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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんばんは、エンリケです。
本連載のアーカイブサイトができました。
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過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてください。
<とことん突き詰めるしかない>
とのお言葉、深く刺さりました。
さっそくどうぞ
エンリケ
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我が国の未来を見通す(48)
「気候変動・エネルギー問題」(13)
地球温暖化は人為的CO2が原因か(その1)
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
サッカーのワールドカップが始まるやすでに遠い
過去のような気もしますが、最近、目まぐるしい日
々が続いていました。後々のために整理しておきま
しょう。ほぼ2週間にわたり、東南アジアで相次い
で重要な会議が開催され、主要国の首脳たちも参加
しました。まず、カンボジアのクアラルンプールで
行なわれたASEAN+3(日本、中国、韓国)首
脳会議を皮切りに、インドネシアのバリ島でG20、
そしてタイのバンコクでAPECが開催され、参
加国のそれぞれの思惑や事情を背負ったなかで様々
な議論を重ね、無事終了しました。
この時期に、東南アジアでこれらの会議が開催され、
例年にも増して注目された背景には、ウクライナ
戦争のような厳しい現状に直面して、国際社会が予
測不可能な「歴史の分岐点」に立っていることにあ
ると考えます。
それを象徴するように、それぞれの会議に出席し
た主要国の首脳たちがこの機会とばかりに首脳会談
を繰り広げました。この数がすごかったです。日韓、
米中、日米会談などが話題になりましたが、岸田
首相は12カ国・地域(だったと思います)、何と
習近平国家主席は19カ国に及んだようです。まさ
に「歴史の分岐点」のスタートに立った現在、いか
に主導権を握るかの「思惑」があることは明らかで
す。
第2次世界大戦後の「冷戦」の主役だったソ連が
崩壊して「冷戦」が終焉、その後、「ポスト冷戦」
といわれる時代に突入しましたが、このたびのウク
ライナ戦争によってそれも終わりかけようとしてい
ます。またもやロシアの“仕業”でした。“身から
出た錆”とはいえ、将来の「ポスト・ポスト冷戦」
(まだ統一された名称はないと認識していますが)
の出鼻に、プーチン大統領は参加が叶いませんでし
た。
このことは国際社会の未来に何をもたらすのでしょ
うか。ロシアが衰退して国際社会における影響力が
小さくなる「終わりの始まり」なのか、その代役の
ように中国が主導権を握るのか、アメリカの影響力
は将来不動なのか、欧州列国はどのような役割を果
すのか、そして日本は「歴史の分岐点」をいかに分
析し、いかなる役割を果せばよいのか、そのために
国家としてどうあるべきか・・・様々な思惑が駆け
めぐります。
一方、エジプトで開催されていたCOP7も会期
を延長しつつも、気候変動の加害者とされる「先進
国」が被害者とされる「途上国」の賠償要求に妥協
したような形で「基金設立」で合意し、閉幕しまし
た。「新たな南北問題」と呼ばれているようですが、
この軸の対立だけでおさまらないような雰囲気の
中で、今後も激しい主導権争いが展開されるものと
考えます。これも先進国の“身から出た錆”なので
すが、本シリーズで引き続き取り上げましょう。
それにCOP27開催に先立つ11月9日、日本
は、環境NGOからCOP25と26に続き、3回
連続して「化石賞」を受賞したことがニュースにな
りました。気候変動への取り組みが「後退している」
ことが「化石」と表現して皮肉ったものですが、
地球の平均気温を抑制するために、化石燃料への投
資を中止する必要があるなかで、「日本政府が化石
燃料へ支出を続けている」ことが受賞理由とのこと
です。
この「化石賞」を受賞した国名をみると、日本以外、
エジプト、アメリカ、ロシア、ニュージーランド
など、欧州列国以外の国ばかりで、今や最大の化石
燃料消費国としてCO2排出を増加し続けている中
国、それに追随しているインド、さらにはウクライ
ナ戦争のあおりを受けて石炭火力発電に舵を切った
ドイツが入っていない、などを考えれば「化石賞が
化石化している」との一部の報道が“的を射ている”
ということでしょう。
ちなみに、日本の「化石賞」受賞は「京都議定書」
策定時までさかのぼります。「京都議定書第2約束
期間(第1約束期間〔2008~12年の5年間〕
に約束した目標を達成できない場合、2013年以
降、約束の1.3倍の削減を義務付けたもの)につ
いて「いかなる条件でも第2約束期間には参加しな
い」とその翌年のCOP16(メキシコ・カンクン
で開催)で拒否したことが受賞の理由でした。
その拒否について、環境NGOから「京都で生まれ
た京都議定書を日本が殺そうとしている」と批判さ
れ、1位から3位までの「化石賞」をぶち抜きで受
賞したのだそうです。COP16に参加していた有
馬純氏(東京大学公共政策大学院特任教授)は、そ
の時の経緯を「現実を無視した『環境原理主義』は
世界を不幸にする」と詳しく証言しています。
個人的には「日本もやるな」と「化石賞」受賞を賞
賛したい気持ちになっています。日本の学者の中に、
有馬氏のようなサムライがおられたことは幸いした
が、今も各界に存在することを願うばかりです。
今回はこのくらいにして先を急ぎましょう。前回の
冒頭、エンリケ氏に私の手法が賞賛され、とても心
苦しいのですが、世界中の人類のほとんどが信じて
疑わない気候変動問題に“棹さす”のは並大抵でな
いことは間違いありません。
その手法は、現役時代、まさに冷戦が終わった後、
“平和の配当”として「自衛隊(特に陸上自衛隊)
は縮小すべき」との圧力に反論してきた手法とほぼ
同じと思っています。とことん突き詰めるしかない
のです。
今回は、「地球」を取り上げます。読者の皆さんも
「地球」について勉強した経験があるでしょうが、
私は、地球温暖化を論じる時、一体全体、「地球と
はどのような星なのか」まで行き着く必要があると
思い、しばらく探究していました。それらすべてを
紹介するのは難しいですが、少なくとも「地球の大
気」について知っておく必要があると考えますので
、その歴史を含め、整理しておきましょう。
▼地球の大気について
46億年前、誕生したばかりの地球の大気は、高温・
高圧の水蒸気が大部分を占め、その他にCO2、窒
素などを含んでいたと考えられています。その後、
数億年かけて地表が冷え、水蒸気が雨となって地
表に降り注いで海ができると、大気の主成分はCO
2と窒素になりました。
地球に海があることは太陽との距離と大いに関係が
あるようです。太陽と地球の距離は1億4960キ
ロメートルで、太陽の光が約8分後に地球の届く距
離です。この距離がちょうどよく、これ以上近すぎ
ると、水蒸気は蒸発してしまい、また遠すぎると蒸
気気が氷になって海はできないのだそうです。
この海にCO2が溶け込み、その一部がカルシウム
イオンと結合して、石灰岩(炭酸カルシウム)とし
て海底に堆積することにより、大気中のCO2は減
少し、大気の主成分は窒素になります。
そして、およそ27億年前、太陽の光エネルギーを
利用して光合成を行なうラン藻(シアノバクテリア)
が海中に誕生し、CO2と水から有機物と酸素(O
2)が生成されるようになると、大気中のCO2は
さらに減少し、酸素が増えはじめます。その後、生
物が進化して陸上に進出し、多様な植物による光合
成が活発に行なわれることで、酸素はさらに増え、
大気は数十億年かけて、窒素と酸素を主成分とす
る現在の組成になります(このような歴史にはロマ
ンがあります)。
現在の大気の組成は、水蒸気を除けば、窒素(78.
08%)、酸素(20.95%)、アルゴン(0.
93%)、CO2(0.04%)で大部分が構成
されています。水蒸気は、最大4%程度から1%を
下まわるなど、場所や時間によって大きく変動しま
す。
このうちの窒素は、アミノ酸をはじめ多くの生体物
質中に含まれており、すべての生物にとって必須の
元素です。窒素は単体である窒素分子(窒素ガス:
N2)を指すことが多く、常温では無色無臭の非常
に安定した気体です。窒素は現在の濃度(78%)
ぐらいであれば人に危害はありませんが、84%よ
り高い濃度になると、正常に活動できなくなり、9
4%以上になると、2・3回の呼吸で死に至るだろ
うといわれています。
アルゴンは、元々は地殻の岩石に比較的豊富に含ま
れているカリウムの一部が時間とともに変化して空
気中に放出されたガスです。アルゴンはいかなる条
件下でも他の物質と反応しない完全不活性という特
徴を持っています。アルゴンガスは、溶接をはじめ
金属精錬用に大量に使われていますが、最も身近な
ものは蛍光灯や白熱電球に封入されているガスです。
高濃度のアルゴンガスを人が吸収すると、めまい、
感覚鈍麻、頭痛、最悪の場合は窒息するといわれて
います。
現在の地球は、大気中に水蒸気やCO2などの「温
室効果ガス」が存在することによって温暖な環境が
保たれています。大気中に「温室効果ガス」がない
場合、地表気温はおよそマイナス19℃になります
が、温室効果ガスの存在によって地表気温はおよそ
14℃に保たれていますので、現在の大気にはおよ
そ33℃の温室効果があるのです。
その温室効果の寄与度は、水蒸気が48%、CO2
が21%、雲19%、オゾン6%、その他5%とい
われています。水蒸気は広い波長域で(熱の根源で
ある)赤外線を吸収するので、温室効果に最も大き
く寄与しますが、すべての波長の赤外線を吸収する
わけではなく、波長15マイクロメートルあたりで
はCO2の方が赤外線をよく吸収するのだそうです。
その結果としてCO2は21%の寄与度になって
います。
地球の表面の約7割は海です。どちらが“鶏が卵
か”の議論になりますが、水蒸気は海の温度が上が
ると蒸発して増加します。大気中の水蒸気量は気温
によって決まり(「飽和水蒸気量」と呼びます)、
気温が高くなると飽和水蒸気量は大きくなり、それ
以上の水蒸気が大気中に存在すると凝固が起こりま
す。飽和水蒸気量に対する大気中の水蒸気量の割合
が「相対湿度」といわれるもので、現実の大気中で
は、ある所では水蒸気が飽和し(雲が形成され)、
別なある所では乾燥しております。平均的な相対湿
度は5割程度になっていますが、この雲もまた温室
効果に寄与します。
このように、CO2濃度が増加すると気温上昇が
起こり、海も温度も上がり、大気中の水蒸気量が増
加します。その変化がさらなる気候変化をもたらす
過程を「気候フィードバック」と呼ぶようです。
温暖化論者は、だから「CO2濃度を増やさないよ
うにしなければならない」と主張しますが、一方で、
過去20年の水蒸気量の増加は、人間が排出した
水蒸気量では説明できないともいわれます。自然の
仕組みによってもたらされた過去の水蒸気量増加も
地球温暖化に寄与している(温暖化増幅機能と呼称
しています)のです。
未来に向かって、この「温暖化増幅機能」を拡大し
ないため、「人為的CO2削減が必要である」とす
るか、「人為的なCO2排出のレベルではない」と
するかが議論の分かれ目ということでしょう。
▼地球におけるCO2とは?
このCO2についてもう少し考えてみましょう。実
は、大気中のCO2濃度を正しく測定できるように
なったのはそれほど新しいことではなく、約60年
前、国際地球観測年(1957・58年)をきっか
けに、米国の海洋大気庁(NOAA)がハワイのマ
ウナロア山に観測所を設置して以来といわれます。
その実測データをみますと、北半球では春先から秋
にかけては植物が光合成でCO2をどんどん吸収す
る一方、晩秋から冬にかけては光合成の勢いが衰え
ること(南半球はその逆)から1年の間に上下動を
繰り返し、この60年間、大気中のCO2濃度は増
加傾向にあります。これは疑う余地がないようです。
すでに紹介しましたように、南極の氷などの分析か
ら得られるCO2濃度と比較しても過去42万年の
うち、現在が最高でしかも増え続けていることがわ
かります。
一方、前述しましたように、地球誕生の時代までさ
かのぼれば、CO2は減少に次ぐ減少の歴史だった
ことがわかっています。実際に、20世紀末頃から、
葉の化石に残る気孔の数によって当時のCO2濃
度を推定できるようになりました。気孔は、光合成
の原料となるCO2を取り込むほか、体の水分が外
に出ていく経路にもなっており、大気中のCO2の
濃度が多いほどCO2を取り込みやすくなるので、
気孔の数や開口部の面積を減らすことができるとの
原理を応用したのだそうです。
この原理を使って植物化石から推定すると、地球の
CO2濃度は、5億年ほど前は、現在の約400p
pmの10倍の濃度に相当する4000ppmほど
あったことがわかります。徐々に減り続けますが、
1億年前ぐらいでも1000ppm(現在の約2.
5倍)の濃度があったのです。
CO2濃度は、その後も減り続けますが、もっぱ
ら光合成によって生存してきた緑藻類の立場からす
ると、CO2が減少するという“過酷な環境”で生
き延びてきたのが、ようやく最近、再びCO2濃度
が上昇するという“願ってもない”恵みになったと
いうことで、地球上の生態系、見方によっては、人
間社会にとっても恵みであるといわれます。
さて、ビル・ゲイツは「いま排出したCO2の5分
の1、つまり20%は1万年も残っている」と紹介
していましたが、CO2の寿命については諸説あり
ます。地球の大気中のCO2総量は約3兆トンあり
ますが、地球上の植物の光合成活動は、年に400
0億トン以上のCO2を吸う(総量の7分の1に相
当)ので、植物は10~20年で大気中のCO2を
総入れ替えしているように見えます。
しかし、実際には、CO2の50%ほどが約100
年、20%ほどが約1000年残留するとして、C
O2は「長寿命気候汚染物質」と不名誉な名前で呼
ばれることもあるようです。それ以外に、CO2の
寿命は、最短で4年と最長で500年という説もあ
りますので、実際の寿命については「不明」という
のが正しいのかも知れませんが、どうも5年とか1
0年という短命ではなさそうです。「見方を変えれ
ば、結論も変わる」ような気がします。次回、いよ
いよ核心に迫りたいと考えます。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て現在、至誠館大学非常
勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
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