配信日時 2023/08/28 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(229)】自衛隊にとっても他人事ではない今年の花火大会   桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます、エンリケです。

229回目の「美佐日記」。

桜林さんにしか書けない「美佐節」とも
いうべき会心の文章と思いました。

心ゆくまで読んでほしいです。

さっそくどうぞ。


エンリケ


◆桜林さんが、自衛隊制服について書いたフォー
サイト記事が公開されています。


「自衛官の制服はなぜ不揃いなのか――崩壊する
「防衛産業」の現場から」
  https://www.fsight.jp/articles/-/49828

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「陸海空 軍人から見た」シリーズの第二弾が本
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されてます! 桜林さんならではの、他では得難い
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潮書房光人新社から
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『自衛官が語る災害派遣の記録』に続く、第2弾
『自衛官が語る海外活動の記録』(桜林美佐監修・
自衛隊家族会編)が発売されています。中東シーレ
ーンの安全確保をめぐって新たな自衛隊派遣が行わ
れているこの時期にタイミングを合わせたような出
版です。現地で自衛官たちが何を思い、どのような
苦労をして、任務をこなしてきたか、25人の自衛
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桜林美佐の「美佐日記」(229)

自衛隊にとっても他人事ではない今年の花火大会


桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、229回目となりま
す。

 お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか。自
衛隊では4月にUH60ヘリの事故が発生し、GWを返上
した方が多くいましたので、この夏休みに帰省した
り、普段は離れて生活している家族と一緒に過ごし
たという話を聞きます。

 久しぶりに花火大会に行ったという人もいたと思
いますが、その花火に今ちょっとした異変が起きて
いるようです。

 各所でも報じられていますが、花火が上がる前に
火薬の価格が上がってしまい、平均単価が2022
年と比べて2割上昇、コロナ前の2019年から見る
と3割増だといいます。

輸送費や人件費など花火大会の開催にかかるコスト
もかさみ、せっかく3~4年ぶりに再開しようとして
も、開催そのものを断念するか、あるいは縮小した
り、有料観覧席を設けるなどしているようです。

この背景には火薬の高騰があります。主成分は硝酸
カリウムや過塩素酸カリウムで、硝酸カリウムは中
国やチリからの輸入に頼っているそうですが、ウク
ライナ危機以降、大量の原料が砲弾用に消費されて
いるのです。また、円安も追い打ちとなっています。

過塩素酸カリウムの原料となる塩化カリウムはロシ
アやベラルーシから輸入しているため、それも滞っ
ているということです。

その他、花火の材料も軒並み値上がりしていること
から、そういえば今年の花火大会は以前よりも少な
かったとか、地味だったという印象を持った人も多
いかもしれません。

例えば、隅田川花火大会の予算は約3億円で、201
9年の約2億円から大幅に膨らんでいます。

大会のスポンサーになる協賛企業がコロナによる地
元経済落ち込みの影響を受けていることも響いてい
るようです。

こうした中、埼玉県・朝霞市の「彩夏祭」の中で実
施されるはずだった打ち上げ花火が突然中止になる
という出来事がありました。

コスト高の中でもなんとか開催に漕ぎつけ、当日は
花火が上がるものと誰もが思い待っていたのに、一
体なにが起こったのかと衝撃が走ったようですが、
その後、原因が明らかになりました。

以下は、朝霞市のHPに掲載された報告です。

<花火の中止について >
業者が、打ち上げ花火を2台のフォークリフトでト
ラックに積み込む作業(作業時間1 時間程度)を行
っていたところ、2台とも故障してしまったため、
人力で積み込む作業 (作業時間4時間半程度)に変
更したが、予想以上に時間がかってしまい、開始時
刻までに全ての機材等を設営することができなかっ
た。

< 延期できなかったことについて >
実行委員会が、警備会社に翌6日に順延した場合の
警備員の確保が可能かどうか確認したところ、午後
7時時点での要請には応えられないとの回答があっ
たため、延期できなかった。

 <中止の判断の遅れについて>
 実行委員会と市は、「彩夏祭」の打ち上げ花火の実
績業者である当該業者から打ち上げが可能という報
告を受けていたことから、延期や中止の判断につい
て遅くなってしまった。

<中止の連絡の遅れ等について >
業者からの実施が出来ない旨の連絡が打ち上げ時刻
の直前だったため、本部等の現場が混乱し対応が遅
れたこと、また各会場の放送設備が独立しており、
一斉放送できる設備ではなく、当日の連絡が携帯電
話中心のため電話がつながりにくく、各会場への連
絡時間や内容にずれが生じてしまった。

なお、防災行政無線の使用についても、場内に早期
に放送をすることを優先したことや、現場が混乱し
たことにより、放送することができなかった。

 彩夏祭の公式ホームページがアクセスの集中により、
サーバーがダウンし、実行委員会 のホームページが
更新できず、SNSでの発信もできなかった。(朝
霞市HPより)

ということでした。まさに事故は複合的な要因が重
なって起きるという、その典型を見るようです。

開催が予定されていたのは土曜日でしたので、週明
けの月曜日に、朝霞市の担当者が秩父市に所在する
業者に出向き原因の確認を行ったところ、こうした
経緯が明らかになったといいます。

さらに同じ日に他の市で25,000発の打ち上げ
花火の仕事も請け負っていたことも分かったという
ことで、そちらも中止になったのか、間にあったの
かは分かりませんが、いずれにしても、私にとって
この事案は非常に示唆的です。

花火は当然、火薬類取締法の規制を受けているでし
ょうから、取り扱いに様々な規則があるはずです。

事前に運んできて置いておくことはできないものだ
けに、不測の事態によって到着しないこともあり得
るわけです。そして、これは自衛隊、中でも陸上自
衛隊も同じです。

また、もし防衛装備品だったら、このような納期遅
延をしたら何億円単位の違約金を払うことになるで
しょう。

そんなことを考えると、火薬関係の企業というのは
本当に苦労が多いことが分かります。

今、自衛隊では、これまで減らし続けてきた弾薬を
増やそうとしています。

火薬は(火薬について細部の説明についてはこれま
での荒木先生のメルマガをご覧下さい!)旭化成グ
ループの「カヤク・ジャパン」と「日油」が担って
きたものの「カヤク・ジャパン」で2022年に爆
発事故が発生し、その影響で輸入に切り替えざるを
得ない状況になっています。

ということは、花火同様にウクライナ侵攻によって
調達が困難になっている上に、かかるコストも跳ね
上がっているということです。

今年の花火大会における色々な現象は自衛隊にとっ
ても他人事ではないのです。

そういえば、昨年10月は北海道の矢臼別演習場で米
海兵隊の高機動ロケット砲ハイマースの射撃が実施
される予定でしたが、三沢基地から北海道までの輸
送にトラブルが発生したということで急きょ中止に
なったということもありました。

 日本のおかしいところは、実施されると文句を言
うのに、実施されなかったら特段騒がれなかったこ
とです。でも、本来は弾が届かなかったって大きな
問題ですよね・・・・。

 花火大会中止事案でこんなに長い日記になってし
まいました。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
今週が皆さまにとって素敵な1週間となりますよう
に!



<おしらせ>
●新潮社フォーサイトに陸上自衛隊の制服について
書きました。JBpressにも転載されています!
https://www.fsight.jp/articles/-/49828
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/75568

●スタッフが英語圏の方たちでコミュニケーション
に苦労しているYouTube企画『Boei Cafe』慶応大学
教授で元内閣官房参与の谷口智彦さん、元国家安全
保障局次長の兼原信克さんに続き、最新版は松川る
い参議院議員が登場しています。
そして、私がお相手しているのですが、収録時に通
信が乱れてしまい音声だけになっています。とほほ
・・。
https://www.youtube.com/channel/UCzO7HYpVqnrnCAdlaq7bRwg


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る日本の防衛産業』(産経NF文庫)発売中です。
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シアのウクライナ侵攻」の書籍版も、ワニブックスから
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そして、第二弾も!
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(さくらばやし・みさ)


桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。

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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)、
「陸海空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」
(ワニブックス)





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