こんばんは、エンリケです。
「ライター・渡邉陽子のコラム」。
こんかいは第387号です。
「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
の24話目。
ラグビーに夢中な隊員の姿を想像し、笑みが広がりました。
では今日の記事、早速ご覧ください。
エンリケ
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『ライター・渡邉陽子のコラム (387)』
神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生(24)
渡邉陽子(ライター)
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こんばんは。渡邉陽子です。
最近どうもぱっとしない日が続いていたのですが、セキュリタリア
ン時代の仲間のお宅で餃子パーティーが開催されることになり(め
ちゃくちゃおいしい餃子作ってくれるのです)、それを励みに気持
ちを奮い立たせています。慶弔どちらの涙も一緒に流した、かけが
えのない仲間です。手土産はなににしようかなと考えるだけで気持
ちが盛り上がります。
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■神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生(24)
当時は六本木にあった防衛庁の警備を行なったのも忘れられない体
験だ。
当時の防衛庁の警備は全国から選抜された部隊が1週間交代で行な
っていた。2中隊にもその役目が回ってきたので、警備のための訓
練を行なってから防衛庁に赴き、24時間虫1匹たりとも入れない
姿勢で警備をした。酔っ払いが空き瓶を投げ込んだり、ふらふらと
入り込もうとしたり、六本木という土地柄もあっていくつか状況は
起きたが、火箱の率いる2中隊は完璧に任務を遂行した。
正門歩哨に「朝、長官には六本木交差点まで聞こえるような大声で
元気よくあいさつしろ」と言ったところ、本当にとてつもない大声
であいさつし、瓦防衛庁長官が大いに気をよくしたといったことも
あった。1週間という限られた期間で「空挺が守っているときは安
心だ」とお褒めの言葉をもらったことは、部隊を率いた中隊長とし
て大きな喜びだった。
ところで、ここまでで何度か競技会という言葉が出てきているが、
これは陸自全体で競うものから空挺の中隊対抗で戦うものまで規模
はさまざまだ。その中で空挺が目の色を変えて勝利に執念を燃やす
のは、中隊対抗の競技会だった。
どの部隊でもありがちだが、空挺はとりわけ中隊ごとのライバル心
が強く、お互いにくたばれと思っているレベルで、もはや伝統とも
いえる。
「〇中隊は駆け足が強い」「○中隊は柔剣道が抜きんでている」な
ど、どの中隊にも得意なジャンルがあり、2中隊の場合はラグビー
だった。
空挺団ラグビーの主力選手は2中隊出身者である。おまけに火箱は
団ラグビーの担任官であった。ここ10年ほどは船岡の後塵を拝し
ているが、当時は全自では常勝軍団であった。となると、ラグビー
の競技会ではなにがあっても負けるわけにはいかない。演習場にま
で楕円のボールを持参して練習を欠かさなかったのには、こんな事
情もあった。
だが火箱のお家芸といえば柔道である。そこで2中隊には柔道も奨
励し、中隊対抗の試合では自ら大将として出場した。3中隊との大
将決戦になったときに、空挺でいちばん強いと言われていた陸曹を
ぶん投げて優勝できたのもいい思い出である。
第1空挺団は、長らく「血の濃い」部隊だった。今でこそ特殊作戦
群や水陸機動団といった部隊があるが、長らく空挺は陸自唯一の落
下傘徽章を持つ部隊として絶対無二の精強さを内外に示していた。
いくら火箱が「第1空っぽ団だ」と罵ろうが、空挺が精鋭無比と崇
められていたのもまた事実だ。だからCGS(指揮幕僚課程)-を
経て空挺の中隊長になる人間は、空挺出身者から選ばれ、そして空
挺に帰っていった。空挺団長になる人物も、当然ながら空挺で育っ
た人間が必要だった。
しかし「もっと外の風も入れたほうがいいのでは」と、濃すぎる血
に警鐘を鳴らす声も出始めていた。そこで白羽の矢が立ったのが火
箱だったのだ。
2中隊長として成果を上げ、結果を残したことで、空挺団長要員の
すそ野が広がることとなった。火箱は、自分は「素人空挺」だった
がその点については一役買えたと思うし、今も空挺出身だけで固ま
らずもっと広く人事交流したほうがいいと思っている。
中隊長を経験しなければその後空挺団長になることもなかったし、
空挺への興味は失われたままだったかもしれない。最初こそ望んで
上番したわけではなかったが、結果として「普通の中隊長」でなく
てよかったと思えた。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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