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『日本を一番愛した外交官
ウィリアム・キャッスルと日米関係』
著者:田中秀雄
出版年月日:2023/03/17
ISBN:9784829508565
判型・ページ数:A5・300ページ
定価:本体2,700円+税
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「日本とアメリカは戦ってはならない!」
昭和初期、日米間に橋を架けることを終生の志とし
た米人外交官がいたそうです。
その名はウイリアム・キャッスル。
米国版「新渡戸稲造」といっても差し支えないでしょう。
本著は、本邦初となるキャッスルの評伝です。
おはようございます、エンリケです。
主人公のキャッスルは、米に併合される前のハワイ
王国生まれ。
明治維新後のわが国民は、ハワイにも多く海外雄飛
しており、キャッスルの周りにも少なからぬ数の日
本人がいて、仲良くしていた人もいたということで
す。
明治政府とハワイ王国は条約も結んでおり、友好関
係にありました。
そんな環境で生まれ育ったことも知日派として成長
した背景にあるのでしょうか。
著者は田中秀雄さん。
いまや、明治から昭和に至るわが近現代史研究の第
一人者として比類なき存在と言って過言ではない方
ですね。
田中秀雄(たなか・ひでお)
1952年福岡県生まれ。
慶應義塾大学文学部卒。日本近現代史研究家。
著書に『優しい日本人、哀れな韓国人』(WAC出版)、
『中国共産党の罠』(徳間書店)、『日本はいかに
して中国との戦争に引きずり込まれたか』、
『挑戦で聖者と呼ばれた日本人』(草思社)、『満
洲国建国の正当性を弁護する』(G.ブロンソン・リ
ー著、翻訳、草思社)、『暗黒大陸中国の真実』(ラ
ルフ・タウンゼント著、共訳、芙蓉書房出版)
『続・暗黒大陸中国の真実』(ラルフ・タウンゼント
著、共訳、芙蓉書房出版)、『日米戦争の起点をつく
った外交官』(P.ラインシュ、訳、芙蓉書房出版)
ほかがある。
本著の骨組みは以下のとおりです。
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目次
序 章 ハワイという橋脚の島
第1章 外交官になるまで
第2章 ハワイにおける大ストライキ
一九〇九年のストライキ/一九二〇年のストライキ
第3章 国務省西欧部長・キャッスル
異例の出世/反日感情の昂進/ワシントン会議/日
本移民の国籍問題/ドイツの政情不安/排日移民法
の裏にあったもの/石原莞爾の日米最終戦争論/キ
ャッスル、国務次官補となる
第4章 キャッスル、日本特別大使となる
国務次官補からの就任は異例だった/日本協会での
演説/在日米人たちに対する演説/『日本及日本人』
誌のインタビュー/軍縮会議の推移/多忙なキャッ
スル大使/キャッスル大使、帰国へ/条約をめぐる
アメリカの議論
第5章 大恐慌の時代
アメリカの保護政策/日本の戦後不況と財閥批判/
日本の金解禁実行とその影響/統制経済への期待
第6章 満洲事変の勃発
キャッスル、国務次官に就任/事変の勃発/スティ
ムソン、事変拡大にいらつく
第7章 スティムソン長官の不承認宣言
スティムソンの魂胆/三井のドル買い批判/錦州進
撃と不承認宣言/第一次上海事件の勃発/日本はフ
ィリピンをねらっている?/フーバーとスティムソ
ンの対立/スティムソン・ドクトリンからフーバー・
ドクトリンへ/フーバー、キャッスルとスティム
ソンの不協和音/満洲国承認は可能である
第8章 キャッスルによる満洲事変の総括
最近のアメリカの極東政策
第9章 ブロック経済、自給自足経済体制の深化
世界経済のブロック化/財閥の転向/キャッスル
の二・二六事件評/持てる国、持たざる国/日支事
変の勃発
第10章 在野において旺盛に外交を論ず
キャッスルのモンロー主義/天羽声明について/ル
ーズベルトの移民政策/キャッスルの中国論/中国
共産党を支持するトーマス・A・ビッソン
第11章 アメリカは戦争に関わらず中立を維持すべ
きである
米ソの国交樹立問題/ワシントン体制の終了へ/武
器禁輸と中立法/戦争に巻き込まれるな
第12章 逆風に抗して―日中戦争の時代
スティムソンの大論説/「日本の中国侵略に加担し
ないアメリカ委員会」/キャッスルのルーズベルト
批判/日米通商条約の破棄/第二次大戦の勃発/キ
ャッスルの不気味な予言/日中戦争における中立性
について」/執筆と講演に全力を尽くす/破局に向
けて
最終章 第二次大戦中の雌伏、そして戦後の日本の
再生
秘策はインド洋作戦/歓迎されないキャッスル/天
皇制を問題にするビッソン/終戦前後/ニューディ
ーラーたちによる日本革命/「アメリカ対日協議会」
の結成/日本の武装解除問題/日本の防衛問題/吉
田茂による憲法改正/岸信介、中曽根康弘を評価す
るキャッスル/レッド・パージ/老雄たちは逝く
----------------------------------------------
いかがでしょうか?
主人公・ウイリアム・キャッスルの略歴は以下のと
おりです。
ウィリアム・キャッスル(1878-1963)
ハワイ王国生まれ。ハーバード大学卒業後、同大学
で英語講師と新入生担当の副学部長を務め、
1917年ワシントンDCにアメリカ赤十字局を開設、
欧州派遣軍将兵とその家族の支援活動に従事。
1919年国務省に入省、国務省西欧部長(ハーディン
グ政権)、国務次官補(西欧問題担当、クーリッジ
政権)。1928年パリ不戦条約の制定に関わる。
1930年日本特別大使を務めた後、国務次官補、国務
次官(フーバー政権)。1933年国務省を退き外交評
論家として活動。
1936年共和党大統領候補・ランドンの選挙参謀。19
40年アメリカ第一委員会に加盟しアメリカの参戦反
対の活動に従事。戦後1948年アメリカ対日協議会の
名誉会長となり、1960年日本から勲一等旭日大綬章
を授与される。
本著は、外交官、駐日大使、国務次官を歴任した
W・キャッスルの思想と行動、そしてアメリカ側か
ら見た斬新な昭和史を描き出したものです。
キャッスルは、牧野伸顕や金子堅太郎、岸信介、中
曽根康弘といった我が国政治家たちと幅広く接した
人です。
オススメポイントは
本著にはじめて紹介される事実の数々が記されてい
ることです。
たとえば、
◆排日移民法(1924年)のきっかけを作った埴原駐
米大使の失言は実はヒューズ国務長官の示唆による
ものとキャッスルが証言
◆パリ不戦条約(1928年)の実質的作成者はキャッ
スルだった
◆スティムソン国務長官の「満洲国不承認宣言」
(1932年)に対しキャッスルは「満洲は日本が統治
したほうが一番いい」と主張
◆日中戦争の時代、対日非難の動きに対しキャッス
ルは「中国を助けるべきではない。それは中国をソ
連に明け渡すことを意味する」と主張
などなど、、、、
いかがでしょうか?
強く感じたのは、
諸外国、とくにわが友好国で知日派の勢力を拡大し、
圧力団体として政治に影響を与えるロビー活動を展
開してゆくことが、我が国が世界の中で生き残る上
で必要不可欠な策の一つだ、ということでした。
キャッスルのような知日派要人を友好国で増やし、
ラインシュのような反日エリートに友好国の対日政
策を左右させないよう、わが国を好きにさせ、わが
国と友好関係を強化することが得策と言う世論・常
識感覚を彼の地で形成する活動を積極的に展開する
必要があるということです。
その意味からも、知日派を増やし、その勢力を拡大
するためにどういうことができるか?
という観点から本著を読む人が多く出てほしいです。
わが国、わが国民にマウントを取る輩に媚びて味方
になってもらうという話ではなく、わが国を畏怖尊
敬せしめ、正しい日本理解ができる人をいかに彼の
地で養成するか?という観点から本著にかかわる人
が増えてほしいです。
本著は、我が近現代史の核にあるものを掴み、今の
選挙行動に活かしたい有権者、日米関係実務につい
ている官民問わない実務者、研究者、投資家に有益
な養分を提供してくれる本です。
外交史の翻訳書らしい濃厚さで、本気の読者に有益
になるよう細やかな深い解説が記されています。
その分歯ごたえがあります。
ちょっと近現代史トリビアが知りたいな、レベルで
手に負える内容ではありませんから、
そういう意識の方にはオススメしません。
本著については、以前紹介した
『日米戦争の起点をつくった外交官』(P.ラインシ
ュ、訳、芙蓉書房出版)
https://okigunnji.com/post-133107/
の姉妹書と言って差し支えない内容と思います。
比較しながら読むなかで、日米関係で注意すべきポ
イントと米における敵味方識別の要素が垣間見れる
でしょう。
歴史からエキスを吸収して今に活かしましょう。
ですので、まだ『日米戦争の起点をつくった外交官』
をお持ちでない方は、この機会に揃えて比較研究す
ることをオススメします。
『日本を一番愛した外交官
ウィリアム・キャッスルと日米関係』
著者:田中秀雄
出版年月日:2023/03/17
ISBN:9784829508565
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エンリケ
追伸
国家関係は、友好国好きだから助けてくれるはず、
という妄想が活きる世界ではありません。
こういう感覚が隙と油断を形成し、最も危険を生み
出します。
己を守るのは己自身。
ウクライナへのロシア侵攻の現実を見てもそのこと
は明らかですよね?
確固たる国防姿勢心構え備えを持たない限り、
国を保つことは不可能です。
そのために日々手を打ち続けること。
それが国防であり安保ではないでしょうか?
本著を研究して、
その一端を担う日本人が増えてほしいです。
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ウィリアム・キャッスルと日米関係』
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