配信日時 2023/02/27 20:00

【我が国の未来を見通す(59)】「気候変動・エネルギー問題」(24)  再生可能エネルギーの課題(その2) 宗像久男(元陸将)

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「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
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戦争、選挙、金融…
世界中のあらゆる事件をネタに…
常に裏で利益をむさぼるある集団がいた…

国際情勢のあらゆる事象の背後には、
常に彼らの存在が見え隠れすると
国際関係学者の藤井厳喜先生は言います。


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こんばんは、エンリケです。

本連載のアーカイブサイトができました。
https://wagamirai.okigunnji.com/

過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。


59回目の配信です。

冒頭文で、前号での私の言葉を取り上げていただき
感謝します。

わが現状を見る限り、先行きは四方八方ふさがった
真っ暗闇で不安しかありませんが、わが国は過去何
度も屋台骨を変えてしまうレベルの変革を実行して
半死半生になりながらもいままで生き抜いてきた頑
強で柔軟な国史と国体を持ちます。国史と国体への
無限の信頼を礎に、後世に少しでも良い国を引き継
げるよう、わたしもひたすら生きてゆきたいもので
す。一寸先は闇ということばがありますが、一寸先
は光という言葉もあります。

さっそくどうぞ


エンリケ



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我が国の未来を見通す(59)

「気候変動・エネルギー問題」(24)
 再生可能エネルギーの課題(その2)


宗像久男(元陸将)

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□はじめに

 前回のメルマガ冒頭で、エンリケさんが「時を追
うごとに、人間の全てが小さくなってきた感を持つ
のは私だけでしょうか? 国内外問いません・・・
人間としての常識が『ナニカ』に人類はまたもや支
配されているのかも知れません」という紹介をされ
ました。

実は、この紹介文を読ませていただき、一瞬、ドキ
ッとしました。永い間、私自身が全く同じことを思
いはじめ、人間が小さく(つまらなく)なった原因
はどこにあるのか、その「ナニカ」とは何であろう
か、そしてそのような状態から脱するためにはどう
すればよいのだろうかなどと考え続け、それを問い
求めるための探究も同時並行的に行なってきたから
です。

その探求は、たぶん、宗教家とか心理学者などの領
域なのかも知れません。40歳代の頃だったと思い
ます。「自衛官として職務を全うする以上、いつ戦
死するかもわからない。そうなった場合、自分は何
のために生まれのだろうか」という、いわば「死生
観」のようなものを身に着けることを思い立ち、宗
教書とか哲学などを読み漁ったことがありました。

この経験についてははじめてカミングアウトするの
ですが、実はこの世界の奥の深さは半端でないこと、
現世はおろか、過去世、そしていつの日か“未来
の生まれ変わり”まで考える必要があると、それま
での自分の常識では乗り越えがたい“壁”にぶつか
ったのでした。

これ以上は、本メルマガの本旨から外れますので止
めますが、最近、あることがきっかけとなって、ド
イツの心理学者エーリッヒ・フロムの『自由からの
逃走』を読み始めています。この書籍、タイトルか
らして奇妙なのですが、原書は1941年に出版さ
れたもので、フロムの問題意識は、「なぜドイツ民
族がヒトラーを選んだか」にありました。しかし、
読み進めていくうちに、現在の情報過多の時代、つ
まり世の中には「民主主義」とか「自由」を謳歌し
ている人々がたくさんいることを分かっていても、
権威主義国家の国民として、いわば独裁者による統
治を受け入れ、「不自由」さを許容する人々が多い
のはなぜか、との疑問に対するヒントを与えてくれ
るような気がするのです。

一昔前まで、人類は、民族や宗派によって、また実
際には個人によって多少の差異はあったとは思いま
すが、いわば、「人類の叡智を超える存在として
『神』に対する畏敬の念」のような価値観を共有し
ていたと考えます。

それがいつの間にか、民主主義とか人権とか平等と
か正義などが最高の価値として優先され、それらが
また、人間の「思い上がり」によって増幅され、か
つてニーチェが「神は死んだ」と叫んだことに象徴
されるように、人類は畏れとか謙虚さを失ってしま
いました。最近、そのような人々の心理の延長に、
「人間が小さくなっている」原因があるのではない
かと思い始めています。

数学者の藤原正彦氏は、『国家と教養』の中で、
「教養とは古典や哲学などの知識とそれらを通じた“
人格”の陶冶」と定義して、「歴史の中で、先人達
の教養がいかに偉大な力を発揮したか、20世紀に
なってなぜ力を失ってしまったか」と嘆いています。

「小さくなっている」のは、遠い過去から現在に至
る長い歴史の中で、人類が様々な困難に出会い、葛
藤し、努力し、克服してきた営みの集大成として当
然の帰結なのかも知れないのです。そうなると実に
厄介です。この世から犯罪者がなくならないように、
人間が「小さくなった」からこそ「“よこしまな”
人間が出現する」可能性が増えているし、今後も増
えることを覚悟しなければならないのです。

人類の常識を支配している「ナニカ」の解明につい
ても、気候変動のような問題は、「みんなで渡れば
怖くない」的な“集団心理”まで加わっていると考
えますので、そこに内在する要因は、複雑でなかな
か計り知れないものであると考えるに至っています。

我が国においては、地方によって畏れおののく対象
は違いますが、昔から「おてんとうさまが見ている」
式の“しつけ”の伝統が少し残っていますが、人
類は、小賢しい法律などを凌駕する、表現が難しい
ですが、「道徳心」のようなものに、再び“権威”
を持たせる時期が到来しているのではないでしょう
か。

さて、バイデン大統領のウクライナへの電撃訪問に
合わせたように、21日、プーチン大統領が「西側
が戦争を始めた」としてウクライナ侵攻を正当化す
る年次教書演説を行ないました。人類が経験した、
いかなる戦争も自らの正当性(大義)を主張し合っ
てきましたので、特に驚きはしませんが、その場に
居合わせたロシア人たちがまるで集団催眠にかかっ
ているかのような顔の表情がとても印象に残りまし
た。さっそく、バイデン大統領も応酬しました(細
部は次回取り上げます)。

昨年秋ごろ、自らもがんを患っているとされるプー
チン大統領は、兵士の母親たちを前にして「人間は
いつか死ぬ。どう生きるかだ」とも語っていたこと
がニュースになりました。「死んだら終わり」との
考えから出た言葉かどうか不明ですが、仮に、“死
を決した人間”として、“自らの人生の証として歴
史に名前を残す”ような功名心にかられて、ロシア
国民やウクライナ国民、それに世界の人類を巻き添
えにすることに一寸のためらいがないとすれば、こ
の先の展開はとても危険性が増大することでしょう。
あらゆる手段を講じてそれをストップさせる必要が
ありますが、その手段が見つかるか、正念場です。

繰り返しますが、現在の人類社会はとても複雑です。
人類の思想や価値観、それに死生観などがこれま
での人類の営みの集大成としてますます多様化して
いる証拠でもあるでしょう。正直申し上げれば、世
界のリーダーたちの言動や所作、それに加え、それ
らを分析している専門家各氏の解説もいかにも表面
的で隔靴掻痒の印象を持ってしまいます。

かつて経験したこともないような人類の危機をいか
にして乗り越えるか、(何度も取り上げていますよ
うに)偉大で、強力な力と智慧を持つリーダー(達)
の出現と関係者が“ひれ伏す”姿をいつも夢見てい
るのですが、現実は、若者たちの言葉を借りれば、
“超ヤバい”と考えざるを得ません。

次回は、冒頭で「ウクライナ戦争1周年」に絞って
この問題を取り上げてみたいと思います。


▼太陽光発電の問題点・課題―外国資本の参入

さて本題に入りますが、私は、自衛官として育って
きたせいもあって、国家の「独立」とか「自立」と
いうことをライフワークのように追い求める癖が出
来上がってしまいました。エネルギー問題や食料問
題も同じです。歴史をみても、「石油の一滴は血の
一滴」となって大東亜戦争を始めたように、国防は
もちろんですが、エネルギーや食料の“生殺与奪の
権利”を外国に握られることを努めて避ける必要性
があると考えています。

グローバル社会が到来して久しいですので、一国の
みで平和も安寧な生活も望めないのは明らかですが、
同盟国や友好国ならさておき、いつ寝首を掻かれ
るかわからいような国に、国家のバイタルな問題に
対して、仮にその一部であったとしても、なんらの
警戒感を持たないまま、事業を推進する人たちをど
うしても理解できないのです。

先日、沖縄の無人島・屋那覇島を中国籍の若い女性
が購入したということがマスコミで話題になりまし
た。かつての保有者が「中国人に売ったとは思って
いなかった」と証言したことも話題になりましたが、
太陽光発電の外国資本、つまり中国資本の参入は
こんなものではありません。

まず、前にも紹介しましたが、単価が安いとはいえ、
太陽光パネルの8割は中国製であることが判明し
ております。

このような中国の強さに対する警戒や太陽パネルの
生産過程でウイグル族など少数民族への人権侵害が
明らかになってきていることから、アメリカ、ヨー
ロッパ諸国、インドなどの諸外国では国家安全保障
の観点などから太陽光発電設備の国産化を後押しす
る動きが相次いでいるといわれます。

残念ながら、我が国においては、知る限りにおいて
は、それでなくともコストがかさむこともあって、
「安かろう、良かろう」ということが最優先されて
いるようです。インターネットを開ければ、中国製
であることは隠して、“安さ”のみをアピールする
太陽パネルや太陽光発電の広告で溢れています。

問題なのは太陽光パネルだけでありません。近年、
太陽光発電自体に中国の資本が入ってきて、様々な
問題を引き起こしていることが明らかになっていま
す。日本国内で太陽光発電事業を手がける中国の貿
易会社とグループ会社の計5社が、2018年まで
の4年間で計約30億円の所得隠しを指摘されてい
たことがニュースになっていました。

グループ会社全体で、FIT制度に基づき、高額な
売電収入などを得ていたにもかかわらず、日本に納
めるべき多額の税金を逃れたり、西日本を中心に太
陽光発電所を建設して売電収入を得たほか、その収
入を得る権利「売電権」を売るなどして膨大な利益
を得ていたようです。

しかし、最大の問題は、「太陽光発電を行なう」と
の名目で、日本の国土の何パ―セントかを外国資本
がすでに所有していることです。その実態について
は、土地の登記を取りまとめている法務省も国土交
通省の不動産建設経済局も詳細は把握していないよ
うで、このような事実が問題にならないことも問題
なのです。これこそが、日本全体の「わきの甘さ」
の象徴といえるでしょう。

唯一、保安林解除についてマニュアルを整備してい
る林野庁のホームページによると、居住地が海外に
ある外国法人または外国人による森林取得は平成1
8年から令和3年までの累計は303件2614h
a、国内の外資系企業による買収は266件585
1haと記載されていますので、合計で8465h
aに及びます。と言ってもピンとこないでしょう。
この面積はちょうど広島県の面積に匹敵します。す
でに国土のうち、広島県ほどの面積が外国資本で買
い占められているのです。

子細に見ると、当然ながらすべてが太陽光発電に使
用されているわけではないようですが、取得区画の
面積が大きい物件の用途はほとんど太陽光発電と記
載されています。つまり、広大な面積を必要とする
太陽光発電は、広大な土地を公然と取得するための
格好の理由(大義名分)となっているのです。

その大半は、北海道の森林との指摘もありますが、
これは国有地を主体に林野庁が把握できる範囲に限
定されます。民有林については所有者が明確でない
ものが多く、依然、全体像は把握されていません。
その中には、災害から人々の暮らしを守るための保
安林や水源も当然、相当含まれているようです。

▼外国資本導入の問題点

この現象は今に始まったことではありません。東日
本大震災以降、国が再エネの推進を強力に後押しし
たこともあり、太陽光発電事業は中国系企業にとっ
ても「垣根が低く参入しやすい」ビジネスとなりま
した。しかし、前回、紹介したように、国の買い取
り価格も下がっていることから、年々、事業の旨み
が少なくなり、日本企業は参入を渋り始めました。
それでも中国系企業の参加が相次ぐ背景には、「太
陽光発電を名目とした土地取得という目的があるか
らだ」と指摘もありますが、私もその見方に全く同
意します。

最近は、農地についても発電と農作物栽培を同時に
行なう「ソーラーシェアリング」が活用されつつあ
ります。一例を挙げれば、茨城県つくば市、筑波山
を眼前に臨む田園風景の中に、東京ドーム約11個
分に相当する敷地面積約50ヘクタールに約3万枚
の太陽光パネルが張り巡らされた全国最大規模の太
陽光発電施設が建設されています。2020年8月
から稼働しているようです。

これ自体はさほど驚くことではないでしょうが、問
題は“だれが経営しているか”です。事業主は、「
SJソーラーつくば」という「上海電力日本」とい
う企業が出資している会社なのです。

「上海電力日本」は、同社のホームページによると、
中国の「上海電力」の100%子会社の日本法人
で、2013年9月17日に設立されました。細部
は省略しますが、親会社の「上海電力」の歴史は古
く、日清戦争前の1882年創業、現在は中国国内
をはじめ、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジアなど
世界13カ国で太陽光・風力・水力・火力発電など
を含む電力事業の投資、運営を手がけています。

日本については、東日本大震災以後、日本の再エネ
普及に便乗し、日本のパートナー企業とタッグを組
み、共同投資・事業を根底として電力事業を進めて
きたようです。日本法人の取得と前後して、201
4年5月には、伸和工業との共同事業として、大阪
市で初のメガソーラー発電所「大阪市南港咲洲メガ
ソーラー発電所」が稼働しました(この経緯が物議
を醸していますが省略します)。

そして現在、前述の茨城県つくば市をはじめ、福島
県西郷村、栃木県那須烏山市、大阪府四條畷市、兵
庫県三田市等など国内18カ所でプロジェクトを推
進しており、さらなる電力事業拡大を目指していま
す。

今後、GX を推進することによって、政府から様
々な形の補助金を取得しつつ、このような外資企業
がますます“幅を利かす”ことは明らかであり、や
がては、我が国のエネルギーの“生殺与奪の権利”
を保持するレベルまで成長する可能性もあります。

問題はそれだけにとどまりません。中国には「国防
動員法」という法律があります。2010年から施
行されていますが、「有事の際、国家が民間の人や
施設を動員できる」とする法律です。動員は国内外
を問いません。太陽光発電施設として国内に分散し、
広大な面積の有する施設の“使い勝手”は、少な
くともGX一辺倒でそれ以外は盲目になっている政
府や官僚の皆さんの想像を超える、国防上最大の懸
念事項に発展する可能性があります。

ようやく令和3年、防衛関係施設とか海上保安庁の
施設周辺の各種利用等を規制した「重要土地等調査
法」が制定されましたが、日本国内に分散した数多
くの“拠点”は何ら法的規制を受けずに放置され、
有事の際には中国政府の意のままに使用される可能
性があるのです。

細部は本シリーズの最後にまとめますが、国防とは
、戦略3文書でいう宇宙やサイバーや台湾問題だけ
ではありません。戦略3文書は、少しは他省庁に関
連する記述はありますが、防衛省や外務省など関係
省庁が限定されていることと裏腹に、政府を挙げて
推進しようとしているGX実行計画の推進省庁に防
衛省は入っていません。国防上の配慮などは全く考
慮外なのでしょう。そのような所にも戦後の我が国
の“平和ボケ”がある証拠です。

余談ですが、防衛力整備については、長い間、財務
省というブレーキ一辺倒の役所が力を誇示し続けて
きました。GXの実行にはアクセルばかりでブレー
キをかける“存在”そのものが見当たりません。そ
れが何を意味するのか・・秀才の固まりとされる官
僚の皆さんにもそろそろ気づいてほしいと願ってい
ます。

最後に「中国はいま、再生可能エネルギーの分野で世
界の主導権を握ろうとしている。太陽光発電の分野
では世界一の生産量をほこり、風力発電でも欧州の
メーカーを猛追している。その先にあるのは、東南
アジアや、中東、アフリカといった国への輸出を通
じた、再エネ分野の『一帯一路』だ」との指摘を見
つけましたので、論評抜きで紹介しておきます。

我が国に中国資本の太陽光発電を拡大すればするほ
ど、我が国が「一帯一路」に加担することに直結し
、中国の国益に貢献することだけは間違いないので
す。


(つづく)


(むなかた・ひさお)



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 【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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