配信日時 2022/11/04 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 】ロシア予備役動員(3)──脆弱な兵站部門    加藤喬(元米陸軍大尉)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監
修), 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj

武器オンチの日本人に
特におススメです。

隣国ロシアの動向は、中共や半島とも密接にかかわ
るので、ビビって恐怖を煽りまくったり、のほほんと
見ているだけではだめでしょうね。

こういう記事があることはわが国の救いです。


さっそくどうぞ。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編
     Takashi Kato

ロシア予備役動員(3)──脆弱な兵站部門

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□地球防衛の実証実験「DART(投げ矢)」
 
「地球上の生命はその99.9%がいずれ死に絶え
る。自然界において種の絶滅とは至極当たり前のこ
となのだ。普段われわれは『母なる自然は暖かく愛
すべきもの』だと考えているし、おおむねその通り
だ。しかし時として、自然は無慈悲な相を見せるこ
とがある」
 
 動画サイト『Big Think』でこう述べるのは、日系
理論物理学者の加來道雄(カク・ミチオ)博士。
「絶滅が当然」とはどういうことでしょうか?
 加來教授は天文学者故カール・セイガン博士の言
葉を引用し、人類の選ぶべき道を示唆します。
 
「地球は小惑星、彗星、隕石が飛び交う射的場の真
ん中に位置している。遅かれ早かれ、地球を丸ごと
破壊できるようなものにぶつかるだろう。6500
万年前、恐竜を絶滅させたように。人類には保護手
段が必要だ」
 
 つまり、ヒトが日常使う時間の尺度を地質学的ま
たは天文学的スケールに代えると、地球のたたずま
いも「世はなべてことも無し」から「絶滅は必然」
に変容するということです。
 
もっともわずか28年前、人類はシューメイカー・
レイヴィ9彗星が木星に衝突する瞬間を目撃してい
ます。ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた衝突痕を見まし
たが、これは地球と同じ大きさだったと推定されま
す。仮に「母なる星」が直撃されていたら、我々の
文明が壊滅的被害を被っていたのは間違いありませ
ん。ヒトの寿命というスケールで見れば、天体と衝
突する確率が極めて低いのは確かです。しかしこの
例が示すように、備える必要が全くないとは言えま
せん。
 
 ちなみに後年、この天文学的事件に触発された米
SF映画『ディープ インパクト』と『アルマゲド
ン』がほぼ同時期に公開されています。自らの命を
顧みず、全地球人類を救う宇宙飛行士に扮した名優
ロバート・デュバルや、アクション俳優ブルース・
ウィリスらの熱演に涙した読者諸氏もいらっしゃる
ことでしょう。
 
 去る9月26日、セイガン博士が言及した「保護
手段」と上記のSFを地で行く実験にNASA(米
航空宇宙局)が成功しました。その名もダート(投
げ矢)。
 
Double Asteroid Redirection Test:DART (二重
小惑星軌道変更試験。略称のDARTは「投げ矢」を意
味します)は、地球近傍(きんぼう)天体衝突回避
プロジェクトのひとつで、探査機を天体に衝突させ
小惑星や彗星の軌道を反(そ)らすテクノロジーの
実証試験でした。
 
史上初の快挙は「地球防衛」の嚆矢(こうし)とい
えます。大自然の「聳え立つ無関心」と「非情」か
ら地球を守る手段がなければ、イーロン・マスク氏
が夢見る火星植民計画、ひいては「多惑星文明」と
いう人類の未来は望めないからです。
 
 もちろん絶滅は自然が起こすとは限りません。で
は、核による自滅など数多(あまた)の危険を孕む
「テクノロジー幼年期」を無事通過するにはどうし
たらいいのか?
 
国境や領土といった「距離の尺度」を太陽系スケー
ルに置き換えてみてはどうでしょう? 1990年、惑
星探査機ボエジャー1号は60億キロ彼方の宇宙空間
から地球の姿を撮影。太陽光線の中に浮かぶ一片の
塵(ちり)にしか見えない母なる星を、前述のセイ
ガン博士は「淡い青色の点」と呼びました。
このイメージを念頭に、博士は次の言葉を残してい
ます。
 
「広大な宇宙の中で、地球は極めて小さな舞台でし
かない。その小さな点のほんの一角で、つかの間の
支配者になるために、名誉と勝利に酔った将軍や皇
帝らが流した夥しい血を考えてみて欲しい。ピクセ
ルのように小さな点の一角に住む人間が、他の一角
に住む見分けがつかぬほどよく似た人間に対して行
なってきた終わりなき残虐行為を考えてみて欲しい。
誤解がいかに頻繁に起き、ヒトがどれほど熱狂的
に互いを殺し合い憎悪をたぎらせることか」
 
 「淡い青色の点」の一角ウクライナで、ヒトは今
日も夥しい血を流し領土の奪い合いを繰り広げてい
ます。血を吐きながら続けるチキンレースの愚を悟
り核による自滅を避けるには、巨大天体が地球に衝
突する様を想像してみることです。国や領土より地
球を守ることの方が先決だと分かるでしょう。
 
 ヒトには「時間の尺度」と「距離の尺度」を必要
に応じて調節する知恵があります。国境や領土とい
うミクロの尺度から宇宙スケールにズームアウトす
るのです。マクロの視点に切り替えることで、ヒト
は「自然による絶滅」を防ぎ「テクノロジー幼年期
の危険」を避けることができましょう。

 
▼ロシア予備役動員(3)脆弱な兵站部門

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。
刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内
の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒
的な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器
を手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマ
の裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

ウクライナ戦争を機に露中が接近し、世界は民主主
義圏と権威主義圏に二分された感があります。この
新たな力関係を背景に、台湾侵攻の可能性が取沙汰
されています。

最悪の事態を想定し備えるのが平和の基本ですから、
防衛努力は粛々と進める必要があります。同時に、
勢いを増す「好戦的世相」に飲み込まれない冷静
な状況判断も求められます。

「ロシア予備役動員」の3回目は、露軍兵站部門の
脆弱さを取り上げます。
 
 軍事パレード、観艦式、火力演習などの「華」と
いえば、戦車、火砲、ミサイル、軍艦、そして戦闘
機などが頭に浮かびます。いずれも戦闘部隊が使う
もので、敵と対峙して戦火を交わす兵器です。極め
て高価でしばしば調達が政治問題化することから、
「軍隊イコール兵器」だと誤解されがちです。

 しかしこれらの武器が威力を発揮するためには、
担当将兵の衣食住、燃料弾薬の補給、普段の整備、
故障した際の回収・修理といった支援活動が不可欠。
精強部隊も腹が減っては戦(いくさ)ができず、
最新鋭戦車も航空機も燃料が切れれば「動かぬ標的」。
弾がなければ「張子の虎」です。戦闘部隊を支える
このような後方支援のことを軍事用語で兵站(へい
たん)と呼びます。

 ウクライナに侵攻する以前、ロシア軍には食料弾
薬燃料をはじめ戦闘必需品を備蓄する時間が充分あ
りました。にもかかわらず蓋を開けてみると、あり
とあらゆる物資不足が露呈。燃料切れで動けなくな
った戦車や歩兵戦闘車を乗員が戦場に遺棄したり、
足りなくなった精密誘導爆弾などの代わりに地対空
ミサイルを地上攻撃に流用したりする事態が起きて
います。

 また真否のほどは不明ですが、西側メディアは
「ロシア兵が医薬品やGPSキットなどの寄付をイン
ターネットで募っている」と報じています。事実な
ら、兵站部門が機能していない可能性があります。

 機能不全に陥った兵站にとって、30万名に及ぶ
新たな予備役動員は一大事。システム崩壊につなが
る過負担になりかねません。増援部隊への食料、武
器弾薬、通信機器、応急医療キットといった必需品
の補給が滞れば、戦況を好転させるだけの戦果を発
揮できないことも考えられます。

教材ビデオ:
 4 reasons Putin's mobilization order wont mak
e much difference ! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=8VWafXgZ5W4
(本エピソード4:45から始まります)
 
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Supply(サプライ)補給品
Fumbling(ファンブリング)ぎこちない 
へまな
Logistics(ロジスティックス)兵站 後
方支援

シナリオ(カウンターを5:33に合わせてくださ
い)

More men will mean more clothes, more food, mo
re transportation and other essential supplies.
This will put huge stress on already fumbling
logistics.

(兵員を増やすということは、より多くの衣料、食
料、輸送手段、その他の補給品が要るということだ
。すでにぎこちない兵站に、これらが大きな負担に
なる)

(今回のエピソードは5:42まで続きます)

英語一言アドバイス:
logistics は「兵站」とか「戦闘/後方
支援」と訳されます。具体的には食料、弾薬、燃料
などの補給と武器の整備や修理を行なう支援活動の
ことです。

発音サイト:
logisticsの発音 logistics pronounce - Google 検索
https://onl.sc/tDnxjzC

参考サイト:
ダート探査機(動画) Watch the DART Spacecraft Smash int
o an Asteroid | NOVA | PBS
https://www.pbs.org/wgbh/nova/video/watch-dart-spacecraft-smash-into-asteroid/

ダート探査機(解説)DART (探査機) -
Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/DART_(%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F)

木星に衝突した彗星
(1) Aftermath of the Biggest Explosion Ever Ca
ught on Camera | Shoemaker-Levy 9 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wWUx2MnwqlA

カク ミチオ博士 (Big Think 動画)
(10) Michio Kaku: 3 mind-blowing predictions a
bout the future | Big Think - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tuVuxKTJeBI&t=319s

『アルマゲドン』Armageddon-poster06 - Armageddon (1998 film) - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Armageddon_(1998_film)#/media/File:Armageddon-poster06.jpg

加藤 喬(かとう・たかし)

元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に
渡米。アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ
。88年空挺学校を卒業。91年湾岸戦争「砂漠の
嵐」作戦に参加。米国防総省外国語学校日本語学部
准教授(2014年7月退官)。著訳書に第3回開
高健賞奨励賞受賞作の『LT—ある“日本製”米軍
将校の青春』(TBSブリタニカ)、『名誉除隊』
『加藤大尉の英語ブートキャンプ』『レックス 戦
場をかける犬』『チューズデーに逢うまで』『アメ
リカンポリス400の真実!』『ガントリビア99
の謎』『M16ライフル』『AK-47ライフル』
『MP5サブマシンガン』『ミニミ軽機関銃』『M
P38&MP40サブマシンガン』(いずれも並木
書房)がある。







(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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