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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」第58回です。
<「世の中に遅れていた人」が社会に目立ってい
た時代>
をのぞき見たい衝動に襲われました。
ではきょうの記事、さっそくどうぞ
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(58)
電車特急「こだま」の時代
荒木 肇
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□Jアラートについて思う
すごいですね!急に警報が鳴って「ただちに避難
してください」、新幹線は停まるし、列車も動かな
いらしいです。でも・・・テレビで仙台の方が言っ
ていました。「避難しろと言われても、どこへゆけ
ばいいのか分かりませんから」。新潟県と山形県、
宮城県に警報が出たそうです。
24時間、要員が働く航空自衛隊のレーダーサイト
のおかげで不審な飛翔体はすぐに発見されます。そ
れが、急に途中で消えたそうです。理由はいくつか
考えられるとある先輩が言われます。
何らかの故障があって北朝鮮当局の指示で自爆した。
次の可能性は、2段目はダミーで1段目の実験だ
けだった。最後にあったのは撃墜された。ざっとこ
れらが考えられるそうです。しかし、アラートは決
して「オオカミ少年」ではありません。飛翔角度や
コースを見て、新潟県や宮城県の上空に至るという
可能性があったのです。
発令から落ちて来るまでに10分くらいの時間はあ
るようです。マスコミも政府も「落下」といいます
が飛んでくるのは爆弾でしょう。ふつうに考えれば
「着弾」です。それに爆発性の弾頭が付いていれば、
恐ろしい結果を引き起こします。弾片や爆風、衝
撃波による被害は地下に入ればかなり防げます。1
0分あれば仙台市内なら地下鉄の駅や、大きなビル
の地下に入ることができるはずです。
まず、自治体も速く対応をして、どこが緊急避難場
所であることを決めることです。すぐに地下に潜れ
る施設を指定し、広報すべきです。青森市、山形市
や盛岡市などの県庁所在地、次いで人口が大きな都
市では、地域の中心になるような地下設備のある建
造物を避難所に指定したらどうでしょうか。
市町村の防災関係者も努力されていることと思い
ます。一歩進めて、そうした避難所作りを急ぐべき
です。
▼電車特急「こだま」
1958(昭和33)年11月に、初めての電車
特急「こだま」がデビューしました。前にも書きま
したが、ちょっと詳しく思い出してみます。濃いク
リーム色に深紅のラインが入ったモダンな電車でし
た。国鉄の電車といえば、葡萄(ぶどう)色といわ
れた汚れの目立たない塗装ばかりです。しかも機関
車が牽くのではなく電車でした。
運転室が中2階にあって、クハ26(制御車)、
モハ20(電動車・モーターのモ)、モハシ21(
電動・食堂車)、サロ25(2等付随車・モーター
なし)が2輌、モハシ21(前同)、モハ20(前
同)、クハ26(前同)という8輌編成でした。片
仮名のイロハはイが1等、ロが2等、ハが3等車を
表します。2等は今ではグリーン車となりました。
3等車(いまの普通車)の定員は328人、2等
同じく104人、合わせて432人が定員でした。
窓はすべて2重窓で開きません。冷暖房完備といい
クーラーが室内を冷やしました。電話もかけること
ができ、東京-大阪間を6時間30分で結びます。
同じころに、東京-博多間を特急「あさかぜ」が
17時間25分で結びました。「さちかぜ」、「さ
くら」という特急も走っています。そこへ「こだま」
です。新しい新幹線はおそらく世間の喝采をあび
るだろうとも期待されました。
待望の起工式は1959(昭和34)年4月20
日午前10時から、東海道線来宮(きのみや)駅の
新丹那トンネルの入り口で行なわれます。実は、す
でに前に書いた戦前の弾丸列車計画によって3分の
1ほどは掘られていました。
翌年1月には中間駅も発表されます。名古屋と米
原の間に岐阜羽島駅が予定されました。ずいぶん話
題になったものです。岐阜や大垣も候補に挙がりま
したが「新幹線急行」、つまり各駅停車は4時間で
走る計画でしたが、その停車駅の1つに当時は人口
も少ない岐阜羽島とはと驚かれたのです。東京駅は
すでに改良の余地があったので問題はありません。
大阪駅は北方4キロの地点に高架で新駅が建設され
ます。
用地買収も細かい問題はありながらも進んで行きま
した。
▼ずれている人の時代
寄り道をさせてください。新幹線が1964(昭
和39)年10月の開業を目指して建設の槌音が響
かせていた時代。ふり返ると楽しいので、思い出を
語らせていただきます。
映画の話題です。1963(昭和38)年に『拝
啓天皇陛下様』という作品が出ました。主役は渥美
清さんと長門裕之さんでした。渥美清というと多く
の人が「フーテンの寅さん」を思い出すことでしょ
う。人情にあつくて、古風で、変化する時代にうま
く生きてはいけない流れ者の香具師(やし)を演じ
る渥美清さん。しかし、その人気は、実のところ第
2次ブームです。「寅さん」の映画は昭和40年代
からでした。
この映画『拝啓天皇陛下様』で軍隊の優等生役を
演じたのは2枚目俳優の長門裕之さんでした。伍長
勤務上等兵になり、日支事変(1937年)の勃発
で召集されて伍長になります。渥美清さんは字もろ
くに読み書きできない最下層の万年1等卒でした。
この2人が昭和戦前期の平和な時代の岡山歩兵第1
0聯隊に入営します。
原作は、映画でも山田2等卒から「むねさん」と
呼ばれる棟田博さんが書かれた小説でした。棟田さ
んは実際に中国で戦った予備歩兵伍長でしたが、負
傷して復員後に発表した『分隊長の手記』で一躍流
行作家になった人です。1908(明治41)年の
生まれで、1929(昭和4)年1月10日に現役
兵として入営します。
岡山県津山市の旅館の息子で中学を出て上京し、
早稲田大学に進みました。それなら当時の幹部候補
生の有資格者ですからそれになればよかったのに。
おそらく家の経済状況が関係あるのでしょう。19
27(昭和2)年の兵役法では、まだ幹部候補生に
なると経費の自弁制度がありました。そのためあえ
て一般の兵隊暮らしをしたのでしょう。史実では聯
隊長は有名な小畑敏四郎歩兵大佐です。
わたしがこの映画から学んだのは兵営が学校だっ
たことでした。文字を学び、読み書きができるよう
になれと渥美清が演じる無学な前科者(山田正助)
に諭すのは中隊長です。加藤嘉(かとう・よし)と
いう上手な俳優が大正軍縮以来、進級がひどく遅れ
た大尉を演じます。2年兵になった山田に中隊長は
教師を選びます。その初年兵が地方(一般世間)で
は小学校で代用教員をやっていた藤山寛美さんでし
た。
中隊長は、山田が除隊する時には就職先の世話を
し、正装の羽織はかまから下駄まで揃えます。しか
し、世間の風は無学で粗暴であった山田には厳しい
ものでした。社会の下積みであったことは変わらず、
召集されても万年1等卒だったのです。まさに軍
隊は社会の縮図であり、戦前社会の一端を教えてく
れた映画でした。
▼渥美清の真骨頂
軍隊といえばイヤなところというのが昭和30年
代では常識でした。もう戦後ではないと高らかに政
府が白書で公言したのが昭和31年です。街には復
興気分があふれ、映画館がどこの町にもありました。
前科者で天涯孤独な山田正助(やましょう)と入
営前に妻がいた桂小金治さんがいました。これにイ
ンテリ文学青年のムネさんこと長門裕之さん。意地
悪な2年兵の1等卒は西村晃さん(実体験では元海
軍予備少尉)が好演。
やましょうは軍隊を出たくありません。訓練は彼
の体力からすれば何のこともありません。営倉入り
もハクが付いて無法者にとっては我がままのし放題
です。除隊されないように天皇に手紙を書こうとし
ます。当時は不敬罪です。ムネさんが止める。題名
の由来です。
物語は戦後も続きます。戦争協力者という烙印を
押されて地方で暮らすムネさんのところに山田が帰
ってきました。ムネさんが好きだったのです。とこ
ろが、今はやってはいけないことを山田はやっての
けます。喧嘩別れをしますが、東京の千住で工事夫
をしていた山田はもうすぐ幸せを手に入れようとし
ていました。その相手が中村メイ子さんでした。
山田は酔って道を歩き、トラックに轢かれてしま
います。無知で、粗暴な男でした。そうした「ずれ
ていた」男の美しさとこわさを渥美清は見事に演じ
ていました。新幹線が走りだすちょっと前の時代と
は、「世の中に遅れていた人」が社会に目立ってい
た時代でした。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
https://amzn.to/31jKcxe
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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