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こんばんは、エンリケです。
本連載のアーカイブサイトができました。
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過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。
74回目の配信です。
第4編「『強靭な国家』をつくる」の
11回目です。
わが国は、安倍さんを失ってから
一年経つのですね、、、
さて今日の記事では
小室直樹さんが登場します。
「小室ショック」を経験した人間の
一人として、感慨深く読みました。
では今日の記事、さっそくどうぞ
エンリケ
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我が国の未来を見通す(74)
『強靭な国家』を造る(11)
「強靭な国家」を目指して何をすべきか(その1)
宗像久男(元陸将)
───────────────────────
□はじめに
7月8日で銃撃事件から1年になったことから、
最近、様々なマスメディアが安倍元総理に関連する
特集を組んでいました。私はふと、安倍元総理は
「どのような国を造りたかったのだろうか」と頭に
浮かび、久しぶりに『美しい国』を手に取って読ん
でみました。本書は、最初の総理大臣になる2か月
前の平成18年7月20日に上梓されたものですが、
そこには安倍氏の“この国に対する深い愛情”とか、
“こうあるべし“との想いがそこはかとなく散りば
められていました。
改めて「道半ばにして、さぞかし無念だったことだ
ろう」との同情を禁じ得ませんが、細部の紹介は省
略するとしても、特に印象に残ったのは次のフレー
ズです。
「わたしたちの国日本は、美しい自然に恵まれた、
長い歴史と独特の文化を持つ国だ。そして、まだま
だ大いなる可能性を秘めている。この可能性を引き
出すことができるのは、わたしたちの勇気と英知と
努力だと思う。日本人であることを卑下するより、
誇りに思い、未来を切り拓くために汗を流すべきで
はないか。日本の欠点を語ることに生きがいを求め
るのではなく、日本の明日のために何をなすべきか
を語り合おうではないか」、そして「政治は未来の
ためにある―わたしの政治家としての根っこにある
想いを知っていただければ望外の喜びである」と結
ばれています。
以来、難病を抱えているお体を克服しつつ2度も総
理大臣に就任され、第2次安倍政権では通算在職が
3188日に及ぶ最長記録を打ち立てる中で、未来
に向けて、我が国の戦後の課題を是正する政策を着
々と実現されました。
私自身は、防衛庁の省への格上げや「国防の基本方
針」に代わる「国家安全保障戦略」の策定などが印
象に残っていますが、それ以外でも「働き方改革」
の中の高齢者雇用のキャッチフレーズ「『生涯現役
社会』の実現なくして未来はない」なども慧眼だっ
たと思い、今でも自衛官に対する教育などで活用さ
せて頂いております。
安倍元総理のご功績については様々な見方があるで
しょう。中には、堂々と総理の死を喜ぶかのような
内容を発信している輩もいるようですが、これまで
のところ、「政治家は何をやるべきか」について、
安倍元総理ほどそのことをよく理解し、様々な苦境
を乗り越え、それを実行した政治家は他に見当たら
ないと言って過言ではないと考えます。
本書のサブタイトルは「自信と誇りをもてる日本へ」
とあります。本メルマガは、“このまま放置すると
我が国の未来はとんでもないことになる”と警鐘を
ならすために書き綴っていますが、今こそ、国民が
こぞって「日本の明日のために何をなすべきか」を
真剣に考え、実行する時が来ていると考えますし、
その結果として、「自信と誇りがもてる日本」が蘇
ると私は確信しています。
私のような浅学菲才な者が、“我が国の未来に向か
って”などと大言壮語なことを発信するのは、正直
申し上げ、これまでも幾度も“場違い”と感じ続け、
今も赤面する想いでおります。しかし、そんなこと
よりも、我が国の未来に待ち構える厳しい“現実”
を知ってしまったこともあって、安倍元総理同様、
若い人、そしてそれに続く後世のために、「この美
しい国を何としても残したい」という気持ちが勝っ
ていることも事実です。
そのような心境の中で、今回以降、“様々な苦難に
打ち勝つ「強靭な国家」をいかに造るか”という視
点でまとめ上げ、本メルマガを締めくくりたいと計
画しています。
▼「強靭」とは何か?
私が勤務した自衛隊では、「強靭な」とか「精強な」
とか「足腰の強い」という形容詞を当たり前のよう
に、何の疑問も持たないままに使います。自衛隊が
軍事組織であることから、他の国家機関に比して
「強さ」を求められるのは当然としても、有形無形、
様々な要素からなる「強さ」を保持するためには、
自衛隊の組織としても、隊員個人個人も普段から相
当の鍛錬が必要不可欠であり、「強さ」を保持して
いること自体が自衛隊の任務そのものでもあるので
す。
その中で、「精強な」と言うと、ただ「強いだけ」
というイメージですが、「強靭な」と言うと、その
意味からして「しなやかで強い」とか「柔軟でねば
り強い」というイメージが付加され、最近、ビジネ
ス界などでも使われている「レジリエンス」の意味
と同等、「困難をしなやかに乗り超え回復する力」、
つまり「弾力性」のような特性まで含まれると考え
ます。
未来はいつの時代も基本的には不確定です。あらゆ
る事態を想定する必要性がありますが、そのような
事態に必ず直面するというものではありません。国
と国の関係もそうでしょう。「某国との間に様々な
事象が発生する可能性がある」と言っても必ず現実
のものになるわけではありません。食料やエネルギ
ーの確保なども同様です。7月は、“この場に及ん
で思いもよらず”液化天然ガスなどの輸入価格下落
が要因となって電気料金が値下げされるように、様
々な要因で浮動することから、未来に起こるであろ
う様々な事態を現時点で確定できないのは当然なの
です。
これらもあって、私は、国家についてはただ単に
「精強な(強い)国家」よりも「強靭な国家」を目
指すべきと考え、この言葉を使って、我が国の目指
すべき国家像としました。
さて、現在の我が国においても「強靭」という言
葉を使用している政策が一つあります。「国土強靭
化」です。これは「大規模自然災害等に備えるため、
事前防災・減災と迅速な復旧復興に資する施策を、
まちづくり政策や産業政策も含めた総合的な取組と
して計画的に実施し、強靱な国づくり・地域づくり
を推進するもの」で、安倍内閣時代の平成25年に
制定された「国土強靱化基本法」に基づくものです。
本基本に基づき、内閣府が所轄する「国土強靭化計
画」が、平成26年以降、閣議決定され、逐次見直
されています。残念なのは、官僚や地方自治体の公
務員など関係者を除き、国民のほとんどかこのよう
な法律や計画があることさえ知らないことでしょう。
そして、「国土」と銘打っているように、あくまで
「大規模自然災害等に備える」ためだけのもで、そ
れ以上でもそれ以下でもありません。
私は、「国土」のみならず、様々な局面を考えて、
「国家を強靭化するための構想(戦略)」とその構
想を実現する政策が必要と考えますが、「国土」を
「国家」に一文字変えるだけで、その実態は“月と
すっぽん”ほど違うのは明らかです。「国家」の
「強靭化」には様々な要素が含まれるからです。
これまで歴史から学ぶ4つの「知恵」から分析しま
したが、その一つ一つの実行さえ、簡単ではありま
せん。それらを含めて、「誰が“旗振り役”となっ
て推進していくか」「どうやって推進するか」まで
を考えると正直、途方にくれてしまいます。
一方で、“各事象に個々に対応することをもって良
し”とする「部分最適」だけを追い求めると必ずそ
の副作用が発生することも指摘しました。どうして
も、我が国が未来に向かって突き進むための「国家
強靭化構想」のようなものを明確にして、そのため
に必要な、あらゆる「構造改革」を断行する必要が
あると考えます。それらには、戦後、「愛国は悪事、
売国は正義」と教えられ、多くの国民に定着した
“正義”を含む、私たち国民の価値観とか国家観そ
のものまで見直す必要があるのですから、容易なこ
とではありません。
▼『日本人のための「憲法原論」』に出会う
最近、上記のような問題意識を持ちながら、様々な
情報収集する日々が続いておりました。前にも書い
たように、ここ数年、書店を訪問した際に、“読み
たい本(「読まなければならない」との表現が適切
かもしれません)をほぼ迷うことなく手にする”と
の不思議な体験を繰り返しています。
6月29日(木)も会社の帰りに書店に寄り、何の
ためらいもなく手にしたのが『日本人のための「憲
法原論」』(小室直樹著)でした。第1章「日本国
憲法は死んでいる」から始まる本書を購入し、その
週末にかけて477ページに及ぶ大作を一挙に読み
終えました。感想を一言で述べれば、“喉のつか
え”が一挙に降りたような気分になりました。自分
の認識を180度変えるような事実も判明し、ショ
ックさえ覚えました。本書は、我が国の向かうべき
方向の参考になると考えますので、その概要を紹介
しましょう。
第1章に続き、「憲法はだれのためにあるか」「す
べては議会から始まった」「民主主義は神様が作っ
た」「民主主義と資本主義は双子だった」「はじめ
に契約ありき」など、イギリスを主にした欧州列国
の歴史を振り返りながら、キリスト教、特にプロテ
スタントの考えの原点となったカルヴァンの「予定
説」と民主主義の関係などだんだん本質に迫ってき
ます。中でも、西欧諸国における宗教と王と関係の
中で、国家という概念や民主主義や資本主義がそれ
ぞれ出来あがった経緯を鋭く、しかし小気味よく解
説します。
まさに“目から鱗”です。一般の人よりは、西欧諸
国の歴史を幾分か詳しく学んだつもりになっていた
私でさえ“真実をようやく知った”という感覚にな
りました。
続く「『憲法の敵』はここにいる」では、「デモク
ラシーは最悪の政治である」と看破し、「平和主義
者が戦争をつくる」として、ヒトラーを生み、第2
次世界大戦の原因をつくったのは、西欧列国の「平
和主義」であるとの主張には、日頃からそのような
考えを持っていた私などはまさに溜飲を下げました。
我が国に関して言えば、明治憲法と天皇の関係に関
して、西欧列国の「宗教と憲法の関係」という憲法
の奥義を知った伊藤博文の知恵であったこと、しか
し、ある事件を境に「憲法は死んだ」こと、戦後も
同様に、裁判官と検事がグルになって“憲法違反を
犯した”ことなどを例示しながら、すでに「憲法は
死んでいる」と主張します。
極めつけは、最終章の「憲法はよみがえるか」でし
た。私は、マッカーサーの指示によって若い軍人た
ちが10日間で作ったという制定過程に現憲法の問
題があると今日まで考えてきましたが、小室氏は違
った見方をしています。つまり「アメリカ人に押し
付けられたことが戦後我が国のデモクラシーが失わ
れることになった」として、その理由は、「独立時
に民主主義も資本主義も『空気』みたいに当然のも
のと考えていたアメリカ人は民主主義をわかってお
らず、憲法をつくるのにアメリカ人ほどそれにふさ
わしくない人達はいない」と断言しているのです。
この視点は、アメリか人のマッカーサーがGHQス
タッフに、“まるで簡単な法律でもつくるような軽
い気持ちで憲法草案の作成を命じた”背景そのもの
であることがよく理解できます。西欧列国のような
歴史を持たないアメリカだから、「アメリカ人は、
さながら野の花のごとく、民主主義はどこにでも咲
くものだ」と信じて疑わない、よって、民主主義で
ない国をみると、「“どうして民主主義にしないの
だろう”と無邪気に思ってしまう」と小室氏は指摘
します。
小室氏はまた、現憲法が民主主義を知らないアメリ
カによって作られた結果として、我が国の官僚たち
の問題点や官僚制度の弊害などを指摘し、「最高の
官僚は最悪の政治家である」とも述べています。戦
後の財政政策、経済政策、農業政策、厚生労働政策、
外交・安全保障政策などを思い浮かべると、残念な
がらうなずいてしまいます。
さらに続けます。戦後、明治憲法で国家の“基軸”
となった「天皇制」(小室氏は「天皇教」と呼称し
ています)を失った現憲法をアメリカに押し付けら
れた結果、日本に起きたのは「急性アノミー」だっ
たと続きます。「アノミー」とは、「社会の病気」
を意味しますが、アノミーが起これば、身体にも心
にも異常がなくても、その人間は自殺のような異常
な行動をとるようになるのとことで、他人との連帯
を失い、自分が何者であるかわからなくなり、絶望
し、孤独感を味わった時や自分の居場所を見失った
時などに死をもいとわないというのです。
そして、「権威」が否定されると、「急性アノミー」
が発生すると解説します。「権威」とは「何が正し
く、何が正しくないかを決める存在」であり、家庭
における父親のような存在です。戦後の日本は、
「父なき社会」に陥り、「急性アノミー」が蔓延し、
それを象徴しているのが「高度成長」と「受験戦争」
であるとして、「権威」がなくなって残った尺度は
“カネ”だけになってしまい、それがモラルを失う
ことにつながったと断定します。
これらから、我が国の現在の「アノミー」を作り出
した原因をさかのぼっていくと、「権威」の頂点に
あった「天皇制」を失った現日本国憲法に辿り着く
と結論付けています。
この瞬間、私は長い間、胸の奥底にあった“もやも
や”が吹き飛ぶような心地を味わいました。もちろ
ん、個々には違った見方をしている部分もあります
が、大筋において、小室氏の結論と同じ考えにある
自分を再発見したのです。嬉しくもあり、ショック
でもありました。
「今のままでは日本は滅びるしかない。『その日』
がいつ来るかは誰もわからないが、このままではそ
う遠くはない」として、本メルマガで指摘したよう
な、将来発生するであろう様々な外的要因ではなく、
小室氏は内的要因から滅びると断言しているのです。
このような結論を「小室氏個人の分析(考え)」、
つまり「独善」と決めつけてよいのでしょうか。私
は、「アノミー」という言葉は知りませんでしたが、
戦後、現在も毎日のように発生している痛ましい事
件などの様々な“社会現象”は、まさに「アノミー」
と呼ぶにふさわしいと考えます。この「社会の病気」
を根絶する“処方箋”はあるのでしょうか。相当の
“荒治療”を覚悟する必要があるような気がします。
私は、外的要因を果敢に立ち向かうことと内的要因
を克服することは、掘り下げていくと“同根”であ
ると考えます。これら両方に対処できる“強靭な国
造り”が必要であり、その結果として、「自信と誇
りがもてる日本」を蘇えるのではないでしょうか。
小室氏は、「民主主義にも憲法にもゴールはない。
それを求める努力こそが、本当の民主主義である」
として“歩き出す”ことの重要性を説いて結びとし
ています。さあどうしましょうか。どのように歩き
出せばよいのでしょうか。次回以降、これら外的・
内的要因の克服をめざす“国家の強靭化に向けた処
方箋、いや荒治療”について、皆様と一緒に考え、
安倍元総理が言われたように「日本の明日のために
何をなすべきか」について語り合いたいと思います。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
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