配信日時 2022/09/14 20:05

【本の紹介】『危機迫る日本の防衛産業』 桜林美佐(著) その2

わが国でこれまで行われてきた、
防衛省自衛隊及び防衛産業叩きの本質は、

本著にもある通り

「「禊」がひずみを生んだ」

この一言に修練されると感じます、、、


『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
https://amzn.to/3AuEJ8O



こんばんは、エンリケです。


実に無念です。


国防をカネ勘定だけで全うしようとする感覚そのもの
に重大な間違いが含まれている。

防衛装備品や兵器は兵士を戦場で守るために作られ
ているもので、国家国民の軍人に対する信頼と期待
と愛情の証のはずです。

そんな社会風潮の中、ほぼ孤軍奮闘で防衛産業・防
衛事業と防衛省自衛隊と国家国民の国防トライアン
グルの本質を啓蒙し続け、本当の意味での国防安保
防衛の強化を訴え続けてきたのが桜林美佐さんです。

毎週月曜日の連載「美佐日記」で
あなたにはおなじみです。

数多くの書を出されている防衛問題のオピニオンリ
ーダーのおひとりでもあります。

本著は、月刊「丸」の連載記事をまとめたものです
が、単に連載記事をまとめただけにはとどまらない
意義があります。

防衛産業、防衛事業と言う複雑な問題を、
かくもわかりやすく簡単に読める内容にブレイクダ
ウンしたこの本の凄さです。

防衛産業、事業の正鵠を射た理解把握が困難で、言
論がなかなか広く深く発達しない最大の理由は、本
書でも指摘されているとおり、
「防衛予算」という複雑極まりない、日常生活とか
け離れた分野の理解が不可欠だからではないでしょ
うか? 

兵器や装備品については玄人よりも詳しい素人オタ
クがいます。しかし、「防衛予算の裏表に精通した」
素人オタクは見たことも聞いたこともありません。

防衛予算理解を図る適切な解説コンテンツも、
弊メルマガで以前連載した市川さんの記事ぐらい
しか思い浮かびません。

そのことを教えてくれるのも、桜林さんくらいしか
いない、という状況にもプチ絶望です。


そういう訳で、防衛産業や防衛事業に関心を持った
としても、一般人は、複雑極まりない分野を前に立
ちすくむしかできないのですけど、
この本は、そのボトルネックを解決できる可能性に
満ちています。


まずは本当に読みやすい。
この本が、現在も連載中の雑誌記事(「月刊丸」の
「誰も知らないニッポンの防衛産業」)の書籍化で
あることも理由でしょうが、桜林さんの防衛産業・
事業理解が、広く深く透徹したものである結果と考
えるのが、一番自然な気がします。

次に、扱われているテーマが時宜に即した、本当に
重要なこと危ういこと危機的状況にあること、国民
レベルで共有しておかなきゃいけないことばかり、
ということです。目次を紹介してますので、是非ご
覧ください。あなたが気になっていることばは含ま
れていることとと存じます。

最後に、妥協のない厳しい言葉で必要なことを指摘
提言している点です。なかでも、自衛官に対し意識
の変革を求める厳しいことばからは、美佐さんの国
防への「本気」の思いが強く伝わってきます。

また、強く感じたのはわが国の防衛予算、防衛政策
に関する硬直性です。これはすなわち現実に柔軟に
対応できないと言うことであり、今わが国が防衛を
めぐる現実になんとか柔軟に対応できているのは、
ひとえに防衛産業の自腹を切る姿勢に頼りきってい
るおかげ、ということに気づかされます。

しかしこんな事は永遠に続けられるはずもなく、
利益を追求しなければ立つことすらできない防衛産
業への過度な依存体制が、かくも過酷な現実を防衛産
業防衛事業の分野にもたらしていること、そして国防
防衛体制への深刻な不安をもたらしている状況、を
1人でも多くの国民に知ってほしいです。

もっと強く感じたのは、わが国の兵站を担う防衛産
業防衛事業をめぐる過酷な現実や異様な状況をもた
らしている源がよくわからないことです。これはも
しかしたら、現憲法かもしれません。

関連分野の担当者担当部署のどこにも誰にも悪意が
ない。皆が各々の持ち場で精一杯力を尽くしている
にもかかわらず、結果としてこういう現実が起きて
いるのです。深刻な懸念を覚えるばかりです。


随意契約叩きの風潮がいかに防衛省自衛隊と防衛産
業の現場を痛めつけてきたか。そのことがいま自衛
官の活動にどれだけ悪影響をもたらしているか。本
著を通じてこのことを1人でも多くの国民に知って
ほしい、心からそう思います。

また国防をカネ勘定だけで全うしようとする感覚では
国産兵器や装備品が海外のそれと競争させられ、競
争力が低いわが防衛産業の兵器や装備品は海外のそ
れに勝てないわけです。そうなると兵站が海外に握
られることになるわけです。これが何を意味するか
分かりますよね。

もちろんこの危険は防衛省、自衛隊、防衛産業、政
治家官僚、アカデミズム等々関係者は全員わかって
います。

でもカネ勘定の中で国防を構築せざるをえない状況が
今わが国にはある、となれば兵士を守るための装備
品兵器の調達は、海外に負けない料金で極めて高品
質高レベルな現実には存在し得ないものを防衛産業
にやってもらわなくてはいけなくなる。

民間企業である防衛産業が、採算度外視で厳しいミ
ルスペックの装備品や兵器を貴重な時間と資源を費
やして生産しなければならなくなる、というのは経
営に甚大な毀損を与える行為であり、心意気や愛国
心、武士道といったもので埋められるものではない
し、埋めてはいけないです。


わが国には、武家が金を勘定することをよしとしな
い風潮があります。
官が民を見下す明治以来の悪しき風潮が今でも残っ
ている事から見ても根強いものがあるんだろうと感
じます。

この風潮がわが国の兵站を支える防衛産業の失速崩
壊、防衛事業の先細りを招く根幹的な原因の1つか
もしれないと私も思います。


ではこの「防衛基盤が今どういう課題問題を抱えて
いるのか?」が見えるガイドブックの中身を見てい
きましょう。


◆もくじ

▽日本に「防衛産業は存在するのか
 日本に「防衛産業」は存在するのか?
 相次ぐ防衛事業からの撤退
 コロナ禍に学ぶ輸入依存の危うさ
 企業救済策は自衛官の意識から
 防衛産業は第四の自衛隊
 
▽兵器の独立なくして国家の独立なし
 国産であるべき理由
 「兵器の独立なくして国家の独立なし」
 日本人と欧米人の体型の違い
 日本ならではの「国内事情」
 均一性が命の弾薬
 靴下と戦闘機どちらが重要か?
 
▽消える「国産化」とライセンス生産
 「基盤戦略」から「国産化方針」消える
 国内装備に向けられた厳しい視線
 残す努力せずに間引きするのか
 装備輸入の歴史的経緯
 国産潜水艦の復活
 「出藍の誉れ」が多い日本のラ国
 ラ国製品の輸出も
 
▽FMSは金食い虫???
 見失われた「国産化方針」真の意味
 当たり前になったFMS
 FMSの問題点
 FMSが金食い虫になる事情
 増加する「政治案件」
 
▽予算の構造に問題あり
 FMSの罠
 未清算がいっぱい!
 「FMS基金」のすすめ
 予算の構造に問題あり
 民主党政権で防衛費がアップした!?
 増えるローン払い
 
▽誤解ばかりの防衛予算と「こくふり」
 誤解ばかりの防衛予算
 「何こくですか?」の意味
 新たな概念「こくふり」
 補正予算が頼みの綱
 なぜか語られない中期防との関係
 「中期防」を読む際に必要な読解力
 
▽「カラダちぎり」と「過大請求」
 自分のカラダを裂いて人々のために
 装備の値段はどのように決まるのか
 「過大請求事案」の真相
 継続するための処置だった
 「不正」生む背景に目を向けるべき
 
▽自腹で解決します!
 抜き打ち調査始まる
 「ルール違反」の余波
 ダブルGCIP問題
 盛り上がるのは実情とかけ離れた話ばかり
 儲けた分はお返しします! のルール
 お金が足りなくなったら自腹で解決します!のル
ール
 原価計算が始まった経緯
 
▽防衛産業の復活と試練
 防衛産業に再び火が灯る
 国防のための決心と眠りから覚めた喜び
 蘇った防衛産業を襲った試練
 日本中から「航空」が消えた戦後
 隠されたジェットエンジン
 英国とドイツに続け!
 
▽「ネ20」と競争入札
 執念の結晶「ネ20」
 メザシの土光さん
 改革は食卓から!?
 競争入札の時代へ
 傷を深める企業と防衛省
 
▽広がるひずみ
 罪の償いが招いた罪
 危ない競争入札
 防衛装備の安値競争
 艦艇事業でも広がるひずみ
 「長官指示」廃止の余波
 それぞれの苦しい事情
 下請企業を圧迫することにも
 浪花節の装備品づくりを終わらせる
 
▽30FFM建造と問題点
 艦艇建造の危機
 新たな試みへ
 FFMの抱える問題
 最大の特徴はコスト抑制
 三菱&三井の合併
 インドネシアへの輸出を目指す
 トラブル続出の取引
 深刻な課題も
 ベンダ―企業への影響
 
▽全ての日本の装備品情報を開示?
 艦艇建造二社体制
 イージス・アショア問題にも関係か
 NATOカタログ制度
 ここまできているワールドネットワーク
 「とっても速いです」に冷笑
 Tier2昇格の覚悟
 選別作業はどのように?
 市場開拓や後方支援にメリット
 
▽自衛官の再就職問題と防衛産業支援策の強化
 防衛産業危機が話題になる危うさ
 成長戦略に位置付けられた経済安全保障
 言うのが憚られる問題がある
 自衛隊で昇任してもいいことがない
 FMS増加の影響も
 軍の意志決定はそんなに簡単ではない
 防衛産業支援策の強化を目指して
 防衛力における「選択と集中」の危うさ
 
▽泥縄式の防衛政策からの脱却
 危なすぎる防衛論
 高齢化で自衛隊を減らす?
 柔軟化した採用枠
 制度の問題が多いのではないか
 肝心なことを「差し置いて」の議論
 装備調達にも直結する
 「選択と集中」は防衛力を危機に晒す
 画期的な「防衛力加速化パッケージ」
 泥縄式では間に合わない
 
▽ロシア・ウクライナ戦争から見る日本の安全保障
 ロシアのウクライナ侵攻という衝撃(2022年
(令和4年)2月24日)
 失われた記憶
 背中を押した要因
 抵抗か投降か
 武器供与が支える戦闘
 自衛隊の防護衣・鉄棒がウクライナへ
 今から急いですべきこと
 
▽「GDP比1%」という謎縛り
 防衛費GDP比を巡る論争
 NATO基準そもそも一%超だった!
 上手かつ着実に増やす方法
 「戦争」「軍拡」は日本人にとって不快な響き
 変更を迫られている日本人の道徳観
 国民保護の痛みという課題
 シェルター整備の加速化を
 抑止に失敗したらどうするか
 
▽日本のウクライナ支援に関するあれこれ
 装備品提供の舞台裏
 運用指針の変更
 自衛隊の持ち分しか渡していない
 米国の支援体制
 ここにもサプライチェーンの問題が
 日本のポテンシャル
 火を噴く装備は渡せない
 古いヤツだと思われたモノたち
 
▽装備移転を巡る問題
 誤解だらけの装備移転
 防衛産業救済策なのか?
 「会いたい」と思う防衛産業に
 電気代などの負担減を
 リスクが多い輸出
 自衛隊のために続けてきた
 国として取り組まないと無理
 フィリピンへの移転を成功させた「人」の力
 積み上げた両国関係
 フィリピンに続くことはできるか
 
▽前時代的な学術会議
 日本学術会議の問題
 戦後の膿を取り除け
 求められる新たな日本の学術会議
 企業が学術界を肩代わりした戦後
 考えさせる兵器の概念
 日常の中にもある軍事技術
 外国からの資金援助はOK!
 国防総省が半分を持つ米国の研究開発費
 企業が担った戦後の研究開発
 中国との親密な関係
 自衛官に対する「いじめ」
 ノーベル賞とダイナマイト
 「死の商人」と言われて

あとがき

いかがでしょうか?
個人的に興味を覚える項目が一つ以上
あなたならあったでしょう。

もすそうなら、必ず手に取って読むことをお勧めします。
文庫本ですから持ち運びも楽です。

おススメします。

ご紹介したのは



『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
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でした。


エンリケ

追伸

桜林さんは不思議な方です。
ご経歴もそうですが、世に出された作品(本や記事)
のいずれもが「読み手の琴線に響く何か」を湛えて
います。魅力的な書き手ですね。



『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
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