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おはようございます、エンリケです。
インテリジェンスのプロ・樋口さん(元防衛省情報本
部分析部主任分析官)がお届けする新連載は、
『情報戦を生き抜くためのインテリジェンス』
と銘打ち、インテリジェンスに関するはなしをエッセ
イ風に語っていただく内容です。
初回記事では、
新聞というメディアの衰退、紙媒体とデジタル媒体、
メディアとしての機能とは?といったことが取り上
げられています。
新聞の見出しやレイアウトは情報の重要性を判断する
上で重要な存在、という見逃せない指摘もあります。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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新連載・情報戦を生き抜くためのインテリジェンス
(1)
新聞は十数年後に消滅するか?
樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)
───────────────────────
□はじめに
2022年10月~23年4月まで「ウクライナの情報戦争」
というタイトルでメルマガに掲載し、その後それを
ベースに『ウクライナとロシアは情報戦をどう戦っ
ているか』と題した本を上梓させていただきました。
さて、今回から「情報戦を生き抜くためのインテリ
ジェンス」に関連することを思いつくままに書いて
いきたいと思います。
▼激減する新聞発行部数
すでに実感として感じている方も多いと思いますが、
わが国における新聞(一般紙、スポーツ紙合計)の
発行部数は年々激減しているそうです。
日本新聞協会が2023年12月に発表した同年10月時点
の新聞発行部数は、2859万部と前年比で7.3%、約2
25万部も減少しているそうです。
新聞の発行部数のピークは1997年の5376万部で、そ
れから四半世紀で2500万部も減少したことになりま
す。
2022年と同様のペースで毎年225万部ずつ新聞の発行
部数が減少し続けると仮定した場合、13年後(2036
年)には「紙の新聞」が姿を消す計算となります。
果たして、本当に紙の新聞は消滅してしまう運命な
のでしょうか?
総務省の「令和4年度情報通信メディアの利用時間と
情報行動に関する調査報告書」(2023年6月)による
と、2022年度の平日における全年代(10代から60代)
の新聞を読む時間は1日平均わずか6分です。
インターネットの利用時間は1日に約3時間、テレビ
は2時間15分、ラジオは8分ですから、新聞はイン
ターネットの約30分の1の時間しか利用されていな
いことになります。
資料を年代別に見ると、50~60代が新聞の利用時間
を押し上げているだけで、それ以下の世代では、新
聞はほとんど読まれていないことがわかります。
経済ジャーナリストであり千葉商科大学の教授であ
る磯山友幸氏によれば、毎年、自身が勤める大学の
学生たちを対象に、「紙の新聞をどの程度読んでい
るか?」に関するアンケート調査を行なっているそ
うです。
2023年度には、計1026人の学生のうち、紙の新聞を
「まったく読まない」と回答した学生が728人に上り、
全体の70%にも達したそうです。
一方、「定期購読している」と答えた学生はわずか
13人であり、1.3%にとどまります。この数字には、
自宅通学生で親が購読している新聞を読んでいる学
生も含まれているため、自らが購読し、日々目を通
している学生はごくわずかであることが示唆されま
す。
そうは言っても、全体を見れば紙からWeb版に移行し
て新聞を読んでいる人が増えていると思われるかも
しれません。しかし、実際はそうでもないようです。
日本の新聞業界の中では、デジタル化に成功を収め
ているとされる日本経済新聞でさえ、日経電子版の
契約数は100万部に過ぎず、ピーク時から減少した1
25万部を補えていないそうです(紙の新聞は、ピー
ク時の300万部超から175万部に減少)。
こうした傾向から、紙だけでなく新聞というメディ
アの形式自体が危機に瀕しているといえるでしょう。
▼見出しや記事の配置で情報の重要性がわかる
新聞のレイアウトは、自らが興味を持たない情報で
あっても、紙面をめくるなかで自然に目に触れると
いう利点があります。また、見出しの大きさや記事
の配置などから、その情報の重要性を一定程度判断
することも可能です。
これらの要素は、自身の好みに合った情報が多く提
供されるSNSやネットとは異なる特徴です。時代
的にはコスパやタイパが求められていますが、多種
多様な情報の中からやや時間をかけて自らの判断や
行動に役立つ情報を見つけ出し整理することは、自
分で情報を分析し、インテリジェンス(プロダクト)
を生成する上で非常に重要です。
紙の本が電子書籍に置き換えられると言われて久し
いですが、紙の書籍はなお存続しています。同様に、
各新聞社もさまざまな取り組みを行ない、読者のニ
ーズに合ったコンテンツやサービスを提供しようと
しています。時代の変化やテクノロジーの進化によ
り、紙の新聞の形態や役割は変わっていくものと考
えます。
しかし、私は紙の新聞は今後大幅に減少するものの、
今後十数年で消滅してしまうことはないと考えます。
また、インテリジェンス的に国際情勢に及ぼす影響
の大小を比較する上ではデジタル化が主流になって
も新聞のレイアウトは残して欲しいと考える一人で
すが、皆さんはどう思われますか?
(つづく)
(ひぐち・けいすけ)
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【著者紹介】
樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
元防衛省情報本部分析部主任分析官。防衛大学校卒
業後、1979年に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議
事務局(第2幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。
陸上自衛隊調査学校情報教官、防衛省情報本部分析
部分析官などとして勤務。2011年に再任用となり主
任分析官兼分析教官を務める。その間に拓殖大学博
士前期課程修了。修士(安全保障)。拓殖大学大学
院博士後期課程修了。博士(安全保障)。2020年定
年退官(1等陸佐)。著書に『2020年生き残りの戦
略』(共著・創成社)、『2021年パワーポリティク
スの時代』(共著・創成社)、『インテリジェンス
用語事典』(共著・並木書房)、近刊『ウクライナ
とロシアは情報戦をどう戦っているか』(並木書房)
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