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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」第57回です。
いつも不思議に思うのですが、
明治以降に作られた、偉大で便利極まりない
インフラは例外なく、着工当時はごうごうた
る非難の渦の中に置かれたことです。
思い起こすのは、関東大震災後の帝都復興に
あたった後藤新平や大阪の御堂筋を創った
人たちのことです。彼らは当時の世相に
「大風呂敷」「贅沢」「でかすぎ」と叩き
まくられました。
古今東西、
いまの人、世相に受け入れられるレベルで満
足しているようでは後世に禍根を残す、とい
うことでしょう。
ではきょうの記事、さっそくどうぞ
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(57)
新幹線の開発
荒木 肇
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□ご挨拶
それにしても諸物価が上がっています。中には包
みの中の量が減り、価格も上がるという商品もある
とのこと。久しぶりです。こういう値上げ気分は。
というのも、わたしのような人間の若いころは、物
価も上がり、同時に収入も増えるというものでした。
都市労働者の月収を見てみましょう。1964(
昭和39)年の実収入が6万3400円で、実支出
は5万3600円でした。それが1966(昭和4
1)年になると、収入が7万5300円、ざっと4
0%増、支出は6万3400円で18%増なのです
。翌年には収入が8万2600円、支出は6万91
00円となり、それぞれ前年比が9.7%増、9%
増となり、物価(消費)は上がっても同時に給与が
ほぼ上がるという状態でした。
長い目で見てみましょう。所得の1人当たり雇用
者所得前年比は1960(昭和35)年に10.3
%の大台にのって、以後1976(昭和51)年の
10.7%までずっと1割以上の上昇を示します。
1970(昭和45)年には前年比17%にもなり、
74(昭和49)年には空前の28%を記録しま
した。それが77(昭和52)年には1桁台の9.
9%になり、以後平成時代はほとんど給与が増えた
という実感はなくなります。
1970年といえば、岡本太郎氏のデザインの
「太陽の塔」で有名になった、大阪千里丘陵で開か
れた万国博覧会の年でした。66年からこの70年
までの経済成長率は11.4%だったのです。そう
して71(昭和46)年にはニクソン・米大統領が
ドル防衛策を発表し、東京外国為替市場は大暴落を
呈します。それでも田中角栄内閣はなんとか乗り切
りましたが、構造不況といわれる経済の行き詰まり
が見られました。
1980(昭和55)年以降は、ほんとうに低成
長時代でした。この年頃から社会人になった方々
(60歳より下)は、あの明日はもっと豊かになると
いった気分をご存知ないのでしょう。収入も増えな
い、その代わり物価もそう上がるわけでもない。こ
ういった暮らしに慣れてしまうと、今回の諸物価高
騰は驚かれることでしょう。
▼国鉄技術研究所の講演会
1957(昭和32)年5月、東京-大阪間3時
間、機関車牽引ではない全車輌が電車の運転が可能
という発表がされます。そういえばテレビで見てい
ても、鉄道なら「電車」という若い方が多い。われ
われは、「列車」という。列車というのは汽車にひ
かれた客車や貨車とパンタグラフが付いた電車、ジ
ーゼルで動く気動車がありました。それがいつの間
にか、線路を走る列車はみんな電車になったのです
ね。国鉄には電化された近郊や都市内を走る電車が
昔からありました。でも、高速で走る急行や特急は
多くが機関車にひかれたものでした。
特急列車が電車になったのは、鉄道に詳しい方々
ならよく知られていますが、私鉄小田急電鉄のSE
車といわれるロマンスカーです。その開発には国鉄
の技術研究所が加わっていました。
▼十河の発言
この発表会で、国鉄総裁の十河信二は次のように
語ったそうです。「戦後10年を経て、世間の指弾
の的になっているのは、輸送力の不足である。適切
なる輸送力の増強の方策を講じて一般の要望に応え
なければならない。鉄道は他の交通機関にくらべて
必ずしも時代遅れではない。近代化された鉄道こそ
は絶対必要となる。ドイツでも鉄道復興熱は盛んで
あると聞く。アメリカでも鉄道は斜陽産業と思われ
ていたが、ペンシルバニア鉄道の社長は、近代化さ
れた鉄道は基本産業であると言っている。英国も鉄
道始まって以来の大改革を行なっている」
さらに東海道を増強するなら広軌であると考えて
いると言葉を続けます。ゲージを改めてスピードア
ップし、大量輸送をしなければならないというので
す。
第2回の調査会は7月4日に開かれ、狭軌と広軌
の併設案、狭軌別線案、広軌案の3案について検討
することが決められました。第3回は9月4日、軽
車両による電気鉄道案を追加検討することになりま
した。第4回は年が明けて、1957(昭和32)
年1月23日に開きます。
この会議では狭軌、広軌どちらを採用するか議論
が交わされました。ただ、まだまだ広軌に決まった
というわけではなかったようです。青木氏によれば
会議の間の十河の発言には、いま聞いてもなかなか
の意見があります。原子力の時代に、わが国は狭軌
で良いのか。東京-大阪間の距離を諸外国は4時間
で走り、わが国は8時間かかるというのは世界の競
争に耐えられるか。鉄道が経済発展について行くと
いう考え方ではなく、交通機関が経済をリードして
いくということを考えねばならない。
当時の国鉄内の空気では広軌新幹線については7
0%くらいが慎重だったようです。
▼広軌で電車運転、これこそが新幹線
東海道線はすでに1956(昭和31)年11月
には全線電化が完了していました。58年7月に調
査会が答申を出しました。決定案は次の通りです。
広軌・複線にすること、始点と終点は、東京と大阪
とする、ただし将来、大阪以西、東京以東への延長
を考慮する、在来線との連絡を緊密にする、旅客急
行は3時間、貨物は5時間30分を目標とする。そ
の他の細かい話は省きますが、貨物については実現
しませんでした。
こうして1957年の12月19日に閣議で了承が
されました。ただし反対意見もありました。それは
「中央道の高速自動車道路も建設するのに東海道に
新線を造る。巨額な資金をどうするのか」という財
政的な方向からの意見です。たしかに当時は自動車
の発展時代で、東海道の高速道路も建設することに
なっていました。
もっとも烈しい反対は、新しい鉄道など時代錯誤と
いうものだろうというものでした。鉄道や船舶から
飛行機、自動車の時代になっているのだというので
す。新幹線などという無駄なものより、国内の航空
路の拡充、飛行場の整備、高速道路の建設が重要だ
という主張が多くありました。
いま、その反対論を検証したらどうなのでしょう。
将来の見通しほど難しいものはありません。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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