配信日時 2022/10/26 18:47

(再送) (新)【ウクライナ情報戦争(1)】ウクライナ戦争で「情報戦」の範囲が広がった    樋口敬祐

(※)冒頭文中での樋口さんのお名前の記載に誤りがありました。
ここにお詫び申し上げますとともに、訂正再送させていただきます。



こんにちは、エンリケです。

4月まで連載「情報機関はインテリジェンスの失敗
をどう克服してきたか」を書いてくださった樋口敬
祐さん(元防衛省情報本部主任分析官)は、

その後、ロシアによるウクライナ侵攻に関する
「インテリジェンスからの知見」をお伝えする
「ウクライナ侵攻に関するインテリジェンス」
を不定期に配信くださっていました。

そんななかこのたび、
「ウクライナ情報戦争」と題する週一回の連載を配信
いただけるようになりました!

現在進行形の情報戦を真の意味で解説できるのは
インテリジェンスのプロしかいないと思っています。
なかでもウク侵攻については、軍事とインテリジェ
ンスの両輪がないと適切な理解解説ができない気が
します。

樋口さんは、それができる数少ない人のひとりと
思いませんか?

ネットリアル問わず、何事につけても、
ド素人が言いたい放題やりたい放題でワイワイ騒いで
世論がかき乱され、一般人が迷惑の限りを被っている
わが国の現状です。

真の意味で頂門の一針足りうるインテリジェンスコン
テンツを手にできることは、私にとってもあなたにと
っても最高の幸せですね! うれしくありがたい限り
です!


ではさっそく今日の記事をどうぞ。


エンリケ



おたよりはコチラから
 ↓
https://okigunnji.com/url/7/


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新連載・ウクライナ情報戦争(1)

ウクライナ戦争で「情報戦」の範囲が広がった

 樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

───────────────────────

□はじめに

9月27日の安倍元総理の国葬の儀に私も献花に行
こう思い立ち、関連情報を調べてみました。

たとえば、当日はどこからどのように並べばいいの
か、どのような服装で参加するのが適切なのか、ど
のくらいの人が集まるのか、近くの花屋はあるのか
など、献花をしたい人なら知りたいことです。

ネット検索すればすぐに多くの情報が出てくると思
っていましたが、国葬に関して批判的な報道は聞き
たくなくても数多く入ってくるのに、献花の要領な
どについては、かなり努力をして情報収集しなけれ
ばわかりませんでした。

テレビとスマホのニュースだけを見ている妻からは、
いろんなところでデモやってそうだから気をつけ
てと心配される始末でした。


かくいう私も世論が二分しているとの報道だし、献
花台への列がどんなに長くてもせいぜい2時間も待
てば献花できるし、近くに行けば、花屋やコンビニ
で花も買えるだろうと思っていました。いや、むし
ろ、献花する人が少ないと寂しいな、などと思いつ
つとにかく近くの駅に行ってみようと思いました。

半蔵門駅の方が献花台に近いとの情報を見つけまし
たので、そちらに降りることにしました。地下鉄の
構外に出たら老若男女とんでもない数の人が2列で
並んでいました。

マスコミの報道だといたるところでデモをやってい
るようなイメージでしたが、そこではデモの声など
聞こえません(国会周辺に行けば違っていたのかも
しれませんが)。いずれにしても皆さん粛々と並ん
でいるのです。

サイレントマジョリティーがどれほど多いのかがわ
かりました。やはり、テレビはやマスコミは本当に
視聴率が上がる、売れるという視点でしか報道しな
いんですね。

夜のニュースでも、粛々と並んでいる人よりも圧倒
的に人数の少ないデモの映像を流した時間の方が多
かったように思います。近くの花屋が、いつもの3
割増しに入荷したが、あっという間に売り切れて
「想定外」だったという話も流れていましたが、そ
の判断を誤らせたのは誰のせいでしょうか?

私が現地に行って献花に並んでいる人の多さを確認
して妻に伝えなければ、妻の頭の中には国葬反対の
デモをやっている人たちと献花に訪れた人たちが同
じくらいと認識したまま記憶として残ったと思いま
す。

偏向報道というレベルでは済まされないと思います。
我が国においても情報操作が巧みに行なわれてい
て、情報を制限すれば、なかなか実態はつかみにく
いということを体験できました。つまり、一方だけ
の情報を流せば簡単に情報統制ができるということ
です。

戦争中のウクライナやロシアにおいては、もっと熾
烈な情報戦が行なわれています。ロシアでは、ロシ
アのいうところの特別軍事作戦下で、SNSの使用
も制限するなど情報を統制しています。

多くのロシア国民はウクライナ情勢について、政府
が流す情報で判断せざるを得ません。部分動員が実
施され徴兵が身近になり、初めて多くの国民が自分
ごととして捉え出すようになりました。そのため真
剣に政府の流す以外の情報を収集するようになり、
それが、ロシア各地における戦争への反対運動やロ
シア国外へ逃げだすという行動につながったのでは
ないでしょうか。

しかし、それらの反政府活動に関する報道も日本に
いる我々には、そうあって欲しいという期待も含め
た、西側の視点で切り取られ伝えられているため、
実体を知るためには冷静に見ることが必要です。


▼情報戦に関する新たな定義

ロシアとウクライナにおける戦闘では、一部には最
先端の兵器が使われていますが、大半は旧式の武器
が使用され、伝統的な火力と機動力を用いた戦いに
見えます。

しかし、情報戦においては新たな動きが見え隠れし
ています。でも、実態はいまだによくわかりません。
今回からロシアのウクライナ侵攻に関連する「情
報戦」について今まで気づいたところをランダムに
書きたいと思います。

 ロシアのウクライナ侵攻においては、「情報戦」
に注目が集まっており、いろいろな場面で耳にしま
すが、明確に定義されているわけではありません。

 2005年頃以降、NATO(DEEP e Academy)では、
次のように定義されています。

「情報戦とは、相手に対して情報面で優位に立つた
めに行なわれる作戦である。情報戦は自国の情報空
間を支配し、自国の情報へのアクセスを保護する一
方で、相手の情報を入手・利用し、相手の情報シス
テムを破壊し、情報の流れを混乱させることで成立
する。情報戦は新しい現象ではないが、技術の発展
による情報の伝達の高速化・大規模化という革新的
な要素を含んでいる」

ロシアのウクライナ侵攻においては、主に戦争を遂
行するために行なわれていた情報戦の範囲が拡大し、
戦争遂行以外の場面でも情報戦という言葉が多用
されています。

したがって、本メルマガにおいては、情報戦を「相
手に対して情報優位に立つために行なわれる情報を
めぐる作戦や行為」と幅広く捉え、次回以降できる
だけ新たな情報戦について記述していく予定です。

今後も、ご一読いただきコメントなどいただければ
ありがたいです。


□出版のお知らせ

このたび拓殖大学の川上高司教授監修で『インテリ
ジェンス用語事典』を出版しました。執筆者は本メ
ルマガ「軍事情報」でもおなじみのインテリジェン
ス研究家の上田篤盛、名桜大学准教授の志田淳二郎、
そしてわたくし樋口敬祐です。

本書は、防衛省で情報分析官を長く務めた筆者らが
中心となり、足かけ4年の歳月をかけ作成したわが
国初の本格的なインテリジェンスに関する事典です。

2017年度から小学校にプログラミング教育が導入さ
れ、すでに高校では「情報科」が必修科目となって
います。また、2025年の大学入学共通テストからは
「情報」が出題教科に追加されることになりました。

しかし、日本における「情報」に関する認識はまだ
まだ低いのが実態です。その一因として日本語の
「情報」は、英語のインフォメーションとインテリ
ジェンスの訳語として使われているため、両者の意
味が混在していることにあります。

一方で、欧米の有識者の間では両者は明確に区別さ
れています。状況を正しく判断して適切な行動をす
るため、また国際情勢を理解する上では、インテリ
ジェンスの知識は欠かせません。

本書は、筆者らが初めて情報業務に関わったころは、
ニード・トゥ・ノウ(最小限の必要な人だけ知れ
ばいい)の原則だと言われ、ひとくくりになんでも
秘密扱いされて戸惑った経験から、ニード・トゥ・
シェア(情報共有が必要)の時代になった今、初学
者にも分かりやすくインテリジェンス用語を伝えた
いとの思いから作り始めた用語集が発展したもので
す。

意見交換を重ねているうちに執筆賛同者が増え、結
果として、事典の中には、インテリジェンスの業界
用語・隠語、情報分析の手法、各国の情報機関、主
なスパイおよび事件、サイバーセキュリティ関連用
語など、インテリジェンスを理解するための基礎知
識を多数の図版をまじえて1040項目を収録する
ことができました。

当然網羅していない項目や、秘密が開示されていな
いため、説明が不足する項目、現場の認識とニュア
ンスが異なる項目など不十分な点が多数あることは
重々承知していますが、インテリジェンスや国際政
治を研究する初学者、インテリジェンスに関わる実
務者には役立つものと思っています。



『インテリジェンス用語事典』
樋口 敬祐 (著),上田 篤盛(著),志田 淳
二郎(著),川上 高司(監修)
発行日:2022/2/10
発行:並木書房
https://amzn.to/3oLyWqi

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ひぐちけいすけ(インテリジェンスを日常生活に役
立てる研究家)



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
NPO法人外交政策センター事務局長。元防衛省情報
本部分析部主任分析官。防衛大学校卒業後、1979年
に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議事務局(第2
幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。陸上自衛隊
調査学校情報教官、防衛省情報本部分析部分析官な
どとして勤務。その間に拓殖大学博士前期課程修了。
修士(安全保障)。拓殖大学大学院博士後期課程修
了。博士(安全保障)。2020年定年退官。著書に
『国際政治の変容と新しい国際政治学』(共著・志
學社)、『2021年パワーポリティクスの時代』(共
著・創成社)、『インテリジェンス用語事典』(共
著・並木書房)


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