配信日時 2022/12/05 20:00

【我が国の未来を見通す(49)】「気候変動・エネルギー問題」(14) 地球温暖化は人為的CO2が原因か(その2)   宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
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こんばんは、エンリケです。

本連載のアーカイブサイトができました。
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過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。

「ゼロコロナ対策」への対中共抗議活動。
宗像さんの見立てに注目です。

本文も極めて重要です。
宗像さんの疑問、指摘はもっともです。

さっそくどうぞ


エンリケ



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我が国の未来を見通す(49)

「気候変動・エネルギー問題」(14)
地球温暖化は人為的CO2が原因か(その2)


宗像久男(元陸将)

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□はじめに

 早朝のサッカーワールドカップのスペイン戦によ
る寝不足を自覚できないほど、興奮冷めやらぬまま
に原稿の最終チェックを行なっています。

それにしましても、中国の「ゼロコロナ政策」への
抗議行動には驚きました。習近平国家主席が第3期
目に入った頃から、中国国民の間にはかなりの不満
が鬱積し、いつ爆発してもおかしくない状態にある
ようなことが様々なチャンネルで報じられていまし
た。一方、中国国民は、「天安門事件」のように、
政府(共産党)が武力手段に訴えても反政府活動の
制圧を強行することを知っているので、簡単には表
面化しないだろうとほとんどのアナリストが予測し
ていたと思います。

それが、よりにもよって、発祥国でもあるコロナの
問題で、その上、「人権問題」で国際社会から注目
を浴びている新疆ウイグル自治区ウルムチ市の住宅
火災が発端となって、中国政府が取り続けている「
ゼロコロナ政策」に真っ向から反対する抗議行動が
発生し、それも中国全土に留まらず、ロンドン、パ
リ、シドニー、東京など海外にまで拡大しました。

抗議行動の発端として、サッカーワールドカップの
マスクなし観戦映像も一役買っているとの報道もあ
りましたが、私は、このたびの抗議行動から、ソ連
邦崩壊の引き金となった「グラスノスチ」(情報公
開、国民の知る権利の保障)を思い出しました。そ
れを裏付けるように、抗議行動は、共産党政権誕生
以来たぶん初めてと思われる「独裁不要」「習近平
退陣」まで訴える反政治活動に拡大し、一部は暴徒
化するなど、中国にとっては「歴史的異常事態」と
もいうべき事態に発展しました。インターネットや
SNSの発達から、国民の情報収集手段は、ソ連邦
崩壊時期と比較にならないのは明らかです。

1989年に発生した「天安門事件」は、100万
人を超える参加者があったといわれますが、北京の
天安門広場のみで発生した事件でした。それに比べ、
今回は50カ所を超える主要都市で抗議行動が起
きていることから、この沈静化は容易なことではな
いでしょう。

さっそく、抗議行動の未然防止のため多くの警察官
が動員されるなど、沈静化に躍起のようです。その
後、報道規制もあって詳細を知ることは難しくなっ
ていますが、このメルマガが発刊される12月6日
時点でさえ事態がどのようになっているか予測不可
能です。

現時点では、中国政府が今回の抗議行動をきっかけ
にこれまでの「ゼロコロナ政策」を緩和する可能性
は低いと考えますので、この方針が変わらない限り、
一旦、抗議行動が沈静化しているように見えても、
再度発生する可能性は残るでしょう。

他方、「ゼロコロナ政策」を変更するようなことが
あれば、共産党政権の威信は失墜し、その影響もま
た計り知れないものがあります。その解決が長引く
ようなことになれば、国内の経済活動の沈滞が長期
化して中国の景気全体が停滞、最悪の場合、世界的
な景気後退の懸念にも波及する可能性があるでしょ
う。

さらに、人類の歴史上で何度も繰り返されてきたよ
うに、国民の不満をそらすための行動、具体的には
台湾への武力侵攻などの“引き金”になることもあ
り得ると予測する必要があるでしょう。

 前回取り上げました「歴史の分岐点」時には、様
々な形で事件や事案が発生しています。その時点で
は気がつかなくとも、後で振り返った時に、「あの
事件が分岐点だった」などと検証される場合もあり
ます。ウクライナ戦争も含めて、私たちは今、「歴
史の分岐点の真っただ中」にいると考えるのが妥当
なのかも知れません。

 ワールドカップにおいては、日本は、ヨーロッパ
の強豪ドイツとスペインをみごとに撃破し、ブロッ
ク1位で決勝トーナメントに進むという“奇跡”が
起きました。人類の歴史も振り返れば「奇跡の連続」
です。中国国民の「真意」を垣間見たようなこの
たびの抗議行動は、中国政府の心胆を寒からしめる
効果があったことは否定できないでしょう。これが
将来の「奇跡」につながっていくかどうかは不明で
すが、中国政府がむやみに権威主義を振り回すこと
にはブレーキがかかるのではないでしょうか。

▼CO2の効用

「地球温暖化」とCO2の関係を取りまとめる前に、
地球上のCO2の効用にについてまとめておきま
しょう。まず、CO2濃度の増加が穀物、野菜、果
物などの生育に与える影響です。実際に、ハウス内
でCO2濃度を自然界濃度の約400ppmから1
000~1500ppmに変化させ、穀物などの収
量の変化をチェックした栽培実験の結果、濃度を3
00ppm高めると、おおよそ3割以上の収量増加
があったというデータがあります。

代表的なデータとしては、小麦1.35倍、大麦
1.35倍、水稲1.36倍、ジャガイモ1.31倍、
大豆1.46倍、トマト1.36倍、サトウキビ
1.34倍、リンゴ1.45倍、オレンジ1.55
倍などです。草木類のほか、樹木、水中の植物プラ
ンクトン、藻類も大気のCO2濃度が高いほど生育
が良いことが分かっています。

すでに説明しましたように、植物は、CO2濃度が
高いほど気孔の総面積を減らし、体から出ていく水
分の量を減らすため、乾燥によく耐えるようになっ
て、砂漠化した場所で生育します。荒地に進出した
植物が根を張れば、土の浸食がすすみにくいという
効果もあり、過去60年間にそのような現象が世界
各地で確認されているとのことです。

また、高いCO2のもとで育てた植物は、塩分の多
い土や養分の少ない土でも生育し、高湿や日照不足
にも強く、低温や酸化ストレスにもよく耐えて、昆
虫の食害も受けにくいとのデータもあります。つま
り、CO2濃度を上げると、栽培条件が良好な時よ
りも厳しい環境のほうが生育量の増加率が高いこと
も実証されています。

さらに、温度が高いほど生育率効果が高いこともわ
かっています。低温の10℃だと生育効果があまり
わからないが、38℃では生育量がほぼ2倍になる
という実証結果もあるようです。私たちは、地球温
暖化が進むと、植物の生育地が寒いほう(北半球な
ら高緯度)に動くというコンピューター予想地図を
よく目にする機会がありますが、高温で育ちやすく
なるなら生産地を引っ越す必要はなくなります。

これらを実証するように、国連食糧農業機関は、こ
こ10年以上の農産物の生産量は、人口増に伴う消
費量が増え続ける以上に増え続け、その結果、備蓄
量も増え続けていると発表しています。

その一例として、インドにおいては、1951年か
ら2014年の60年余りで、総人口が約3.8億
人から12.5億人へ約3.8倍になった一方で、
穀物生産量は5倍に増えているといわれます。収穫
増の要因は農耕技術や肥料・農薬の進歩が大きいと
いわれていますが、少しずつ上がる気温やCO2濃
度の増加と相関関係があると考えるのが妥当でしょ
う。

なぜか「地球温暖化論者」たちはこのような事実を
取り上げないのですが、次のようなニュースにも触
れようとしません。1970年代からの衛星観測結
果について数多い論文を要約しますと、1982年
~2012年の33年間の間に、(1)地球全体の植物
の量は10%増加している、(2)植生がある場所の2
5~50%は緑が増えている(減っているのは4%
だけ)、特に、サハラ砂漠の南部流域、シベリア、
アマゾン流域などの緑化が著しい、(3)緑が増えた場
所の総面積は、米国本土の2倍を超える1800万
平方キロメートル、(4)緑を増やした要因のうち、大
気に増えるCO2がほぼ7割と推定される、などで
す。

“悪の根源”のようにいわれる、主に化石燃料によ
って排出されるCO2ですが、その効果は計り知れ
ないものがあるという「事実」について、私たちは
どのように判断すればよいのでしょうか。

繰り返しますが、確かに大気中のCO2は近年増加
傾向にあることは事実です。そのデータを子細にみ
ると、人為的CO2が増加したとされる産業革命、
つまり1870年頃の約100年も前から大気中の
CO2濃度は増え始めています。この間のCO2増
加の要因が人為的と証明するのはあまりに難しいこ
とから、大気中のCO2増加の原因を一概に人為的、
つまり「人間の活動によるCO2排出が原因」と
は言えない事実がどうしても残るのです。

これらから、現在までのところ、「何が大気中のC
O2を増やしているのかさえも分かったと言える段
階ではない」ということが精一杯なのではないでし
ょうか。

▼地球温暖化の原因は本当に人為的CO2排出にあ
るのか

 さて、本シリーズは最大の命題をまとめるところ
まで到達しました。所々に言及してきましたが、整
理しておきましょう。

まず第1に、本当に地球は温暖化しているのか、に
ついてです。私たちが目にする地球の気温の推移は
「都市化」を加味して「加工」されたものであり、
平均気温の上昇が事実かどうかについては、今なお
疑問が残ります。
 第2に、地球の気温変化に及ぼす要因はたくさん
あります。温室効果ガスに加え、太陽の黒点活動、
火山活動、それに地球の営みというべき自然変動な
どです。地球の歴史からみた現時点は、小氷河期(
1350年~1850年)からの「回復途上」にあ
り、自然現象として気温がゆっくり上昇していく時
期とみられています。気温が上がれば、海水に溶け
ていたCO2が大気中に蒸発するので、CO2増加
の何割かはその効果も効いてくると考える必要があ
るでしょう。

 第3に、温室効果ガスのうち、CO2のみが悪玉
のようにいわれていますが、これもすでに紹介しま
したように、「地球温暖化係数」(CO2を基準に、
他の温室効果ガスがどれだけ温暖化する能力があ
るか表した数字)を比較すると、メタンが25倍、
一酸化窒素が310倍、フロン類は数千〜1万倍温
暖化する能力があるといわれます。

CO2自体は寿命が長いので、100年単位でみれ
ばその温室効果は計り知れないものがあることは事
実ですが、これらの微量ガスを合わせると、温室効
果は約半分前後(資料によって少し割合が違ってき
ます)あることは事実ですので、その削減にももっ
と力を入れる必要があるでしょう。

総じて、もし本当に地球の平均気温が上昇している
とすれば、現時点の気温上昇の要因は、「自然現象」
「データ加工」「(人為的)CO2+その他のガス」
の“合わせ技”と考えるのが最も妥当と判断される
のではないでしょうか。しかも、「それぞれの割合
については現時点ではわかっていない」と考えるべ
きレベルにあるのが正しいようです。逆に、(たぶ
ん受け入れらないのでしょうが)「地球は寒冷化し
ている」との説も依然として存在しています。

加えて前述したように、大気中に(ある程度濃度の
高い)CO2の存在の効用を考えれば、「脱炭素」
政策のもと、躍起になって人為的CO2排出を抑制
するのが正しい選択肢なのか、その効果がどのぐら
いあるのか、については「依然として不明」と言わ
ざるを得ないでしょう。それらの細部については次
回取り上げましょう。



(つづく)


(むなかた・ひさお)



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 【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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(代表・エンリケ航海王子)

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