時には特科(砲兵)部隊に迫撃砲も供与
されました。普通科(歩兵)小銃部隊にも60ミリ、
81ミリのアメリカ製迫撃砲が装備されます。また
口径107ミリの重迫撃砲も普通科連隊の中の重迫
撃砲中隊がもつようになりました。

 60ミリは威力不足ということから廃止され、普
通科連隊小銃中隊に81ミリ迫撃砲が標準装備にな
ります。陸自のOBたちに聞いてみると、防衛大の
12期卒業生の方が、60迫小隊長だったことがあ
ったとか。60年ほど前になるのでしょう。

 そうして107ミリ重迫撃砲は現在の120ミリ
迫撃砲に代わっています。また、先般から新しい6
0ミリ迫撃砲が装備されるようになりました。普通
科(歩兵)の装備は興味深いです。この迫撃砲はオ
ーストリアのヒルテンベルガー社製で、口径は60
ミリ、砲身長は82.5センチメートルしかなく、
重量も6.2キログラム、1人で運搬や射撃ができ
ます。しかも発射速度は30発/分といわれます。
陸自普通科部隊の重要な火力です。


▼60ミリ・81ミリ迫撃砲

 この60ミリ迫撃砲M1は時代考証が正確なアメ
リカ映画には必ず登場します。「プライベート・ラ
イアン」では市街地での戦闘で接近するドイツ兵に
手で投げていたのが印象的でした。同じ監督による
「ザ・パシフィック」でも海兵隊が、あるいは「バ
ンド・オブ・ブラザース」でも空挺兵たちが直接支
援火器として使っています。

 自衛隊に供与されたのは60ミリ迫撃砲M1でし
た。1人で運搬、射撃できる最軽量の火砲でした。
砲身長は830ミリ、発射速度は40発/分、最大
射程は1800メートルにもなり、最小射程は20
0メートルでした。砲身の仰角は40~85度、榴
弾、演習弾、訓練弾など6種を撃てました。

 81ミリ迫撃砲も普通科小銃中隊の迫撃砲小隊で
使われました。砲身長は1278ミリと60迫とは
大きさも異なります。重量は61.5キログラム、
最大射程は3000メートルでした。これの改良型
がM29です。

 M29をもとに豊和工業が開発し、国産化したも
のが64式81ミリ迫撃砲でした。国産化にあたっ
て口径も威力もM1と大差ありませんが、何よりも
軽量化されたことが特徴です。また、床板も円形に
して、全周射界をもてるようにしました。


 砲身長は1294ミリ、重量は52キログラム、
砲口装填で固定撃針(こていげきしん)です。射程
は俯仰角と装薬の数で調整します。

▼107ミリ迫撃砲M2

 口径の大きさから重迫(じゅうはく)といわれ、
普通科連隊の重迫撃砲中隊の装備でした。普通科連
隊は本部管理中隊(情報・補給・偵察・通信・衛生
等各小隊)とナンバー中隊といわれる複数個の小銃
中隊と重迫撃砲中隊で構成されます。中隊長が直に
指揮できる有力な火砲がこの107ミリ迫撃砲でし
た。また、空挺部隊である第1空挺団には特科大隊
はありますが、その装備は空中投下できるこの重迫
です。

 操作員は6名、砲身長は1285ミリ、重量は1
60キログラム、発射速度は20発/分、持続は5
発/分となります。最大射程は4000メートル、
射界は左右7度、仰角は60度であり、弾薬は榴弾、
黄燐発煙弾、焼夷弾、噴進弾(ロケット)の4種で
す。

▼120ミリ迫撃砲RT

 諸外国の趨勢が120ミリ迫撃砲となってきた情
勢から陸自も口径107ミリに代わって口径120
ミリの迫撃砲を装備します。フランスTBA社製の
MO120RTが重迫撃砲中隊に配備されました。
旧来の野砲並の射程8100メートルを実現し、R
AP(ロケット補助推進)弾を使えば1万3000
メートルにも達します。

 また、これまでの滑腔の迫撃砲と異なり、砲腔内
には施条されているのが特徴です。砲弾の装填は砲
口から落としますが、より正確な射撃をするために
火砲のような拉縄(りゅうじょう)射撃も行います。
拉縄というのは特別な読みをする火砲用語です。簡
単にいえば撃発装置で、縄を引くようにして発火さ
せます。

 1992年に国産化されて導入されました。特徴
は車輪付きのために機動力に優れ、ほぼ同時に装備
され始めた高機動車によって牽引されます。高機動
車につなぐには砲口にあるカバーと連結します。射
撃準備にはその連結を外すだけで独立するので、陣
地進入も射撃後の陣地変換も簡単に行なえます。

▼高機動車

 アメリカ軍の採用したハンヴィーに追随して開発
されたといっていいでしょうか。ジープ(73式小
型トラック)と73式中型トラック(2トン)の両
方を1車種で兼ねようという計画です。

 プレス・フレームに鋼板のボディ、グラスファイ
バー製のボンネットが付けられ、乗車定員は10人、
普通科1個班というところです。後部のキャビンに
はキャンバス製の覆いがあり、いわゆるソフトトッ
プでベンチシートがあります。

 全長は4.91メートル、全幅2.15メートル、
全高2.09メートル、重量は2.44トン、積載
量は1.5トンです。エンジンは排気量3900cc
のインタークーラー・ターボチャージド・ディーゼ
ルエンジンで150馬力を発揮します。

 4輪駆動で、4輪操舵、旋回半径は6メートルと
小回りの良さが光ります。タイヤはランフラット・
タイヤで被弾時が配慮され、空気圧も車内からボタ
ン一つで変えられます。通常の道路では高圧で、不
整地ではグリップ力を高めるために低圧です。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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