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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。
ウク侵攻でロシア軍の上級指揮官がやたらに戦死し
ています。
情報的に見ればどういうことになるのでしょう?
今日はそんな話です。
ではさっそくどうぞ。
エンリケ
おたよりはコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
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ウクライナ情報戦争(3)
ロシア軍の上級将校の高い戦死率と米スペースX社
の関係
樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)
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□はじめに
10月8日ケルチ海峡にかかるクリミアとロシア
をつなぐ橋で爆発がありました。プーチン大統領は
このクリミア橋爆発を「テロ攻撃」と断じ、10日
安全保障会議を開いて「今朝、ウクライナに対して
大規模な攻撃を始めた」と宣言、報復とされるミサ
イル攻撃をウクライナ各地に仕掛けました。
ロシア連邦保安庁(FSB)は、爆発を組織した
のは、ウクライナ国防省情報総局やそのトップのキ
リロ・ブダノフ氏、同局の職員・工作員だと断定し、
12日、爆発に関連していたロシア人5人とウク
ライナ、アルメニア国籍3人の身柄を拘束したこと
を明らかにしました。
FSBは、爆発装置は建設用ポリエチレンフィル
ムに包まれ、ウクライナからブルガリア、ジョージ
ア、アルメニアを経由してロシアに持ち込まれたと
しています。
ウクライナのミハイロ・ポドリヤク大統領顧問は、
ツイッターに橋の道路部分が崩落した写真を投稿。
トラック爆破がウクライナによるものとは直接は
認めなかったものの、「クリミア・橋・始まり。違
法なものはすべて破壊されなくてはならない。盗ま
れたものはすべてウクライナに返還されなくてはな
らない。ロシアに占領されたものすべてから(ロシ
アは)追放されなくてはならない」と書き込みまし
た。
10月30日現在もウクライナが統治している地域か
ら橋を攻撃できるような射程のミサイルや大砲は、
西側諸国からウクライナ軍に供与されていないよう
で、少なくとも公開された映像からは空爆でもなさ
そうな状況です。
したがって、現時点では、ウクライナまたは反ロ
シア派(チェチェンの反対派なども含む)による秘
密工作活動または積極工作の可能性が高いと思われ
ます。一方で、ロシアの自作自演という説もありま
す。
もし、これが秘密工作活動であれば、インテリジ
ェンス活動の一つであり、情報戦ということができ
ます。
秘密工作活動や積極工作については、次回以降記
述したいと思います。
さて、先回は情報収集とターゲッティングについ
て書きましたが、今回もその延長です。ロシア軍の
上級指揮官の戦死が異常に多いということはご存知
でしょうか?
▼ロシア軍の上級指揮官の高い死亡率
通信機器が今日ほど発達していなかった第2次世
界大戦当時、高位の司令官クラスが最前線に身を置
くのは、リアルタイムで戦況に接し、その場で即座
に判断が下せるため、指揮の観点から有効だったと
考えられます。
また、上級指揮官が前線に出るもう一つの理由は、
将兵の士気を鼓舞する統率上の心理的な効果があり
ます(たとえば旧日本軍の司令官は、将兵の激励の
ためにしばしば前線を訪れていましたし、第2次世
界大戦時、米軍のダグラス・マッカーサー大将は、
前線に制服姿で視察している写真などを報道させ将
兵の士気を高めています)。
しかし通信機器が発達した現在、後方地域でも、
ほぼリアルタイムで確度の高い戦況が把握できるよ
うになったため、上級指揮官が最前線に赴く必要性
は低下しています。
西側の報道によれば2022年2月24日のウクライナ
への侵攻開始以降、わずか1か月でロシア軍の6人
の将官が戦死したとされました。その後も上級指揮
官の戦死者は増加しているもののそれぞれの機関に
よって公表された数は異なります。
6月の報道では、ウクライナ政府は、将官12人
と公表、西側諸国の情報機関によれば、将官7人が
死亡したとされています。一方、ロシア国内の報道
では「特別軍事行動」で死亡した将官数は4人とし
ています(BBC News 2022年6月6日)。
開戦直後、ロシア軍は約20人の将官を現場に送
り込んだといわれているため、仮にロシアの報道の
とおりだとしてもかなり高い戦死率になります。
今回このように上級の指揮官が前線まで出てこざ
るを得なかった理由は、ウクライナ側の通信妨害に
より、後方においてリアルタイムの戦況把握が困難
だったこと、士気が低下しているといわれる前線を
鼓舞する必要があったことが主な理由だと考えます
。
▼ロシア軍の伝統的指揮統制システムの弱点を突い
たウクライナ
NATO各国などの軍隊は、初級将校の時からより上
級職の部隊の指揮が執れるように平時から教育訓練
を受けます。そのことにより上級の指揮官が戦死し
たり不在の場合でも、必要に応じて独自の責任の下、
部隊を指揮して行動することができるようにしてい
ます。
しかしながら、ロシア軍の将兵は、ソ連時代から
士官教育を受けた尉官級の士官にも、現場での判断
権を与えない「上からの命令に下を盲従させる」ス
タイルのようです。つまり、指揮系統が硬直してお
り、上級の指揮官からの命令がなければ動かないシ
ステムだとされています。
そこで、NATO側は冷戦時からソ連軍(ロシア軍)
を機能不全に陥らせるには、上級の指揮官を抹殺す
ればよいという戦術を考案していました。いわば
「頭」を潰せば、残された「手足」は統制のとれな
い無秩序な動きになり、組織として効果的な戦闘を
行なえなくなるということです。
今回の戦争では、NATOが長年培ってきた戦い方を
ウクライナに伝授し、上級指揮官をターゲットとし
て適切な火力を指向した結果、多くの将官が殺害さ
れたのではないかと考えられます。
▼スペースX社による通信インフラのサポート
さて、ウクライナのこのような指揮官を殺害する
作戦を成立させるためには、より細かでリアルタイ
ムの目標情報が重要になってきます。前回のメルマ
ガでお伝えした「大砲のウーバー」システムにより
目標情報を収集し上級指揮官や司令部を「狙い撃ち」
しているのではないかと思われます。
狙い撃ちといっても狙撃している訳ではなく、大
砲のウーバーシステムを活用して最適な時期、場所、
手段で迅速に攻撃していると考えられます。
このような、ウクライナの情報収集から目標のタ
ーゲッティングまでのシステムが確実に作動し続け
るためには、途切れることのない通信連絡手段が必
要です。
ウクライナにおいては、開戦直後からスペースX
社CEOのイーロン・マスク氏が無償で提供したスタ
ーリンク衛星システムが利用されています。
マスク氏はウクライナのフョードロフ副首相兼デ
ジタル転換相からTwitterで要請を受けてすぐにサ
ポートを決定しました。3月初めには、スターリン
クの端末400台を提供し、10月の時点ではそれが
2万台規模まで増えたようです。
GIS Artaチームは、「ウクライナの通信問題を解
決するためのマスク氏の緊急援助に感謝する」と述
べています。
ただし、マスク氏は10月14日にはスターリンクの
運用コストが高すぎるとして、その費用をアメリカ
の国防総省に請求したとしています。スターリンク
の端末に加えて、「衛星の製造、打ち上げ、維持、
補充、地上基地局、通信会社への支払いが必要にな
っている」と説明しています。
さらに、ロシア側からのサイバー攻撃や通信妨害
が激しくなるなか、それに対応するための負担も増
していると指摘し、毎月のコストが2000万ドル
(約30億円)に近づいていることも明らかにしました。
やはり、ロシアもスターリンクの運用を黙って見
ているわけはありません。国家対企業の情報戦も水
面下で繰り広げられている証左です。
米国防総省はスペースXからウクライナ支援の費
用負担を求める書簡を受け取ったことは認めていま
すが、両者の交渉結果は明らかになっていません。
これら一連のマスク氏の言動に対しては、強欲で
はないかなどの批判もあったためか、マスク氏は1
0月15日には、ウクライナへの無償提供を続ける
考えを示しています。
次回は、積極工作について紹介したいと思います。
□出版のお知らせ
このたび拓殖大学の川上高司教授監修で『インテリ
ジェンス用語事典』を出版しました。執筆者は本メ
ルマガ「軍事情報」でもおなじみのインテリジェン
ス研究家の上田篤盛、名桜大学准教授の志田淳二郎、
そしてわたくし樋口敬祐です。
本書は、防衛省で情報分析官を長く務めた筆者らが
中心となり、足かけ4年の歳月をかけ作成したわが
国初の本格的なインテリジェンスに関する事典です。
2017年度から小学校にプログラミング教育が導入さ
れ、すでに高校では「情報科」が必修科目となって
います。また、2025年の大学入学共通テストからは
「情報」が出題教科に追加されることになりました。
しかし、日本における「情報」に関する認識はまだ
まだ低いのが実態です。その一因として日本語の
「情報」は、英語のインフォメーションとインテリ
ジェンスの訳語として使われているため、両者の意
味が混在していることにあります。
一方で、欧米の有識者の間では両者は明確に区別さ
れています。状況を正しく判断して適切な行動をす
るため、また国際情勢を理解する上では、インテリ
ジェンスの知識は欠かせません。
本書は、筆者らが初めて情報業務に関わったころは、
ニード・トゥ・ノウ(最小限の必要な人だけ知れ
ばいい)の原則だと言われ、ひとくくりになんでも
秘密扱いされて戸惑った経験から、ニード・トゥ・
シェア(情報共有が必要)の時代になった今、初学
者にも分かりやすくインテリジェンス用語を伝えた
いとの思いから作り始めた用語集が発展したもので
す。
意見交換を重ねているうちに執筆賛同者が増え、結
果として、事典の中には、インテリジェンスの業界
用語・隠語、情報分析の手法、各国の情報機関、主
なスパイおよび事件、サイバーセキュリティ関連用
語など、インテリジェンスを理解するための基礎知
識を多数の図版をまじえて1040項目を収録する
ことができました。
当然網羅していない項目や、秘密が開示されていな
いため、説明が不足する項目、現場の認識とニュア
ンスが異なる項目など不十分な点が多数あることは
重々承知していますが、インテリジェンスや国際政
治を研究する初学者、インテリジェンスに関わる実
務者には役立つものと思っています。
『インテリジェンス用語事典』
樋口 敬祐 (著),上田 篤盛(著),志田 淳
二郎(著),川上 高司(監修)
発行日:2022/2/10
発行:並木書房
https://amzn.to/3oLyWqi
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ひぐちけいすけ(インテリジェンスを日常生活に役
立てる研究家)
樋口さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
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https://okigunnji.com/url/7/
【著者紹介】
樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
NPO法人外交政策センター事務局長。元防衛省情報
本部分析部主任分析官。防衛大学校卒業後、1979年
に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議事務局(第2
幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。陸上自衛隊
調査学校情報教官、防衛省情報本部分析部分析官な
どとして勤務。その間に拓殖大学博士前期課程修了。
修士(安全保障)。拓殖大学大学院博士後期課程修
了。博士(安全保障)。2020年定年退官。著書に
『国際政治の変容と新しい国際政治学』(共著・志
學社)、『2021年パワーポリティクスの時代』(共
著・創成社)、『インテリジェンス用語事典』(共
著・並木書房)
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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(代表・エンリケ航海王子)
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