配信日時 2024/04/17 09:00

【陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(57)】自衛隊砲兵史(3)保安隊から自衛隊へ    荒木 肇

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知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
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おはようございます、エンリケです。

「陸軍砲兵史」
の第57回目。

陸自黎明期のおはなし。
知っていそうで知らない、読めそうで読めない。
そういう種類の話なので実に学びが深いです。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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陸軍砲兵史-明治建軍から自衛隊砲兵まで(57)

自衛隊砲兵史(3)保安隊から自衛隊へ


荒木 肇

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▼講和条約と保安隊


 1951(昭和26)年9月、サンフランシスコ
講和条約が締結されました。同時に、日米安全保障
条約が結ばれ、その発効は翌52年4月になります。
それに合わせて8月には海上警備隊と統合されて警
察予備隊は保安隊となりました。

 10月には北方特科団(砲兵旅団)と隷下の独立
第1特科群が新編されて、同時にできた北部方面総
監部(札幌市)の指揮下に入りました。まず、重火
力は対ソ連ということです。53年4月には第2管
区隊の担任地域から奥羽4県が外されます。第2管
区隊は北部方面隊の主力部隊として北海道防衛に集
中することになりました。

 アメリカ軍の北海道からの撤収に合わせての力の
空白を埋めようとしたのでしょう。保安隊の定員も
3万5000人が増員され11万人体制になりまし
た。6個独立野戦特科大隊も編成されます。8月末
までに105ミリ、155ミリ榴弾砲40門が米軍
から貸与されました。

▼特科学校の教育

 米軍顧問団からの助言や援助を受けて教範類の翻
訳も進みます。射撃指揮、測量、通信、車輌等の単
科教育から各機能の総合化を図って、特別戦術課程、
幹部基本課程、幹部高等課程などが整備され、教育
を開始しました。

 別科「英語」教育も行なわれます。留学準備教育
の一環でした。1952(昭和27)年5月には、
米本土の陸軍砲兵学校に留学する準備として英語教
育が行なわれます。現在の習志野駐屯地は陸軍騎兵
学校があった土地です。そこは米軍が接収し、キャ
ンプ・パーマーとして使っていました。そこに施設
も借り入れて学生教育が行なわれます。

 現在では富士学校(静岡県駿東郡小山町)には富
士教導団が本部を置き、その隷下に特科教導隊があ
ります。この前身が特科学校配属中隊です。195
2年1月の「学校の編成及び組織」によると、「学
校隊は、学校隊本部、管理隊、診療隊及び配属部隊
をもって編成する」とあります。学校編成表による
と、配属部隊として第16中隊、次いで第15中隊
とありました。ただし、この第15中隊は高射職種
の部隊でした。

 4月8日に第9中隊が生まれます。のちに195
4(昭和29)年9月に、富士学校に移駐するまで
第9中隊が「モデル部隊」として活躍しました。こ
れが特科教導隊の起こりです。

▼第9中隊の編制と装備

 ちょっとマニアックですが、せっかくの資料があ
ります。中隊長、副中隊長、小隊長、班長、観測班
長(3名)及び選定係幹部(のちに偵察測量幹部と
改称)、砲班6個班、定員は124名でした。この
副中隊長というのがアメリカ式です。日本陸軍には
副指揮官はおかれていませんでした。

 装備は特科学校に配属当時は拳銃とカービン銃だ
けだったそうです。カービン銃というのはアメリカ
軍の7・62ミリ騎銃M1でした。軽量、2.5キ
ログラムでガス利用式の半自動銃です。半というの
は装填が自動であり、引き金を一発ずつ引かねばな
りません。全長も903ミリで、銃身長が457ミ
リです。M1ガーランドと愛称されたM1小銃と比
べると、威力は大きく劣るものの軽便さで指揮官用
にもなりました。

 拳銃は11・4ミリ(口径45)M1911A1
といわれるものです。ブラウニングが設計し、コル
ト社で明治44(1911)年から生産された、実
に息の長い銃でした。警察は米国供与のM1917
・リボルバーから国産の新中央工業のニュー・ナン
ブ回転式拳銃に切り替えましたが、陸自はこの大き
な全長218ミリ、銃身長128ミリ、重量弾倉付
きで1キログラム以上ある自動拳銃を使い続けます。

 この中隊は学校に移駐後、すぐに60ミリ迫撃砲、
1952年3月と4月には81ミリ迫撃砲を9門、
米軍から受領しました。野砲兵らしい105ミリ榴
弾砲は同年7月、8月に4門を受け取りました。

 60ミリ迫撃砲は1人でも運搬と射撃ができると
いう23キログラムの最軽量の火砲でした。砲身長
は830ミリ、発射速度は毎分40発、最大射程は
1800メートル、最小射程は200メートルです。
初期の頃は、習志野では榴弾砲が射撃できず、弾着
観測の訓練などに使ったといいます。

 81ミリ迫撃砲は米軍のM29といわれたもので
す。これを改良したのが64式81ミリ迫撃砲で、
供与当時はM29を使っています。砲身長は129
4ミリ、62キログラムと重く、最大射程は300
0メートルです。

 最後に105ミリ榴弾砲、M2A1といいます。
トラックで牽引し、全長は5900ミリ、砲身長は
2360ミリ、重量は2300キログラム、発射速
度は4発/30秒というものです。最大射程は1万
1600メートル、有効範囲は30×20メートルで
す。この有効範囲というのは着弾して破片や爆風な
どの加害範囲のことをいいます。具体的には立姿の
人員の50%がなんらかの被害を受けるということ
です。

 次回は富士駐屯地への移駐と特科学校、第9中隊
の改編などについて調べましょう。


(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴

荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。

著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか─安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!─昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊─自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。


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された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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