配信日時 2023/12/30 01:14

(再送)【加藤大尉の軍隊式英会話:世界の秘密兵器編】未来兵器シリーズ(2)――強化スーツ  加藤喬(元米陸軍大尉)

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(※)編集ミスにより、先程配信したメルマガが先
週と同じ内容になっていました。
心よりお詫び申し上げますとともに、今週号をここに
お届けいたします。

(エンリケ)


加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出ました。
今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監修),
 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj
※武器オンチのあなたやわたしに特におススメ

こんばんは!エンリケです。

「加藤大尉の軍隊式英会話」
今年最後の配信です。

今年一年本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

ではさっそくどうぞ。

エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:世界の秘密兵器編   
  Takashi Kato
  
未来兵器シリーズ(2)――強化スーツ

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□宇宙にヒトの未来がある──星の世界を目指す壮
大なオデッセイ

 
今年も『加藤大尉の軍隊式英会話』をご愛読いただ
き本当にありがとうございました。


 日米の政界は混迷の度を深め、ウクライナやイス
ラエルでは戦火が絶えません。ともすると悲観的に
なりがちな世の中ですが、読者諸氏が平穏で心休ま
る年末年始を迎えられることを願いつつ、本年最後
のメルマガをお届けします。


 1920年代アメリカで始まったラジオ放送、1950年代
後半に日本の茶の間を席巻したテレビ放送、そして
1970年代を通じ相次いで打ち上げられた米宇宙探査
機パイオニア10号、11号、そしてボイジャー1、2
号には共通点があります。意図の有無は別にして、
地球外知的生命体へのメッセージを帯びていること
です。


4機の探査機には「宇宙人への挨拶」を託した金属
板か金メッキされたレコードが搭載されており、ま
た「一億総白痴化」と評された放送内容はともかく
として、ラジオやテレビの電波は技術文明幼年期に
達した種族の存在を宇宙に向け発信するものだから
です。


 もっとも光の速さで伝播するラジオとテレビの電
波ですらまだ地球から100光年の領域に達したばかり。
銀河系の直径20万光年、厚さ1000光年の大きさから
するとまだまだ近傍です。またパイオニアとボイジ
ャー探査機は太陽系を離脱したものの、ほかの恒星
系に達するまでに数万年はかかります。ですから仮
に星間文明が存在したとしても、こういった地球か
らのメッセージが捕捉、理解されるのは遥かな未来
のことになりましょう。


 にもかかわらず、積極的銀河文明へのメッセージ
を「危険な行為であり止めるべき」との主張があり
ます。車いすの天才理論物理学者スティーブン・ホ
ーキング博士は生前、コロンブスのアメリカ大陸到
着をきっかけに先住民が絶滅寸前の憂き目を見た史
実に鑑み「宇宙人との接触を試みるべきではない」
と述べています。


 最近では、中国のSF作家リウ・ツーシン氏の『三
体II 黒暗森林』(劉慈欣著 大森望そのほか訳 
早川書房 2020年)から派生した「黒暗森林論」が
宇宙文明とのコンタクトに警鐘を鳴らしています。
どんな理論なのかと言えば、


 「生命とは生き残り繁殖することを優先するもの
で、その目的を達成するためあらゆる資源を獲得し
ようとする。しかし、資源には限りがある。従って
競争相手を排除して資源の独占を図る必要があるが、
ライバルも同じ結論に達しているはずだから、未知
の種族と接触した場合、速やかに先制攻撃をかけて
抹殺しなければならない」


と要約できましょう。


黒暗森林論が正しいなら、「メッセージに気づいた
宇宙人は、放っておけば資源争奪戦のライバルにな
る地球文明の芽を摘み取ろうとする」との結論が導
かれます。したがって、銀河文明の注目をひかぬよ
う息をひそめて暮らすのが得策だという訳です。


 これまでの人類史と、米露中北が核のチキンゲー
ムに傾注する有様を見ると、ホーキング博士とツー
シン氏の視点にはそれなりの説得力があります。領
土拡張や資源獲得のためヒトがお互いを殺戮する愚
は、不幸にも現在進行形の事実。ロシアとウクライ
ナ、イスラエルとイスラム諸国、そしてガザを統治
するハマスとの戦いも煎じ詰めれば土地をめぐる確
執です。正義と正義のアルマゲドンを信じて疑わな
い人々に共存の道を説くのは徒労にも思えます。


 しかし・・・仮に恒星間飛行を実現した宇宙文明
が存在する場合、それは取りも直さず、自滅の危険
に満ちたテクノロジー幼年期を無事通過したことを
意味します。科学技術の進化と知的成熟を通し、エ
ネルギー争奪戦や民族アイデンティティ、そして利
潤のための戦争などという未熟な振る舞いから卒業
することは可能かも知れない訳です。


言い換えれば、宇宙文明を「敵意に満ちたエイリア
ン」に見たてるのは、実は、まだ種族として幼年期
にある我々自身の姿を投影した結果だとわたしは考
えます。


 ヒトが惑星間文明に進化するにもまだまだ長い年
月がかかりましょう。しかし、愚かな自傷・自滅行
為を避け続けることができれば、遠からず人類は無
尽蔵のエネルギー源を手に入れ、星の世界に船出し
ます。


星から生まれ出た人間が星の世界を目指すのは壮大
なオデッセイ(帰郷の旅)であり、銀河文明の一員
となる通過儀礼だと信じてやみません。宇宙にヒト
の未来があるのです。


 読者の方々、良いお年を!


加藤 喬
アリゾナ州ハーフォード市にて



▼未来兵器シリーズ(2)――強化スーツ

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を抜
かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝ち」
のごとく、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な破
壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手放
せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏面
が「抑止力」なのです。
加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞれ
の武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を考
えていくことにします。

 人類の歴史は兵器開発の歴史でもあります。ヒト
は人力を超える速さ、強さ、視覚、認識力、そして
本来人間にはなかった飛行能力、潜水能力などを実
現してきたのです。
 「未来兵器シリーズ」第2回はエクソスケルトン
(甲殻類の外骨格の意)。日本語では「強化スーツ」
と呼ばれる筋力増強システムです。

 行軍とは部隊が徒歩で移動することです。新兵訓
練では不適格者を振るい落とす試験の意味合いでも
行なわれます。

ジョギングと水泳で鍛えていたので行軍を軽く見た
のが大間違い。身一つで走ったり泳いだりするのと、
小銃を持ち40キロ近い装備を担ぐ長距離行軍では体
力消耗と筋肉疲労の「質」が違います。睡眠と食事
を削られ、体力気力ともに衰えていればなおさらで
す。路程の半分も行かないうちに足元がふらつき、
顎(あご)を出す有様。大男の小隊仲間らに両脇を
支えられるようにして何とかゴールにたどり着きま
した。新兵訓練でこうですから、少人数でゲリラ戦
を行なうレンジャー部隊や少数精鋭海兵隊の戦術行
軍の過酷さは推して知るべきです。

この意味で、今回紹介する強化スーツ、別名筋力増
強システムは未来歩兵の機動力を高める画期的な新
装備になるかもしれません。砂漠地帯や高温多湿環
境でも確実に作動する電気モーターと、寒冷地でも
長時間もつバッテリーの開発など課題はありますが、
強化スーツは筋肉の疲労を軽減して歩兵の行動範囲
を広げ、また重いものを持ち上げる場合など腰の損
傷を防ぐ効果も期待できます。

 そう遠くない将来、自律型ドローンや無人戦車が
戦場に投入されることになりましょうが、強化スー
ツと前回取り上げた統合視覚増強システムを身につ
けた歩兵は「最前線の最終決断者」として重要な役
割を果たすのではないかと思います。


教材ビデオ:
 The Future of Warfare (youtube.com)
https://x.gd/z45qX
(本エピソードは3:45から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
knee(ニー)膝
ankle(アンクル)足首
double(ダブル)二倍にする 倍増させる
strength(ストレングス)強さ 力
endurance(エンデュアランス)耐久力 持久力

シナリオ(カウンターを4:05 に合わせてくださ
い)

Mainly fitted around the knee and ankles, thes
e electric systems like the Onyx developed by
Lockheed Martin can already doble a soldier’s
 leg strength and endurance.

(主に膝と足首に装着するこういった電動システム
は、たとえばロッキードマーティン社が開発中のオ
ニックスのように、すでに兵士の脚力と持久力を2
倍に増強している)

(今回のビデオは4:18まで続きます)

英語一言アドバイス:
 doubleには多くの異なる意味がありますが、本動画
では「2倍にする」という動詞として使われていま
す。ウイスキーのダブルは「普通の量の2倍」のこ
とです。軍の教練で「ダブルタイム」という表現が
ありますが、これは「駆け足」のことです。

発音サイト:
 doubleの発音 How to pronounce double | HowT
oPronounce.com
https://x.gd/q6JP0

参考サイト: 

強化スーツ パワードスーツ - Wikipedia
https://x.gd/zwkXX

ONYX 強化スーツ 動画 Take a Step into the Fu
ture with ONYX (youtube.com)
https://x.gd/oeFKX

陸自の強化スーツ 動画 Research Prototype of
High Mobility Powered Exoskeleton (Advanced De
fense Technology Ceneter) (youtube.com)
https://x.gd/YzTv8

パイオニア探査機の金属板 パイオニア探査機の金
属板 - Wikipedia
https://x.gd/Cjvjy

ボイジャー探査機のレコード ボイジャーのゴール
デンレコード - Wikipedia
https://x.gd/1gM2c

(かとう・たかし)


●著者略歴

加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT─あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK─47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。

追記
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320
オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。

軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。

 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。

 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。

 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。

加藤 喬
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