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「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
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戦争、選挙、金融…
世界中のあらゆる事件をネタに…
常に裏で利益をむさぼるある集団がいた…
国際情勢のあらゆる事象の背後には、
常に彼らの存在が見え隠れすると
国際関係学者の藤井厳喜先生は言います。
↓
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こんばんは、エンリケです。
本連載のアーカイブサイトができました。
https://wagamirai.okigunnji.com/
過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。
61回目の配信です。
防災や国防など、「防」がつく政策には、利権が
伴わないせいか、泥まみれになって必死に政策を実
現しようとするわが国エスタブリッシュメントの割合
が実に小さいですね。
そのせいか、政治の場で実現するケースは
本当に少ないようです。
得られるパイが小さいわりに「リスクが高い」
ということなのでしょう。
「金にならないわりに「リスクが高い」から」
いまわが国が抱えている問題は
そこにある気がします。
きょうの記事には、
冒頭記事にも本文にも、誠に妥当で未来に
資する具体的道筋が示されているんですがね。
さっそくどうぞ
エンリケ
◆本連載のバックナンバーはこちらで
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我が国の未来を見通す(61)
「気候変動・エネルギー問題」(26)
水素・アンモニア導入の問題点
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
先月の2月6日に発生したトルコ大地震から1カ月
あまりが経ちました。死者数はこれまで5万200
0人(トルコ約4万6000人、シリア約6800
人)を超え、被災地では160万人以上の被災者がテ
ント生活を強いられているようです。
我が国においても阪神淡路大震災から28年あまり
が過ぎ、3月11日、東日本大震災から12年が過
ぎました。つまり、阪神淡路大震災からは世代が代
わり、東日本大震災からは13回忌を迎える頃にな
り、人々の心に一つの“区切り”がつく頃になりま
した。“区切り”とはあの惨事について「忘れたい」
と思う人も「忘れたくない」と思う人も頭のどこか
で整理がついたということだろうと推測しています。
これまでの統計では、世界で発生する地震の約2割
は我が国の周辺で発生しています。上記の2大震災
の例を引くまでもなく、我が国は歴史的に「地震大
国」なのです。このような我が国において、しかも
このようなタイミングで発生したトルコ地震をマス
コミがどのように報じ、政府をはじめ、国民がどの
ような認識を持つか、興味をもってこの1カ月注目
していました。
結果は予想通りでした。少なくとも「明日は我が身」
という視点からこれを報じ、様々な初期対応なども
「他山の石とすべき」との視点でこの惨事をとらえ、
我が国の防災のためにさらに役に立てようとするよ
うな報道を私自身はほとんど見かけませんでした。
一方、福島、宮城、岩手3県の太平洋沿岸に高さ1
0mを超える防潮堤が400kmにわたり建設され
たことが民法テレビで放映されていました。かつて
東北方面隊に勤務し、津波に襲われた現場を熟知し
ていることから、「この防潮堤が東日本大震災前に
建設されておれば、何人の命が助かったことだろう」
と悔しさが沸き上がりました。
岩手県の普代村では明治や昭和の三陸大津波の経験
から、当時の村長が「2度あることは3度あっては
ならない」との明言を残し、反対を押し切って昭和
59年に15mを超える水門を完成させました。そ
の結果、このたびの東日本大震災でも犠牲者はほぼ
ゼロだった(確か2名のみだったと記憶しています)
ことを知っているからです。
先日また、NHKスペシャルにおいて、30年以内
に70%の確率で発生するとされる「南海トラフ」
の惨事をドラマ仕立てにして2回に分けて放映して
いました。制作側は、普段の生活の中においても防
災意識を持つ必要性を訴えたかったのだろうと想像
しています。
翻って、東北沿岸の400kmの防潮堤建設や普代
村のような教訓をなぜ「南海トラフ」の該当地域に
適用しないのか不思議でなりません。その気になれ
ばできるのです。様々な理由もあるのでしょう。東
北の防潮堤の番組では「海が見えなくなった」と嘆
くシーンもあり、それになぞらえれば、“桂浜”な
どの景勝よりもその地域に住む人々の命の方がどれ
ほど大事か、考えればわかることと思うのです。
国民は、東日本大震災の復興のために2013年か
ら2037年まで税率0.21%の復興税を特別
税として徴収されています。財源の足りない分は、
この期間を延長するとか税率をアップするなど最大
限に活用すればよいでしょう。少なくとも、その効
果が検証できない「脱炭素」などに高額な税金を投
入することよりよほど国民のためになると考えます
し、「地球温暖化で海面が上がる」とでも言えば、
説得力もあることでしょう。
トルコでは違法建築が横行して、本地震の被害は
「人災が原因」として政府の対応を批判する声まで
上がっているようです。南海トラフは概ね100~
150年間隔で繰り返している歴史がありますので、
「2度あることは3度あってはならない」のレベル
ではありません。もし、近い将来に発生し、東日本
大震災のように、あるいはNHKスペシャルのよう
に津波による大惨事になれば、それもまた「襲来す
ることがわかっていて有効な対策を打たなかった」
とする「人災」とも言えるのです。
前回紹介しましたように、ウクライナ戦争によるウ
クライナ側の犠牲者は1年間で1万3000人ほど
です。トルコやシリアでは一時の地震(揺れ)で5
万人を超える犠牲者が発生しています。天変地異の
方が戦争より一瞬で桁違いの犠牲者が出ることを再
認識する必要があります。我が国は、天災も人災も
「未然防止が苦手」という歴史的特性を有している
と考えていますが、そろそろ国を挙げてそれを返上
する時が到来しているのではないでしょうか。
▼風力発電について(補足)
前回のメルマガで紹介した風力発電について、少し
補足しておきたいことがあります。昨年2月、富山
県沖で計画する洋上風力発電事業は、中国の風力発
電王手「明陽智能」が受注したようで、これが中国
企業による日本の風力発電分野への初受注となりま
した。
前回、風力発電は施設コストが高いことを紹介しま
したが、安価な中国の風力発電施設が日本国内の洋
上風力発電の普及を後押しすることになるとは必定
でしょう。
この際、中国国内の風力発電事情についても補足し
ておきましょう。中国では2021年9日時点で1
3.2GW、つまり、日本政府の2030年目標を
大幅に超える洋上風力がすでに送電網に接続済みと
なっているといわれます。そして、驚くべきことに、
21年はさらに17GWの新規発電設備を導入し、
送電網未接続の設備も含めると累計導入量は26G
Wに達したとされています。これに対して、日本の
現状は中国の440分の1の59MWです。
1年間で17GWという莫大な導入は、実に世界の
導入量の約8割以上を占めたということになります。
この驚異的な急拡大の背景には洋上風力の買取優遇
価格の見直しが予定されているために駆け込み需要
があったとされますが、日本の2040年目標の下
限30GWに、中国は2022年中にでも到達した
のではないかとの分析もあります。
この結果、大幅なコストダウンも実現し、我が国へ
の進出がますます増加するばかりか、政府のグリー
ン成長の前提としてのアジア展開を中国企業に対抗
して実現することはますます難しくなってきている
のかも知れなく、残念ですが、この分野も戦略の見
直しが求められそうです。
▼水素・アンモニア導入促進
エネルギー政策に絡む課題や問題点は挙げればキリ
がないと考えます。何と言っても、菅内閣以来、
「脱炭素」政策を推進することに焦点が当たり、の
ちにウクライナ戦争を原因とするエネルギー危機に
直面したことから、エネルギー確保と経済成長を合
わせた「一石三鳥」に切り換えてはみたものの、そ
れぞれのエネルギー源確保などに絡むマイナス点な
どにはろくに分析しないまま、まるで最近、社会問
題化している高齢者の自動車運転のように、“アク
セルだけを踏み、ブレーキを忘れた”かのような舵
取りをしていることが気になります。
なかには、原子力発電のように、世間一般の反対論
者を制して、大局的な判断に立っているものもなく
はないですが、それとて何となく「及び腰」に見え
るのは、全般としてこれだけの専門家が集まって知
恵を出し合って案出した計画であっても、個々には
どこかに“煮え切らない部分がある”と感じている
「共通の背景」があるのかも知れないと疑ってしま
います。
さて、「水素・アンモニアの導入」については、G
X基本計画では、「再生可能エネルギーの主力電源
化」そして「原子力の活用」のあとに「水素・アン
モニアの導入促進」との項目を掲げ、次のように記
述されています。
「水素・アンモニアは、発電・運輸・産業など幅広
い分野で活用が期待され、自給率の向上や再生可能
エネルギーの出力変動対応にも貢献することから安
定供給にも資する、カーボンニュートラルの実現に
向けた突破口となるエネルギーの一つである。 特に、
化石燃料との混焼が可能な水素・アンモニアは、エ
ネルギー安定供給を確保しつつ、火力発電からのC
O2排出量を削減していくなど、カーボンニュート
ラルの実現に向けたトランジションを支える役割も
期待される。同時に、水素・アンモニアの導入拡大
が、産業振興や雇用創出など我が国経済への貢献に
つながるよう、戦略的に制度構築やインフラ整備を
進める」
文章を読む限り、やる気満々であり、水素・アンモ
ニアこそが我が国の未来の救世主になるような期待
度が現れています。テレビCMでも「CO2フリー
の水素発電」が時々流れますが、本当にそうなので
しょうか。
どうも、私自身はこの世界の専門家といわれる人た
ちを疑ってしまう癖がついてしまったようで、専門
家の多くが、現時点においてはほぼ未知のエネルギ
ー源であっても今後に寄せる期待が大きいこともあ
るのか、根本の問題に目をつぶっているような気さ
えしますので、あえて水素・アンモニアに絡む問題
点をつまびらかにしてみたいとの欲望にかられます。
この問題を論ずるとき、私たちはもう一度、エネル
ギーの基礎知識に振り返って理解しておく必要があ
るようです。エネルギーは、大きく1次エネルギー
と2次エネルギー以下に分かれます。1次エネルギ
ーは直接的なエネルギー源となるものを指し、化石
燃料(石油、石炭、天然ガスなど)と原子力、自然
エネルギー(水力、風力、太陽光、地熱など)の3
種類しかありません。我が国の場合、これらのエネ
ルギーの8割ほどを化石燃料に依存し、その自給率
はわずかに12%ということはすでに紹介しました。
これに対して、2次エネルギーは1次エネルギーを
加工して得られるもので、具体的には電力、石油製
品(ガソリン、軽油、灯油など)、都市ガスなどが
あり、水素もこの部類に属します。これらはすべて
天然資源としては産出されず、1次エネルギーを原
料として生産される「工業製品」として分類されま
す。なお、2次エネルギー源から製造されるのは3
次エネルギー、そして4次エネルギーと順次エネル
ギー源は製造されます。
私たちは、身の周りにふんだんにある水の元素がH
2Oであることなどから、エネルギー「源」として
の水素があたかも自然界に無限に存在するかのよう
に誤解したまま、マスコミなどが報道していること
を知る必要があります。「エネルギー源としての水
素」はなんらかの加工をしないと手に入らないもの
なのです。
▼「エネルギー源としての水素」の取得
ではどのようにすれば、「エネルギー源としての水
素」を取得できるのでしょうか。電力が様々な方法
によってつくられると同様、水素も様々な方法によ
って製造されます。しかし、現実的には、天然ガス
の中のメタン(CH4:炭化水素)と水(電気分解
か熱分解)しかなく、GXなどでもこの2種類だけ
が検討の対象になっているといわれます。
現在、最も安価な水素を得る方法は、天然ガスの中
のメタン(石油や石炭などからも得られます)から
水蒸気を用いて水素を製造する方法(「水蒸気改質」
と言われます)であり、化学式では、CH4+2H
2O→4H+CO2と記述され、1分子のメタンと
2分子の水が反応し、4分子の水素と1分子のCO
2を生成されることを意味します。つまり、水素を
製造する際に、メタンを燃やした時と同じ量のCO
2も排出されるのです。
この例以外でも、バイオマスなどの炭素を含む物質
から水素を製造する場合においても、含まれる炭素
は必ずCO2として排出されます。日本は現在、オ
ーストラリアから褐炭水素、UAEから天然ガス水
素などを輸入していますが、その製造原理は同じで
す。
その上、「水蒸気改質」は1000℃近い高温で反
応させるため、たくさんの熱エネルギーを必要とし、
製造される水素の保有エネルギーの約半分はCO2
を排出しつつ製造時に消費されてしまうのです。つ
まり、天然ガスであろうが石炭であろうがバイオマ
スであろうが、元のエネルギーの約半分に目減りし
てしまいます。
製造時にCO2が発生すると、「脱炭素」の実現に
ならないので、発生したCO2を回収・圧縮して海
底や地中深く産めてしまう(CCS)を適用するこ
とになっていますが、当然ながらCCSにはコスト
がかかり、エネルギーも消費するのでさらにCO2
排出することにつながります。CCSがそう簡単で
ないのは、発電単価のコスト上昇が避けられないか
らであり、CO2を出しまくる化石燃料による火力
発電の現場でも未だ実現できない原因となっていま
す。
なお、マスコミなどでは、水素については、天然ガ
スから製造される水素は、製造時にCO2を出すの
で「ブラック(ブルー)水素」、CCSを適用した
場合は「グレー水素」、水から作った場合は「グリ
ーン水素」と区別していますが、この「グリーン水
素」を製造する方法は、水の電気分解です。
これについては、中学校の理科の実験で経験した読
者も多いことでしょう。電気分解以外の方法として
も、高温を用いる熱分解と太陽光を触媒として光分
解する方法がありますが、効率性などに問題があり、
事実上は電気分解のみのようです。しかし、前述し
たように、電力は2次エネルギーであり、これを用
いて作る水素は、3次エネルギーに分類されます。
つまり、作る過程において必ず目減りすしますので、
元のエネルギーよりコストの高いエネルギーになる
ことは避けられません。
現実に、天然ガスや原油などの燃料から電気を作る
過程において約50%のエネルギーロスがあるとい
われ、その電気から水素を作ると約30%のエネル
ギーロスが発生します。「CO2が出ないから」と
いって、喜んでばかりもいられないのです。
現在、水素を最も効率的に使う方法として「燃料電
池」が用いられています。元の電力を再エネから得
る(余剰の再エネが使われるようです)としても、
再エネ→水素→燃料電池→電力となり、それぞれに
段階で目減りするので、“電力の無駄使いでしかな
い”ことがわかります。つまり、電気分解で水素を
作る技術はどうしても高くつくので、商業ベースで
は実用化された例はないようです。
GX基本計画においては、「水素」の獲得について
「我が国は、大規模かつ強靱なサプライチェーンを
国内外で構築するため、国家戦略の下で、クリーン
な水素・アンモニアへの移行を求める」「水素・ア
ンモニアを海外から輸入する場合においても、製造
時の温室効果ガス排出など国際的な考え方にも十分
配慮するとともに、上流権益の獲得を見据えた水素
資源国との関係強化を図る」と記載されているよう
に、海外でブルー水素やグリーン水素を製造し、輸
入する可能性が高いですが、水素は、-253℃の
極低温まで冷却しなければ液化しないという特徴が
あり、大量の貯蓄・輸送には不向きという特性もあ
ります。
そこで、アンモニアやメチルシクロヘキサン(MC
H)、CO2フリーメタンなど、貯蓄や輸送がより
容易な物資(水素キャリア)の形を活用することに
なります。このため、水素をさらに加工して、さら
なるエネルギーロスが生じることになり、決して効
率的な方法とは言えないばかりか、長距離輸送費の
コストもかさむことになります。
仮に、製造国で生産したブラック水素を輸入すると
すれば、確かに国内ではCO2を排出しないことに
はなりますが、地球温暖化に与える影響上は意味が
ないことになるでしょう。
GX基本計画をつぶさに読むと、「問題山積である
ことはわかっているが目をつぶり、将来の可能性に
賭ける」式の政策がかなり含まれているとの印象を
持ってしまいます。「一石三鳥」のいずれも同時に
達成する難しさが内在しているのでしょう。
当面(2030年までは)は、「化石燃料発電でC
O2を出しまくることを国際社会に認めさせ、その
間に、再エネや原子力発電などの分野で世界のトッ
プに立つ」との極めてしたたかな中国のエネルギー
戦略に対して、残念ながら我が国はその足元に及ば
ないようです。
ちなみに、最近、欧米諸国や中国でさえ、水素への
取り組みはあまり熱心でないともいわれます。米国
においてもそのための研究開発費が減額されている
ようです。当初は活発に進められ、我が国もそれに
追従するような形でこの分野に力を入れ始めたよう
ですが、今では、我が国だけが“祭りの真っ最中”
ということになっているのかも知れません。近い将
来、“見極め”が求められることでしょう。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
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