配信日時 2024/06/18 08:00

【情報戦を生き抜くためのインテリジェンス(6)】日本編──TikTokよりもはるかに危険なサイバー戦 の準備不足     樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

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おはようございます、エンリケです。

インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
の6回目。

きょうも有益な内容です。

さっそくどうぞ。


エンリケ

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情報戦を生き抜くためのインテリジェンス(6)

日本編──TikTokよりもはるかに危険なサイバー戦
への準備不足

 樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

───────────────────────

□はじめに

今回は、前回書ききれなかった部分を補足するため、
諸外国がTikTokに対してどのように対応しているの
かについて書きます。それに付随して、最近の報道
にみるわが国のサイバー攻撃への対応の現状などに
ついて簡単に述べたいと思います。


▼厳しい各国のTikTok対応

米国でのTikTokの禁止が話題になって以降、主要国
などでもその危険性が認識され禁止措置がとられる
ようになってきました。

●EU
2023年2月23日、職員の電子端末でTikTokの一時的
使用禁止を発表。EUの場合、職員が業務に使用す
る際に私用の電子端末でも対象に含まれるとされて
います。
報道によると、今回の決定の対象となる電子端末に
TikTokをインストールしている場合、3月15日まで
に同アプリを削除することが求められ、それ以降は、
同アプリをインストールしている電子端末は業務上、
不適格となります。
また、EUでは2022年11月16日にはオンラインプラ
ットフォーム規制の中心となるデジタルサービス法
(DSA)が施行され、TikTokは、同法の下で最も厳格
な規制の対象となる「非常に大規模なオンラインプ
ラットフォーム(VLOP)」に指定されたようです。

●カナダ
米欧に続きカナダ政府も政府発行のモバイル端末で
のTikTok使用禁止を発表。2023年2月28日から、政
府発行のモバイル通信機器からそのアプリは削除さ
れ、ユーザーが新規にダウンロードしようとした場
合はブロックされます。
データ収集に関する安全保障上の懸念が理由ですが、
個人端末での使用は禁止されていません。ただし現
首相は、企業から個人まで多くの国民が個人情報の
セキュリティについてよく考え、自らが選択するこ
とが望ましいと述べています。

●イギリス
政府職員による業務用端末などでの利用禁止を2023
年3月16日発表しました。

●オーストラリア
2023年4月4日、セキュリティ上の懸念から、連邦
政府が所有するすべてのデバイスでTikTokを禁止し
ました。
司法長官局が発行した通知によると、TikTokは「ユ
ーザーデータの広範な収集と、オーストラリアの法
律と矛盾する外国政府からの超法規的指示にさらさ
れる」ため、セキュリティとプライバシーのリスク
をもたらすとあります。

●ニュージーランド

議会のネットワークに接続された端末での利用を20
23年 3月31日から禁止しています。

●インド
インド政府は、2020年に動画投稿アプリTikTokを含
む59種類の中国製スマートフォンアプリの利用を禁
止しています。
バイトダンス社のアプリはTikTokに加え、同じよう
なショート動画アプリの「Vigo Video(ヴィーゴビ
デオ)」、社交アプリの「Helo(ヘロ)」の合計3本
が使用禁止になりました。
また、この禁止対象には、WeChatも含まれ、Appleと
Googleのインド向けアプリストアからすべてのアプ
リが削除されました。
インド電子情報技術省(MeitY)は、中国製アプリが
ユーザーの個人情報を不正に盗み、インド国外のサ
ーバーに送信しているとの苦情を受けたと発表しま
した。
海外事業の拡大を進めるバイトダンスにとって、イ
ンドは成長著しい重要市場でした。調査会社のセン
サータワーによれば、TikTokは2019年にインドで3
億2300万ダウンロードを達成。2020年1~3月期に
はそれが3カ月間で6億1000万ダウンロードに急増
し、それは全世界のダウンロード数の30.3%を占め
ていました。

●ネパール
政府は2023年11月13日、TikTokの利用を禁止する方
針を発表しました。
この決定は、TikTokにかかわるサイバー犯罪の増加
を受けて、社会の調和を乱すものの規制であるとさ
れています。ただし、ネパール国内では、言論や表
現の自由に反するとの批判も出ています。

以上のように主要国は、それぞれの国の実情に応じ
た脅威を認識しており、TikTokの禁止の措置をとっ
ています。このように、他国のSNSを制限するのは特
別なことではありません。

当の中国政府はFacebookやGmail、YouTubeなど欧米
SNSへのアクセスを遮断していますし、LINEも2014年
に明確な理由が説明されないままブロックされてい
ます。

ところが、中国のように情報を統制できる国家でも、
中国在住の外国人の多くが、仮想ネットワークサー
ビス「VPN」を使い、規制をくぐりぬけてTwitterや
Facebookにアクセスしているのが現状のようです。

 TikTokも、国内で禁止されても、禁止されていな
い外国経由でアクセスできる抜け道はあるとされて
いますので、実質的には特定の国だけで完全に使用
できなくすることは、困難なのでしょう。

いずれにしても、以上のような国々は、十把一絡げ
にSNS禁止ではなく自国の実情や脅威認識に合わせて、
個別にアプリの使用を制限または禁止しています。

しかし、わが国の実情は先回のメルマガで述べたと
おりです。TikTokについてなんらかの対策や少なく
とも問題があるとの懸念を国民に周知しなければ、
いつの間にか情報操作に活用される恐れがあります。

あまりに遅い日本のサイバー攻撃対処

TikTokに関連して調べていくと、より重大な脆弱性
を発見しました。それは、わが国の国家としてのサ
イバー攻撃への対応についてです。

サイバー安全保障に関しては、2022年12月国家安全
保障戦略においてサイバー安保能力を『欧米主要国
と同等以上に向上させる』方針が示され、攻撃を未
然に防ぐ手法である「能動的防御」の導入が明記さ
れました。

それらを受けて2023年1月末、内閣官房に『サイバ
ー安全保障体制整備準備室』が設置されました。

準備室は2023年秋に有識者会議を立ち上げて課題を
整理し、2024年の通常国会に必要な法案を提出すべ
く準備を進めることになっていたはずです。

しかし、2024年5月17日の報道によれば、「政府は
『能動的サイバー防御』を導入する方針で、近く有
識者による会議を設置。これを踏まえ、自民党は先
手を打ってサイバー攻撃への対抗措置をとる『能動
的サイバー防御』の導入に向けて、自民党は、必要
な法整備の議論を始めました。憲法が保障する『通
信の秘密』の規定とどう整合性をとるかなど、課題
や対応策を整理し、政府に提言することにしていま
す」
との報道がありました。

2022年12月以降、有識者会議も設置されていなけれ
ば、法整備の議論すら行なわれていなかったことが
明らかになりました。著者はこれを知ってスピード
感の無さに愕然としたわけですが、そのようななか、
2024年6月7日にようやく第1回有識者会議が開催
されました。

午前8時35分から9時35分のわずか1時間の会議で
す。公開された議事録の要旨を読む限りにおいては、
有識者の顔合わせとサイバー安全保障の主要な問題
点の把握、今後検討すべき3つの分野のテーマ(官
民の情報共有・民間支援、通信情報の利用、攻撃者
のサーバー等の無害化)が、分科会で検討されるこ
とが決まっただけのようにしか見えません。

国家に重大な影響を及ぼすサイバー防衛に関してす
らこのスピード感での対応ですから、TikTokへの対
応などできるはずがないというのを改めて認識した
次第です。

▼サイバー攻撃は「対策が不十分な」ところに集中
する

令和5年版の防衛白書を見ると、情報戦に関連して
次のような記述があります。

「国際社会においては情報戦との名のもと、様々な
行為が行われていることを踏まえ、国内外における
信頼性を確保するうえで、わが国防衛の観点から実
施する情報戦対応の外縁について明示することが重
要である。
具体的には、認知領域を含む情報戦とは、わが国防
衛の観点から、有事はもとより、現段階から、(1)
情報機能を強化することで、多様な情報収集能力を
獲得しつつ、(2)諸外国による偽情報の流布をはじ
めとしたあらゆる脅威に関して、その真偽や意図な
どを見極め、様々な手段で無力化などの対処を行う
とともに、(3)同盟国・同志国などとの連携のもと、
あらゆる機会を捉え、適切な情報を迅速かつ戦略的
に発信するといった手段を通じて、わが国の意思決
定を防護しつつ、力による一方的な現状変更を抑止
・対処し、より望ましい安全保障環境を構築するこ
とをいうものとする。
なお、わが国の信頼を毀損する取組(SNS などを介
した偽情報の流布、世論操作、謀略など)は実施し
ない」

と記されていますが、最後の「わが国の信頼を毀損
する取組は実施しない」には違和感を覚えます。

というのは、(2)において様々な手段で無力化など
の対処を行なうとしていますが、その具体的手段は
どこにも示されないまま、最後に自らの対処手段を
縛るような事項を敢えて白書に入れる必要があるか
ということです。果たして、これが情報戦の戦い方
の国際基準なのでしょうか?

しかるべきところで、研究は行なわれていると思い
ますが、世界的な基準に合った対応をすべきだと思
います。

なぜなら、ウクライナ戦争におけるロシアのサイバ
ー攻撃は、ウクライナがアメリカなどの支援を受け
て適切な対応を取り出したとたんに、ロシアと直接
戦争をしているわけではないウクライナ周辺国への
攻撃が急増しています。

あたかも水が高いところから低いところへ流れるよ
うに、対策が不十分なところへサイバー攻撃も偽情
報も集中していったのです。

SNSによる偽情報は、サイバー攻撃の前哨戦的な
意味合いもあります。おびただしいSNSの偽情報
の陰でサイバー攻撃は本格的な部隊によって行なわ
れています。

もちろん、本当はわが国においてもっとしっかりし
た対策が立てられていて、私の調査不足であればい
いなと思っています。特に、サイバーに関しては専
門家の方にご教示いただければ幸いです。

次回からは、SNSから離れてインテリジェンスに
関連して思いつくテーマのまま書きたいと思います。



(つづく)



(ひぐち・けいすけ)



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)



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