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おはようございます、エンリケです。
237回目の「美佐日記」。
歴史に基づく価値観を把握、理解、重視し
なければ、ことの実相を見誤る危険が高い。
改めてそう感じました。
きょうの記事、さっそくどうぞ。
エンリケ
◆桜林さんが、自衛隊制服について書いたフォー
サイト記事です。
「自衛官の制服はなぜ不揃いなのか――崩壊する
「防衛産業」の現場から」
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◆桜林さん司会のyoutube番組、チャンネルくらら
「陸海空 軍人から見た」シリーズの第二弾が本
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おめでとうございます!!
くわしくは文末<おしらせ>でどうぞ。
◆桜林さんの「自衛官の心意気」(PHP)が文庫化さ
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されてます! 桜林さんならではの、他では得難い
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『自衛官が語る災害派遣の記録』に続く、第2弾
『自衛官が語る海外活動の記録』(桜林美佐監修・
自衛隊家族会編)が発売されています。中東シーレ
ーンの安全確保をめぐって新たな自衛隊派遣が行わ
れているこの時期にタイミングを合わせたような出
版です。現地で自衛官たちが何を思い、どのような
苦労をして、任務をこなしてきたか、25人の自衛
官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(237)
ハマスとイスラエルの紛争ー現代風の価値観は通用
しないー
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、237回目となりま
す。
私は数年前に少しだけクラヴマガを習っていました。
クラヴマガは、ハンガリーで生まれたユダヤ人武道
家イミ・リヒテンフェルドが完成させた護身術です。
イミ・リヒテンフェルドは警察官の父の指導により
ボクシングなどで活躍するアスリートでしたが、1
930年代から始まったユダヤ人迫害により、実際
に暴漢たち相手に誰もが身を守らなくてはならない
状況になったことから、このテクニックを編み出し
たといいます。
その後、ナチスの迫害から逃れるためパレスチナに
脱出し、ユダヤ人による軍事組織ハガナーの一員と
して近接戦闘術を指導。1948年に設立されたイ
スラエル国防軍は、ハガナーが中核になっています。
軍でも必須であるクラヴマガではありますが、始
まりはどんな人でもとっさに身を守れるように、と
いうことからでしたので、女性にも適しているとい
うことで、日本でもいくつかジムができているので
す。
私は本当に少しかじった程度ですが、何か道具を
借りたり試験を受ける時はTシャツを買う必要があ
るとか細かい出費があるのが大変だと、イスラエル
通の知人に話したら「それはイスラエル的ですね~」
と笑っていたのを思い出します。
習い事は、だいたい入ってみたら色々お金がかか
るものなのかもしれませんが、この時の知人の反応
がふと頭によぎったのは「反ユダヤ主義」が世界で
広がった理由として、彼ら(の一部)が、成功して
お金持ちになっているということがよく言われるこ
とです。
前回までに書いたように、ローマ帝国に聖地エル
サレムを奪われたユダヤの人々は世界各地に散らば
りました。しかしそこでも何かと差別され、教育を
充実させ、識字率が高くても、就ける職業は限られ
ていました。
そこで、多くのユダヤ人が金融業に携わるように
なったと言われます。そして結果的に大きな資産を
築く人々が出てきたわけです。
道ばたで暴行しても強くなって抵抗してくる、そ
してそれさえ商売にしている、迫害しても金持ちに
なってしまう、という具合で、いじめる側はますま
す面白くない、こうしたことも「反ユダヤ主義」を
エスカレートさせているのかもしれません。
いずれにせよ、ハマスなどイスラム組織は「反ユ
ダヤ主義」を今改めて世界の人々に植え付けること、
そしてそれを利用しようとしていることが分かりま
す。それもガザの無辜の人々を人間の盾にして、で
す。
イスラム教の目的は、世界をイスラム教に塗り替え
ることですので、この出発点は私たちも念頭に置く
必要があると思います。
ハマスはイスラム教で世界征服をすることを最終
目標にし、手始めにイスラエルを絶滅させると明言
しているわけですから、もしイスラエルで成功した
ら、次のターゲットに向かうことになります。日本
も標的になるのです。
この出発点という概念が、日本では不足している
ような気がします。イスラエルの人々にとっての出
発点は、アブラハムやモーセです。
私たちの多くの固定概念というのは、何千年以上
も前のことを信じているのか?とか、命は地球より
重いとか、話し合いや停戦こそみんなを幸せにする
とか、そういう現代的な思考形態から始まっていま
す。
しかし、こうした私たちの「ものさし」が通用す
るようになった歴史はまだ浅く、しかもあくまでも
理想(幻想)であるということが暗黙了承されてい
ると言えます。
それが証拠に、米国であれ、自国民がテロで殺害
されれば、テロの首謀者を殺害し「停戦」に向けて
話し合ったりしていません。
私たちは今、戦争やめろ犠牲を増やすなと騒ぐだ
けでは平和が戻らないという厳しい現実を目の当た
りにしているのです。日本にハマスが存在するよう
なことになれば、もっとリアリティを持つことにな
るのでしょう。
もちろん、犠牲者が増えることは何とかして阻止
できないかという気持ですが、多くの日本メディア
が言うほど単純構造ではないということです。
話が飛ぶようですが、イスラエルにはエチオピア
から移住した黒人のユダヤ人も多数存在します。
なぜ、エチオピアなのか?そのルーツは、ソロモ
ン王の時代にさかのぼります。ソロモン王とシバ王
国の女王が恋に落ち、ふたりの間に生まれた子供の
子孫とされるのが「エチオピア系ユダヤ人」です。
1970年代以降、エチオピアの政情不安や飢饉
により、同国で暮らしていたユダヤ系エチオピア人
が殺害されたり、餓死するという事態になった時、
イスラエルは大規模な救出作戦を遂行したのです。
「モーセ作戦」「ヨシュア作戦」「ソロモン作戦」
と名付けられたミッションにより、旅客機をフル回
転させ、4万人ものユダヤ人をエチオピアから救出し、
イスラエルに移住させました。
彼らにとって「出エジプト」は、伝説でも神話で
もなく、まさにまだ続いている現実なのです。
驚くのは、イスラエルの最高裁がエチオピアからの
移住は完了したと、この作戦の完了を宣言したのは
2022年2月、つまりつい最近のことです。
そして、まだ移住していない人もいると、依然と
して今年も数百人規模でイスラエルに移ってきてい
るそうです。
ユダヤ人である限り決して見捨てない、とにかく
これが、イスラエルの人々なのです。このエチオピ
アから来た人たち、トイレも使ったことがなかった
地から来て、イスラエルでは差別を受けたりして、
人間社会らしくここでまた揉めるのですが、とにか
く彼らは、人間としての好むと好まざるという感情
は関係なく、同胞を救い「約束の地」を共有するの
です。
こうした事例からも、よくハマスとイスラエルの
紛争は「憎しみの連鎖だ」とか解説されますが、軽
さを感じざるを得ません。彼らは一個人として、よ
りも民族としての使命を帯びて生きている、そのよ
うに思えます。
現代風の、ぽっと出の価値観で、この問題を評す
ることなどできない、とにかくそのように強く思い
ます。
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
皆様にとって良い1週間でありますように!困難の中
にいる全ての人のために祈り、あらゆる紛争の犠牲
者を悼みながら。
<おしらせ>
●月刊誌『丸』にて「誰も知らないニッポンの防衛」、
『SATマガジン』にて「桜の時評」連載中してい
ます。
(さくらばやし・みさ)
桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)、
「陸海空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」
(ワニブックス)
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