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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
合わせは以下よりお気軽にどうぞ
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こんにちは、エンリケです。
あなたも、
インテリジェンスのプロフェッショナル・樋口さん
(元防衛省情報本部分析部主任分析官)に聞きたい
こと、書いてほしいこと、ありますよね?
コチラからお知らせください。
https://okigunnji.com/url/7
さてきょうの記事。
前回から引き続き、非対称戦、特殊戦、情報戦をめ
ぐるはなしです。
きょうのテーマは、パルチザン、レジスタンスです。
<戦争の初期段階で、ウクライナの一般市民とみられ
る人たちが手際よく火炎瓶を作っている映像などが
流れていましたが、こういう背景があったのですね。>
という一文があります。
準備もなしに、敵への抵抗などできるはずもありません。
戦後日本の平和ボケの中で生きてきた日本人には
とても想像できない日常が、戦争前のウクライナに
存在した現実が記事を通してよく見えてきます。
世界各国は、同様の備えを、
国の特性に応じて行っているはずです。
それにしても今日の記事は、
「こういう話を知りたかった!」
と思わず膝を叩いた人がいるくらいの
面白い内容です。
非対称戦や特殊戦、情報戦には、
正規戦にはない魅力があります。
軍にはできない戦争だからでしょうか?
さっそくどうぞ。
樋口さんに聞きたいことがあれば、
いつでもこちらからどうぞ。
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エンリケ
おたよりはコチラから
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https://okigunnji.com/url/7/
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ウクライナ情報戦争(9)
知られざるウクライナのパルチザン活動
─カラシニコフの代わりにスマホで戦う─
樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)
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□はじめに
ロシア国防省は12月5日、モスクワ南東のリャザ
ニ州にあるジャギレボ空軍基地(モスクワ南東約2
00km)とロシア南部のラサトフ州のエンゲリス
空軍基地(ウクライナ国境から約500km)がウ
クライナのドローンによる攻撃を受けたと発表しま
した。
これらの空軍基地は、いずれも核兵器搭載可能な戦
略爆撃機Tu95を配備するロシア軍の遠距離航空
部隊の拠点であり、ウクライナのインフラを攻撃す
る巡航ミサイルの発射場所ともされています。
また翌6日には、ロシア西部クルスク州ボストーチ
ヌイ飛行場周辺の石油貯蔵施設でドローン攻撃によ
る火災が発生しました。
ウクライナ政府はドローン攻撃への関与を公にはし
ていませんが、ウクライナのポドリャク大統領府顧
問はツイッターで次のように投稿しています。
「地球は丸い──そのことはガリレオによって発見
された。クレムリンでは天文学は研究されず、占星
術が優先されたようだ。もし地球が丸いことを知っ
ているなら、他国の空域に何かを発射したら、いず
れ発射地点に正体不明の物体が戻ってくるというこ
とは知っているはずだ」
と皮肉を込めてウクライナ側のドローン攻撃を示唆
しました。事実上ウクライナ側の攻撃であることを
認めたものといえるでしょうが、詳細は明らかにし
ていません。
ウクライナは、10月にはクリミア半島のセバスト
ポリのロシア海軍基地に対し、空中と水中のドロー
ンで攻撃を行なっています。そのため今回の攻撃も
ウクライナによる典型的な特殊作戦の一つと捉える
ことができるでしょう。
ただし、その到達距離とロシアの防空システムを突
破して軍事基地に被害を与えたことは、これまでと
は一線を画すものといえるでしょう。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報
調整官は12月7日、「我々はウクライナにロシア
を攻撃するよう促したり、攻撃を可能にしたりして
いない」と今回のドローン攻撃に米国は直接的には
関与していないとの立場を示しています。
アメリカは、今回の攻撃への直接関与を否定し、ロ
シア対アメリカ(NATO)の構図を生起させない
ように、配慮しているものと考えられます。
ただし、同調整官は「ウクライナの自衛のために情
報、物資、武器を提供しているが、どう使うかは彼
らが決めることだ」とも述べ、少なくとも何らかの
情報は提供していることは認めています。
ロシア国防省によると今回の攻撃に使用されたドロ
ーンは、旧ソ連時代の無人偵察機「Tu141」の改良バ
ージョンとされています。
ウクライナのメディアによると、Tu141はソ連時代、
ウクライナ北東部ハリコフの工場で生産され、1979
年から運用。もともと航続距離400キロだったもの
を、2014年のロシアによる軍事介入後、改良・再投入
が決まり、航続距離も1,000キロまで延びたとされま
す。
一方で、12月6日のCNNは、今回のドローンは、ウクラ
イナの国営企業ウクロボロンプロムが開発した可能
性が高いと報じています。
なぜなら同社は今年10月、Facebookに、機体の一部と
見られる写真を載せ、航続距離1、000キロの攻撃ドロ
ーンの開発が最終段階にあると明らかにしています。
さらに11月24日にはUAVを電子戦下で飛行させるテ
ストの準備をしているとの投稿もありました。
それが事実であれば、今後もウクライナによるド
ローン攻撃は、継続されることになるため、いずれ
詳細が分かるでしょう。
また、12月5日のニューヨーク・タイムズは、ウクラ
イナの特殊部隊が、基地の近くまで侵入しドローン
攻撃を誘導したと書いています。実際に誘導したと
すれば本当に特殊部隊なのか、またはパルチザンな
のかも気になるところです。
さらに新ロシア派は、12月10日クリミア半島南東部
のソビエツキーにあるロシア軍動員兵の兵舎で火災
があり、2人が死亡、約200人が避難したと通信アプ
リなどを通じて伝えました。同日、同半島で活動す
るクリミア・タタールのパルチザンを名乗るグルー
プが犯行を認める声明を発表し「ロシア軍を内部か
ら破壊し続ける」と警告しました。
というわけで今回は、前回少し触れたパルチザンに
ついて詳しく述べてみたいと思います。
▼パルチザンとゲリラ
パルチザンについて調べてみましたが、出典により
かなり違いがあります。今後の研究の余地がありま
すが、今まで調べたところをまとめてみたいと思い
ます。
パルチザンとはイタリア語の partigiano(党員や
仲間の意味)からきたフランス語です。
そこから、転じて、一般的には外国軍や国内の反革
命軍に対して自発的に武器をとって戦う正規軍に入
っていない遊撃兵のことを指します。
また、一部の歴史家は、パルチザンを明確な政治的
目標を持った、より組織化された武力抵抗グループ
とし、ゲリラは小グループで主に個々の戦闘員を指
すと区別しています。
さらに、パルチザンという用語は、主に中央および
東ヨーロッパで、ゲリラという用語は南ヨーロッパ
で好んで使用されるとの解説もあります。
本稿ではパルチザンもゲリラも同様の意味で使用し
ます。
パルチザンによる戦いは、20世紀の新しい現象で
はなく、18世紀にはあったとされています。初期
の頃の有名な事例は、1808~14年のナポレオンのス
ペイン占領に対する民衆の組織的抵抗運動です。
20世紀になるとパルチザン戦争は通常の戦争の一
部として、または平時の反乱運動として発展しまし
た。
1905~06年の第一次ロシア革命の過程で、ボリシェ
ビキが指導する武装襲撃、物資徴発、テロ、サボター
ジュ(意図的破壊行為、破壊工作)などの諸活動が
パルチザン運動と総称されました。
この頃、法的にもパルチザンも交戦者として認めら
れるようになりました。陸戦の法規慣例に関する規
則で(ハーグ条約1899、1907年)責任ある指導者を
持ち、遠方から認識できる固有の徽章を有し、公然
と武器を携行している限り、国際法によって保護さ
れることになっています。
21世紀のパルチザン活動のイメージは、第二次世界
大戦中の反ナチス、主に共産主義者による武装抵抗
活動によって大部分が形作られています。ベラルー
シでも激しいパルチザン活動が行なわれています。
ラトビア、リトアニア、ウクライナ西部では、ドイツ
の占領軍とソ連の地下組織の両方と戦っていまし
た。また、旧ユーゴスラビアのチトーによる対独抵
抗運動は有名です。
▼レジスタンスとは?
いっぽうレジスタンスとは、「抵抗」を意味するフ
ランス語です。特に、第二次世界大戦で枢軸国の占
領下に置かれた諸国における抵抗運動を指します。
それは各地で起こりましたが、特にフランスでは早
くから「レジスタンス」を名乗る組織が現れただけ
でなく、運動は多様化しました。
占領下においてのちにレジスタンス文学と呼ばれる
詩や小説などの作品も生み出されました。このレジ
スタンスは、フランスの解放やその後の思想に大き
な役割を果たし影響を与えました。
こうしてレジスタンスというフランス語は、諸国の
抵抗運動を網羅する言葉として広がっていきました。
フランスでは、在ロンドンのドゴール将軍による
「自由フランス運動」とフランス国内におけるスト
ライキ、サボタージュ、ナチス将兵の暗殺、ドイツ軍
施設破壊などの地下活動とが、協力と対立をはらみ
ながら発展しました。その他デンマーク、ノルウェ
ー、オランダイタリア、ドイツなどでもレジスタン
スが行なわれました。
同様の抵抗運動でも、強力な軍事抵抗はパルチザン
と呼ばれるようです。したがって、レジスタンスは
幅広い抵抗運動全般を指し、パルチザンはその中で
も武装され軍事的に組織化された抵抗運動だという
ことができます。
▼ウクライナにおけるパルチザン(ゲリラ)活動
さて、ウクライナにおけるパルチザン活動はどのよ
うなものでしょうか?
ロシアがウクライナに侵攻を開始した時、多くの専
門家はロシア軍がゲリラ戦に遭遇するだろうと予測
したといいます。つまり、政権はすぐに倒され、198
0年代のアフガニスタンや1990年代のチェチェンで
ソ連軍が直面した時よりも強力なパルチザンによる
戦いが起こり長引くだろうと予測したのです。
正規軍が早期に屈服し、ゲリラ戦が唯一の実行可能
な戦術として残されるという見込みでした。しかし、
実際は正規軍が西側からの強力な支援を得てロシア
軍を撃退し、さらに押し返しているためパルチザン
の活動は比較的注目を集めていなかったのが今まで
です。
ところが、詳しく調べていくと前回のメルマガで述
べたような、8月のクリミアのロシア軍航空基地内
での爆破だけではなく、その他の作戦などでもパル
チザンの活動が活発だということが分かりました。
過去の経緯はまだ調査中ですが、従来ウクライナ政
府は、パルチザン活動を不法として禁止してきまし
た(ということは、その前からパルチザンが存在し
ていたということです)。しかし、2014年ロシ
アがクリミア半島に侵攻し併合したことを受けてパ
ルチザン活動を合法化し、パルチザン組織をウクラ
イナ国防軍の隷下としています。
軍内の2つの組織が各パルチザン組織を運営してお
り、レジスタンスムーブメントと呼ばれるタスクフ
ォースがその取り組みを監督しているとされます。
東部や南部のパルチザンは、すでに2015年頃から将
来のロシア侵攻に備え、その補給路を遮断するため
の資材を集積する隠し倉庫などを作っていたとされ
ます。資材は軍の特殊部隊が夜中に行動して、ある
場所に埋め、それを地域のパルチザンが秘密裏に隠
し倉庫に運び込んでいたのです。
また、2月のロシア侵攻を受けるとすぐにウクライ
ナ国防省は「国民レジスタンスセンター」というサ
イトを開設して、市民による抵抗運動のやり方、パ
ルチザンへの参加を積極的に奨励しています。
サイトには「ロシアのドローンを見つけた時の対処
法」「ロシアの戦車を盗む方法」「小火器の使用法」
「家庭で煙幕弾を製造する方法」なども掲載され
ているようです。
戦争の初期段階で、ウクライナの一般市民とみられ
る人たちが手際よく火炎瓶を作っている映像などが
流れていましたが、こういう背景があったのですね。
元パルチザンの証言によれば、パルチザンの主な役
割は、(1)要人暗殺、(2)拠点破壊、(3)敵
の位置情報の提供です。その視点で情報を洗いなお
すとパルチザンの活動が浮き彫りになってきます。
ハーバード・ケネディスクールがまとめた資料によ
ると2月24日から11月2日までの(1)(2)
の活動(ただし、正規の特殊部隊が行なったものも
含む)は55件に上り、そのうち31件がロシア占
領地域においてロシアに協力する公務員などに対す
る暗殺(未遂)に関連しています。
ただし、医師、消防団員、電力会社職員などは、い
ざという時にウクライナに役立つため攻撃対象から
除外されているそうです。上記の間、少なくとも1
2人の標的が死亡し12人が負傷しています。
(3)の敵の位置情報の提供はアメリカから「ハイ
マース(高機動ロケット砲システム)」が届いてか
らはパルチザンのより重要な任務となっていました
。カラシニコフの代わりにスマホで戦うのです。
つまり、敵がいる兵舎、弾薬庫、司令部などの位置
を詳細に調べ、グーグルマップで確認、それをパル
チザン専用アプリで軍に送信するというシステムが
できているとされます。
ハイマースによるピンポイントの攻撃は、このよう
なパルチザンの情報収集が一躍買っていたのでしょ
う。
次回も、もう少しウクライナのパルチザンおよびそ
れへのロシア側の対応について記述したいと思いま
す。
□出版のお知らせ
このたび拓殖大学の川上高司教授監修で『インテリ
ジェンス用語事典』を出版しました。執筆者は本メ
ルマガ「軍事情報」でもおなじみのインテリジェン
ス研究家の上田篤盛、名桜大学准教授の志田淳二郎、
そしてわたくし樋口敬祐です。
本書は、防衛省で情報分析官を長く務めた筆者らが
中心となり、足かけ4年の歳月をかけ作成したわが
国初の本格的なインテリジェンスに関する事典です。
2017年度から小学校にプログラミング教育が導入さ
れ、すでに高校では「情報科」が必修科目となって
います。また、2025年の大学入学共通テストからは
「情報」が出題教科に追加されることになりました。
しかし、日本における「情報」に関する認識はまだ
まだ低いのが実態です。その一因として日本語の
「情報」は、英語のインフォメーションとインテリ
ジェンスの訳語として使われているため、両者の意
味が混在していることにあります。
一方で、欧米の有識者の間では両者は明確に区別さ
れています。状況を正しく判断して適切な行動をす
るため、また国際情勢を理解する上では、インテリ
ジェンスの知識は欠かせません。
本書は、筆者らが初めて情報業務に関わったころは、
ニード・トゥ・ノウ(最小限の必要な人だけ知れ
ばいい)の原則だと言われ、ひとくくりになんでも
秘密扱いされて戸惑った経験から、ニード・トゥ・
シェア(情報共有が必要)の時代になった今、初学
者にも分かりやすくインテリジェンス用語を伝えた
いとの思いから作り始めた用語集が発展したもので
す。
意見交換を重ねているうちに執筆賛同者が増え、結
果として、事典の中には、インテリジェンスの業界
用語・隠語、情報分析の手法、各国の情報機関、主
なスパイおよび事件、サイバーセキュリティ関連用
語など、インテリジェンスを理解するための基礎知
識を多数の図版をまじえて1040項目を収録する
ことができました。
当然網羅していない項目や、秘密が開示されていな
いため、説明が不足する項目、現場の認識とニュア
ンスが異なる項目など不十分な点が多数あることは
重々承知していますが、インテリジェンスや国際政
治を研究する初学者、インテリジェンスに関わる実
務者には役立つものと思っています。
『インテリジェンス用語事典』
樋口 敬祐 (著),上田 篤盛(著),志田 淳
二郎(著),川上 高司(監修)
発行日:2022/2/10
発行:並木書房
https://amzn.to/3oLyWqi
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(ひぐち・けいすけ(インテリジェンスを日常生活に役
立てる研究家))
樋口さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
↓
https://okigunnji.com/url/7/
【著者紹介】
樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
NPO法人外交政策センター事務局長。元防衛省情報
本部分析部主任分析官。防衛大学校卒業後、1979年
に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議事務局(第2
幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。陸上自衛隊
調査学校情報教官、防衛省情報本部分析部分析官な
どとして勤務。その間に拓殖大学博士前期課程修了。
修士(安全保障)。拓殖大学大学院博士後期課程修
了。博士(安全保障)。2020年定年退官。著書に
『国際政治の変容と新しい国際政治学』(共著・志
學社)、『2021年パワーポリティクスの時代』(共
著・創成社)、『インテリジェンス用語事典』(共
著・並木書房)
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