配信日時 2022/12/09 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】戦術核とは(4)──「プーチンの胸のうち」 加藤喬(元米陸軍大尉)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監修),
 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj

武器オンチの日本人に
特におススメです。

きょうの記事で

<MADが功を奏したのは、歴代の米ソ指導者らが
「自由と勇者の国アメリカ」や「母なるロシア」など
「守るに値するものや価値」を持っていたからです。>

というところ。

実に気になりました。

<「守るに値するものや価値」>

いまの世界にこういうものはあるでしょうか?

グローバリズムに内も外も席巻されつつある
我が国朝野に、こういうものはあるでしょうか?

何がそれでしょうか?

すべての国防安保はここから積み上げないと
無意味な気がしました。

では今日の記事、さっそくどうぞ。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編
     Takashi Kato

戦術核とは(4)──「プーチンの胸のうち」

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□今そこにある危機──ロシアは日本攻撃を準備し
ていた(?!)
 
 ロシア連邦保安庁(FSB)は外国スパイの監視・
摘発を含む防諜活動、対テロ作戦、国境警備そして
テロリストの暗殺などを任務とする治安機関。ソ連
の秘密警察だったKGBが母胎です。若き日のウラジ
ミール・プーチンはKGBの中佐で、東ドイツで活動
する諜報要員でした。後年、政界に転じた同氏はボ
リス・エリツィン政権でFSB長官も務めました。ち
なみに同庁長官は大統領によって任命され、大統領
に直接の説明義務を負っています。
 
 ニューズウィーク誌電子版11月24日付はFSB内部
告発者の情報として、
 「2021年の夏、ロシアは日本攻撃を準備していた。
プーチン大統領がウクライナ全面侵攻を開始する数
か月前の話だ」
 と報じました。その伏線としてロシア軍の電子戦
ヘリが日本近海で情報収集にあたる一方、露宣伝工
作メディアは日本をナチスになぞらえるプロパガン
ダ攻勢を強めていたとも伝えています。
 
 プーチン氏の古巣であり、また、裏切り者を決し
て許さない独裁大統領の直属機関であるFSBから
本当に告発者が出るものなのかどうか、私には判断
のしようがありません。また、同記事の主張も俄か
には信じがたいものです。とは言え、1933年に創刊
されタイム誌と並び称される老舗ニュース情報誌で
あるニューズウィークが報道したのですから、政府
関係者や政界の要人は一考すべき内容ではないかと
思います。
 
しかし、国会での質疑応答は旧統一教会と政治資金
問題に絡めた「大臣の首とり」に費やされるのみ。
およそ国家存亡の危機とは無縁の些末事にかまける
政治家諸氏には危機感が皆無です。
 
仮に偽情報だったとしても、そもそも「日本侵攻」
などというスクープがロシアから出てくるというこ
とは、米核戦力に頼る日本の抑止力が機能していな
い現実の裏返しにほかなりません。力の信奉者プー
チンは愛国心なき日本人を侮り、通常兵器しか持た
ない自衛隊の戦力を舐めていると言えましょう。
 
 ロシア制裁で欧米と足並みを揃えた日本に対し、
露政府は態度を豹変させました。むき出しの敵愾心
を前に、経済協力をテコに進めてきた北方領土交渉
が無に帰したのはもちろん、故安倍首相とプーチン
大統領が育んだ信頼関係を土台に「ロシアとウクラ
イナの仲介役となる」期待も消し飛びました。
 
 誠に対照的なのがインドです。石油や武器をはじ
めロシアからの輸入を大幅に増やす一方、ウクライ
ナへの人道支援を率先して行ない両国の信頼と感謝
を勝ち取りました。両交戦国の間を取り持つ調停者
としてインドが存在感を増している舞台裏です。大
国の思惑になびかぬ非同盟政策が功を奏したカタチ
ですが、それだけではないでしょう。
 
 前述のとおり、ロシアは長年にわたり日本側が提
示してきた善意や経済的誘因など歯牙にもかけず敵
視政策に転じました。なぜか? 日本が露国の脅威
とはなり得ないからです。
 
インドは現在160発の核弾頭を保有するとされ、
その数は今後も増える見通しです。また、陸・海・
空軍がそれぞれ核運用能力を持っており、先制攻撃
に対する残存性の高い核戦力となっています。核大
国ロシアと雖(いえど)もインドに一目置かざるを
得ない理由がここにあります。
 
 ちなみに、中国ではゼロコロナ政策への反発から
起きた「白紙デモ」が全国に波及し、参加者からは
ご法度の「習近平主席退陣要求」まで出たと言いま
す。怒りの矛先をそらすため、同主席が前倒しで台
湾侵攻に打って出ると見る中国専門家もいるようで
す。折も折、先日は中露の爆撃機が日本周辺を長時
間にわたり共同飛行しました。さらに厄介なことに、
バイデン政権の弱腰を見抜いた北朝鮮がほどなく
核実験再開に踏み切るとの推測もあります。日本を
取り巻く環境は「今そこにある危機」そのものです。
 
 日本はいつまで「平和を愛する諸国民の公正と真
義を信頼し」なる空念仏を唱え続けるのか。岸田首
相はいつまで露中北朝鮮を相手に「広島カード」を
切り続けるのか。
「自らの命と安全は自ら守るしかない」という単純
かつ冷厳な現実をこれ以上無視していると、日本は
ウクライナの二の舞を舞うことになりましょう。
 
 
▼戦術核とは(4)「プーチンの胸のうち」

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。
刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内
の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒
的な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器
を手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマ
の裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

ウクライナ戦争を機に露中が接近し、世界は民主主
義圏と権威主義圏に二分された感があります。この
新たな力関係を背景に、台湾侵攻の可能性が取り沙
汰されています。

最悪の事態を想定し備えるのが平和の基本ですから、
防衛努力は粛々と進める必要があります。同時に、
勢いを増す「好戦的世相」に飲み込まれない冷静状
況判断も求められます。

 本シリーズ最終回は「プーチンの胸のうち」を探
ります。

 冷戦中、米ソ全面対決を防いできたのが相互確証
破壊(MAD)。「全面核戦争になれば死なばもろ
とも」という文字通り狂気のメカニズムで、これは
現在でも続いています。

MADが功を奏したのは、歴代の米ソ指導者らが「
自由と勇者の国アメリカ」や「母なるロシア」など
「守るに値するものや価値」を持っていたからです。
核戦争が間違いなく自国民と祖国の壊滅に繋がるな
ら、勝ち目のない賭けに打って出る指導者などいな
い。我々がこう考えるのは道理です。しかし・・・

「逃げ道を失った相手を追い詰めてはいけない。死
に物狂いで襲いかかってくる」

 プーチン少年が両親と暮らしていた共同アパート
でネズミを捕えようとしたときの体験は、『プーチ
ン自らを語る』(高橋則明訳、扶桑社、2000年)で
「戒(いまし)め」として詳しく語られています。
同書を執筆した女性作家ナタリア・ケヴォルクヤン
は「プーチンは今もあの時と変わっていない。追い
詰めれば飛びかかってくる」と述べています。私が
恐れるのはこのことです。

 ソ連崩壊後KGB中佐から白タクの運転手にまで身
をやつし、かろうじて糊口をしのいでいたプーチ
ン氏はロシア再建を天命と任じ政界入り。一念発起
からわずか20数年で悲願を実現したのです。ロシ
アの人々がプーチン・ファイーバーに湧いたのも無
理はありません。しかし驕(おご)れる人となった
同氏は、旧ソ連の栄光と覇権を取り戻さんとの野心
からウクライナ戦争に打って出る誤算を犯しました。

自業自得とは言え、猛(たけ)き人プーチンが自ら
の失脚と死につながる敗北を認め撤退するとは思え
ません。事実12月3日、プーチン氏は「ロシア撤
退後に会談を行なう用意がある」としたバイデン提
案を拒否しています。

勝者総取りの「ゼロサム・ゲーム」を信奉するバイ
デン大統領には、米国を含めた人類の明日を見通す
慧眼がありません。同政権主導の下、日本を含めた
自由圏諸国がさらなる経済制裁と軍事援助でロシア
を締め付ければ、「追い詰められたプーチン」は核
をもって「襲いかかってくる」でしょう。それは取
りも直さず、ヒトが惑星間文明へ成長する芽を摘む
ことになります。

 柔道家プーチンの内面に訴え「引き分け」に持ち
込む外交技(わざ)は、全人類をテクノロジー幼年
期の愚行から救う「一本」。必要なのは「引き分け
」という日本の知恵を実践できる新世代の日本人政
治家です。

教材ビデオ:
 (2) Tactical Nukes use in #Ukraine by
 #Russia ! Full analysis - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CErm2a1lmwE
(本エピソード6:48から始まります)
 
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Sane(セイン)正気の 分別ある
Prevail(プリベイル)勝つ
Witness(ウィットネス)目撃する 体験す


シナリオ(カウンターを7:47に合わせてくださ
い)

“Hopefully, saner minds will prevail and we wo
n’t witness this kind of situation”

(願わくば、正気が勝利を収め核戦争を体験せずに
済ませたいものだ)

(今回のエピソードは最後まで続きます)

英語一言アドバイス:
prevailは「勝利を得る」「圧倒する」とい
う意味です。慣用表現の Cool heads prevailは日
本語なら「冷静な判断が勝利を得る」でしょう。

本メルマガに出てくる
Saner minds will prevailは cool heads(冷静さ)
より強い saner mind(正気)を使うことで意味を
強めています。(正気が勝ちを収める)

発音サイト:
prevailの発音how to pronounce prevail - Google 検索
http://okigunnji.com/url/163/

参考サイト: 
ロシア連邦保安庁(FSB)ロシア連邦保安庁 -
 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%82%A2%E9%80%A3%E9%82%A6%E4%BF%9D%E5%AE%89%E5%BA%81



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

『MP38/40サブマシンガン』
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「MP5サブマシンガン」
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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