配信日時 2024/06/12 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(65)】自衛隊砲兵史(11) ドクトリンとコンセプト     荒木 肇

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知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
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のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第65回目。

非常に重要な内容です。
主権者なら必ず弁えておかねばならない常識です。

軍事や安保国防の啓蒙書、入門書、ガイドブックには
必ず記載しなければいけない内容と感じます。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(65)

自衛隊砲兵史(11) ドクトリンとコンセプト


荒木 肇

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▼知られていない「軍事の常識」
 
陸上自衛隊砲兵は、ただいま大きな改革の中にあり
ます。砲身砲は削減され、部隊は次々と改編されて
いるところです。203ミリ自走砲やMLRS(多連装
ロケットシステム)は廃止され、地対艦ミサイルが
重視され、スタンドオフ(敵の射程外から撃つ)能
力を高める、さらにはレールガン(電気エネルギー
を使う)、高速滑空弾などの開発も進んでいます。

 そうした動向に詳しい方や、関心を持たれる方も
多くなりました。一般の方々の間に軍事技術に関心
が高まることはたいへん嬉しいことです。しかし、
ときに不安を持つこともあります。カタログデータ
だけをご覧になって、性能の比較、費用対効果のこ
とばかりが話題になることが多いように見えるから
です。

なぜ、自衛隊はあんな物を使うのだ、こうすればも
っといいのに、そんなことも防衛省・自衛官には分
からないのか、などと評論家が言われることが多い
と思います。それがまた組織や人材育成についての
批判が絡められることも多いようです。

なんとなく「ああ、自衛隊の装備はだめだな」とか
「訓練も無意味なことをしているな」、「日本型組
織がダメなんだよ」などという表面的な理解に基づ
いた誤解も広まってしまいます。自衛隊のような武
装組織について誰もが自由に批判や評論できること
は大切ですが、案外、知られていない「軍事につい
ての常識」があります。

それは「ドクトリン」と「コンセプト」です。ドク
トリンは「綱領」とも訳されますが、要は「どのよ
うなところで、どんな戦いをするのか」ということ
になります。

▼アメリカ陸軍の「エアランド・バトル・ドクトリ
ン」

 わたしは、世代的には「エアランド・バトル・ド
クトリン」に衝撃を受けたものです。これは198
0年代に、将来を予想し立てられたものでした。こ
との起こりは1973(昭和48)年の第4中東戦
争の戦訓です。エジプトがシナイ半島に、シリアは
ゴラン高原に奇襲をかけて、イスラエル軍が壊滅的
な被害を受けました。アラブ連合軍の陸・空統合作
戦の勝利でした。

 この当時、米陸軍はベトナム戦争での戦訓から手
にした「反乱鎮圧」を主眼としたドクトリンを捨て
ました。予想される戦場、中部欧州の平原での大規
模作戦を考えるようになったのです。研究が重ねら
れ、陸・空戦力の統合と、機動戦、縦深戦闘を組み
合わせたエアランド・バトル・ドクトリン(198
2年)の成立でした。1991(平成3)年の湾岸
戦争でもそれは「デザート・ストーム(砂漠の嵐)」
作戦で適用され、見事な成果を収めました。「10
0時間戦争」とまで語られた、その戦争での両勢力
の格差は衝撃的でした。

 MLRSによるロケット弾の猛射、戦闘ヘリによる機
関砲掃射、地対空ミサイルの戦果などが報道され、
アメリカ軍の圧倒的な強さには驚かされました。当
時は陸上自衛隊も似たような装備をもち、なるほど
対ソ連戦はこんな風になると予想していたのかと目
を見張った覚えがあります。

▼現在のアメリカ軍のドクトリン

 2022(令和4)年にアメリカ軍はMDOドクトリ
ンを確立しました。「作戦術の導入」、「戦場フレ
ームワークの拡大」、「指揮の分権化(ミッション
・コマンドの前身)」、「戦闘力の組織化」などの
考え方です。戦場フレームワークというのも素人に
は難しい言葉になります。でも、要するに各人が考
える戦場の規模、枠です。どこまでが戦場なのか、
どのあたりまでが戦う場所なのかということになり
ます。

 エアランド・バトルでは縦深、近接、後方という
3つのフレームワークが確立されましたが、MDOでは
縦深火力、縦深、近接、支援、作戦支援、戦略支援
の6つにも広がりました。それぞれの定義がきちん
と決まり、それぞれの目的にふさわしい、作戦遂行
に必要な基本的な原則事項、戦術、戦法、幕僚活動
であり、部隊行動の指針となるものです。

 では、陸上自衛隊はどうか。おそらく現在も、新
しいドクトリンの確立のために日夜努力をしている
のです。ドクトリンの改革は簡単ではなく、具現化
するためにはOTMLPと略称される、編成、訓練、装備、
教育、人事制度などの改革を一体化して、一貫性を
もった施策が必要です。装備や訓練を批判すること
は簡単でしょう。しかし、戦い方そのものを考える
ことなく、ただあげつらうような発言は困ります。

▼コンセプト

 コンセプトとは何か。「将来の激しい変化に対応
するために、新たな作戦思想や技術に基づいてドク
トリンに変革を生みだすアイデア」であると、ある
研究官から教示を受けました。

 激しい変化とは、まさに日常です。いまスタンド
オフ(敵の射程外から敵を撃つ)を実現するために
新しい技術や施策が開発されています。同時に、領
域横断作戦という考え方に基づいた新しい戦術や教
育も考えられているところです。

 今回は迫撃砲の歴史を考える前に、ドクトリンや
コンセプトという軍事を考えるための基礎・基本に
ついて寄り道してしまいました。次回は昭和期の迫
撃砲、自衛隊砲兵の中の迫撃砲について考えてみた
いと思います。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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