配信日時 2024/05/13 05:08

【本の紹介】『米軍広報マニュアル─統合参謀本部広報ドクトリン』米統合参謀本部編 前山一歩(海上自衛隊元1佐)編訳

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単なる無機質なマニュアル本か、、、
はじめはそう思った。
しかし読み始めてみると、、、、


『米軍広報マニュアル─統合参謀本部広報ドクトリ
ン』
米統合参謀本部編
前山一歩(海上自衛隊元1佐)編訳
A5判248ページ
発行日:2023/9
本体価格:¥2200
発行:並木書房
https://amzn.to/3ProPoI


おはようございます、エンリケです。

この本は、米軍の広報ドクトリン『JP3‐61』最
新版の全訳です。

前山・元一等海佐が翻訳・解説しており、この解説
がすごくいいですよ!

例えば、米軍広報とはなにをするのか?について、

〈米軍の広報には、3つの大きな役割があり、次のと
おりである。
(1)自己の組織の外に情報を発信する部外広報
(2)組織内や組織の構成員に情報を発信する部内
広報
(3)指揮官に対する報告・助言〉

とじつに頭に入りやすく書かれています。

この本については、
この文もある前山さんの解説、第II部「『JPー3061』
の活用」をまず読むのが良いと感じます。


前山さんはこういう方です。

前山一歩(まえやま・いっぽ)
1966年浦和市生まれ。防衛大学校(管理学)卒。海
上自衛隊P-3C/OP-3C/EP-3パイロット。第7航空隊
(鹿屋)、第2術科学校外語教官室(英語教官)、統
合幕僚事務局第1幕僚室(渉外副官)、米太平洋軍連
絡官(ハワイ)、第51航空隊(厚木)、バーレーン
防衛駐在官兼米第5艦隊連絡官、産経新聞社研修、
海上幕僚監部給与室、第81航空隊(岩国)、統合幕
僚監部副報道官、幹部学校教官、アナポリス(米海
軍兵学校)連絡官、2022年5月に1等海佐で定年退職。
慶応義塾大学大学院法学研究科政治学専攻ジャーナ
リズム専修(修士)。現在は株式会社IMマネジメン
トジャパンを設立し代表取締役社長。


米軍広報の宝典、80年以上にわたる米軍広報のノウ
ハウを集大成した統合参謀本部広報ドクトリン『JP
3-61』最新版の全訳がついに登場しました!
ここからの話、しっかり聞いておく価値があるはず
です。

現代の戦場、特に有事と平時の境界が曖昧な現代戦
では、広報は知性の戦場として最も厳しい戦いに巻
き込まれています。

『JP3-61』が説くのは、米軍広報の至上原則「事実
と真実の公表」です。情報の信頼性こそが成功への
鍵であり、国民を欺くことは、軍事行動の正統性と
信頼性を損ない、一度傷ついた信頼を取り戻すのは、
実に難しいとされます。

そして、『JP3-61』で最も注目すべき点は、広報が
総務や監理のカテゴリーではなく、米軍内で最も重
要な作戦部門に位置づけられていることです。わが
国にとって、最も価値がある部分といえるのではな
いでしょうか?

昔は総務のカテゴリーに所属していた広報が、今で
は作戦部門に位置づけられ、作戦行動と連携し、外
交交渉を有利に進める役割を果たしています。情報
通信技術(ICT)時代に適応するための広報の実践的
な戦略と戦術が、この文書で詳しく示されています。

『JP3-61』が2010年に発刊されるまで、米軍内でも
広報は長らく総務や人事部門に所属していました。
しかし、科学技術やテクノロジーの発展、グローバ
ル化による国内と国外の境界の曖昧さ、社会環境の
変化に伴い、広報も考え方をPR(Public Relations)
からPA(Public Affairs)へと変革してきたのです。

総括すれば、PAはPRを基盤にしつつ、戦略的な主体
性を持ち、積極的な相互コミュニケーションを構築
し、ポジティブな活動を促進する新しいアプローチ
を提唱していると言えるでしょう。

まずは、編訳された前山元1佐の言葉をご覧くださ
い。

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はじめに(前山一歩・元海自1佐 米海軍兵学校連絡
官)

 世界で最も情報化社会が進んでいる米国において、
外交・安全保障の担い手である米軍は、2010年に
『広報に関する統合ドクトリン(JP3-61:Joint Pu
blication 3-61 Public Affairs)』を大幅に改訂し
た。この改訂版では、広報の位置付けを、それまで
の総務・監理のカテゴリーから作戦・運用のカテゴ
リーに変更している。2015年、2016年には一部内容
がアップデートされ、本書はその最新バージョンを
全訳したものである。

   JP3-61では、次の5原則を示している。
1.事実・真実の公表
2.適時の情報および映像の提供
3.情報源の安全の確保(国家機密に関わる情報の
保全義務)
4.一貫した情報提供
5.国防総省が提供する情報の公表

 この『JP3-61』の中で興味深いのは、広報におい
てプロパガンダは実施しないと明記し、積極的に正
しい情報や映像を国内や国際社会に発信し、米国の
作戦行動に対する理解を促進することで、敵対勢力
のプロパガンダの効力を低減させ、国家、戦略、作
戦の目標を達成することができると明記しているこ
とである。そして、『JP3-61』は、80年以上に及ぶ
米軍広報の試行錯誤の結果と情報化社会による社会
環境を反映し実用されているドクトリンである。
   ところで、『JP3-61』の「3」は米軍において作
戦・運用のカテゴリーであることを示している。通
常、日本においては企業や官庁、地方自治体などに
おける広報は総務・監理系統におかれているのが一
般的であるが、米軍は広報を作戦・運用に位置付け
ている。かつて米軍も総務・監理系統の広報はカテ
ゴライズされていたが、2010年のドクトリン改正時
に作戦・運用のカテゴリーに移された。

   この背景には、米軍の広報は太平洋戦争以来80
年以上にわたり、その時代の社会情勢や技術の進歩
に最適解を求め、常に試行錯誤を繰り返してきた歴
史を持っており、その集大成である『JP3-61』が作
戦・運用のカテゴリーに移動したということは大き
なイノベーションが起きた証左であり、世界の潮流
に後れをとっている日本は先入観を排して真摯に学
ぶことが必要であろう。

   日本において広報はPR(Public Relations)と
いわれているが、ミリタリーの世界ではPA(Public
 Affairs)とされている。現代戦は、MOOTW(Milit
ary Operations Other Than War:戦争ではない軍事
行動)やハイブリッド戦と呼ばれる平時の中で情報
戦、世論戦、歴史戦、そしてサイバー空間において
攻防が行なわれる。すなわち砲弾が飛び交うことな
く有事が常在し、社会が認知することのない領域で
激しい戦いが起きているのである。

   このMOOTWやハイブリッド戦の環境下でし烈なし
のぎあいが行なわれる安全保障の分野において、広
報はPRの「社会との関係構築」からPAの「社会への
積極的関与」という現実的かつ具体的な概念が用い
られている。

   ハイブリッド戦において平和的に勝利を勝ち取
り武力行使を抑止することが、現代のミリタリーに
おける重要なミッションであり、「PA」という概念、
「目的の達成のために行なう社会への戦略的関与活
動」が重要な任務として付与されているのである。

   ICT(Information and Communication Technol
ogy)時代は、大量の情報が氾濫しておりビックデー
タの処理、すなわちデータサイエンスのマネジメン
トが国家や企業の命運を左右する時代になっている。
加えて私たちの日常生活に視点を移すとメディアは
多様化し、情報の伝達経路は 複雑化・多層化してい
る。

   こうした社会環境の変化の中で国民や世論と率
直に対話し、理解と信頼を得るためにあらゆる努力
をする必要があり、それが民主主義に対する責任で
あると『JP3-61』では捉えている。

   ハーバード大学ケネディスクールの学長を務め
知日派として知られる国際政治学者のジョセフ・ナ
イ(Joseph S. Nye, Jr.)は、情報化時代における
コミュニケーション戦略の重要性を強調している。
すなわち軍事力はハード・パワーのみならず、ソフ
ト・パワーの手段を併せて用いることが必要であり、
スマート・パワー戦略には、情報とコミュニケーシ
ョンの要素を伴わなければならないとしている。 軍
事力におけるソフト・パワーの中核を担うのは広報
であり、限られた予算とマンパワーの中で防衛力の
スマート・パワー化に必要なのは、人間の知性と創
造力、そして文化である。

   本書は2つのステップから構成されている。ま
ず、ファンダメンタルな知識として、米統合軍のド
クトリンである『JP3-61』を具体的に広報活動の計
画、実施、評価をするためのドクトリンとして基本
事項、役割、責任および機能や能力との関係を紐解
き、ICTそしてグローバル化の時代に応じた広報の実
践的な戦略と戦術を提示する。そして日本の現状を
踏まえながら『JP3-61』をインプリメントし、戦略
的な広報の構築について考察していきたい。

   なお本書の出典は、“JP3-61, Public Affairs
, 17 November 2015 Incorporating Change 1, 19
August 2016 - Epub” である。(https://www.jcs.
mil/Portals/36/Documents/Doctrine/pubs/jp3_61.
pdf)
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いかがでしょうか?
 それではこの「血が滴るように実践的な広報マニュ
アル」の中身を見ていきましょう。

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目 次

はじめに(前山一歩)1

略語集 12

用語解説 15


第I部 『JP3-61』全訳 17

まえがき(ウィリアム・C・メイヴィル,Jr 米国統
合参謀本部長) 18
 エクゼクティブサマリー ─指揮官への概要説明 20
 概 要 20
 責任と連携 23
 統合作戦における広報 24
 国土防衛作戦における統合広報 26
 視聴覚情報(Visual Information)27
 結 言 28

第1章 広報(PA)の概要 29
 1.イントロダクション 29
 2. 広報(PA:Public Affairs)と作戦環境 32
   a. 全般概要 32
   b. 社会の認識 33
   c. 軍事作戦領域にわたる広報 36
 3. 広報の役割 37
   a. 先任スポークスマンおよびコミュニケーショ
ン・アドバイザー 37
   b. リーダーへの助言 38
   c. 広報・コミュニケーション活動の主導 38
   d. 指揮官意図のサポート 38
   e. コミュニケーションの統合と調整の主要コー
ディネーター 39
   f. 地域社会と主要なリーダーへの関与支援 39
   g. 効果的広報による効果 40
 4. 広報の基礎知識 42
   a. 情報の原則 42
   b. 広報の基本方針 42
   c. オーディエンス、ステークホルダー、パブリ
ック 48
   d. 計画への影響 49
   e. ナラティブ、テーマ、メッセージ 50
 5. 広報(PA)と司令官コミュニケーション・シン
クロナイゼーション 54

第2章 広報の責任と関係機関 55
 1. 概 要 55
 2. 責 任 57
   a. 国防次官補(広報)57
   b. 国防メディア事業局(DMA:Defense Media Activity)57
   c. 各軍長官 59
   d. 統合参謀本部議長 59
   e. 戦闘部隊指揮官(CCDR:Combatant Commander)60
   f. 統合軍司令官の隷下 62
   g. 統合広報支援部隊(JPASE)司令 63
   h. 各軍種部隊および機能別コンポーネント指揮
官 63
 3. 組織・編制における業務活動の関係 64
   a. インテリジェンス(情報)64
   b. 視聴覚情報(VI:Visual Information)64
   c. 情報作戦(IO:Information Operations)65
   d. その他の米政府省庁との調整 68
   e. 政府内組織(IGO)およびNGO 69
   f. ホスト国(HN)70
   g. 多国籍パートナー 70

第3章 統合作戦における広報 71
 1. 概 要 71
   a. 広報の機能 71
   b. 広報の任務 72
   c. 検討事項 75
 2. 要求事項 76
   a. 概 要 76
   b. 施 設 77
   c. 人 材 77
   d. 装備品 78
   e. 輸送・移動 79
   f. 通 信 80
   g. その他の支援 80
 3. 計 画 81
   a. 概 要 81
   b. 広報と統合作戦計画プロセス 81
   c. 広報計画の考慮事項 85
   d. 具体的な作戦のための広報計画 101
 4. 実 施 108
   a. 組 織 108
   b. 広報管理活動 108
 5. アセスメント(評価)109

第4章 ホームランドでの統合広報活動 111
 1. 概 要 111
 2. 要求事項 113
   a. 人 材 113
   b. 施 設 113
   c. 機 材 113
   d. 訓 練 114
 3. 計画立案 114
 4. 実 行 115
 5. 評 価 121


第5章 視聴覚情報(VI)122
 1. 概 要 122
 2. 情報源 124
 3. 計 画 129
 4. アセスメント(評価)140
 5. 民間当局への防衛支援に関する検討事項 140
 6. 取得、機密解除/無害化および派生画像の転送
 141


付録A
 司令官コミュニケーション・シンクロナイゼーショ
ンにおける広報の役割 144
 1. 概 要 144
 2. 情報伝達における調整の必要性 144
 3. 広報の計画立案と司令官コミュニケーション・
シンクロナイズゼー
 ションプロセス 146

付録B
 付属書Fの作成参考要領 148
 1. 状 況 148
 2. 任 務 149
 3. 任務の実施 149
 4. 運用管理と後方支援 152
 5. 指揮統制 154

付録C 情報公開ガイドライン 155
 1. 情報の公開について 155
 2. メディアとのディスカッション 157

付録D 国防メディア事業局 161
1. 国防メディア事業局(DMA:Defense Media Act
ivity)161
 2. 米軍ラジオ・テレビサービス(AFRTS:Americ
an Forces Radio and
 Television Service)161
 3. 視聴覚情報 162
 4. パブリック・ワールドワイド・ウェブサイトの
運用 163
 5.統合ホームタウン・ニュースサービス(Joint
 Hometown News
 Service)163
 6. 最新のソーシャルメディアのトレーニング、教
育、テスト 163
 7. ブロガー・ファシリテーションサービス 164
 8. 広報・視聴覚情報の教育訓練 164

付録E 統合広報支援部隊(JPASE)165
 1. 概 要 165
 2. 組 織 166
 3. オペレーションサポート 166

付録F ソーシャルメディア 172
 1. ソーシャルメディア 172
 2. ソーシャルメディアを利用する理由 173
 3. ポリシーと登録 174
 4. ソーシャルメディアに関する基本的な考え方 176
 5. ソーシャルメディアのコストとリスク 177
 6. ソーシャルメディア・マネジメント 180
 7. ソーシャルメディア・プランニング 183
 8. 危機管理におけるソーシャルメディア 185
 9. 海外広報におけるソーシャルメディア 189

付録G 統合広報訓練 192
 1. 概 要 192
 2. 情報源 192

付録H JP3-61の主要な関連文書 197


第II部『JP3-61』の活用(前山一歩)199

 1. JP3-61の概要 200
 2. JP3-61の価値 202
 (1)広報の意義と役割 202
 (2)広報の5本柱 210
 (3)広報組織 213
 3. 第6の戦場「認知領域」へのアプローチ 215
 (1)広報エキスパートチームの維持と初動対処
(JPASE)215
 (2)視聴覚情報(VI)コンバットカメラ(COMCAM)219
 (3)グローバルスタンダード人材の育成(DINFOS)221
 4. ソーシャルメディア時代の広報メソッド 225
 (1)マーケティングにおける消費者行動モデル 225
 (2)SIPSモデルの可能性 227
 5. グローバルICT時代の広報 237
 (1)作戦・運用としての広報 238
 (2)情報の収集・発信機能 241
 (3)課題と挑戦 242


おわりに(前山一歩)244


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いかがでしょうか?

この本には、軍における広報の重要性とその進化、
適用についての情報が記されており、以下4つの柱
があります。

広報の原則
米軍広報の最も重要な原則である「事実と真実の公
表」に焦点を当てています。これは信頼性の重要性
を強調し、誤った情報を提供することが信頼性と正
統性を損なう可能性があることを伝えています。

現代戦の複雑さ
現代の戦場が有事と平時の境界が曖昧なものである
ことに触れ、広報が知性の戦場として厳しい状況に
あることが説明されています。この点で、広報の役
割が強調されています。

広報の進化
過去から現在にかけて、広報の位置付けが総務から
作戦部門に変化してきたことが述べられています。
これは科学技術やテクノロジーの進化、グローバル
化、社会環境の変化に合わせた変革の必要性を示し
ています。

新しいアプローチ
最後に、広報の新しいアプローチとして、PA(Publ
ic Affairs)の提唱が述べられています。これはPR
(Public Relations)からの変革であり、戦略的な
主体性と相互コミュニケーションの強化が強調され
ています。


学んだことは以下の3点です。

「知の領域」における主戦場こそ、広報による知の
戦いである!
敵対国家勢力に対し優位性を確保する抑止力の基盤
は人材の知的能力。
知の領域での戦いで勝利を収めるには、人的能力の
向上、人的資源の確保が必要不可欠。

事程左様に米軍広報の源といって差し支えない『JP
3-61』は、あなたにとっても非常に重要な情報源な
のです。その解説を行う本著は、広報の重要性とそ
の変化を詳細かつ明確に伝えており、あなたに広報
の価値と影響力を伝えてくれる力強いメッセージを
持ち合わせています。

今や広報は、すべての作戦行動とシンクロして外交
交渉を有利に導くよう使われるツールなのです。ぜ
ひご一読をオススメします!


『米軍広報マニュアル─統合参謀本部広報ドクトリ
ン』
米統合参謀本部編
前山一歩(海上自衛隊元1佐)編訳
A5判248ページ
発行日:2023/9
本体価格:¥2200
発行:並木書房
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エンリケ


追伸

「今の軍隊は、前面の敵よりプレス対応に神経と力
を注がなければいけない」
ということばを、随分前にある軍人さんから聞いた
ことがあります。

この本を読み、ふとその言葉を思い起こしました。

「広報」は、今から先の国防安保で欠かせない戦略
分野、と捉えるべきと感じます。

この本は、ICT時代に応じた広報の実践的な戦略
と戦術を提示しているのです!


『米軍広報マニュアル─統合参謀本部広報ドクトリン』
米統合参謀本部編
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