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こんばんは！エンリケです。

わが１０式戦車の３回目です。

冒頭文は、じつに加藤さんらしい内容です。
ぜひご覧ください。

では今日の記事をさっそくどうぞ。


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話：世界の秘密兵器編　　　
　　Takashi Kato

戦車の時代は続く──陸自１０式主力戦車（３）


加藤喬（元米陸軍大尉）

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□元情報機関トップに学ぶ現実的解決策

「イスラエル情報機関元トップ語る　イスラエルと
パレスチナ、２つの国家の共存以外に選択肢はない」

　11月19日付TBSニュース電子版の見出しには半信半
疑でしたが、読み終えるとこの人物のことがもっと
知りたくなりました。

　元情報機関トップとはアミ・アヤロン海軍大将
（退役）。1945年、当時イギリス委任統治領だった
パレスチナ生まれの78歳です。1963年一兵卒として
イスラエル海軍に入隊。６年後に行なわれたグリー
ンアイランド奇襲作戦では、エジプト軍の手りゅう
弾で数回負傷しつつ全島掌握まで任務を貫徹し、イ
スラエル軍最高位の「武勇勲章」を授与されていま
す。

戦争の英雄となったアヤロン氏はその後も目覚まし
い軍歴を重ね、1992年にはハーバード大学ケネディ
・スクールから公共政策の修士号を受け、同年イス
ラエル海軍総司令官に就任。これは米海軍なら海軍
作戦部長、海自なら海上幕僚長にあたる最上級ポス
トです。

　1995年の退役後、パレスチナとの和平に積極的だ
ったラビン首相暗殺を防げず権威失墜に喘ぐイスラ
エル公安庁「シンベト」の立て直しを任されていま
す。ちなみにシンベトとは、テロ組織の摘発、占領
地区での諜報・防諜活動、テロ犯への過酷な尋問、
イスラエル大使館の警護、政府高官の身辺警備、そ
してテロ組織リーダーの暗殺など「清濁併せ呑む任
務」を一手にこなす組織で、言ってみればアメリカ
の海兵隊、FBI、CIA、シークレット・サービス、国
土安全保障省を一つにしたようなものです。アヤロ
ン大将はシンベト再建の重任を５年弱で成し遂げま
した。

　一連の経歴から見えてくるのは、戦争とテロの裏
と表を知りつくした強者（つわもの）の顔。氏は戦
争であれテロであれ、ヒトが生き残りをかけて殺戮
しあう行為のおぞましさと悲哀、栄光と汚辱、使命
感と残忍性、愚かさと勇気、そして「約束の地」を
めぐる希望と絶望を最前線で体験し、時として自ら
の手も血で染めてきました。戦場から遠く離れたオ
フィスで政治家らが交渉する和平行程が、戦士と住
民が日々味わう現実と一致しないことを深く実感し
た人物だといえます。おそらくシンベト長官時代に
は「ハマス戦闘員がパレスチナ建国にかける使命感
は、ユダヤ人がイスラエルを守り抜く気概と変わら
ない」と痛感したに違いありません。

　とすれば、アヤロン氏が語った「二国家共存発言」
を「リベラルな平和思想への突然の偏向」としたTB
Sの解釈は誤りでしょう。むしろその対極にある、冷
徹な実用主義の発露だと見るべきです。つまり、
「イスラエルとハマスの血みどろの戦いは死を厭わ
ぬ愛国者同士の対峙であり、際限なく繰り返される
『定め』」と悟り、同氏は「破壊と報復の輪廻（り
んね）を断ち切るため、ユダヤ人とパレスチナ人は
約束の地を分かち合うべき」との現実的解決策に至
った。そう考えるほうが理にかなっています。

　「唯一絶対の真実と正義」に象徴される二元論の
牙城イスラエルに生まれ育ち、「ゼロサム」（勝者
総取り）心理に染まりきっていたはずのアヤロン大
将が、戦争とテロの辛酸をなめ、後年「二国家共存」
を提唱したのは驚きであり、また、世界にとって希
望の兆しでもありましょう。当事者全員が損をして
円満解決を図る「三方一両損」の知恵は、事による
と、国を問わない「ヒトの知恵」かも知れないから
です。

　本校執筆時の11月24日、イスラエルとハマスの停
戦が始まりました。今後、人質釈放と引き換えに医
療品や燃料のガザ運搬が行なわれるようです。双方
が引き金に指をかけたままの脆（もろ）い一時休戦
がいつまで続くか予断を許しませんが、これを契機
に双方が矛を収め、アヤロン大将の解決策がいまい
ちど顧みられることを強く願うものです。

　読者諸氏はどうお考えでしょうか？


■戦車の時代は続く──陸自１０式主力戦車（３）

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を抜
かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝ち」
の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な破壊
力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手放せ
ない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏面が
「抑止力」なのです。
加藤大尉の軍隊式英会話：兵器編」では、それぞれ
の武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を考
えていくことにします。

　「戦車の時代は続く」シリーズ、陸自最新鋭戦車
10式の３回目は日本製鋼所が開発した120ミリ滑腔砲
（かっこうほう）を取り上げます。

　米軍のM1エイブラムス、ドイツのレオパルト2、韓
国のK1、そして陸自の90（きゅうまる）式など、世
界の第３世代、第3.5世代戦車の大半はラインメタル
社製120ミリ滑空戦車砲を装備してきました。これに
対し10（ひとまる）式は、日本製鋼所が開発した純
国産120ミリ戦車砲で武装しています。ラインメタル
製を凌駕する性能と軽量化を同時達成したスグレモ
ノは、同じく日本が独自開発した10式徹甲弾を使用。
90式戦車を凌ぐ貫通力を発揮します。

　従来の105ミリ戦車砲は砲身内に施条（しじょう：
ライフリング）が螺旋（らせん）状に切られており、
これによって砲弾に回転を与え弾道を安定させてい
ました。しかし大口径化と装弾筒付翼安定徹甲弾の
普及で、ライフリングによる高回転が逆に細長い弾
体の命中精度を低下させることが判明。そこで登場
したのが、ライフリングのない滑腔砲です。
　劣化ウランやタングステンなど高密度素材で作ら
れた弾体はサボット（装弾筒）と呼ばれる支えに保
持された状態で砲身から撃ち出されます。その後、
サボットは空気抵抗で剥離。弾体は安定翼によって
回転運動しながら標的に飛んでいきます。

　10式戦車は優れた照準機能と砲身安定装置そして
自動装填装置を備えており、激しい蛇行走行中でも
標的を正確に捉え撃破することができます。ハイテ
ク装備をバランスよく組み合わせた10式の火力は侵
攻してくる敵戦車にとって大きな脅威となるでしょ
う。

教材ビデオ:
 (13) Type 10 / MOST Expensive Main Battle Tan
k - Japan's High-Tech Weapon in Action - YouTu
be
https://x.gd/XZwMK
（本エピソードは２：４５から始まります）
 
　
基本語彙（カタカナ表記は大雑把なものです）
armed with（アームド　ウィズ）を装備している　
で武装している
smoothbore（スムーズボア）滑空砲
Japan Steel Works（ジャパン　スチール　ワークス）
日本製鋼所

シナリオ（カウンターを３：０７ に合わせてくださ
い）
The Type 10 tank is armed with 120-millimeter
smoothbore gun developed by Japan Steel Works.

（10式戦車は日本製鋼所製の口径120ミリ滑空砲を装
備している）

（今回のビデオは４:０８まで続きます）

英語一言アドバイス：
smoothboreは文字通り「滑らかな穴」のことです。
戦車や野砲の場合smoothbore gunは滑腔砲で、銃身
内に施条（ライフル）が切ってあるのがライフル砲
になります。

発音サイト：
smoothboreの発音　How to pronounce smoothbore
| HowToPronounce.com
https://x.gd/7NOvL

参考サイト：
10式最新鋭戦車　10式戦車 - Wikipedia
https://x.gd/NdXQj

日本製鋼所　日本製鋼所 - Wikipedia
https://x.gd/0fcwY

滑空砲　滑腔砲 - Wikipedia
https://x.gd/F9o0E

10式戦車砲　10式戦車砲 - Wikipedia
https://x.gd/Q9hLe

アミ・アヤロン海軍大将　Ami Ayalon - Wikipedia
https://x.gd/z9LEI



（かとう・たかし）


●著者略歴

加藤喬（かとう・たかし）
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授（2014年7月退官）。
著訳書に第３回開高健賞奨励賞受賞作の『ＬＴ─あ
る“日本製”米軍将校の青春』（TBSブリタニカ）、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『Ｍ16ライフル』『ＡＫ─47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『ＭＰ３８／４０
サブマシンガン』（いずれも並木書房）がある。


追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事（桜林美佐氏）：
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm

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『レックス　戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share



きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代　(passage of
lines)　を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。

　同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は　"Repeat"　ではなく　"Say again"　です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。

　兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。　
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac"　
と表現します。

　『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。

加藤　喬
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