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「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
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こんばんは、エンリケです。
本連載のアーカイブサイトができました。
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過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。
53回目の配信です。
「はじめに」の最後の段落。
日本人皆に読んでほしいです。
さて本文。
わがエネルギー自給率について、
具体的数値として常識としてわきまえている国民は
少ないのではないでしょうか?
基本的な数字や概念理解といった知的基盤
が国民のあいだで共有されていない分野から、
我が国の土台溶解が深まっている感を持ちます。
本連載の内容はその意味でも極めて重要と感じます。
「エネルギー危機」の核心をえぐる指摘も
まさに頂門の一針。目からうろこです。
ではさっそくどうぞ
エンリケ
追伸
「気候変動」と「エネルギー」を
<同一の問題として捉えているからこそ、有効な解
決策を見いだせないばかりか、誤った方向に舵を切
っているのではないか>
との指摘はきわめて重要と思います。
◆本連載のバックナンバーはこちらで
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我が国の未来を見通す(53)
「気候変動・エネルギー問題」(18)
「エネルギー問題」を考えよう
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
本シリーズの第1編は、「少子高齢化問題」を一
昨年の11月からに昨年の3月までの18回にわた
って取り上げました。
1月4日、岸田文雄首相は年頭記者会見で「異次元
の少子化対策を行なう」という強い表現を使い、急
激に進む人口減少を自らの手で食い止める覚悟を示
しました。個人的には「ようやく本気モードになっ
たか」と少し安堵の気持ちを抱いています。
きっかけとなったのは、昨年12月20日に発表さ
れた人口動態統計速報で、昨年1~10月の出生数
は66万9871人(前年同期比4・8%減)にと
どまり、この傾向が続けば、昨年1年間の出生数は
過去最少だった令和3年の81万人1622人より
さらに少ない77万人にまで急減することが判明し
たからでした。コロナ禍の影響はあるとはいえ、政
府関係者には相当ショックを与えたようです。
総理は6日、こども政策担当相に対し、(1)経済支援、
(2)子育て家庭向けサービスの拡充、(3)働き方改革
の推進を3月までに一案を出すよう指示したそうで
すが、乗り越えるべき課題は山積していることは間
違いないでしょう。
たぶん、私が本シリーズで紹介したような諸外国の
事情、たとえば、諸外国では子供を作るのに結婚を
前提としない非嫡出子が多いことや移民の拡大まで
含んで検討の範囲に入れるとは到底想像できません
ので、「少子化対策」と命名し、「こども政策担当
相」に指示している間は「異次元」と言えども発案
される政策は限定されるのでしょうから、真剣に努
力してもその効果が目に見えるまでは相当時間がか
かることでしょう。
私は、「少子化対策」から、最小限「少子高齢化」
まで含めた世代全体のあり方、さらには「人口減問
題」として幅広い観点から総合的な対策を行なうべ
きと考えます。
そして、またしても財源問題が焦点になっています
が、財源については、防衛費はもちろん、気候変動
対策費など他の政策をすべて含めてこちらも総合的
に検討すべきと考えますが、しばし「お手並み拝見」
としましょう。
それにしても、「習近平打倒」のデモがこのような
形に発展するとは当時、だれが予想したでしょうか。
いろいろ言い訳をしていますが、デモに恐れをなし、
「ゼロコロナ」政策を解除したと思ったら、今度は、
極端な「野放し政策」状態です。感染者数も死者数
もまったく現実とは違う桁違いの発表をして内外か
ら批判されていますが、“どこ吹く風”です。そし
て、わが国や韓国の水際防止措置に対抗して、ビザ
発給の一時停止という強行手段に出てきました。
中国の体制派からも公然と「習近平退陣要求」との
批判が出ているようなニュースも流れ始めましたの
で、中国の混乱は相当深刻なのかも知れません。
長期にわたる「ゼロコロナ政策」自体に無理があり、
かつ今回のように急激な政策転換を断行するよう
な政治を行なえば、様々な問題は抱えながらも国民
の一人ひとりが主役の民主主義国家なら、とうに政
権が崩壊していることでしょう。独裁(権威主義)
政権の特徴は、民意を忖度しているように見えても、
政府の都合で政策を決定し、しかも政権への批判
も封じ込めることを前提にしていますので、極端か
ら極端に振れる傾向にあります。「ゼロコロナ」か
ら「解放」(野放し)、あるいは「平和」から「戦
争」など、その間の妥協、バランス、共存、あるい
は“地ならし”のような概念はないようです。
新年早々ですが、いよいよ、そのような類の国家が
我が国周辺に少なくとも3か国もあるという“現実”
に真剣に立ち向かう時が来たとの覚悟を持つ必要
があります。今回から取り上げるエネルギー問題も
そうですが、我が国はまさに「内憂外患」です。明
治維新の3俊傑のように、身命を賭して見事に国家
の舵取りを敢行する、知恵と実行力のあるリーダー
の出現が求められており、岸田政権が歴史に名を残
すことができるかどうか正念場でしょう。依然とし
て、目先の“事象”に振り回される人たちが足を引
っ張るケースが多いのも我が国の最大の問題として
捉える必要があるでしょう。前置きが長くなりまし
た。
▼なぜ、いま「エネルギー問題」なのか?
さて、「気候変動問題」から頭を切り替えて、今回
からしばらくの間、我が国の「エネルギー問題」に
特化して考えてみようと思います。
私自身は、当初、「気候変動」と「エネルギー」は
一つの問題として捉えればよいと考えてスタートし
たのですが、内外の様々な状況や昨今の情勢の変化
などを分析しているうちに、これらの2つの問題は、
解決方向がオーバーラップしているように見える
部分と全く違った問題として捉えなければならない
部分があることに気がつき、むしろ、同一の問題と
して捉えているからこそ、有効な解決策を見いだせ
ないばかりか、誤った方向に舵を切っているのでは
ないかとの疑問を持つようになってきました。
詳しくはのちほど紹介しますが、政府はだいぶ前か
ら、この問題にメスを入れておりますし、岸田内閣
においても、重要な政策の柱の1つになっています
ので、なかなか軌道修正は難しいことでしょう。し
かし、原子力政策のように、ようやく「気がついた」
と評価できる政策判断もあることも間違いありませ
ん。
それでも、我が国のエネルギー問題の現状から将来
はいかにあるべきかについてはまだまだ検討を要す
ることが山積していると考えますので、皆様と一緒
に考えて行きたいと思います。
▼世界のエネルギー事情
国際エネルギー機関による2021年11月の調べ
では、我が国のエネルギー自給率はわずかに12.
0%であり、OECD(経済協力開発機構)加盟4
5カ国中、第42位にあることはご存じでしょうか?
世界のトップ5は、1位:ノルウェー709%(国
内需要のなんと7倍のエネルギー供給が可能です)
、2位:オーストラリア346%、3位:コロンビ
ア289%、4位:インドネシア195%、5位:
カナダ175%と続きます。当然、これらの国々は
エネルギー輸出国です。主要先進国では、アメリカ
104%(8位)、イギリス71%(16位)、フ
ランス54%(23位)、ドイツ36%(31位)
、イタリア23%(40位)と続きます。
それ以外に、中国80%(12位)、韓国は日本よ
り上位の17%(41位)で、日本より下位にある
国は、モロッコ、ルクセンブルク、シンガポールな
どの小国があるのみですので、我が国のエネルギー
自給率の低さは際立っていることがわかります。こ
れらをみると、「脱原発」などと我が国のエネルギ
ー自給率を顧みず、まさに現実離れした政策を掲げ
ている場合ではないのです。
ちなみに、ロシアはOECD加盟国ではなく、19
96年に加盟申請を行なっていたのですが、201
4年のクリミア併合で申請が凍結されています。2
015年のデータでは自給率188%となっていま
すので、エネルギー輸出国であることは間違いあり
ません。
また、ロシアのエネルギー施設の破壊攻撃によって
厳しい冬を迎えているウクライナのエネルギー自給
率は、1995年には50%以下まで落ち込んだの
が2011年のデータでは68%まで達しましたの
で、欧州諸国に比較すれば、まだ自給率は高かった
のです。
それにウクライナには、シェールガスがフランス、
ポーランドに続き欧州で3番目の埋蔵量が期待され
ているとのことですが、その7割が現在ロシアの占
領下あるいはその近傍の東部地区に偏在しているよ
うです。シェールガスの採掘技術は現在、アメリカ
が保有していることもウクライナ戦争を複雑にして
いる背景となっているのかも知れませんが、ロシア
にとっても、ウクライナ東部地域はエネルギー資源
的にも保有しておきたい地域なのだろうと想像しま
す。
歴史を顧みますと、人類は、「食料」「エネルギー」
あるいは「資源」を求めての争奪戦を繰り返して
きました。我が国は、すでに本シリーズ第2編で紹
介していますように、食料の自給率も先進国中最低
の38%(カロリーベース)しかありません。世界
の人口は現在の約80億人からやがて100億人に
近づくことが予想されるなか、安定的な「食料」と
「エネルギー」の確保は、我が国の生存にとって死
活問題であるとの認識をまず持つ必要があるのです。
一部の有識者が「エネルギーは(気候変動よりも)
安全保障最優先に」(キャノングローバル戦略研
究所研究主幹・杉山大志氏:産経新聞正論、202
2年5月26日付)と叫ぶ背景にはこのような事実
を知ってのことでしょう。細部は後述しましょう。
▼各国のエネルギー源の内訳
さて、エネルギー資源とは、「産業・運輸・消費生
活などに必要な動力の源」と定義され、18世紀ま
では主要なエネルギー源は水力や風力、薪、炭、鯨
油などであったのが、産業革命を境にして石炭、石
油が主に用いられるようになり、20世紀には核燃
料が登場したことは説明を要しないと考えます。
これらの エネルギー源の保有割合は各国によって
異なります。たとえば、第1位のノルウェーは、石
油と天然ガスが約8割を占めています。北海、ノル
ウェー海、バレンツ海に大型油田があり、石油や天
然ガスは主に欧州に輸出されています。その他、特
色ある地形構造から多数の湖や河川を利用して水力
発電量も世界第6位を誇っています。
特徴的な国はフランスです。資源小国のフランス(
とはいえ、シェールガスの埋蔵量が欧州1位である
ことは前述のとおりです)は、1970年代後半か
ら原子力発電を国策として推進してきており、全体
に占める割合は約78%で世界のトップを誇ります。
この割合は、人口もほぼ近い隣国ドイツ(原子力
発電の割合14%)の約5.4倍、イギリス(同2
1%)の約3.7倍と際立っていることがわかりま
す。
気候変動問題でも指摘しました中国のエネルギー源
は、昨年4月、中国電力企業連合会が発表したレポ
ートによると、石炭火力の割合が50%を切るレベ
ルまで減少してきています。2011年には石炭火
力が8割を超えていたことを考えれば、近年、脱炭
素化に向けて努力をしていることは事実でしょう。
その代わり、風力や太陽光など再生可能エネルギー
による発電容量が急速に伸びて、今年は45%に達
し、初めて石炭火力発電を超えるとの予測を出して
いるようです。
ただし中国は、発表機関によって、これらの数値が
大きく異なります。エネルギー政策を所管する国家
能源局が2021年12月に発表した再生可能エネ
ルギーの割合は、逐年増加はしているものの、国内
総消費電力の約14%に留まっており、国家目標と
して「CO2排出量を2030年までに減少に転じ
させ、2060年までにカーボンニュートラルを目
指す」としています。
その中国においても、再生可能エネルギー発電の割
合が低かった頃は、気象条件などによって出力に変
動があるリスクを火力発電の出力によって調整する
ことが主要な課題と言われていましたが、再生可能
エネルギーの比率がここまで大きくなると、発電量
のバランスがひとたび崩れれば、地域レベルでの電
力供給の不安定化や大規模停電を引き起こる可能性
があります。実際に、2020年末以降、(異常気
象などが原因なのか)風力や太陽光による発電が1
週間以上ストップするケースが各地で起きました。
これらから、電力の安定供給をいかに維持するかが、
これまで以上に切実な課題になっていると専門家
は指摘しています。これは日本のエネルギー政策に
も参考になることでしょう。
なお、中国は今でも原子力発電所が47基稼働して
いる(51基保有)世界第3位の国であり、今なお
建設中であることは以前に紹介した通りです。
▼ウクライナ戦争が世界のエネルギー事情を変えた
のか?
日本のエネルギーに絡む様々な問題については、の
ちほど詳しく触れるとして、昨今の国際情勢の変化
から、あれほど騒いでいた「気候変動問題」が吹き
飛んでしまったような印象を持つ世界のエネルギー
事情の実態について触れておきましょう。
現在、世界の化石燃料価格は大きく向上していま
す。ロシアのウクライナ侵攻がその原因であるとい
うのが一般的な見方ですが、実際のエネルギー危機
はそれ以前から続いていました。その根本原因は化
石燃料需給のひっ迫と化石燃料投資の構造的不足に
あるようです。
少し補足しますと、毎年増加を続けてきた世界の
石油ガス上流投資は、2014~16年の原油価格
低下によって2015年以降は大きく減少しました。
この上流投資とは、石油や天然ガスなどの資源の
探鉱・開発・生産段階(上流と呼びます)に投資を
行なうことで、投資のシェアに応じて、生産物の売
却利益を取得する権利を得ることを言います。一般
にハイリスク・ハイリターンといわれています。
その後、原油価格が持ち直して大幅増に転じました
が、2020年のコロナ禍による大都市のロックダ
ウンや国際航空を含む運輸需要の大幅低減が石油需
要を大幅に引き下げ、ニューヨーク市場では原油先
物価格が一時マイナスをつけました。これによって、
2020年の石油ガス上流投資は2014年の半
分以下に落ち込むことになりました。
ところが、2021年の世界経済はコロナ禍から
予想以上のスピードで回復し、化石燃料需給も非常
にタイトになりました。加えて、前述の中国同様、
洋上風力など間欠性のある再生可能エネルギーを大
幅に拡大した欧州では“風況”が悪く、例年以上に
バランスを確保するために天然ガス需要が急増しま
した。ちなみに“風況”とは一般には風の性質を意
味しますが、風力発電に関わる項目は、平均風速・
風速頻度分布・風光出現率・乱流強度などが挙げら
れます。風力発電量は、この“風況”によって左右
されることは明らかなのです。
そのような状況にタイミングを合わせたかのように、
ウクライナ戦争が勃発し、ロシアに対する制裁を
発動した結果、ロシアからの天然ガスを主とする化
石燃料供給が一気に不透明になってしまいました。
実際の原油価格の推移をみてみますと、価格は、
2020年1月ごろから4月まで一挙に下がり、4
月をボトム(約25USドル/バレル)に上昇に転
じ、ウクライナ戦争が始まった2022年2月頃か
ら再び急上昇し、現在、75USドル/バレルあた
りに高止まりしています(2023年1月12日現
在のWTI原油価格は77.4USドル)。
言うなれば、現在のエネルギー危機の原因は、
「地球温暖化対策を強調して間欠性のある再生可能エ
ネルギーに依存し過ぎた結果、コロナ禍、そしてウ
クライナ戦争という予期せぬ事態に追随できず、需
要と供給のバランスが崩れてしまった」ことにある
と考えるのが妥当でしょう。その現象が端的に現れ
たのがドイツでした。次回に取り上げます。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
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