配信日時 2023/02/24 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】軍隊とパワハラ(2)──違法と合法の境目にある 上官の命令 加藤喬(元米陸軍大尉)

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「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
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戦争、選挙、金融…
世界中のあらゆる事件をネタに…
常に裏で利益をむさぼるある集団がいた…

国際情勢のあらゆる事象の背後には、
常に彼らの存在が見え隠れすると
国際関係学者の藤井厳喜先生は言います。


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こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監修),
 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
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武器オンチの日本人に
特におススメです。

考えさせられる内容です。

では今日の記事、さっそくどうぞ。


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編
     Takashi Kato

軍隊とパワハラ(2)──違法と合法の境目にある
上官の命令

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□世界は戦争熱に浮かされている

 2月4日、中国の高高度気球が南カロライナ州沖
で撃墜されたのを皮切りに、アラスカ、カナダ、ミ
シガン上空でやはり気球と見られる物体が撃ち落と
されました。2週間で4件の撃墜。気球騒動が前代
未聞の武力示威行為に進展したカタチです。
 
 2月13日、米国務省はアメリカ市民に対しロシ
アへ渡航しないよう呼びかけると同時に、同国に滞
在中の米国人に即時帰国するよう勧告しました。露
当局による不当逮捕や、米露両国籍を持つ人々にあ
っては「徴兵」される可能性があるとの理由からで
す。しかし極度に悪化した米露関係を考えれば、両
国が直接対峙した場合の布石とも考えられます。
 
 中国政府は3月1日から施行される新法により、
予備役将兵の兵役上限年齢を大幅に引き上げる模様
です。職種や階級、需要に応じ、最高60歳になる
とのこと。台湾防衛に傾く米国への牽制だとする観
測がある一方、台湾侵攻を前提とした事実上の予備
役動員なのかも知れません。
 
 こういった昨今の世相、私には世界が「戦争熱に
浮かされている」ように見えます。その根源には「
力による平和」戦略を政治家らが誤解している現実
がありそうです。「力による平和」の趣旨は「戦争
に備えることが平和を維持する最も効果的な方法だ」
というものです。この場合の武力とは抑止力のこ
とで、取りも直さず「相手に開戦を思いとどまらせ
る力」です。核兵器の凄まじい破壊力が逆説的に平
和を維持してきた史実を見れば、この戦略の正しさ
と実効性が分かります。
 
 昨年、欧米指導者らはロシアによるウクライナ侵
攻を押しとどめることができませんでした。ひとつ
には、米政府の性急なアフガニスタン撤退を見たプ
ーチン大統領が、バイデン政権に新たな武力介入を
敢行する意思はないと読んだからです。また中国と
の経済関係を深める一方、ドイツなど欧州諸国をエ
ネルギー政策で人質にとったロシアにとって、バイ
デン大統領が再三警告した経済制裁は効かないと踏
んだこともあるでしょう。


理由はともかく、バイデン最高司令官は「力による
平和」履行のタイミングを逃し、開戦を許してしま
いました。無垢(むく)の民間人目がけてミサイル
や砲弾が撃ち出され、しかも一方の交戦国が核大国
なのですから、戦闘の激化と長期化を避け出口戦略
を探ることが急務のはず。先週取り上げたランド研
究所の論文が示唆しているように、プーチン、ゼレ
ンスキー両大統領に「完全勝利への希望」を捨てさ
せ、「戦争継続より和平交渉に応じる方が得るとこ
ろが大きい」と納得させる妥協案のことです。
 
 ところが、欧米指導者らは「抑止力による平和」
を「戦争による平和」と勘違いし、対立激化政策に
血道を上げています。最新鋭戦車や戦闘機をウクラ
イナに供与し、露軍を撃退したうえロシアの国力を
削ぐ戦略です。


自業自得とは言え、これをプーチン大統領らロシア
首脳部から見ればウクライナ戦争はすでに単なる局
地紛争ではありません。西洋対ロシアという文化と
文化の死闘であり、母国ロシアの存立をかけた全面
戦争なのです。


ちなみに、ロシアを非欧州国家だとする思想家アレ
キサンドル・ドゥーギンは日本のメディアでも紹介
されており「ロシアの勝利か人類滅亡かの選択肢し
かない。ロシア国民もこの事実を理解し始めている」
との主張が報道されています。
 
 戦争熱を政治家が利用するのはどこも同じ。自国
民が抱く鬱憤、不平不満、自らへの批判を外敵にそ
らし、支持率を稼ぐことができるからです。米中が
お互いを「偵察気球によるスパイ常習犯」と断じ非
難合戦を繰り広げているのはその典型です。また1
4日、ブリュッセルのNATO本部で開かれた各国国防
相会合でも停戦は遡上に載せられず、もっぱら、ウ
クライナの戦争遂行能力を支援する武器、弾薬、燃
料などの補充が焦点でした。


翻って日本はどうか? アメリカによる気球撃墜に
背中を押されるカタチで「武器使用条件を緩和し気
球撃墜を可能にする」動きが出ています。しかし領
空侵犯当時、政治家諸氏は「気球の行き先は気球に
聞いてくれ」と揶揄するばかりで、中国に抗議すら
していません。「自国の独立を自ら守る矜持」と「
自前の抑止力」なしに軍事大国アメリカに追従して
いると、日本は無用な戦いの片棒を担がされること
になりかねません。
 
 脳裏に戦争への不安が募る日々、いったい何をす
ればいいのか? 一般市民が「力による平和」の真
の意味を理解すること、そして、戦争熱に浮かされ
た末のアルマゲドンに思いを馳せ、施政者らに声を
上げること・・・この二つにまさる解熱剤はありま
せん。


ウクライナ戦争開戦から1年になろうという今も、
欧米政治家らは核のチキンゲームを突き進んでいる
ようです。読者諸氏が、この愚かな現実を直視して
くださるよう心から願っています。
 


▼軍隊とパワハラ(2)違法と合法の境目にある上
官の命令

「加藤大尉の軍隊式英会話」番外編「軍隊とパワハ
ラ」2回目は、階級を傘に部下に特定の行動を強い
る上官について考えます。

 1991年7月11日朝、クウェートにある米陸軍ドー
ハ基地で大爆発が起こりました。誘爆に次ぐ誘爆の
結果、機甲部隊の戦闘車両100両強が損壊。異臭を
放つ黒煙は300キロ近く南下し、サウジアラビアの
ネフド砂漠に展開していたわが整備中隊の設営地ま
で漂ってきました。

 数日後、焼け焦げた戦車や装甲車の除染と内部点
検を命じられましたが、部下の整備兵には、M1主
力戦車に搭載されていた劣化ウラン弾が火災の熱で
溶け車内を汚染しているのではないかと危惧する者
もいました。

 そのことを大隊長に告げると、
「カトー中尉。陸軍は常に危険と隣り合わせだ。そ
れを承知でこの軍服を着ている。違うか?」
 
「その通りです、中佐殿。しかし部下の大半は何も
知らずに任務についています。せめて放射線レベル
の計測を・・・」

「ならば知らせてやりたまえ。防護服も支給してや
ればよい。だが、手元にあるマスクや防護服ではど
のみち放射線は防げない。皮膚の露出を少なくする
というだけのこと。しかも46度を超えるこの熱気
だ。着用して作業すればたちまち熱中症にやられる」
 
「中佐殿、では部下に何と説明すれば・・・」
 
「ルーテナント(中尉)」
 
階級をことさらゆっくり発音し、大隊長が畳みかけ
てくる。
 
「キミの仕事は『説明』ではない。部下を動かし任
務を遂行することだ。もう下がってよい」
 
「しかし、大隊長殿・・・」
 
「下がってよし、ルーテナント」

すごすご退散するわたしに、中佐が追い打ちをかけ
る。

「明日は将軍が視察にお見えだ。作業が遅れては困
るぞ」

中隊長代理として参戦した「砂漠の嵐作戦」での体
験です。「階級社会のしがらみ」では済まされない
葛藤は、30年以上経った今も忘れません。

 さて、今回教材に取り上げた『ア フユー グッ
ド メン』は類似の状況をリアルに再現しています。
ちなみにa few good menとは海兵隊の募集スローガ
ンで「少数精鋭」を意味します。
 
サンチャゴ一等兵は厳しい訓練に耐えきれず転属を
申し出ますが、厳格な基地司令官ジェセップ大佐は
部隊の士気を下げるとして認めません。そしてサン
チャゴの小隊長であるジョン・ケンドリック中尉に
「落ちこぼれの若造を『鍛えろ』」と指示します。
中尉は司令官の意図を「しごき」だと忖度し、部下
の兵らにサンチャゴを襲わせ死に至らせます。

 ジェセップ大佐は中尉に「鍛えろ」と指示したの
であって、違法命令には当たりません。しかし、司
令官という地位には尉官クラスの下級将校には抗(
あらが)えない権威があります。

士官候補生時代には「士官には違法な命令には従わ
ない義務がある」とか「『命令されたから』は言い
訳」だと教えられました。しかし現実には、違法と
合法の境目にある灰色の領域で出される命令も多々
ありますし、上官の意向を忖度した部下がすすんで
違法行為に手を染める場合も考えられます。

実際、ベトナム戦争中に起きたソンミ村虐殺事件で
は、ウイリアム・カリー中尉が100人を超える非
武装民間人を殺害した容疑で起訴されましたが、裁
判で同中尉は「敵を殲滅(せんめつ)せよとの命令
は、そこにいる者全員を撃ち殺せということだと解
釈した」と述べています。

 2009年、元中尉は以下の声明を発表しています。

 「ソンミ村で起こったことで良心の呵責を感じな
い日はありません。殺害されたベトナム人と家族、
そして部下の兵士らと家族に対し深い後悔を覚えま
す。心から申し訳なく存じます」


(本エピソードは2:40から始まります)
 

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
stay(ステイ)とどまる
lad(ラッド)若者 やつ
be in charge(ビー イン チャージ)監督する 
責任を負う

シナリオ(カウンターを0:43に合わせてくださ
い)
  “Santiago will stay where he is.  We will tr
ain the lad.  John, you are in charge”
(サンチャゴはどこにも行かせない。この若造を鍛
えるんだ。ジョン、キミが責任をもってやれ)

教材ビデオ:
 (1) "Who The Fuck Is PFC William T. Santiago?
" - A FEW GOOD MEN - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bfV4QbPjMnE

(今回のエピソードは最後まで続きます)

英語一言アドバイス:
be in charge は「監督する」「管理する」「責任
を負う」という意味です。軍隊では
When in charge, take charge(指揮する時は指導
力を発揮しろ)が不文律です。

発音サイト:
in chargeの発音 in charge- Google Search
http://okigunnji.com/url/176/


参考サイト:

『ア フュー グッド メン』 (1)
 "Who The Fuck Is PFC William T. Santiago?"
 - A FEW GOOD MEN - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=bfV4QbPjMnE




(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
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『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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三井・三菱財閥をわずか一代で超えた男の経営學
↓↓
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