こんにちは。エンリケです。
『海軍戦略500年史』の四十四回目。
安倍さんの成し遂げた類まれな功績が実によくわか
る内容です。安倍さんは従一位に列するに値する国
史上の偉人と言って差し支えないですね。それにし
ても惜しいことです。無念で仕方ありません。
本来は、戦後日本のマスメディアがこういう解説報
道をしなければならないはずですが、誰もしません
ね。
国防安保軍事に関する知見は、弊メルマガや優れたネ
ット動画を通じて得られますので、マスメディア報道
には見切りをつけ、貴重な時間はそういうところと接
することに費やし、御自らを養い成長させてください。
いくつになっても成長する意思を失わず、自分維新を
積み重ねる人がこれからの我が国に必要な人財なのだ
と思います。
それにしても、素晴らしい記事です。
すべて国民が常識レベルでわきまえておかなきゃい
けない事実です。高校大学の「国防安保原論」で取
り上げてほしい内容ですね。
さっそくどうぞ
エンリケ
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海軍戦略500年史(44)
日米同盟の深化と国際貢献
堂下哲郎(元海将)
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□はじめに
前回は湾岸戦争がアメリカ、日本、中国の海軍戦
略に与えた影響について述べました。今回は、日本
が経験した北朝鮮の核危機、冷戦後の日米同盟の
「再構築」を経て、安倍政権のもとで初めての国家安
全保障戦略が策定されて今日の体制ができあがるま
でをスケッチします。
このような安倍内閣で成し遂げられた成果を引き継
ぎ、今後の政権も弛まず進化させていってもらいた
いものです。
▼政治空白の中の北朝鮮核危機
1993年から94年にかけては北朝鮮核危機が起こる。
日本では閣僚経験者がほとんどいない素人政権や頻
繁な政権交代により政治の空白が生じたため、官僚
主導の危機管理となった。政府内で朝鮮半島有事が
現実的な問題として浮上し、米軍からの1,900項目
に及ぶ支援要請リストが真剣に検討されたが、憲法
と集団的自衛権の制限的解釈が日本のとりうる選択
肢を厳しく制限した。
これをきっかけとして「保持しているが行使できな
い」集団的自衛権の問題が本格的に議論されるよう
になり、同時に危機管理に対応できない国内諸法制
も明らかになった。幸い危機は回避されたが、戦争
にエスカレートしていた場合、効果的な対米支援は
できず日米同盟は機能しなかった可能性が高く、日
米同盟の脆弱性が露呈した。また、国民は身近な戦
争の可能性を認識し、いわゆる「観念的平和論」は
影を潜める傾向が強まってきた。
▼日米同盟「再構築」
経済重視のクリントン政権下、日米間で貿易摩擦が
続き、冷戦終結に伴う「日米同盟不要論」が広まる
なか、北朝鮮危機での教訓などから日米間で安保再
生のための政策協議が進んだ。
また、1995年に入って、阪神淡路大震災、地下鉄サ
リン事件と立て続けに前例のない事件が起こり、自
衛隊の出動、危機管理体制強化に国民的コンセンサ
スが形成された。同年、発表された新防衛大綱では
日米同盟の積極的価値を強調し、信頼性及び機能向
上のためにはガイドライン見直しが必要とされた。
1996年、台湾総統選挙を前にした第三次台湾海峡危
機の発生で、日米同盟強化及び周辺事態対処への国
民の支持が高まるなか、「日米安保共同宣言」を発
表し、日米同盟の「再構築」が始まった。
▼「周辺事態」への備え
1998年、インドネシアの暴動激化に備え、政府は在
外邦人輸送のため海上保安庁巡視船を派遣し、自衛
隊輸送機をシンガポールで待機させたが、この際、
在外邦人救出のために海上自衛隊艦船の派遣を許さ
ない現行法体制の制限に国民の不満が高まり、「自
衛隊は一体何の役に立つのか」との声が上がった。
これをきっかけに自衛隊法が改正され、在外邦人保
護・救出のための艦船派遣が可能になった。
同年、北朝鮮から発射された弾道ミサイルが日本上
空を飛び越えた。世論は一夜で熱し、多くの国民が
それまで聞いたこともなかった「戦域ミサイル防衛」
が必要と世論調査に答え、情報収集衛星の導入も決
定する。
1999年、北朝鮮の不審船に対して初の海上警備行動
が発動され、弾道ミサイル発射以来の「周辺事態」
に対する関心・理解が拡大・深化した。この時期は
橋本首相をはじめとする政治的リーダーシップの下、
危機管理政策が進展し、極めて複雑かつ精緻化した
憲法解釈に基づく立法作業が精力的に行なわれた。
▼戦後初の国家安全保障戦略
米国で同時多発テロが発生すると(2001年)、日本
政府は「テロ対策特措法」を約3週間という短時間
で成立させ、「後方地域」とはいえ初の戦時の任務
に海自艦艇が出動することになった。自衛隊創設以
来の課題だった有事法制が、国民の理解が広がりを
見せるなか成立し(03年)、内閣府の外局の位置づ
けだった防衛庁が念願の防衛省への昇格を果たした
(06年)。
2009年には、ソマリア沖の海賊から日本関係船
舶を防護するための海上警備行動にもとづく護衛作
戦を開始、同年、「海賊対処法」が施行されてから
は、すべての国の船舶を守ることができるようにな
った。戦後、途絶えていた商船界と海上自衛隊の関
係が回復したのもこの頃からである。
2010年には「22大綱」において「基盤的防衛力」の
考え方が撤廃され、防衛力の規模や存在によって抑
止力を構成するいわゆる「静的抑止」から、即応性
や後方支援能力を高めて平素から警戒監視などを通
じて高い作戦能力を示すことによる「動的抑止」の
考え方に転換した。
もともと「限定的小規模侵略」という考え方は、高
い機動性を持つ海上兵力を地理的に限定することは
難しく、「独力対処」についても当初から米海軍と
の連携を前提とする海上自衛隊の考えとはなじまな
いものだった。防衛力整備の概念としてはともかく、
事態の蓋然性とか運用概念としては考えにくいも
のだったので、ようやく妥当な防衛構想を検討する
前提が整ってきたといえる。
2013年から15年にかけて、第二次安倍内閣のもと安
全保障に関する国内体制が強化された。国家安全保
障会議と国家安全保障局が設置され、外交と防衛を
統合した安全保障政策の推進が可能となり、戦後の
日本として初めて国家安全保障戦略が策定された。
これでようやく1957年の「国防の基本方針」が上書
きされることになった。
特定秘密保護法により国家としてのインテリジェン
ス機能の向上が図られ、60年代からの武器輸出三
原則も抜本的に変更された。さらに限定的ながら集
団的自衛権の行使が可能となったのは画期的なこと
であり、日米防衛協力ガイドラインの改定とともに
関連する法制(平和安全法制)が整備され、日本が
置かれた厳しい安全保障環境に適切に対応するため
の基盤がようやく整った。
(つづく)
【主要参考資料】
堂下哲郎「海上自衛隊の位置づけの変化」『新防衛
論集』(1998年9月)
平松茂雄著『台湾問題-中国と米国の軍事的確執』
(勁草書房、2005年)
マイケル・ファベイ著『米中海戦はもう始まってい
る』赤根洋子訳(文藝春秋、2018年)
信田智人「序論 安倍政権は何を変えたのか」
(『国際安全保障』、2022年3月))
(どうした・てつろう)
◇おしらせ
2021年11月号の月刊『HANADA』誌に、
櫻井よしこさん司会による「陸海空自衛隊元最高幹
部大座談会」が掲載されています。岩田清文元陸幕
長、織田邦男元空将とともに「台湾有事」「尖閣問
題」について大いに論じてきました。
月刊Hanada2021年11月号
https://amzn.to/3lZ0ial
【筆者紹介】
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共
政策論修士、防衛研究所一般課程修了。海上勤務と
して、護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、護衛
艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等。陸上勤務
として、内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)、
米中央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長
(初代)、幹部候補生学校長、防衛監察本部監察官、
自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴地方総監、横須賀地方
総監等を経て2016年退官(海将)。
著書に『作戦司令部の意思決定─米軍「統合ドクト
リン」で勝利する』(2018年)『海軍式 戦う司令
部の作り方―リーダー・チーム・意思決定』(202
0年)がある。
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