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『新考・近衛文麿論』
太田茂(著)
出版年月日:2022/11/16
判型・ページ数:A5・364ページ
定価:本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3XkjLUL
おはようございます、エンリケです。
日露戦争以降大東亜戦争敗戦に至る政治の歴史はブ
ラックボックス化しており、いまだ流動的で歴史と
化していない印象を受けます。
これでは、歴史から教訓を得て今に活かすことはで
きず、いまわが国を覆っている政治機能不全(誰か
の意のままに政治を操られる)という病は治らない
気がします。
そんな中出たのが二つの本で上下巻、と言って差し
支えない『日中和平工作秘史』と本著『新考・近衛
文麿論』です。
昭和初期から大東亜戦争敗戦に至る対支那外交情報
史解明への試みと言って差し支えありません。
本著第5章の「海軍と陸軍の和平への対応と責任
(補論)」を持つことで、2冊全体が頂門の一針に
なった感を持ちます。見事ですね!
なかでも自分は、
最後の陸相・阿南陸軍大将と最後の海相・米内海軍
大将とのかかわりについて著者が最後に述べた言葉
が響いています。
自分の思っていたことが
ここまで言葉になるのを見たのは
これが初めてです。
ご指摘のとおりと思います。
最も近しい時代で支那大陸と深くかかわった記録と
言える『日中和平工作秘史』とともに、
本著『新考・近衛文麿論』を通じ、支那とのかかわ
りを改めて理解し、教訓を得る機会を自ら作ってみ
てはいかがでしょうか?
戦後レジームに強いられた色眼鏡はきちんと外して。
本著は、先日紹介した『日中和平工作秘史』の続編
として紡がれた作品です。
近衛文麿というを主人公に、大東亜戦争の推移と和
平工作の姿が描かれています。
その意味で前著と一対の対支那外交情報史といって
差し支えないでしょう。
『日中和平工作秘史』と『新考・近衛文麿論』
は、同じくして読むのが適切です。
『新考・近衛文麿論』
太田茂(著)
出版年月日:2022/11/16
判型・ページ数:A5・364ページ
定価:本体2,500円+税
発行:芙蓉書房出版
https://amzn.to/3XkjLUL
この本では、
◎支那事変の拡大・泥沼化は防げなかったのか?
◎なぜ「国民政府を対手にせず」の近衛声明を出し
たのか?
◎なぜ三国同盟を締結してしまったのか?
◎なぜ得体の知れない大政翼賛会を作ってしまった
のか?
◎なぜ南進策を決め対米関係の決定的悪化を招いた
のか?
といった著者の疑問に応えるとともに、
毀誉褒貶が激しく、評価が定まっていない近衛文麿
について、その戦争責任と和平工作の全容を、
約400点の文献資料に基づいて是々非々の立場で論
じています。
これまであまり試みられることなかった新たな視点
による近衛の人間像描き出しに取り組むなかで、
近衛が敗戦直前まで試みた様々な和平工作の詳細と、
それが成功しなかった原因を徹底検証しています
。
著者の言葉によると
「近衛は、自己の戦争責任を深く自覚し、様々な和
平工作に取り組んだ。
特に、日本の敗戦が迫ってからは、憲兵隊や軍部の
強硬派からの圧力・妨害や国民の冷たい視線にさら
されながら、水面下で重慶・蒋介石との和平や、
ヨーロッパを舞台とする連合国との和平工作に懸命
に取り組んだ。本書は、広くは知られていないそれ
らの工作を詳細に検討する」(太田 茂)
ということです。
それでは、近衛文麿という人物を中核に、大東亜戦
争の和平工作を紹介した外交情報史の内容を見てい
きましょう。
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目次
はじめに
第1章 近衛文麿の生い立ちなど
第2章 近衛文麿の戦争責任
1 盧溝橋事件の事変拡大を防ぐことはできなか
ったのか?
2 上海事変から南京、武漢三鎮攻略までの事変
拡大を防ぐことはできなかったのか?
3 トラウトマン工作を成功させることはできな
かったのか?
4 なぜ「国民政府を対手とせず」の第一次近衛
声明を出してしまったのか?
5 汪兆銘政権を傀儡化せず、育成強化して和平
に導くことはできなかったのか?
6 なぜ得体の知れない大政翼賛会を作ってしま
ったのか?
7 なぜ日独伊三国軍事同盟を締結してしまった
のか?
8 なぜ南進策を決定して日米関係を決定的に悪
化させてしまったのか?
第3章 近衛が取り組んだ和平工作
1 盧溝橋事件勃発直後から近衛は密かに様々な
和平工作に取り組んだ
2 日米諒解案交渉
3 近衛は敗戦直前まで様々な和平工作に取り組
んだ
4 歴史的に再評価されるべき近衛上奏文
第4章 「悲劇の宰相、最後の公家」だった近衛文麿
1 思想を大きく変化させた近衛
2 近衛の「先手論」と「毒を以て毒を制す」
3 昭和研究会、風見章、尾崎秀実と近衛
4 近衛は「誰がかぶっても似合う帽子」だった
5 近衛の「正直さ」「冷酷さ」「強さと弱さ」
6 近衛と木戸幸一、都留重人、ハーバート・ノ
ーマン
7 近衛と天皇、皇室
8 「悲劇の宰相」そして「最後の公家」であっ
た近衛
第5章 海軍と陸軍の和平への対応と責任(補論)
共産主義への親和性が強まっていた陸軍
海軍はソ連や延安共産党への警戒心がなく、蒋介
石との講和を全く考えていなかった
海軍が和平工作を誤った責任は大きい
米内光政の功罪
陸軍の阿南惟幾は、蒋介石との和平を強く求めて
いた
最期まで理解し合えなかった米内と阿南
阿南の真意は講和論だった/クーデターを防ぎ、
外地の陸軍も含めた降伏への道筋への阿南の苦悩/
阿南は鈴木内閣の下で戦争を必ず終結させる決意を
していた/なぜ阿南は「米内を斬れ」と言ったのか
おわりに
参考文献
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いかがでしょうか?
個人的にうれしかったのが、
19ページにわたる「参考文献」ですね。
大東亜戦争の和平工作について見識を深めたい人に
取り、格好のブックガイドになることでしょう。
著者の太田さんは元検事の弁護士さんです。
太田茂(おおた しげる)
1949年福岡県生まれ。京都大学法学部卒。現在
、虎ノ門総合法律事務所弁護士。 1977年大阪
地検検事に任官後、西日本、東京等各地の地検、法
務省官房人事課、刑事局勤務。その間、1986年
から3年間北京の日本大使館一等書記官。法務省秘
書課長、高知・大阪地・高検各次席検事、長野地検
検事正、最高検総務部長を経て、2011年8月京
都地検検事正を退官。早稲田大学法科大学院教授、
日本大学危機管理学部教授を8年間務めた。剣道錬
士七段。令和2年秋、瑞宝重光章。 著書:『ゼロ
戦特攻隊から刑事へ』『OSS(戦略情報局)の全
貌』『日中和平工作秘史』『新考・近衛文麿論』
(いずれも芙蓉書房出版)、『実践刑事証拠法』、
『応用刑事訴訟法』、『刑事法入門』(いずれも成
文堂)
太田さん最大の特徴は、
検事の職務を行う中で身につけた
「状況証拠による事実認定の手法」
です。
その手法を最大限活かして作られた作品は、
どこか新鮮さを感じさせる読み味を醸し出していま
す。
支那大陸とのかかわりは、我が国外交永遠の課題で
粘着的な壁であり、絶妙の距離感を保たないとわが
国に危機が迫る、という、永遠に答えを見いだせな
い厄介なものといっていいでしょう。
無視もできない、かと言って近しくもできない。
厄介ですね。
そのためにも、丁寧に支那との外交情報史を整理分
析した本著をとっかかりとしていただければいいな
と思います。
『新考・近衛文麿論』
太田茂(著)
出版年月日:2022/11/16
判型・ページ数:A5・364ページ
定価:本体2,500円+税
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エンリケ
追伸
とくに本著で、近衛が国家指導者として、
対支那外交で如何なる失策を犯したか?
を把握しておくことは重要ではないでしょうか?
『新考・近衛文麿論』
太田茂(著)
出版年月日:2022/11/16
判型・ページ数:A5・364ページ
定価:本体2,500円+税
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追追伸
個人的には、近衛の父親・篤麿に興味があります。
国事に奔走したことで知られ、機密を漏らしてしま
わないよう、麻酔なしで手術を行い寿命を縮めた、
など、逸話に事欠きません。篤麿はたしか、上海の
東亜同文書院創設の立役者の一人でもありましたね。
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