配信日時 2022/12/01 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (389)】神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生(26)   渡邉陽子(ライター)

こんばんは、エンリケです。

「ライター・渡邉陽子のコラム」。
こんかいは第389号です。

1128に渡邉さんが出演されたニッポン放送ラジオ
「私の正論」(毎週月曜1810-1820)
聞きました?

自分はラジコで聞きましたよ。
こんかいはRD22に関するお話です。

渡邉さんの出演は、毎週月曜の番組内で全4回。

ぜひお聞きください。
https://t.co/e9GIgKMDS8

次回放送は12月5日です。

ニッポン放送ラジオ
「私の正論」(ゲスト:渡邉陽子(ライター))
(毎週月曜1810-1820)
https://t.co/e9GIgKMDS8



「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
の26話目。

では今日の記事、早速ご覧ください。


エンリケ


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『ライター・渡邉陽子のコラム (389)』

 神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生(26)

  渡邉陽子(ライター)

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こんばんは。渡邉陽子です。6月には毎週「トップガンマーヴェリ
ック」を観に行けるほど暇だったのに、夏以降はずっとキャパオー
バーの状態が続いていました。時間に余裕がなくなると心に余裕が
なくなりますね。あと10日ほどで、この異常ペースは終了予定で
すが、冬は毎年繁忙期なのでどうなることやら。自分も親も体にい
ろいろガタがくる年なので、同年代と顔を合わせる機会があるとき
は、そんな話ばかりです。

U様
桑江さんとやりとりがあったのですね。火箱氏の書籍を書くにあた
って桑江さんの著書「山河あり」を読みましたが、壮絶な人生に絶
句しました。降格人事を自ら希望して沖縄に着任されるなど、果た
して今の幹部自衛官にこれだけの気概がある人はどれくらいいるだ
ろうと、考えずにはいられません。思い入れをもって連載を読んで
いただきうれしいです。ありがとうございます!

<ラジオ出演のご案内>
毎週月曜、1810~1820に放送されているニッポン放送「私の正論」
に、11月28日から4週連続(12月19日を除く)で出演します。自衛
隊のことなどお話させていただきます。次回、12月5日は、自衛隊
に興味を持ったきっかけなどをお話します。
私の正論 https://www.1242.com/seiron/



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■神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生(26)

本来、陸幕広報に配属される幹部自衛官は、その前に電通や博報堂
などの広告代理店で1年ほど研修し、広報や広告のノウハウを学ぶ。
しかし火箱は基本的に「演習場で鉄帽に草を差して走り回っていた」
ので、当然ながら広報に関する知識はみごとなまでになかった。本
当に、皆無だった。だから「陸幕広報は建物を案内するガイド」と
思っていたのである。
後に陸幕長となった渡邊信利陸将補(当時)から「お前、広報の中
でも報道担当らしいな。報道担当は名門なんだぞ、俺もやった」と
言われたときも「なんだよ報道って」と、そもそも言葉の意味がわ
かっていなかった。
陸幕広報というわけのわからない場所で働く気の重さといったら、
空挺に着任する前の「なんで今さら空挺なんだよ」と思ったときの
比ではなかった。そんな気持ちのまま、広報室へあいさつに行った。

その日はあいさつだけのつもりだったのだが、まさにそのとき演習
場から砲弾が飛び出す事故が起き、「ちょっと手伝え」と言われた。
「補管班(補給管理班)に行ってQ&Aの調整してきてくれ」
「ホカンハン? Q&Aってなに?」
火箱の頭の中には「?」しかない。けれど広報室は報道発表に向け
ての準備でばたついていて、火箱の混乱にかまっている暇はない。
当時は六本木にあった防衛庁は、空挺時代に警備を行なったから、
立地や建物については把握していたが、陸上自衛隊の頭脳の部分に
あたる陸上幕僚監部の組織など知る由もない。
なんとか補管班を見つけたものの、今度は装備部のどことか武器課
だとか教育訓練部だとか、事案の関係する部署に片っ端から行かさ
れた。結果としてそれが陸幕広報室着任のあいさつ代わりになった。

各部署との調整が終わり記者発表することになったとき、「新任で
すと防衛庁詰め記者たちにあいさつしてこい」と言われた。そこで
「このたびの異動で第1空挺団火箱3佐は陸幕広報室報道担当を命
ぜられました。よろしくお願いいたします!」と部隊の着任申告ど
おり大声であいさつしたところ、記者たちが「なんだなんだ」と驚
きどよめいた。「ちょっと、そんな大きな声出さなくていいですか
ら」。やはり部隊とは勝手が違った。
こうして、陸幕広報報道担当としての初日は波乱の幕開けとなった。
広報業務について100%素人、新聞記者やマスコミの人と話したこ
ともない。どんなマスメディアがあるかもよく知らない、あらゆる
ことがわからないという未知の世界での勤務は、入隊以来、火箱に
とって初めての経験だった。

ここで火箱が陸幕広報に着任した1988(昭和63)年当時の、自衛隊
を取り巻く環境について触れておきたい。
約30年前の日本というと相当昔のような気がするが、この3年後に
は海上自衛隊の掃海艇がペルシャ湾に派遣され、その翌年にはPKO
法が成立して陸自がカンボジアに派遣されたと聞くと、そう遠い過
去の話ではないと感じるのではないだろうか。
1988年の日本はバブル絶頂期で募集難は深刻(特別職国家公務員ゆ
え、景気のよいときは人気がない)、自衛隊への世間からの風当た
りもまだまだ強かった時代である。
日本企業がゴッホの『ひまわり』を58億円で、『ガシェ博士の肖像』
を125億円(!)で落札、ロックフェラーセンターを2200億円で買
収、モータースポーツのF1チームも次々と買収された(1991年だが
『少年ジャンプ』もマクラーレンホンダのスポンサーとなり、アラ
ン・プロストとアイルトン・セナの乗るマシンのフロントノーズに
はジャンプのステッカーが貼られていた)。
そういうバブル時代に自衛官になろうという人間の中には、やはり
というか残念ながらというか、たちの悪い者もいた。特に任期制隊
員だと「2年ごとに退職金もらえるのがいい」とか「いろんな資格
を取ってから辞めて就職に生かす」とか、入隊時の動機からいつま
で経っても抜け出せない者もいた。まだ海外派遣もなかったから
「訓練だけやってれば給料をもらえる楽な組織」という意識で入隊
してくる人間もいた。



(つづく)


(わたなべ・ようこ)



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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
2022年 https://amzn.to/3ar7IBq
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