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米軍の最高学府である国防大学が、長年にわたり教
えてきた戦略立案のプロセスをマニュアル化した
『国家安全保障戦略入門(NSSプライマー)』の全訳
が登場です!
< 一般には単に『入門書(Primer)』として知ら
れている『国家安全保障戦略入門(NSSプライマ
ー)』は、国家戦略大学(NWC)の努力の結晶で
す。NSSプライマーにとっての課題は、戦略の全
体像をより適切に定義し、総合化するところにあり
ました。そのためには、創造性を発揮して、既成概
念にとらわれない思考をすることが不可欠となりま
す。戦略の全体像とモデル化はとても意義のあるも
のです。一方で、型にはまって創造性に欠けるもの
になってしまったり、チェックリストのような戦略
に陥ってしまったりしないことが極めて重要です。
戦略はアートです。NSSプライマーを編み出す
私たちの目標は、学生や戦略家がそのアートを創造
するのに役立つ、共通のツールと共有する認識を提
供することであり、それは現在も変わりありません。
NSSプライマーの編著者として、本書が日本語に
翻訳されるとともに、日本という同盟国が本書を活
用されることは誠に喜ばしいと思っています。
〈「日本の読者へ」より〉>
『国家安全保障戦略入門』
A・オラー他編
磯部晃一(元陸将)編訳
A5判184ページ/9月7日発売
発行日:2023.9
本体価格:¥1800
発行:並木書房
https://amzn.to/44BWWyk
おはようございます、エンリケです。
米国防大学の最高峰、国家戦略大学(NWC: National
War College)が精緻に編纂した「国家安全保障戦
略入門(NSSプライマー)」の全訳が、元東部方面総
監である磯部元陸将の詳細な解説を伴って登場しま
した。
この書籍は3つの重要なセクションから成り立ってお
り、まず第1部では編訳者である磯部元陸将が、米国
防大学と戦略についての基本的な解説を提供。第2部
は、本書の真髄であるNSSプライマーの完全な翻訳。
そして第3部では、編訳者の磯部元陸将によるNSSプ
ライマーの原則をもとに、プーチン大統領とゼレン
スキー大統領の戦略を比較分析。
まさに今読むべき書籍の代表例であり、
私だけでなく多くの読者がその価値を感じることでし
ょう。
「NSSプライマー」は米軍や国家安全保障会議で勤務
した職員たちがその知識と経験、まさに叡智と呼ぶ
にふさわしい知的資源を結集して作り上げたものです。
戦略理論の説明ではなく、戦略を具現化する方法に
焦点を当てた実務指南書と言えます。
中核となるのは、新たな戦略アプローチとして「戦
略ロジック」と「DIME」を組み合わせた手法です。
国家の存続と戦争の勝利に向けたバイブルであり、
ビジネス界でも経営戦略や方針策定に非常に有用な
ツールといっていいでしょう。
この種の実務書にありがちな情報過多という問題も
なく、読む前から圧倒されることはありません。
戦略家にとってこれ以上に適した書籍はないのでは
ないでしょうか。
ただし、より広い視野が必要な国家指導者には少し
物足りないかもしれません。その点を考慮に入れて
も、この書籍がもつ価値は計り知れません。
それではまずは編訳者・磯部さんのことばからどうぞ。
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はじめに(一部)磯部晃一(元陸将)
本書は、導入編、翻訳編、適用編の3部構成にな
っている。その主たる内容は、第2部のNSSプライマ
ーの全訳部分である。NSSプライマーは、米国防大学
の学生(米軍人、政府職員、留学生)用に国家安全
保障戦略を理解するための入門書として作成された
ものである。おそらく国家安全保障戦略のみならず、
経営戦略などを策定するうえで、本書は最も参考に
なる著作であろう。
ロシアによるウクライナ侵攻は、21世紀に暮らす
世界の人々に国家指導者のエゴイズムや軍事のリア
リティを再認識させた。すでに歴史として記憶され
ている第2次世界大戦のような軍事侵攻が、現状維
持勢力であったはずの国際連合安全保障理事会の常
任理事国の一員であるロシアによって行なわれたと
いう事実に多くの国や市民が衝撃を受けた。多くの
読者も国家の防衛や戦略の重要性を再認識されたこ
とであろう。
NSSプライマーは、その中核を占める国家安全保
障戦略とはいかなるもので、いかに策定されるべき
かを解き明かすものである。しかし、いきなり本編
のNSSプライマーから読み始めると、多くの専門用語
に遭遇することとなり、難解な部分も少なくない。
そこで、「導入編」として、戦略一般や日本の戦略
環境および特性、NSSプライマーを理解するうえで参
考となる基礎知識や用語を解説することとした。
さらに第2部のNSSプライマーを読んだうえで、
実際の戦略を考察する際にNSSプライマーの主眼であ
る「戦略ロジック」などをどのように適用すればよ
いかの実例として、進行中のロシアのウクライナ侵
略を取り上げ、その考え方を具体的に解説した。
戦略を策定するにあたり、あるいは行動方針を決
心する際に、いかに戦略環境を考察すればよいのか、
特に思考過程や考慮すべき事項など、重要なポイン
トを解説することを心がけた。
なお訳出に際して、長文の原文は複数の文に分割
して真意が伝わりやすいようにし、適宜訳注を付し
た。
本書の刊行にあたりNSSプライマーの編者である米
国防大学のアダム・オラー(Adam Oler)准教授とス
ティーブ・へフィントン(Steven Heffington)助教
授が「日本の読者へ」と題する寄稿文を寄せてくだ
さった。2022年にも同大学を訪問したが、いつもな
がら、卒業生を温かく迎えてくださる。お忙しいな
か、特別に寄稿してくださったことに感謝申しあげ
る。
NSSプライマーの「戦略ロジック」という考え方
は、ビジネスにおける経営戦略や方針策定において
も極めて有効なツールとなるであろう。実際に戦略
の策定に携わる防衛省・自衛隊はじめ政府関係者、
経営企画戦略に携わるビジネスパーソン、戦略に関
心のある方々の思考の参考になれば望外の喜びであ
る。
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いかがでしょうか?
それではこの「いまだから必要」「いまだから読ん
でおかなきゃいけない」米国発・最高最新レベルの
戦略書の中身を見ていきましょう。
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目 次
はじめに(磯部晃一)1
日本の読者へ(A・オラー、S・へフィントン)5
第1部 導入編
なぜ国家安全保障戦略は必要か(磯部晃一)15
米国防大学は国防省における最高学府 16
国家や軍のリーダーを養成する 17
戦略とは何か? 19
国家安全保障戦略とは何か? 22
米国の「国家安全保障戦略」策定の経緯 23
中国を名指しで非難したトランプ政権の「国家安
全保障戦略」25
ロシアのウクライナ侵攻で公表が遅れたバイデン
政権の「国家安全保障戦略」27
戦後68年にして初めて策定された日本の「国家安
全保障戦略」29
安倍政権の「国家安全保障戦略」31
岸田政権の「国家安全保障戦略」33
総合的な国力の最大限活用 33
戦後防衛政策の転換 34
次なる課題 35
なぜ「国家安全保障戦略」が必要か? 36
「NSSプライマー」を読む前に 38
「戦略ロジック」とは何か? 38
戦略で用いられる「仮定」とは何か? 40
目的達成のための「手段」を選定する 41
第2部 翻訳編
国家安全保障戦略入門 45
謝 辞 46
まえがき 48
第1章 概 要 51
国家安全保障戦略の紹介 51
戦略ロジックの紹介 52
国家安全保障戦略と下位文書との関係 55
国家安全保障会議(NSC)とNSCスタッフの役割 57
第2章 戦略状況を分析する 59
総 論 59
仮定(を設けること)は極めて重要 59
問題の明示(Problem Statement)61
国際および国内情勢 62
国益、脅威および機会 64
国益(Interests)64
脅威(Threats)66
機会/好機(Opportunities)66
個人と認知バイアスの認識 67
第3章 所望の目的の定義 69
目的を定義するうえでの国益の役割 69
政治目的(Political Aim(s))69
具体的目的(Specific Objectives)71
第4章 手段の選択 73
国家安全保障戦略遂行上の手段 73
国力の要素(Elements of Power)73
機関/アクター(Institutions and Actors)75
国力の道具(The Instruments of Power)77
外交(Diplomatic)78
1)代表(Represent)80
2)交渉(Negotiate)80
3)実行(政策の合意)(Implement)80
情報(Informational)81
1)知覚(Perceive)82
2)通知(Inform)82
3)マニピュレーション(Manipulate)83
軍事(Military)84
1)武力(Force)85
2)武力による威嚇(Threat of force)85
3)軍事支援(Force enabling)85
経済(Economic)87
1)援助(Assistance)87
2)貿易(Trade)88
3)金融(Finance)88
3つの構成項目間の相互関係(国力の要素・機関/
アクター・道具)89
手段の駆使と進化 91
第5章 方法の設定 93
総 論 93
基本的な戦略アプローチ 94
行動様式 97
機関/アクターによる道具の適合 98
オーケストレーション(総合化)98
第6章 コスト、リスクおよび結果の評価 101
反復評価の重要性 101
コストの評価 101
リスクの明確化 102
実行可能性の評価 104
レッド・チーミング 105
方針の修正 105
第7章 結 論 108
付録A 110
付録B 国家安全保障戦略モデル(目的‐方法‐手
段の関連)112
脚 注 114
用語解説 116
主要な参考文献 123
第3部 適用編
NSSプライマーで読み解く
プーチンとゼレンスキーの戦略(磯部晃一)125
ロシアの政治目的と作戦目標は適合していたか? 126
ウクライナ侵略の経緯 126
侵略前の状況 126
「特別軍事作戦」の意味 130
RUSIレポートの「ロシア勝利に至る複数のオ
プション」131
侵略開始以降の経緯 134
大量破壊兵器の使用に関する懸念 135
戦略ロジックの適用─ウクライナ侵略の「政治目
的」と軍事作戦の関係 138
あいまいな「政治目的」138
プーチンの「政治目的」の分析 141
キーウ攻略の意味 142
「仮定」の重要性 145
「政治目的」の微修正 147
戦略からもたらされるリスク 150
「国力の道具」の活用と総合調整 151
外交(Diplomacy)151
情報(Intelligence)154
秘密情報を開示する米国 155
国内向けのロシアの情報工作 156
経済(Economy)157
貿易面での制裁 158
経済制裁は効果があるのか? 159
軍事侵攻から1年半:プーチン氏の政治目的に変
化はあるか? 161
ゼレンスキー大統領の戦略性 163
ウォロディミルとウラジミール 163
凄みを増すゼレンスキー 164
ウクライナの国益 166
ウクライナの「政治目的」168
広島サミット前後のゼレンスキー 169
日本への教訓 171
最後に:プーチンとゼレンスキーの今後の戦略 172
プーチンの戦略 173
ゼレンスキーの戦略 174
停戦への道筋は? 175
おわりに(磯部晃一) 180
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いかがでしょうか?
目次をご覧になれば、この書籍が戦略実務家たちに
捧げられた「真の"バイブル"」であることがお分か
りいただけるでしょう。
しかしながら、国家の未来を担う主権者国民にとっ
ても国家戦略は重要なテーマです。国家主権者とし
て、国家の未来を左右する決定をするためには、国
家戦略の本質や意味を理解することが欠かせません。
これは一つのハードルかもしれませんが、克服すべ
き価値のある壁と考えます。
「軍事情報」という名のメルマガに興味を覚えて熱
心にお読みいただいているあなたにとって、国家の
安全保障と戦略は魅力的なトピックでしょう。あな
たのような方々にこそ、この書籍の価値を最大限に
享受いただきたいと思います。国家の未来に対する
貢献が、知識と理解から生まれることを信じていま
す。
戦略論は戦略立案に直接関わる指導者や戦略家とと
もに、彼等を広く支える国民の広く深い理解を伴っ
て初めて現実に活かされ、息を吹き込まれます。
戦略論など自分とは無縁の別世界のはなし、と見て
見ぬふりしてトンヅラ決め込むのもいいでしょうが、
せめて国家戦略の大まかな割り出しに役立つ物差し
くらいは頭に入れておきたい、と感じている人にと
って本著は格好の素材といって過言ではありません。
暑さも一段落し、読書への意欲が
湧き始めた今だからこそ読みたい本の一つです。
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エンリケ
追伸
個人的な話ですが、「おわりに」の中で磯部さんが
私も敬愛するある方との思い出を記されています。
拝読し、思わず胸が熱くなりました。
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