配信日時 2023/01/13 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】イージス戦闘システム(4)──インターセプター (迎撃弾) 加藤喬(元米陸軍大尉)

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「青天を衝け」渋沢栄一は何をしたのか?
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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ

E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監修),
 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj

武器オンチの日本人に
特におススメです。

今年最後の配信です。

冒頭文を読みながら、
ひとは、こころを豊かにする栄養をとることを
忘れてはいけないなあ、とつくづく感じます。

では今日の記事、さっそくどうぞ。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編
     Takashi Kato

イージス戦闘システム(4)──インターセプター
(迎撃弾)

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□「引き分け」の知恵を持つ日本人政治家の出番

明けましておめでとうございます。読者諸氏に置か
れましては、つつがなく新年を迎えられましたでし
ょうか? 私は「締め切り」から解放された年末年
始、宇宙の起源に関する本や動画サイトを閲覧して
過ごしました。
 
 138億年前に開闢(かいびゃく)したとされる
宇宙は、ではいったいどこから来たのか? 宇宙学
者、理論物理学者、天文学者などが数多(あまた)
の仮説を立てています。
 
 たとえばインフレーション理論。「無」から誕生
した宇宙は10のマイナス36秒後(0と小数点の
後に0を35個並べ、最後に1を付けた値)に急膨
張(インフレーション)し、これがビッグバンにつ
ながって現在に至っていると推測しています。
 
この場合の「無」とは、我々が経験的に知っている
「何もない空間」ではなく、仮想粒子が生成消滅を
繰り返す場で、真空エネルギーや宇宙膨張加速の原
因とされるダークエネルギーに満ちているそうです。
 
 循環宇宙論は「ビッグバンで始まった宇宙の膨張
はやがて収縮に転じ、ビッグクランチ、すなわち時
間も空間もゼロになる特異点に帰結する」としてい
ます。ビッグクランチのあと再びビッグバンが起こ
ると考える学者もおり、この場合は宇宙には始まり
も終わりもないことになります。
 
 共形サイクリック宇宙論によれば、空間の膨張は
無限遠に続き、はるかな未来、電子や陽子を含むあ
らゆる素粒子は崩壊します。物質が完全に消滅する
ということは、距離や時間の尺度になる「出来事」
も存在しなくなることです。つまり空間や時間その
ものが意味を失うわけで、言ってみれば、時間も空
間も存在しなかったビッグバンの特異点と見分けが
つかない状態。これが新たなビッグバンになるとい
う仮説です。
 
 いずれも直感や常識で把握できるものではありま
せん。ことに私は宇宙論と物理学の言語「数学」を
解さぬ凡愚の身ゆえ、数式で表された諸説の巧みさ
や美しさは分かりません。いきおい、数学的に可能
であることとそれが実在することは別物ではないか
との疑問は湧いてきます。
 
とは言え、経験にそぐわない説がのちに事実と認定
された例には事欠きません。古くは地動説がありま
すし、かのアインシュタインが「数学的な可能性に
過ぎない」として取り合わなかったブラックホール
も現在では存在が確認されています。「ビッグバン
以前」の解明も儚(はかな)い希望とは言い切れず、
それは、星から生まれた人類が星へと還っていく
壮大なオデッセイの最終章になるかも知れません。
 
 一大オデッセイの完結には時間がかかりましょう
が、ヒトが惑星間文明を目指す限り不可能ではあり
ません。そのためにはまず、危険に満ちたテクノロ
ジー幼年期を通過することが先決。この意味で、2
023年は決して楽観を許しません。
 
大晦日にはウクライナ軍が米国製ハイマース高機動
ロケット砲でロシア軍拠点を狙い撃ち。ウクライナ
当局は「ドネツク地方の兵舎に駐屯していた400
名強の露軍兵が戦死した」としています。これに対
しプーチン大統領は年明けの4日、ツィルコン極超
音速巡航ミサイル装備の海軍艦艇を地中海に実戦配
備させました。ツィルコンは核弾頭を搭載でき、マ
ッハ8〜9で飛来するため迎撃不可能といわれる兵
器です。核戦争の脅威は確実に高まっているようで
す。
 
 一方アメリカ政界は新年早々、下院議長選出をめ
ぐり膠着状態に陥りました。下院を奪還した共和党
の内紛が原因で、5日間にわたる討議と15回に及
ぶ投票の結果、本稿執筆時の7日、ようやく本命の
ケビン・マッカーシー氏が新議長に就任して一件落
着となりました。
 
「共和党保守強硬派に振り回された異常事態」とい
う日米マスコミの報道は偏ったものですが、少なく
とも諸外国の目に米国の威光が失墜したのは間違な
く、ウクライナ戦争の調停役は務まりそうにありま
せん。
 
 緊張を緩和し核戦争を回避するには、勝者総取り
思考と袂を分かち「非対立の視点」で出口戦略を探
る必要があります。しかし「プーチン悪、ゼレンス
キー善」の二元論を信奉する指導者にゼロサムの妙
案は思いつかず、逆に米仏独などはウクライナへの
戦闘車両や地対空ミサイル供与に踏み切りました。
このまま対立を激化させれば、日本も自滅戦争の片
棒を担がされかねません。とすれば、「引き分け」
の知恵を持つ新世代日本人政治家の出番でしょう。
 
たとえば、プーチン大統領にウクライナ即時撤退と
占領地域返還、賠償責任を飲ませる一方、米国およ
び欧州諸国にはNATO東方永久不拡大を宣言させ、ゼ
レンスキー大統領には永世中立国としてのウクライ
ナ生き残りを承諾させるのです。現代版「三方一両
損」という訳です。
 
 もっとも国と国の駆け引きをつぶさに見てきた外
交通の読者諸氏は、「これをウクライナ戦争に適用
すれば、ロシア側の『やり得』になってしまう。プ
ーチン大統領もNATO不拡大の確約を得るからだ。習
主席がそこに目を付け、台湾進攻を仕掛けたほうが
得だと結論しかねない」と憂慮するでしょう。
確かにその通り。異論はありません。
 
 三方一両損を逆手に取らせないためには、各交渉
相手や中国を怯(ひる)ませる凄みが要ります。こ
の威圧感、つまり殺気はどこから来るのか? 答え
は第26代米国大統領、セオドア・ルーズベルトの
名言「棍棒を携えたうえで穏やかに話しかける」に
見て取れます。
 
 日本は力なき正義、すなわち「平和憲法」と「広
島カード」と決別して「棍棒」を持つ強い国となり、
そのうえで、居合道が教える「鞘の中の勝ち」を
実践することです。そうなってこそ、日本固有の知
恵で世界を救うことも叶いましょう。
 
 閑話休題。私にとって本年の正月は、壮大な宇宙
の成り立ちと人類のオデッセイに心を震わせると同
時に、いま目の前にある殺戮と自滅の光景に心を痛
めるものでした。読者諸氏はいかがだったでしょう
か?



▼イージス戦闘システム(4)インターセプター(
迎撃弾)

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。
刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内
の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒
的な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器
を手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマ
の裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

ウクライナ戦争を機に露中が接近し、世界は民主主
義圏と権威主義圏に二分された感があります。この
新たな力関係を背景に、台湾侵攻の可能性が取り沙
汰されています。

最悪の事態を想定し備えるのが平和の基本ですから、
防衛努力は粛々と進める必要があります。同時に、
勢いを増す「好戦的世相」に飲み込まれない冷静
な状況判断も求められます。

前回は索敵・追尾・照準するイージス・システムの
目である多目的レーダーを取り上げました。今回は
実際に敵弾道弾を破壊するインターセプター(迎撃
弾)に焦点を当てます。

海自のイージス搭載艦は現在8隻。弾道ミサイル防
衛の要を担っています。大気圏に再突入してくる敵
の弾道弾を迎え撃つのがスタンダード・ミサイル3
(SM3)と呼ばれる弾道弾迎撃弾、英語ではイン
ターセプターです。

イージス艦の多目的レーダーが飛来する弾道ミサイ
ルを探知すると、イージス・システムが迎撃に必要
な軌道計算を行ないます。SM3は垂直に発射され
目標に向け飛行。搭載されたGPSと艦からの誘導
によって目標に接近します。第1段、第2段、第3
段固体燃料ロケットを順次切り離し、弾頭である軽
量大気圏外迎撃体が姿勢制御しながら目標に体当た
りします。
この迎撃体は衝突のエネルギーのみで標的を破壊す
る「運動エネルギー兵器」で炸薬は一切使われてい
ません。

※軽量大気圏外迎撃体の写真
 Navy Theater Ballistic Missile Defense - Ligh
tweight Exo-Atmospheric Projectile - Wikipedia
 https://en.wikipedia.org/wiki/Lightweight_Exo-Atmospheric_Projectile#/media/File:Navy_Theater_Ballistic_Missile_Defense.JPG

落下してくる弾道弾も迎撃体も極超音速で飛行して
います。両者をピンポイントで衝突させるのはソフ
ト面でもハード面でも極めて難しく、これが「ミサ
イル迎撃は弾丸に弾丸を当てるようなもの」と言わ
れる所以です。にもかかわらず、SM3の命中確率
は8割強だと言われています。

教材ビデオ:
 DOES Aegis Combat System Work? Japan Tests Sh
ow Yes! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=csdtDywIKKY&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=264&t=14s
(本エピソード6:16から始まります)
 

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Potent(ポウテント)強力な
Potentially(ポテンシャリー)可能性がある
Ship-based(シップ ベイスド)艦載の
Interceptor(インターセプター)迎撃弾 インターセプター

シナリオ(カウンターを8:34に合わせてくださ
い)
 
It is potentially the most potent ship-based i
nterceptor in the world.

(SM3は世界で最も強力な艦載インターセプター
となる可能性がある)

(今回のエピソードは8:58まで続きます)

英語一言アドバイス:
 interceptorはこれまで有人迎撃機に与えられた名
称でした。しかし今回のビデオではイージス搭載艦
から発射される対弾道弾ミサイルを指しています。
日本語では弾頭および1段目から3段目までを含め
「迎撃弾」と呼びます。目標に衝突する運動エネル
ギー兵器は「迎撃体」で、英語ではkinetic energy
projectileになります。

発音サイト:
interceptorの発音 interceptor pronunciation - Goo
gle Search 
http://okigunnji.com/url/166/


参考サイト: 
イージスシステム イージスシステム - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0

スタンダード・ミサイル3 RIM-161スタンダード・
ミサイル3 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/RIM-161%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB3

ビッグバンのイラスト CMB Timeline300 no WMAP -
Big Bang- Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Big_Bang#/media/File:CMB_Timeline300_no_WMAP.jpg


(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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三井・三菱財閥をわずか一代で超えた男の経営學
↓↓
http://okigunnji.com/url/80/

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